ホロライブ・オルタナティブ~5期生の風~   作:ジェス

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■本編:ホロライブ・オルタナティブ~5期生の風~
ギャング国家ベルサーナとノースフラワート連合国家での第一次幻視大戦後のエレノフ条約による停戦中の物語。
桃鈴ねねの旅立ちから第二次幻視大戦開始~終結まで。
伝説のギルド:ホロライブのメンバーが活躍した20年後の娘世代のお話で、世界を旅してホロライブのメンバーと関わり合いながら進む予定。
厄災大戦時にホロライブメンバーに降り掛かった呪い(オルタ)を解呪する方法を探して旅をする。
零 -ZERO-から8年後。

設定はwiki風設定参照。
プロローグは本編開始17年前の一幕。
第一話は桃鈴ねねの旅立ち。


プロローグ-始まりの盃-と第一話-旅立ちの時-

プロローグ-始まりの盃-

~17年前のギャング国家ベルサーナ~

-首都ラインベル戌神本家-

 

「改めて確認だ、獅白には長女ぼたん、雪花には次女ラミィの養子縁組及び目録の内容の支援を行う。アタシが提案するこれに対して御三家の遺恨は全て水に流し、力を合わせてベルサーナの均衡を保ち、御三家の力の元に発展させる。後は両家がこの盃受けるか受けないかだけさね。」

上座に座った暴の戌神家当主、戌神ころねは威圧的な口調で二人に向けて言い放つ。

「こちらとしてはそこまでの歩み寄り、戌神家の力が絶大な今、主導こそ戌神とはいえ同格での盃は願ったり叶ったりですが本当に宜しいのですか?」

メガネをかけた長身の男、財の雪花家当主が疑問を発する。

「だからこそ、後継者となる実子がいないアンタ達にこのタイミングで養子の話を切り出したんだ、アタシもベルサーナから出られない身だからね、この国を護るにはアタシの力だけじゃ限界がある。御三家の力を保つ為に必要な権はある。後は威を取り戻すだけだよ。」

「あやつのいない戌神だけじゃ難しいという事か・・・しかし本当にどう扱っても構わんのじゃな?」

初老の白髪の男、義の獅白家当主も確認を行う。

 

「・・・人質と思ってくれて構わないよ。」

少しの間の後冷徹に言い放つ。

(ころねは親として最低かもしれない、呪いが遠因だとしても故郷の人々を護る為、そして二人の思い出が詰まったおかゆが帰る場所を護る為、そんな理由で娘を犠牲にするころねをおかゆは許してくれるだろうか・・・?きっとおかゆなら笑って許してくれるだろう。)

 

既に答えは決まっていた二人もその覚悟に惑うが少しの間の後。

「この盃しかと受け申す」

「この盃しかと受けさせて頂きます」

両当主が静かに頭を下げ盃を掲げる。

ころねが盃に注いだ酒を二人が飲み、返礼の酒を注ぎころねもそれを飲み交わした。

この盃を交わした事を境に御三家を中心とし国をまとめあげ、ベルサーナは急激な発展を遂げていく。

そしてこれが娘達の運命を劇的に変えていく事となる。

 

 

第一話-旅立ちの時-

~2038年ギャング国家ベルサーナ~

-首都ラインベル戌神本家道場-

 

「はぁっ!やぁっ!でぇやぁっ!」

綺麗な金色に髪先に桃色の混じった長髪、そしてまとめた二つのお団子髪がチャームポイントな道着を着た女の子は、道場の木人に向かって真剣な表情で一心不乱に拳を突きつけ、その声が木霊する。

「もー、ねねちゃんいつまでやるのー?」

透き通るような水色に三編みの混じる長髪の女の子は指先で氷柱を作り、クルクルと回しながらずっと待たされて、ふて腐れる様な口調で呼びかける。

「待ってもうちょっとだけっ!」

反応はするが一切その動きは止まらない。

スイッチの入った状態になるとこれだ、長い付き合いだからこうなると長い事はわかっている。

結局シャワーも浴びて汗を流し、出かける準備が整ったのはそれから1時間後だ。

 

