ハイスクールD×D Dragon×Dark   作:夜の魔王

76 / 91
最強の座は不動だった

「あ―――――っ、すっきりした」

 そう言った朧の顔色は黒いオーラで伺うことが出来なかったが、決して優れているようには見えなかった。

「おいおい、何だその数は。十や二十じゃねえぞ……? 一体どうしたらそんな数を集められるんだよ」

「不思議なことに俺が行く先々に瀕死の存在に直面しまして。埋葬代わり、形見分けみたいな感じで貰いました。生きてる人間から無理矢理引き剥がしたわけではありません」

「うっ……」

 アザゼルの疑問に、朧は何でもないように答え、付け加えられた一言で一名ほど胸が傷んだ。

「で、それを元々の神器(セイクリッド・ギア)に蛇口代わりに取り付けたら多様性を得て、最終的には黒き御手(ダーク・クリエイト)になったんだが、まあそれはいいだろう。さてさて、中断させて悪かったな、曹操。始めようか」

「……ああ」

 朧と曹操が再び構えて対峙する。

 今度は緊張状態に突入することなく、一瞬で朧が攻めに出る。

 霞桜を構えて突撃し、曹操を一瞬で数度斬りつける。

 しかし、その程度で曹操が倒されるわけがなく、すぐに横へと飛んで回避して聖槍にて攻撃を行おうとするが、曹操が回避したすぐ後に、朧は勢いそのままに駆け抜けて曹操の間合いの外にいた。

 これに曹操は少し面食らう。先日戦った時、朧は付かず離れずの超至近距離で戦っていた。

 それだけではなく、朧は基本的に間合いを保つように戦うと、英雄派は分析していた。

 それは確かに正しいが、それは黒き御手(ダーク・クリエイト)を使用する際の戦闘方法である。

 黒き死装束(ブラック・ドレス)を使用した、黒縫朧の原初の戦い方は全く違う。

 多種多様で万能多岐な戦い方の黒き御手(ダーク・クリエイト)に対して、黒き死装束(ブラック・ドレス)には用法は一つしかなく、応用すらできない。よって戦法も一つに限定される。

 ――ただの体当たりである。

 

「―――――――――――――――――ッ!!」

 金属音のような叫び声を響かせながら、朧が高速で曹操に迫り、曹操はそれを紙一重で()なす。

「くっ……! 中々手ごわいな!」

 朧の攻撃は突進と表現する他ないのだが、その実体が莫大なオーラに加えて一瞬で幾十の斬閃が重ねられるのだ。

 突進とは言え、もう既に巻き込まれればミンチにされるミキサートレインと言った感じになっている。

 

 単純すぎるくらい単純だが、それ故に打つ手が少ない。

 曹操の禁手(バランス・ブレイカー)の七宝も、女宝(イッティラタナ)は女でないので効果がなく、輪宝(チャツカラタナ)の武器破壊は刃に纏う黒いオーラに阻まれ通じず、攻撃を受け流す珠宝(マラニタナ)は突進攻撃には適応せず、転移の馬宝(アッサラタナ)はすぐに軌道修正して襲いかかる。

 象宝(ハッティラタナ)で飛翔しても、お前飛べない設定どこ行ったと言いたくなるほどの跳躍を見せて追いすがり、居士宝(ガハパティラタナ)の人型も鎧袖一触、十把一絡げに斬り倒される。

 唯一効果があるのは将軍宝(パリナーヤカラタナ)による大威力攻撃ぐらいであり、しかし、それも軽く弾き飛ばせるだけで、朧はすぐに立ち直って反撃する。

 移植した石化の魔眼(メデューサの瞳)も、視線がオーラによって通らないので通用しない。

 

「単純な力も極めればここまでのものになるのかっ! これを制すれば俺は更なる高みに登れるだろう!」

La()―――――――――――――――――ッ」

 お互いの得物にそれぞれ真逆の性質を持つオーラを集中させる。

 曹操の聖槍が(まばゆ)(かがや)き、朧の霞桜が(くら)く染まる。

「輝け、神を滅ぼす槍よっ!」

「閃け、人を絶やす刀よっ!」

 全力で振るわれた光の刃と闇の刃が激突し、衝撃波を四方八方に撒き散らした。

 

