TS狐っ娘獣人異世界冒険(仮題)   作:きし川

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メイドインアビスのような話を書きてぇな……(願望)



死んだら狐っ娘になった。

 ここは、どこだ……? 

 

 気がついたら、何もない暗い空間にいた。

 天井もない、地面もない、重力もない。そんな不可思議な空間に俺はいた。

 

 ……落ち着け、俺。まずはこうなった経緯を思い出せ。たしか俺は明日が休みだというのを良いことに仲が良い友人達と夜遅くまで遊びまくって、日付が変わってすぐ位に解散したんだっけか? その後は……家に帰って、……あれ? 俺、家に帰ったっけ? 

 

 

 

 

 

 

 

 あっ、思い出した…………俺、車に轢かれたんだった……

 

 若干、千鳥足で横断歩道を渡っていたら、車がすげぇスピードで突っ込んできたんだ。

 ……あっという間だったなぁ、逃げようと思う前に吹っ飛ばされたもの……あっけなかったなぁ……

 

 あ、なんだか眠くなってきたな……それに、なんだろ……体がどんどんバラバラになっていくような…………

 まぁ、いいか……どうせ、もう死んでるんだし、どうにでもなってしまえ……

 

 目を閉じる。

 体の感覚がどんどん消えていく。何も見えない。何も聞こえない。

 感覚が消えていくなか、体が沈んでいくような気がした。

 コレが死ぬということなんだろうか? 

 

 

 

 ……? 

 このままどこまで沈むのかと思っていたら、今度は急に浮上しているような気がする。浮上していくごとに体の感覚が戻っていく。

 

 なんだ……? 何が起きているんだ……? 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 ……鳥の鳴き声が聞こえる。川の流れる音がする。自分が何かに寝転がっている感覚がある。

 

「う……ん?」

 

 ゆっくりと瞼を上げれば、木の枝が見えた。どうやら俺は木の下で寝ているようだ。

 

「あれ……?」

 

 瞼を擦りながら上体を起こすと異変に気づく、明らかに視点の高さが違うし、視力もなんだか良くなっているように感じる。

 次に自分の手を見る。明らかに小さい、それに子供の手のようにすべすべで柔らかい。

 さらに、体を見る。何も身に付けていない、言うまでもなく小さい、完全に子供のそれであった。そして、何より目を引いたのは俺の息子が不在になっていることだ。

 

「……無い」

 

 試しに息子のいた場所に触れてみる。ツルツルだ……泣きたくなるほどツルツルだ。

 

「……どこに?」

 

 辺りを見回す。すると、視界の端に見慣れないものを見つけた。

 それは、尻の辺りから生えているふわふわとした一本の尻尾だ。動物には詳しくはないがたぶん狐だろう。

 

「……大体分かった」

 

 それを見て俺は確信した。

 

 これ、TS転生じゃね……? 、と

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 TS転生

 

 それは色々なメディアにおいて度々出てくるジャンルだ。主に男が何らかの要因で死亡し、神様だったり別のなにかによって転生する際、性別が反転女の子になっちゃう! というもので、視聴者あるいは読者は転生者が生前の体との差違や男女関係に右往左往する様を見て楽しんでいる。

 俺も死ぬ少し前にこういったジャンルの物に触れ、ハマっていたがまさか、自分が転生者と同じ立場になるとは思ってもみなかった。

 

「……どうしたもんかな」

 

 自分がTS転生したと気づいた後、見つけた川の川辺にある岩の上に座り込み呟く。

 ちなみに、先程、川の流れが遅いところの水面で自分の今の顔を見てみたが金髪で碧眼のかなりの美少女……美幼女? だった。

 それを見た俺は嬉しさ半分悲しさ半分だった。だって、そうだろ? こんなかわいいケモっ娘が全裸でいるんだぜ? 見つけた瞬間に食われちまうよ(意味深)

 

 という訳で誰か着るものを下さい。服じゃなくも良いです。このまっ平らの胸とツルツルの谷を隠せるものを下さい。

 

「お……」

 

 すると、俺の願いが誰かに届いたのか川の上流の方から大きな葉っぱが流れてきた。

 

「……いや、無理だな」

 

 流れてきたそれを拾おうかと思ったが辞めた。俺は葉っぱ隊じゃないからな

 それに葉っぱ一枚じゃ谷の方しか隠せない。

 

「うーん……?」

 

 流れていく葉っぱから目を離し、上流の方を見てみれば帯状のなんだかよく分からないものが流れてきた。

 気になったので川に入り、流れ来たものを手に取ってみる。

 ざらざらした表面に黒っぽい色と白っぽい色の縞模様があるそれは幅が今の俺の肩幅位あり長さは軽く見積もっても10メートル以上ありそうだ。

 

「どっかで見たことあるな……」

 

 こんな感じのやつをどこかで見たことがあった。生前の……まだ小さかった頃……じいちゃんの家に遊びに行った時に……

 

「あっ、思い出した。蛇の皮だ」

 

 ようやく思い出せた。小さい頃、じいちゃんの家の庭で見つけた蛇の皮にそっくりなんだ、サイズは全然違うけど。……でも、待てよ。こんなデカい皮があるってことはそれだけデカい蛇も居るってことだよな? 

