時系列とかは関係ありませんからね。やりたい放題です。
切ちゃんがいないのは残念だけど。
それでは第5話、どうぞ。
追記
作者が半分寝ながら執筆してたそうで、誤字が酷かったのです。修正しておきましたが、もし見つかればお願いします。
だそうです。
私がここに来て、何週間かが経過した。どうやら私は受け入れて貰えたらしく、イザークさんの義理の娘として、『キョウカ・マールス・ディーンハイム』を名乗ることにした。
ここに来た初めの頃は、イザークさんの助手をするキャロル…の、助手として色んなことを手伝っていた。キャロルちゃんはしっかり者だし、なんでもできるけど身体は一つしかない。基本は見ているだけ。どうしても人数が必要な作業は私が手伝う、そんな日々が続いていたけれど…
「キョウカ姉、私はね。」
「うん。」
「おやつ食べててって言ったよね。」
「うん。」
「
「そこの本読んだら出来た。」
「なんでぇ!?」
キャロルちゃんが夕食を作っている間、その辺に置いてあった錬金術の本を読んでいたら、
初めにそれを見たキャロルちゃんの反応は、この通り。自分でもここまで上手く出来ないのにと頭を抱えてうんうん唸っている。いや、確かに見た目は派手だけどさ。これ温度変えて燃やすだけだから。凄く簡単だから。なんなら3ページ目ぐらいに書いてたから。
「ぐ、ぐぬぬ…私だって!」
「キャロルちゃん、危な」
「あ」
私に対抗して風と水の錬金術を使うキャロルちゃん。たぶん四大元素全てが使えるということを証明したかったんだろうけど…室内でそれは良くないと思うんだよね私ぃ!
案の定、風に煽られた水は勢いよく室内に飛び散った。大惨事だ。幸い濡れて困るもの─錬金術の本とか─は私が抱えたから何ともなかったけど、室内はびしょ濡れだ。
「キャロル?さっき凄い音がしたけど…」
「「あっ」」
その時、イザークさんがやってきた。彼は室内を見回して状況を把握。ある一点を眺めたままフリーズ。しばらくして再起動した彼は、ぎぎぎ、と音を立てんばかりにキャロルの方を見て、にっこりと笑った。
「やぁ、キャロル。」
「…はい」
「洗濯、ありがとうね。」
「…はい」
「キョウカ、少しこの子を借りていくよ。」
「はーい。」
ずるずると引きずられていく私の
ぎゃああああ…とフェードアウトしていくキャロルちゃんの悲鳴。許せ、私に彼を止める術は無いのよ。あなたはゆっくりしっかり怒られて。そして己の行いを後悔しなさい。
そんな他人事丸出しの(実際私は何もしていない)感想を抱いた私は、ふと思い立って外に出る。途中で聞こえた悲鳴?無視だ無視。
山中に建てられた質素な一軒家。ここがディーンハイムの家だ。私が来てから新しく作ったもの。私が。
『なんで私だけ…肉体労働…』
『いや、錬金術使えないでしょ』
『ありがとうねキョウカちゃん…』
キレて途中からギアを使った私は悪くない。
「…火傷してないよね。」
先程炎を浮かべた右手をしげしげと眺める。火傷どころか煤の欠片も付いていない。そういえば熱さも感じなかったな、と思い私は再び火を灯す。
最初に灯した状態から、ゆっくりと温度を上げていく。イメージするのはエネルギーが手に集まる感覚。すると炎は、その色を赤から青へと変化させる。
「これ、若干浮いてるんだね。」
掌の上の炎は、私の体からほんの少しだけ離れた場所で燃え盛っていた。これ、一体どういう原理なんだろうか。まぁ考えるのはやめておこうかな。錬金術の本だって、内容は8割ぐらい理解できなかったし。
そこまで考えた時、私はこの炎の使い道をどうするか。そんな難問に行き当たった。火力調節はしやすいから…料理の時に便利だね。以上。
どうしよう何も使い道がない。私が錬金術を学んだ意味…なんだっけ。三角座りでるーるーと呟きながら私は空を見上げた。段々と空は赤くなり、辺りは暗くなってくる。