「ラミちゃんごめん!模擬戦明日だからつい熱がはいっちゃったアル・・・」

両手を合わせて必死に謝り、さっきとは打って変わった小動物の様な可愛らしさを秘めた少女が上目使いで様子を窺う。

「私は私で魔法のイメージの練習してたからいいんだけどさ、仕方ないなぁ・・・じゃあ今日はドドドールカフェでねねちゃんの奢りね」

これで謝られて許さない奴がいるのだろうか、いやいないと思いながらため息混じりの返事を返す。

「それ位でいいならいくらでも奢る奢る!それじゃあ早速レッツゴー!」

パァーッと表情を明るくし、駆け足で飛び出す。

「ちょ、ちょっとねねちゃん私そんなに早くないんだから置いてかないでよー!」

駆け足で飛び出す少女を必死で追いかける。

 

-ドドドールカフェ-

 

「んー、何頼もうかなぁいつも迷っちゃうアル。」

メニューとじーっとにらめっこする。

「そうだねぇ・・・じゃあせっかくだし二人で久しぶりにあれ食べようよ。」

「お、あれねオッケー!ねねも久々に挑戦したいと思ってたしドンとかかってくるアル!」

味良しコスパ良しの女性に人気の喫茶店ドドドールカフェ、そこの名物の一つである社長考案の角巻きわためスペシャルパフェ。

生クリーム層と季節のフルーツ層、コーンフレークにチョコ層更に2つのアイスに角状のコーンを被せ、わたあめで彩られた羊をイメージした巨大パフェである。

二人どころか三人でも食べるのが大変な量のパフェが運ばれてくる。

「いつ見てもすごい量だね・・・」

久しぶりに見たパフェの量に驚きつつ。

「まぁラミちゃんと一緒なら余裕余裕~♪。」

年相応といった女学生の雰囲気で駄弁りながら、二人は甘いものは別腹といった風にパフェを頬張っていく。

 

「ラミちゃんは卒業もう確定してるんだもんね、いいなぁ~・・・」

ラインベル高等学園の主席で学園随一の氷魔法の才能も有り、頭脳明晰で才色兼備、雪花次期当主、学園で結婚したいランキングNo.1の親友であるラミィを羨ましそうな表情でじーっとみつめる

「ラミィはもう卒論と卒試も合格して、大学への推薦も決まっちゃってるからね。結局ねねちゃんは卒論も駄目だったの?」

「教授に拝み倒したけど駄目だったアル・・・入学時は休みがちだったラミちゃんとねね一体どこで差がついたのか・・・慢心、環境の違い。」

今でこそ体術も優秀な彼女だが、入学当初は休みがちで身体も弱くいじめられていた、そんなラミィを庇って守ったのがねねだった。出会った後は昔から友人だったかのように仲が良くなり、どこに行くにしても一緒の様な気の置けない仲である。

「ラミィも身体良くなって学校来れる様になってからは、これでもねねちゃんに負けない様に大分努力したんだよ?」

そんな守ってくれたねねへの感謝と周囲を見返す為の努力をかかさず、持っていた才能に奢る事なく努力を続け学園主席の座まで登り詰めた。

「頑張り過ぎだよ~・・・ねねなんて体術以外何の取り柄も無いっていうのに。」

何でもそつなくこなせる親友に不満をぶつける。

「確かにねねちゃん魔法の才能皆無だもんね・・・この学園魔法が出来る人を優遇しちゃうから仕方ないとは思うけど、あの論文は個性的すぎたかな・・・」

学園総合成績ぶっちぎりの最下位、学園史上唯一の魔術0体術成績100のクマ、戌神次期当主、学園で守ってあげたいけど守られちゃうランキングNo.1の親友を精一杯フォローする。

 

「結局ねね達は参加出来なかったけど戦争に参加してたら卒論卒試免除とかだったのかな~・・・」

「ラミィ達は戦争に全く関わる事なく学生してたからねー、学徒動員は無かったし、ころ姐さんの学生が学生しなかったら国は終わるっていう方針だもの仕方ないよ。」

現在停戦中のベルサーナとノースフラワート連合の第一次幻視大戦には、学生の身である二人は参戦する事もなく、平和な学園での日々を送っていた。

「そうなんだけどさぁ~・・・だから明日卒業最後のチャンスにかけるしかないんだけど憂鬱だよぉ・・・」

ラインベル高等学園卒業には卒論での合格もしくは卒業試験での合格、そして学園長との模擬戦で認められた場合という特別な抜け道があり、それに明日挑戦する。

なんと言ってもその学園長こそギャング国家ベルサーナのトップであり、暴の戌神家当主である戌神ころね、実の母親なのだから。

「ころ姐さんならかわいい娘の為に流石に手加減してくれるんじゃない?」

雪花家前当主から現当主への代替わりがあった。その時期から何かとラミィの面倒を見てくれていたのがねねの母親戌神ころねであり、ラミィはそんなころねを実の母親の様に慕っている。

