TS狐っ娘獣人異世界冒険(仮題)   作:きし川

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主人公の体について


九尾の霊獣

 単刀直入に言おう。

 

 

 

 

 

 

 俺は()()()()()()()

 正確には死んだことになってない。

 

 は? と思うかもしれないが、事実だ。

 あの疑似ポル○レフ体験から一週間、試した結果そうだったんだよ。

 

 自分の体に重石をつけて、湖に飛び込み溺死した。

 火岸花(ひがんばな)と言われる燃えやすい植物から絞り出した燃料を体に塗り、火をつけて焼死した。

 電晶(でんしょう)という強い衝撃を加えると強い電流を発生させる石を使って感電死した。

 オオグイカヅラといわれる肉食植物に溶かされ死んだ。

 

 他にも蔦で首をつったり、木から飛び降りたりととにかく色々な方法で自殺を試みた。

 

 

 けれど、結果はすべて失敗。

 そして、あの時のように俺は診療所の前にいた。

 

 

 なぜ、こんな不可思議な現象が起きるんだろうか? 

 この体が原因なのか。それとも、俺の感知できない存在によって起こされているのか。まるでわからない。

 

 さらに、自殺した現場にもう一回足を運んでみると自分の遺体がなかった。

 いや、正確には消えたというべきか、何回目か検証で首吊り自殺した場所に行ったら、首を吊るのに使った蔦が木の枝からぶらぶらとぶら下がってた。

 かなり高いところで首を吊ったので動物か何かが俺の死体を持っていった可能性は低いだろう。

 

 とりあえず現時点でわかることは2つ。

 

 ・いかなる要因であっても死なない。あるいは生き返っている。

 ・死んだ後、遺体は消失している。(確証はない)

 

 これ以上のことは今はわからない。また機会があったら調べてみようと思う。

 

 

 

 

 さて、この体についてはここまでにしといて……

 

 せっかくこんな便()()()()な訳だし、存分に活用させてもらおう。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 というわけで、俺はまた東側の森にいる。

 装備はワンピースにポンチョを羽織り、革の手袋を嵌めた。前回と同じ格好だ。

 

「ふー……寒い……」

 

 寒さに体を震わせながら森へと進む。

 実はこの体について何か分からないかとヤブさんの書斎の本を全部読み漁ってたが、この森について関係がありそうな事が書いてある本があった。

 

 “世界奇樹怪樹図鑑”という本で世界中の変な木を載せている本だ。

 その中にある“吸熱樹”という木がある。この木は通常の植物と違い、水、空気、光を吸収せず、周囲の熱を吸収して成長する特殊な木。

 見た目はどこにでもあるような針葉樹。前世の世界でいえばモミの木に近い。

 葉は落ちることはなく、常に緑色で変わることはない。常緑針葉樹というやつらしい。

 

 そして、周りに生えている木を見ると本に書いてあった吸熱樹の特徴と合うところがある。

 なのでこの木が吸熱樹なのはほぼ間違いない。

 

 つまりこの森に入った瞬間、気温が下がるのは吸熱樹が空気の熱を奪っているからだ。

 さらに奥へ行くほど気温が下がるのも吸熱樹がお互いの熱を奪い合ってる事により起こっている現象だ。

 

 このまま進んでいけば今まで経験したことがないような極寒の環境になっている事だろう。

 本来であれば、完全装備かつ十分な備蓄を持って行かなければならないが、俺は凍死してもノーカンなのでこんな軽装備でも問題ない。

 ……もっと体を大事にしろだって? 死んだら何事もなかったかのように復活するから大丈夫。それに、一度は死んだ身だ。本当に死んでしまっても構わんさ。

 

「……だ、だいぶ……奥に、来たかな?」

 

 森に入ってから体感で20分程経っただろうか? 