「うぉっ!」

「がはっ!」

 自分たちが発生させた衝撃波に吹き飛ばされ、二人が後方へと吹き飛ばされる。

 しかしそこは芸達者な二人。空中で反転して着地し、すぐにお互いへと得物を構える。

 着地したお互いの状態は、曹操は至るところに細かい切り傷を負い、朧の皮膚は全体的に焼け焦げていた。

 前者は曹操のガードをも超える霞桜の斬撃によるものであり、後者は攻撃に――霞桜にオーラを回した事で防御が薄くなったところに聖なるオーラを浴びせられた為だ。

 だが、どちらも軽傷であり、戦闘続行には何の問題もない。本人たちもそう思っていたし、そのつもりであった。しかし――

「――ゴフッ」

 突如として、朧が口から吐血する。(おびただ)しい量の血液を。

 人間なら内蔵に重大な損傷を受けたことを疑うだろうが、朧は一切構わずに次の一歩を踏み出し――

「朧」

 オーフィスが普段なら(・・・・)そこで止まるはずの朧に、肘打ちを食らわせ強制的に停止させた。さっき血を吐いた者に対して(むご)い仕打ちである。

 理由は自分に構ってくれず、他人と何かしているので寂しくなったからである。オーフィスの中にグレートレッドを除けば敵味方という概念はおそらく存在しない。

 なお、オーフィスが相手に応じて力を使う量が一番多いのは朧だったりする。裏返っていない愛情である。

「邪魔、帰れ」

 オーフィスにそう言われた曹操は呆れたようにため息を吐き、禁手(バランス・ブレイカー)を解除して槍を肩に担ぐ。

「まあいいさ。俺たちの目的は果たした。異質な龍神の変わりに、俺たちにとって都合の良い『ウロボロス』を創りだす」

 それが聞こえたのか、朧が顔を上げた。

「オーフィス量産化計画だと! 誰にもそんな事をさせてたまるか(そんな事させるぐらいなら俺がする)!」

 微妙に聞き間違えていた上に、欲望ダダ漏れである。

「黙って」

「ガッ……!」

 興奮した朧の上にオーフィスが飛び乗って再び気絶させた。

「残りは死神(グリム・リッパー)に任せよう。ハーデスは力を奪われたオーフィスをご所望だからな」

 再び朧が顔を起こした。その形相(ぎょうそう)は憤怒に彩られており、シワが深くなれば般若(はんにゃ)に見えることだろう。

「何! あの骸骨ジジイ俺のオーフィスに何する気だ! 今度会ったら理科室送りにしてやる!」

「大人しくする」

 上に乗ったオーフィスに頭を叩かれ、顔を床にぶつけた朧は再び沈んだ。

「……さて、ここで一つゲームをしよう」

 曹操は気を取り直して一誠たちに話しかける。

「もうすぐここにハーデスの命を受けてオーフィスを回収に死神の一行が到着する」

「オーフィスを回収するのは俺だ!」

「落ち着け」

 朧が起きてまた沈められた。

「そこにジークフリートも参加させる。君たちがここから無事に脱出できるかどうかがゲームのキモだ。今のオーフィスがハーデスに奪われたらどうなるか分からない」

 曹操はもう気にしない事にした。

「オーフィスを奪わせ――ガハッ!」

 もう言葉の途中で沈められた。割とまともな事を言ってたのにだ。

「オーフィスを死守しながらここから抜け出せるかどうか、是非挑戦してみてくれ」

「そんなの余ゆ――ッ!」

 ついにグーパンで床に埋まるほどめり込んだ。半ば条件反射になりつつあった。

「……最後に聞かせてくれるかオーフィス。彼にそんな事をする理由は?」

 それが気になっていたのは皆同じだった。

「静かな朧、好き。うるさい朧、うざい」

 静かなのが好きなオーフィスらしい答えだった。

 




朧無双?いや、オーフィス最強伝説だから。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。