「確かにルール上の手加減はしてくれるだろうけど、ママは絶対あーいうイベント本気でやるのねね知ってるもん。」

「この学園の歴史で今の所それで卒業した人いないからねぇ・・・」

毎年最後の卒業チャンスにかけ、落ちこぼれた数名の学生が臨んでいくがその学生相手に半殺し、反則を使った学生の指を詰めた等の噂すらある。

「ねねはまだまだ戌神を継ぐには実力不足だし、未熟だけど卒業したら絶対やりたい事があるんだよね、だから明日は何があってもママを倒してこの学園を卒業するんだ!」

未だに桃鈴を名乗っている自分の未熟さを承知しながらもその言葉には強い覚悟を感じる。

「なるほどね、明日はねねちゃんの事応援してるよ。でもそういえばねねちゃんのやりたい事ってなんなの?」

なんの気なしにそういえば聞いた事が無かったなと聞いてみる。

「ふっふっふっ・・・それはね・・・」

 

~模擬戦当日~

-ラインベル高等学園多目的ホール-

 

中々見られない学園長、そして今回は学園の色んな意味で注目株であるねねとの模擬戦による親子対決という事で特別公開される、この一大イベントみたさにホールには観客が詰めかけている。

会場では飲み物や食べ物を売る人、果ては賭け事のオッズを決めている輩までいる。

そんな中会場が薄暗くなり、ホール中央にスポットライトが照らされる。

「レディース&ジェントルメン!長らくお待たせいたしました。本日は皆様、ラインベル高等学園特別公開プログラム学園長との模擬戦にお越し頂きありがとうございます!」

この学園の放送部長であり学園随一の情報通、イケメンだが結婚したくない男ランキングNo.1のタキシードの男子学生が現れる。(理由:プライベートが全てばれるから)

「今回は激闘が予想される為、皆様の観客席をお守りする防御術式が展開しておりますので、ご安心ください。実際のルールについては学園長からお伺いするとして、早速入場に移りたいと思います!」

優雅な立ち振舞から礼をし、ビシっと指を掲げ気合をいれたポーズをする。

「それでは青コーナーから魔術は0の学園の最底辺!隠れファン多し可愛さだけなら無限大!しかして見た目に惑わされるなかれ体術ならばこの学園でこのクマに敵うものなしっ!戌神次期当主!桃鈴ねねの登場ですっっっ!」

入場の口上をテンション高く決めていく。

「ねねちゃん頑張れー!」

「魔力がなくても出来る所を見せてくれー!」

「ねねちキタ━(゚∀゚)━!(゚∀゚)o彡ねねち!ねねち!」

「なんだあのクマのグローブは可愛いじゃねぇかよ・・・キュン」

「ねね殿ならばやってくれると信じてはいますが、相手はあの学園長ですからね、そんな敗れたねね殿を優しく慰めるのは拙者の役目ですからな。」

ここぞとばかりに隠れファン達が声援を送る。

「さ、流石に恥ずかしいアル・・・///」

顔を赤くしつつ恥ずかしそうに小さく手を振り、スポットライトを浴びながら中央コートに向かっていく。

 

「続いては赤コーナーより知らぬ者無し!この学園の長にして実質的ベルサーナのトップ!千指喰らい!ジェノサイド!ベルセルクハウンド!戦場で付いた二つ名は数しれず!伝説のギルドであるホロライブメンバーにして暴の戌神現当主!戌神ころねの登場ですっっっ!」