 前回来た時よりも奥へと進んだと思う。

 

 もう寒すぎて耳とか尻尾、手足の指先の感覚がないし、睫毛とか凍ってる。

 正直、横になりたい気分だが、もう少し奥にいってから死にたい。

 

「はぁ、ひゅ……お?」

 

 呼吸する度にはしる肺の痛みを堪えながらさらに奥へと進むと少し開けた場所に出た。

 同時に強烈に冷えていた空気が少し暖かい春先のようなものに変わった。

 

「……あつい」

 

 温度差からか急に体が暑く感じたのでポンチョを脱ぐ。

 

「……枯れてる?」

 

 この辺りの吸熱樹は何故か葉を全て落とし、朽ち木のようになっていた。

 恐る恐る触れてみても、体の熱を奪われることはなかった。完全に朽ちているようだ。

 

 ……なぜ枯れているんだろうか? ここは暖かく、栄養となる熱があるのに……?」

 

 

 

 

「不思議かい? この木が枯れていることが?」

「え? ───うわっ!?」

 

 枯れた吸熱樹を観察していると後ろから声をかけられた。後ろを振り返ると黒いローブを着たやや猫背気味の婆さんが笑いながら立っていた。

 

 俺はその婆さんを見た瞬間、驚きのあまり飛び退いて距離をとった。まさか、人が居るとは思わなかった。

 

「……なんだい、人の顔を見てそんなに驚く事ないだろう……そんなにアタシが不気味かい?」

 

 婆さんはムスっとしながらそう言った。どうやら、機嫌を悪くさせてしまったらしい。

 まぁ、確かにさっきの反応は些か失礼だったかもしれない。謝罪しなくては

 

「すみません。まさか人が居るとは思わなかったのでつい驚いてしまいました。気分を害したのならお詫びします」

「……ほう? 若いわりには随分しっかりしてるじゃないか。お前さん、本当に子供かえ?」

 

 ……この婆さん、結構鋭いじゃないか。ヤブさんでさえそこまで指摘してこなかったぞ。どうしようか、別にバレてもいいが、この得体の知れない婆さんに教えていいものか迷う。

 

「……その、両親が言葉遣いとかに厳しい人だったので……」

 

 というわけで誤魔化す。すまんな、婆さん。

 

「……ふーん、そうかい。ならそういうことにしとくよ」

 

 婆さんは疑うような目で俺を見ながら言った。

 ……誤魔化しきれてないじゃないか、俺演技下手だなぁ

 

「それより、その木がなぜ枯れているか知りたいかい?」

「……え? なんで、その事を……?」

 

 まさか、この婆さん人の心が読めるのか……!? まずい……! これでは、嘘がバレる……! 

 

「……なんでそんなに戦慄しているのか知らないけど、声に出てたよ、お前さん」

「え? そうなんですか?」

「ああ、『なんで枯れているか?』『栄養となる熱があるのに?』とブツブツ呟いていたよ」

 

 ……うーわ、これは恥ずかしい。考察するあまり思わず口に出していたなんて……前世の世界なら気持ち悪くみられるな。

 自分の冒した失態を思い浮かべ顔がカァーと熱くなる。

 

「ははは、そんなに顔を赤くして今度は随分可愛らしいじゃないか」

「う……ゴホン、……話を戻しましょう、お婆さんはこの木がなんで枯れているか知っているんですか?」

「オーマだ」

「はい?」

「アタシの名はオーマだよ。今度アタシの事をお婆さんなんて言ったら吸熱樹に縛り付けてやるからね」

 

 急に話を遮ったかと思えば……往生際が悪いぜ婆さん。いい加減認めようよ、アンタは老いたんだ。現実を見ようぜ……

 

「……お前さん、なんか失礼なこと考えてないかい?」

「いえそんなことないです」

「……そうかい」

 

 やっぱり、この婆さん心が読めるんじゃないだろうな……? 