私は手頃な枝を拾って火を灯す。やった、使い道がまた見つかった。松明係。自分で考えて寂しくなったから枝を持ったまま、またしばらく三角座りでるーるー呟いていた。
『あぴゃあああああああああ!!』
「…そろそろ戻ってあげようかな。」
割とハッキリ聞こえる悲鳴に、私は渋々家に戻ることを決めた。一体何が行われているのか、私には想像もつかないけど。とぼとぼと歩く私。そんな私に、誰かが話しかけた…ような、気がした。
───────それで良い。響歌よ。
───────頑張れ。
周りを見ても誰もいないし、きっと空耳なんだろう。そう断じて私は、止めた足を再び動かす。
「燃えろ!」
「あー、やりすぎ。」
「火力調節してないね?」
「だって…だってえ…」
私たちは村を出た。村の人々の空気が、また悪くなってきたからだ。人はストレスを溜め込むと、その捌け口をどこかに
村人たちのフラストレーションを発散させるためにイザークさんが処刑されるなんて真っ平御免だし、それに私は『天使』だのなんだのと呼ばれていたが、最近では私への風当たりも冷たくなってきたし。
『…そんな訳で、村を出ましょう。旅に出ます。』
『『なんで?』』
突拍子もない私の提案に乗ってくれた2人には感謝しかない。持てるだけの資料をかき集め、必要最低限の器具だけを持って、私たちは夜中に村を出た。そこからは、寝る場所も安定しないまま旅を続けた。
ある時は、私の容姿が怪しいと言われて追い出された。
別の時は、元いた村と同じように異端認定されかかって命からがら逃げ出した。
またある時には、村を襲った盗賊を錬金術で撃退した時。村人たちが化け物を見るかのような目つきでこちらを睨んできたから、私たちは自ら村を出た。
『…キャロル?』
『どうして、キョウカが叩かれたのかな。』
石を投げられた時もあった。
『それはね、私の錬金術があの人たちには奇妙に見えたからなのかも、しれない。』
『…錬金術とは、世間に広まっている訳では無い。私たちが日常的に使っているそれも、彼らにとっては魔法のようなものだ。それこそ、
『…だから、石を投げたの?みんなのために、って。キョウカは…』
その理不尽さに、キャロルが泣いたこともあった。彼女を抱きしめるイザークさんを見て、私は複雑な気持ちになった。同情と羨望と嫉妬と…訳の分からない感情がごった混ぜになった、気味の悪い気持ち。何故だろう。
『キャロル、私の炎…食らってみたいの?』
『ふん!私の水で消してやる!』
喧嘩で錬金術を使うことも増えた。私が火の錬金術以外は不得意なのもあって、キャロルは水の錬金術しか使わない。確かに火は水で消えるけどさ…
あまりに高い温度の火は、水と反応して大爆発を起こすらしい。私とキャロルは学んだ。ガミガミとイザークさんに説教されながら、2人で顔を見合わせて笑った。
「で、キャロル。」
「…はい。」
「キョウカに言うことは?」
「…ごめんね?」
「いいよ。また買えばいいもん。」
今日は、私が謝られる番だ。キャロルが私のお気に入りの本をびしょびしょに濡らしたから。慌ててキャロルが水の錬金術で水分を抜き取って乾かしたとはいえ、その勢いでインクすら無くなってしまった。
「それも、そう?」
「違うだろうキャロル。そもそも風と水の錬金術を使おうとする事を改めるんだ。」
「…だって、それが1番派手じゃない!」
「何故そこで派手!?」
思わずツッコんだ私は悪くない。キャロルが、派手?彼女がそんな事を言うだなんて…驚いた。結局、その日は目的地に着くことなく野宿する羽目になった。
既に私は、昔のことを忘れてしまった。キャロルたちと出会う、その前を。その事をイザークさんに言うと、悲しそうな顔をしていた。何故だろうか。私は今の生活で満足しているのに。
