一騒動を経てロー達は子供達を置いていくか置いていかないという台に乗っかる。
勿論リーシャだけだったならば苦々しくも置いていく一択。
しかし、彼等はその能力も技量もある。
子供達を抱えたまま脱出も可能だろう。
彼等が白というのなら白だ!
つまり、子供達を連れて行くというのならば小さいことしか出来ないが手伝いたい。
ルフィにはその行動をする程の器も感じるし人を引き付けるという感覚は何とも心地良い。
「はぁ、分かった」
ローが同盟についてウソップに指摘され唖然とした後、諦めた声音で了承、否、妥協。
リーシャも同盟については利害の一致という知識しかないのでルフィの態度がなんの問題も無いように思える。
まあ、ローからすれば、世間から見ればルフィの同盟の受け取り方は有り得ないのだろうけれど。
しかし、今の己は麦藁のイエスマン。
ハートの輩のフォロー等しない。
此処に彼等が居ても麦藁を説得する事は不可能だ。
味方はゼロのローに内心良い気味だと思った。
今の状況はリーシャがかつてローを待つ為だけに居させられた屋敷の状況に少し似ている。
味方も無し、試みられず一人で居たあの時間。
思い出す度に仄暗い気持ちにさせられるのはもう一人の今世の自分が尾を引いている故。
全く、メンタルが弱いんだから。
貴族の箱入り令嬢なら当然逆行に弱いのは当たり前なのかもしれんが。
前世にお任せあれ状態なのだから何も感じる必要も苦労もしない。
勝手にやらせてもらいます。
ローにルフィ達が動けないチョッパーを頭上に括り付けている最中で、出来上がったとばかりに皆笑い出す。
それに彼はプルプルとなっていて私は笑みよりも憐れみを感じた。
あの、ローがこんなのになってしまったのだ。
ルフィ達によって。
あんなにハートの中ではトップらしいもの見せていて頼もしいと慕われている彼が今やその威力を失っている。
輝きがくすんで見えるのも間違いではなさそうだ。
生暖か~い眼で済ませてローを見送る。
自分はロビン達に付いて行く事にする、のだが、苦しい思いをするのだから今から憂鬱だ。
はぁ、溜息。
鬱に苛まれているとチョッパーを刀の紐に括り付け(許し難い仕業)立ち上がるとこちらを見て向かう。
さっさといけいけ。
犬を追い払う気持ちで見送ると周りも動き出す。
シーザーの誘拐だ。
皆、シーザーって嗚呼見えて強いんですよ?
なーんて口が裂けても云々、付いて行くだけの人形だ、なるんだ。
自身に言い聞かせて後ろを負う。
「よし、行くぞ!」
ナミ達と残れとルフィに言われたが痛い目に合う。
シーザーにエンカウントしたら棒で子供に殴られる、嫌だ。
痛いのは勘弁。
苦い顔をしてルフィ達に付いて行くと言う。
無理に願っているし足手纏いな実力なのは分かっているが、そっちに行かなくてどこに行けば良いのか。
困る、ヤバい、無理、無理ゲームだ。
難易度が高いパンクハザードなのだ、ヤダ、とひたすら痛い目に遭いたくないので懇願も力が入る。
お願いしますと頭を下げているとルフィが止めろと止めてくるので顔を上げる。
必死さ故か許可してくれた。
わ、嬉しいなあ。
「ありがとうございます」
礼を述べて付いて行く。
廊下を行くとどんどんスピードが上がる。
ローと離れる時、曲がり角でちらりと振り返ってみた。
まだ、彼はあの例の悪魔の実(?)の部屋には居かないから危険ではないが勝手に進めば行くことになる。
目が合った。
見ていないと思っていたから少し驚いた。
彼の目は確実にこちらを射抜いていて、何か言いたげだったけれど、それに目で応えることはない。
そもそも目で語り合える程シンパを感じていないし、通じ合えないので。
怒ってる?うーん、怒ってない?分からん、程度しか、見ても分からない。
船員達だってそもそも何もかも分かっているわけでは無さそうなのでリーシャが駄目な子ではないのは知っている。
麦藁達に付いていくのに集中する為に前へ進む。
皆に出遅れないように必死にそれだけを考える。
外に出ると覇気とやらでシーザーを見つけている中、ルフィがフワフワと膨らんでいく。
風船になって飛んでいこうとする。
どこに乗れば良いのかと悩んでいるとフランキーがガッシと掴んでくるので、甘んじた。
これなら安定性もあって掴まるところもある。
そのままシーザーに向かって直進していくと突撃。
シーザーに対して叫び声を上げていた。
シーザーとスモーカー達が驚く顔が見えて、そういえばこの人達も居たな、と思う。
彼らが驚いている間にローも建物を移動している事だろう。
そして、モネにまんまと騙されている事だ。
リーシャも直にシーザーにより酸素が無くなり失神する。
皆檻の中。
土の中ではないからまだマシだろう。
殺されずに実験台として扱われるのだから逃げる時間は出来るし。
皆がシーザーに攻撃する。
最初は不意を付かれたりしてシーザーはやられていたが、時期に反撃されていく。
ルフィもシーザーに近寄り過ぎて酸素が供給出来なくなり意識を失う。
ロビンが呼びかけるが遅し。
スモーカー達もリーシャも酸欠で意識を失う。
ああ、酸欠ってまるで眠るように感じる。
起きたらローと同じ檻になるか、モブに混じり外に捨て置かれるか。
海賊として認識されていないので捨て置かれる可能性も高い。
出来るのなら建物内が良いな、外は寒いし。
ぱちり、と意識を取り戻すと隣にローが見えて、やっぱりかと嘆息。
こういう時くらい隣にいさせないくらいの配慮をして欲しい。
周りを見ると皆既に起きていて例のスマイリー映像を見せられていた。
写る悲劇はおいて置いて、今はその後、どう行動するかに掛かっていた。
「うう、出遅れた」
「あ、起きたか!」
ルフィがこの場に似合わない声音で話しかけてきた。
話し掛けられた、キュン。
「お役に立てず無念です」
俯いてルフィに詫びると応えたのはルフィでなくモネ。
貴方ローの妻なのね、と言われてハテ?と首を傾げる。
「誰かと間違えてますよ?私はこの人とはあまり話した事もありませんから」
半年以上話さない人とは親しい仲にはならない。
どちらかといえば知人に戻る。
少なくとも私はそう思っているからそうなるのだ。