 

「さて、それでここの木がなんで枯れているかだったね? 簡単の話さ、生きるのに必要な栄養()を吸収出来なかったのさ」

「え? でも、ここ全然暖かいですよ?」

()()()、……数十年前は、ここの吸熱樹も外側の吸熱樹と同じように熱を吸っていたんだが、ここは密集しすぎていてね。生きるために必要な熱が足りなくなってしまったのさ。だから、次第に吸熱樹が弱っていき森の中心に近い吸熱樹から順に枯れていったのさ」

 

 ……なるほど、そういうことだったのか。外側の吸熱樹は森の外から流れてくる暖かい空気のおかげで安定して熱を吸収できるが中心に近い吸熱樹は上から注がれる太陽の熱ぐらいしかないから取り合いになるから枯れたのか。

 やっぱ、生きるために競争しなくちゃいけないのはどこの世界も一緒なんだな……

 

「物知りなんですね、おば……オーマさん」

「……今のはセーフにしといてあげよう。……まぁね、これでも昔は“賢者”なんて呼ばれてたからね。何でも知ってるよ」

 

 へぇ~この婆さん、元賢者なのか……賢者がこの異世界じゃどういう扱いなのか知らないけど、スゴいんだろうな……

 ……待てよ? 今、婆さん“何でも知ってるよ”って言ったよな? 

 ってことは、婆さんにこの体の不思議な体質の事を聞けばわかるかもしれない。

 

「あのオーマさん、ちょっと聞きたいことがあるんですけど……」

「なんだい?」

「実は───」

 

 俺は婆さんに自分の体について話した。すると、婆さんは顎を擦りながら難しい顔をした。

 

「死なないねぇ……死なないだけならアンデットやらヴァンパイアやら居るが、死んだ後に別の場所に現れるか……うーむ」

「やっぱり分かりませんか?」

「いや、ちょっと待ってくれ……」

 

 そう言うと婆さんはローブの中に手を入れてガサガサと紙の擦れるような音をたてながら何かを探し始めた。

 ……この婆さん懐に何入れてんだ? 

 

「あったあった、これだ」

 

 そう言って婆さんは懐から一枚の紙……本のページのような物を取り出した。

 そして、婆さんはその紙に綴られた文章を読み上げ始めた。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 昔々、とある国に「金色の王」と呼ばれる王様がいました。

 

 王様の容姿は誰が見ても美しいと言ってしまうほど素晴らしいものでした。

 

 特に陽の光を浴び、本物の黄金のように輝く金髪にエメラルドのように綺麗な碧眼は見る人全てを魅了しました。

 

 王様の魅力は人の範疇に留まらず、人ではないモノにも及びました。

 

 王様の居るお城からそう遠くない森には白い狐の獣人がいました。

 

 その獣人は普通の獣人とは違いました。

 

 その獣人の尻尾は九本ありました。

 

 その為、その獣人は他の獣人から仲間と思われず、いつも仲間はずれにされていました。

 

 ある日、九尾の獣人が森の中を歩いていると木々の隙間から人が居るのが見えました。

 

 獣人達の間では人は恐ろしい生き物だと言われており、近づいてはならないと言われていましたが、九尾の獣人は人に興味を抱き、木の陰から人を観察しました。

 

 そこにいたのはその国の王様でした。

 

 九尾の獣人は王様のその美しい容姿に一目惚れしてしまいました。

 

 そして、いつの間にか九尾の獣人は木の陰から歩き出して王様に声をかけました。

 

 王様は突然現れた九尾の獣人に驚きましたが、邪険にはせず、優しく笑みを浮かべ会話をしました。

 

 九尾の獣人はずっと仲間はずれにされ、孤独だったので王様との会話はとてもとても楽しいものでした。

 

 王様も九尾の獣人から聞く話はどれも彼にとっては新鮮で面白いものばかりだったのでとてもとても楽しみました。

 

 その日から、王様と九尾の獣人の交流が始まりました。

 

 王様は皆の目を盗んで、こっそりと会いに来るようになり、九尾の獣人も毎日のように王様と出会った場所で王様を待つようになりました。

 

 そんな日々を送っていくにつれ、二人の距離はどんどん縮まっていきました。

 

 そして、綺麗な満月が輝く夜に───二人は身を重ねました。

 

 毎日毎日、身を重ねました。

 

 やがて、九尾の獣人は気づきました。

 

 自分の中に新しい命が宿っていることに……

 

 九尾の獣人はとてもとても喜びました。そして、王様にこの事を伝えようと思いました。

 