ああ、そういえば私に新しい妹が出来た。サンジェルマン、そう名乗った彼女は、ある街で拾った奴隷の子だ。私たちが出会ったのは、雨の降る街だった。
『げほっ!』
『イザークさん、あれ。』
『…奴隷か。』
『パパ…』
『イザークさん…』
ある屋敷の門が開かれ、中からボロ切れのような服を着た少女が蹴り出されたのだ。長い銀髪はくすみ、やせ細った身体に残る傷跡が痛々しい。
その姿を見た時、私とキャロルは同時にイザークさんへ訴えていた。声が重なった時は驚いたよ。お互いがお互いに、全く同じことを言おうとしてたんだもん。
『…仕方ないなぁ。』
そう笑うと、イザークさんは少女を私たちに預けて屋敷へと去っていった。しばらくの間、中から爆破音とか破壊音とかが聞こえてきてたけど、私とキャロルはそれぞれ少女の目と耳を塞いでいた。
その後、色んな音が収まってから。イザークさんはニコニコしながら屋敷から出てきた。その時に服に付いていた赤いシミとかは気にしないことにする。後で洗おう。
『その子の権利を貰ってきた。これからは、私たちが、君の家族だ。』
『え、どうやって!?』
『聞きたいのかいキャロル?』
『『結構です。』』
ろくでもない方法なのだろう。私とキャロルが揃って首を横に振ると、少女も同じように首を振った。
顔を見合わせて笑う。きっとこの子は、悪い子ではない。根拠はどこにもないけれど、そんな感覚があった。
「…姉さん。何をしているの。」
「ああ、新たな家族を創ろうとしている。」
「それが?ただの人形じゃない。」
イザークさんが街へ買い出しに行っている間に、私は土と火の錬金術で簡単な小屋を作る。長い旅の中で生み出した、即席の小屋だ。
そんな小屋の中でキャロルは一心不乱に何かを書き留めていた。羽根ペンを走らせ、湯水のように紙を使う。もしかすると、この一行の中で最もお金を使っているのはキャロルじゃなかろうか。
「姉さん。聞こえているの?姉さん!」
「ええい、やかましい!」
「女の子がそんな言葉使わないの。」
最近、キャロルが妙に男のような口調で話している。似合わないと言って笑うと、少し頬を染めながら彼女は言った。
『この口調ならば、私を舐める者もいないだろう。』
これで姉さんを守ることが出来るのだ─そう言って笑ったキャロルは、やっぱり私にとって最愛の妹だ。最近背が伸び始めてきたけど、まだまだ成長途中。胸ばかり育ちおってからに…ぐぬぬ。
恨めしげにキャロルの胸を眺めていると、サンジェルマンが急に立ち上がった。キリッとした顔つきの彼女がそういう表情をすると、絵になっている。
「知らんわ!それよりなんだ!」
「いや、イザークさん帰ってきたよって…」
「本当か!パパァァァ!」
一瞬で走り去ってしまった。残されたのは組み立て途中の人形。機械仕掛けのそれは、枕元に置かれた丁寧に畳んだ青いドレスを身につけるのだろう。
「…サンジェ、私さ。」
「なぁに姉さん。」
「キャロル止めてくる。」
「
「そうね。仕方ないわよ。だから行くわ。」
新しい妹を加え、父と妹と過ごす日々。私はこの日常が好きだ。なぜなら、私が私でいられているように思えるから。
「おかえり!パパ!」
「ただいまキャロル…わぁ!?」
「やーめなさい。」
ぐい、と首根っこを掴んで引っ張ると、息が苦しくなったのかキャロルがあばれはじめた。自業自得だ。
名残惜しそうに両手を伸ばすキャロル。あなたにはこれから晩御飯の用意という壁が立ちはだかってるのよ。
「ぬぁー!やってやる!!」
「姉さん、落ち着いて。」
今日もディーンハイムは元気です。
祝!出演!
見たか我の勇姿を!
…ごほん。次回。「白服の男」
作者はテンション上がっているそうだぞ。この調子で感想や評価をくれるとありがたいな。