「ころねー!俺の指を返しやがれー!」

「姐さーん俺だー!指持ってってくれー!」

「キャーころ姐様ー!こっち向いてー!見ました!?今目が合いましたのよ!?」

「ちょっ見たっ、見たからっ!く、苦し・・・ガクッ」

過激なファンの声援や色々と公言して良いのだろうかと疑問になる声すら聞こえてくる。

「YUBI♪YUBI♪っとちょいと大げさだねぇ、それにあの実況は知りすぎてる気もするけど、まぁウチで抱えればいいか。」

両手で明るく声援に答えた後は堂々とした立ち振舞で中央コートへと歩く。

 

「さてっと、それじゃあ簡単に今回のルールから説明するよ。私が立てるのはこの半径1メートルの円の中だけ、素手のアタシをここから1歩でも外に出すか、たったの1発でも攻撃を入れればそれで卒業とする。勿論武器、魔法の使用は許可するけど、他人の力を利用する事だけは禁止。シンプルだろ?」

実況から貰ったマイクを握り淡々と説明をしていく。

「やっぱり娘だから贔屓してるのか?」

「あの条件なら普通に何とかなるんじゃないのか?」

「馬鹿、あの条件で未だにこの模擬戦で卒業した奴いないんだぞ。」

「某ならこうしてこうやってこうですね。」

ガヤが余りにも簡単な条件にざわつく。

 

「ねねはこれ使わせて貰うけど・・・本当にそんな条件で良いアル?」

クマの手を模したグローブを手に着けながら、余りにも簡単な条件に少し拍子抜けしてつい問いをかけてしまった。

「勿論だよ、ねね、アンタ卒業してやりたい事があるんだろう?それができるだけの実力があるのか・・・試させてもらうよ。」

全て知ってるよと言わんばかりの目で睨み返す。

「ママ、な、何で知って――!?」

驚愕するねね、ラミィちゃんにも1度しか言った事の無い事を何故ママが知ってるのか困惑する。

それと同時にさっきとは打って変わった恐ろしい程の圧を感じ背筋が凍りつき、それを為す事がいかに難しいのものかを再認識する。

「それじゃ時間かけるのもあれだ、景気良いの頼むよ!」

実況に向かってマイクを投げ返す。

「それでは、ラインベル高等学園特別公開プログラム学園長戌神ころねvs桃鈴ねね、今ここにゴングですっ!」

実況の手の合図と同時に、観客を護る障壁の展開及びゴングによる鐘が鳴らされる。

 

(物凄い圧・・・正直ここから逃げ出したい・・・・)

ゴング開始から冷や汗をかき続けるねねはそのプレッシャーで全く動けずにいた。

「どうしたんだい?止まってるだけじゃ見てるお客さんも退屈しちまうよ。来てみりゃ分かる事もあるってもんさ。」

円の中ころねはガイナ立ちで圧を放ちながらこちらを見つめている。

(でも確かにいかなきゃ何も変わらない・・・!とりあえずまずは真正面からっ!)

汗を拭い覚悟を決めてダッと駆け出し、一直線に距離を詰める。

「良い子だねぇ、スピードもあるし、この圧に負けないだけで落第は無いね。でも戦力差を知らないままの突撃は無謀ってもんさね。」

静かに語るころねとの距離が10M、7M、5M、3Mと縮む。

「でぇりゃあっ!」

そして2Mになりねねもその圧を吹き払うように声を上げ拳を突き出す。

「必殺・・・三歩灰塵拳!」

そして1Mの円手前、三歩の間合いに入ろうかという手前で起きた、常人にはノーモーションにみえるそれをかろうじてねねの眼は捉えた。

「ズガアアアアァァァァ―――ンッ!!!!!」

ころねの立っていた円の外からねねがいた前方の足元より数メートル辺り一帯が轟音と共に粉微塵となり抉れ、その衝撃でねねは一緒に吹き飛ばされる。

 

衝撃の余波だけで周囲を覆う防御術式の一部にヒビを入れる程の威力であり、観客もその光景に唖然とする。

「まさかこれで心折れて終いって言う程、軟弱な娘に育てた覚えはないけどさて・・・」

土埃の舞う自分が破壊した場所の先に視線を向ける。

「ケホッ、ケホッ!ちょ、ちょっとママ殺す気!?」

少しの間の後、土煙で噎びつつ少し涙目になりながらも立ち上がり、ころねへと視線を向け返す。

(既の所で気づいて拳を引き戻したお陰で何とかガードが間に合って、このグローブのおかげで衝撃によるダメージだけで済んだけど、直接貰っていたら間違いなく死んでたでしょ・・・)