 きっと喜んでくれるはずだと思っていました。

 

 九尾の獣人は会いに来た王様にその事を伝えました。

 

 すると、王様は言いました。

 

 ───もう会えない。と

 

 九尾の獣人はその言葉の意味がわからず何度も王様に聞きました。

 

 けれど、王様は何も答えませんでした。

 

 そして、王様はその場を去りました。引き止める九尾の獣人には目もくれず……

 

 その日から、王様が九尾の獣人に会いに来ることはなくなりました。

 

 そして、九尾の獣人は気づきました。

 

 ───自分は見捨てられたのだ。と

 

 三日三晩、九尾の獣人は泣きました。

 

 泣いて、泣いて、泣いて……泣き続けました。

 

 そして、涙が枯れると九尾の獣人の心に怒りが込み上げてきました。

 

 ───許さない

 

 ───呪ってやる

 

 ───殺してやる

 

 次々と心の底から王様に対する呪詛が湧き出ました。

 

 けれど、九尾の獣人は一言も湧き上がる呪詛の言葉を口から出すことはありませんでした。

 

 言ってしまえば、止まれなくなる。と思ったからです。

 

 九尾の獣人は耐えました。ただひたすらに耐えました。

 

 全ては初めて恋をした、愛し愛してくれた、あの王様のために……

 

 ────けれど、耐えられませんでした。

 

 お腹がぷっくらと大きくなった頃、九尾の獣人は森の近くの崖の上にいました。

 

 九尾の獣人は座り込み、泣きながらお腹をなで、宿った小さな命に謝りました。

 

 ───あなたを、産むことが出来ない。

 

 ───あなたを、産むまで耐えられない。

 

 ───こんなダメなお母さんでごめんね。

 

 1日中謝り続け、九尾の獣人は───

 

 崖から飛び降り、命を絶ちました。

 

 絶ったはずでした。

 

 九尾の獣人は王様と出会ったあの場所で再び目を覚ましました。

 

 九尾の獣人は困惑しました。

 

 なぜ死んでいないのかと

 

 そこで、九尾の獣人は森の奥にある湖に向かいました。

 

 そこには物知りな湖の精霊が居たからです。

 

 そして、九尾の獣人は知りました。

 

 自分は常世の理から外れた存在“霊獣”と呼ばれる存在だと

 

 九尾の獣人は絶望しました。

 

 自分はこの今にも溢れそうな憎しみや怒りを抱えて生きていかなければならないのだと思ったからです。

 

 すると、湖の精霊は言いました。

 

 ───吐き出しなよ。と

 

 ───とてもとても楽になるよ。と

 

 けれど、九尾の獣人は拒みました。

 

 九尾の獣人は湖を去りました。

 

 そして、宛もなく森の中を泣きながら歩き続けました。

 

 すると、たまたま通りかかった人の男に声をかけられました。

 

 ───なぜ、泣いているのか? と

 

 すると、九尾の獣人は全てを話しました。

 

 話聞いた人の男は頷くとこう言いました。

 

 ───私ならなんとかできるかもしれない。と

 

 その人の男は魔法使いでした。

 

 九尾の獣人はその魔法使いの言葉を聞き、何度も頼みました。

 

 ───助けてください。と

 

 魔法使いは頷くと九尾の獣人に魔法をかけ、綺麗な水晶へ変えると四つに分けて、世界のどこかへばらまきました。

 

 こうして、心優しい哀れな九尾の獣人は救われたのでした。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 …………え? 終わり? 今ので終わり? 待て待て待て、おいいくらなんでも悲しすぎるだろ。

 何が“救われました。”だよ、なんも救われてねぇじゃねぇか! 

 大体なんだ、この王様とかいう奴! 子供作っといて女捨てるとかクソ野郎じゃねぇか! ちゃんと責任とれよ! 