 

「……早く森から出た方がいいな」

 

 こんなデカい蛇がいる森になんかいられるか! 森の外に出させもらう! ……とは言わない、フラグだからな

 

「ん~ッ!」

 

 この皮、引っ張ってみると結構頑丈だった。これだけ頑丈なら色々と使えそうだ。

 

 俺は皮を持って川辺に戻ると皮を岩の上に置く。そして、近くにあった尖った石を皮に擦り付け、ちょうど良い大きさに切る。

 そして、切った皮を胸と腰に巻いて、サラシとスカートにする。……これで、痴女から卒業だ。

 

 さて次は……水と食料だな。

 水は川の水を飲むとして……食料は……あっ、魚が跳ねた。それも結構でかそうだ。

 魚をとるための道具を作れれば食料も何とかなりそうだな。

 

 よし、そうと決まれば早速、道具作りだ。まずは、太めの枝と尖った石を蛇皮の切れ端で縛って……よし、これで石の斧の完成だ。いやぁ、する気もないくせにアウトドアの動画見てた甲斐があったぜ。

 

「せい……! せい……!」

 

 早速出来上がった石の斧を細めの木に使ってみると初めて作った割には良い感じだ、五分もしない内に木が切れる。

 次は切った木を加工する。……といっても、先端尖らせるだけだけどな。

 さすがに尖ってるだけの石だと木を削りにくいので打製石器でナイフっぽい物を作る。

 作ると簡単に言ったものの、これがなかなか難しい。ちょっと力加減を間違えると割れてしまうからだ。

 五回目の挑戦でようやく納得のいくものが出来た。上を見上げれば、もうすっかり日も傾いている。早くしない日が暮れるな。

 

「出来たぁ……」

 

 作った石のナイフで気の先端を削って槍っぽくする。これで魚を突く訳だ。

 出来た槍を持って川に入る。さて、うまくいけば良いが……

 

「…………」

 

 腰までの深さまで入り、じっと待つ。

 

 5分、10分、15分……ひたすら待つ。

 

「ッ!」

 

 そして、魚が間合いに入ってきたところで槍を思いっきり投げる。

 

 槍が川の底に突き刺さる。

 

 

 急いで槍のもとへ向かう、頼む、当たっていてくれ……! 

 

「よかったぁ……」

 

 槍の先端を見てみれば、30センチほどの魚が刺さっていた。ほっと胸を撫で下ろす。

 川から上がり、さっき作業をしていた場所に戻る。そして、魚を平べったい石の上に置くと石のナイフで鱗をとる。鱗を取ったら、腹を切って、腸を取り出す。

 後は、枝を突き刺して串焼きに……あっ、しまった。

 

「火、忘れた……」

 

 やってしまった。魚をとれたことが嬉しくて完全に忘れていた。早く火をつけないと……

 急いで、森のなかに入り、乾いた木の枝を片っ端からかき集める。そして、大きめの木の上に出来るだけまっすぐの枝を垂直に立てて、両手で挟んでひたすら擦る。いわゆる、切りもみ式発火法だ。

 アウトドアの動画で何度も見たからやり方はわかるが実際にやるのは初めてだ。

 

「────────ッ!!」

 

 擦る。擦る。ひたすら擦る。

 開始、数分で腕が疲れてくるが火がつかなかったら魚が食えないし、夜行性の獣に襲われるかもしれない。

 だから、なにがなんでも火をつけないといけない。

 

「ッ!」

 

 無我夢中で擦っていると煙が少し出てきた。もう少しだ、頑張れ俺! 

 さらにペースをあげ、擦りまくる。

 そして、ついに小さな火がついた。

 

 

 

 今だッ! 

 

 火が消えない内に枯れ草を乗せ、ゆっくりと息を吹き掛ける。

 すると、枯れ草に火が移り燃え始める。急いで用意した。薪のところに種火を移す。

 種火の火が薪に燃え移り、どんどん火力が増していく。

 良かった、なんとか火が暮れる前に火がつけれた、これで今晩は安全……だろう。

 薪をさらに足して、焚き火のそばに枝を刺した魚を置いて串焼きにする。

 

 

 十数分後、頃合いになったので魚を火から離す。

 串を持って匂いを嗅いでみるとなかなか香ばしい匂いがした。

 

「はふ、はふ……!」

 

 腹が減っていたのでかぶりついてしまい、火傷しそうになる。味は……まぁ、不味くはないが、物足りない。塩が欲しい。

 そんなことを思いながら黙々と魚を食べ、完食する。

 

「……眠くなってきたな」

 

 体が子供だからだろうか? 食べてすぐに眠くなってきた。

 俺は火が消えないよう追加の薪を火の中に入れ、横になる。……地面が固いな

 

 目を閉じて、今日の事を振り返ってみる……今日は色々ありすぎだな。

いきなり死ぬわ、ケモっ娘にTS転生するわ、サバイバルしなくちゃならんわ……転生初日から忙しすぎた。

 多分、明日もやることが多いだろうな…………楽しみだ

 




近日、更新。

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