 

「……とまぁ、お前さんの話を聞いて思い出したのがこの話だったんだが……どうかしたかい?」

「……その、話に出てきた王様という方に腹が立ちました」

「ああ、なるほど、確かにこの王様は度し難い奴だが……気にするのはそこじゃないだろう?」

 

 そうだ、婆さんの言うとおりだ。

 俺はこの体について聞きたかったんだ、こんなクソ野郎の事なんざどうでもいい。

 さて、今の話の中で俺に関係ありそうなのは……

 

「……霊獣?」

「その通り。お前さんの言った生き返りに近い現象はこの話に出てくる“九尾の霊獣”に身に起きた現象と酷似している。よって、お前さんが九尾の霊獣と同じ存在“霊獣”の可能性は高い」

「……霊獣って一体、なんなんですか?」

「常世の理から外れた存在……ぐらいしか分からんね。なんせ、霊獣の事を書いてある資料なんてこれぐらいしかないからね」

「……何でも知っているんじゃないんですか?」

()()を知っているとは言ってない」

 

 この婆さん、ほんと往生際が悪いな。知らないなら知らないって認めろよ。

 ……ただまぁ、この体について少しは知れたしそこは感謝しないとな。

 

「そういえば、一つ聞きたいんだが、お前さんのその毛の色は地毛かい?」

「え? はい、そうですけど……それがなにか?」

 

 いきなり何を言い出すかと思えば……毛の色なんだってんだ? 

 

「そうかいそうかい。これで、もう一つの仮説も信憑性が高くなってきたね」

「もう一つの仮説?」

 

 婆さんはクックックッ……と笑いながら俺を指差し言った。

 

「お前さんがこの話の中で九尾の霊獣が孕んだ子供って説さね」

 

 俺が……九尾の霊獣の子供? そんなバカな。この話、何時の時代の話か分からないけど、かなり昔の話なんだろう? そんな話に出てくる子供が俺のわけないだろ。

 

「なんでそう思ったんですか?」

「そりゃ、お前さんが金髪だからさ」

 

 ……え? それだけ? たったそれだけの事で子供認定? どういうこっちゃ? 

 

「なんで金髪というだけでその子供だと思うんですか? 金髪なんてどこにでもいるでしょうに」

「おや? 知らないのかい? この世界で()()()()()()()しかいないのさ」

 

 ……な、なんだってー!? 

 嘘だろ? 金髪つったら、異世界転生物じゃ腐るほど居るもんだろ? それなのに王族しか居ないってどういうことだ……

 と、思ったが今思えば、これは前世の世界での知識から来る偏見だ。

 これはいけない。

 こんなことではこの世界で生きていくのが難しくなる。気を付けなければ。

 

「正確にいえば、ここから山脈を越えた先にあるウヌス王国の王族だけだね。金髪なのは……そして、この話に出てくる王様も金髪だ。だから、お前さんが王様と九尾の霊獣の子供だろうと思ったのさ」

「……なんか嫌ですね、その言い方」

 

 おい、せっかく忘れようと思ってたクソ野郎を思い出させるな。

 嫌だぞ俺は、こんなクソ野郎が父親なんて俺は絶対嫌だからな! 

 

「諦めな、子供は親を選べない。……さて、随分長く話してしまったねぇ、すっかり日が傾いてるよ」

「……あ、本当だ」

 

 空を見上げるとほんのり空が赤く染まりつつあった。

 ……そろそろ帰った方がいいかもしれない。診療所からここまでかなり歩いたから日が暮れるかも

 

「……すいません、オーマさん。私はこれで帰ります。ありがとうございました」

「そうかい。……ところでお前さんはどこに住んでいるんだい?」

「ヤブさんの診療所です」

「ヤブ……? ああ、あの触手の……」

 

 ……触手? ヤブさんに触手要素なんてあったか? 

 婆さんの言葉に首を傾げていると、婆さんはニヤリと笑った。

 

「お前さん、もう少しだけこのオーマの話を聞きたくないかい?」

「え? いえ、もう帰らないと暗くなっちゃいま───」

「お前さんがヤブと呼んでいる存在について聞きたくないかい?」

 

 婆さんは俺の言葉を遮って、懐から本のページのような紙を取り出し、そう言った。




近日、更新。

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