余りの火力差に驚愕し、直撃していたらと考えゾッとする。

「アタシの娘があれくらいで死ぬとは思ってないし、あれで駄目ならどのみち卒業はさせないよ。それに追試は後2回までって所かねぇ。」

さも避けれて当然と言った風に語り、攻略のタイムリミットまでつけてくる。

 

「くっ・・・!条件追加なんて大人げないアルよ!」

(幸いにもダメージは軽減されてるから問題ない、でも真正面からは絶対無理だ。)

文句を言いながらも少しの間逡巡し。

(正攻法では敵わない、ならスピードで撹乱してさっきの攻撃してくる間合いは何とか掴んでいるから一撃を打たせてそこを回り込む!)

「はぁっ!」

真正面から突撃する振りをし、間合いに入った直前でころねの初動を見て避けるように右に切り返す。

「必殺・・・三歩灰塵拳・改!」

狙い通りと思った刹那で見えた拳の起動の変化、それにより拳はころねの足元を貫き、前方だけではなく、ころねの周囲一帯が先程の轟音と共に吹き飛ぶ。

「相手が同じ技だけって事はないし、フェイクをいれるってのは正解だけど、ちゃんとウィークポイントを改善してこその必殺技だよ。」

自分の足元に拳を叩きつける事で周囲一帯を吹き飛ばす、多方向への改良を加えた一撃。

「戦場じゃあ武器が無い事も珍しくないし、まぁ本職には劣るけど打点と力のコントロール次第でこんな芸当も可能って事さね。」

と言いつつ少し得意げにしながら語る。

「さて、今回は流石に直撃だろうし、最後はあたしの気の一つも引ける位の成長ぶりをみせてほしいもんだけどどうかねぇ。」

土煙の舞う中を覗き込む。

「ゲホッ、ゴホッ、カハッ!はぁ・・・はぁ・・・全く・・・あれが娘に撃ち込む技って・・・本当冗談になってないアル・・・」

口から出る血を拭いながら、ボロボロになった身体を引き摺る。

「でもこんなんじゃ終わらないよ、ねねにはやりたい事があるんだからっ・・・!」

覚悟を決めている瞳からは強い力を感じる。

「流石アタシの娘だ良い目をしてるよ、昔のアタシもそんな目をしてたのかもねぇ。」

嬉しそうに笑いながら語る。

 

(でも実際どうする?真正面から直撃したら身体が粉々になるし、改を打たれたら周囲な分正直どうしようもないし、多少威力が低いとはいえもう一発喰らえばアウトだ。)

思考を重ね、周囲を見渡し、そして一つのくだらない方法が思いつく。

(この方法ならほぼ確実にママの気を引きながら、ねねが成長したって所も見せられる。正直絶対にやりたくないけど・・・あの化け物じみた強さに勝つには奇をてらうしか無い。)

だがこれしかもう考えつかないと覚悟を決めて再び立ち上がる。

「これで駄目なら留年だ。けどどうやら勝算ありって顔だねぇ、一体どんな方法か楽しみだよ。」

血湧き肉踊ると言った表情で嬉しそうに微笑む。

「ママにねねの覚悟見せてあげる・・・!」

決心を重ね、3度目の最後のチャンスに挑む。

 

「スゥーッ、ハァー、行きます!!」

深呼吸をし、覚悟を決めて全力で走り出す。会場中も固唾を飲んでそれを見守る。

「まさか真正面から?いや、そりゃないか。」

最初と同じくころねとの距離が10M、7M、5Mと縮む。

しかし3M行く手前で落ちていた瓦礫の前に向かってねねは拳を突きつける。

「必殺・・・劣化・三歩灰塵拳!」

見様見真似でころねの必殺拳を地面に打ち付ける

「なっ・・・!」

威力こそ比較にならないもの土煙や飛んでくる瓦礫で前が見えないころねは反射で咄嗟に手で防ぎ、その土埃の向こうからねねの衣服が見えた瞬間。

「くっ・・・!三歩灰塵拳!」

ころねはついにその技を発動してしまった。そして衝撃で細切れになった上着を見てそれが偽装だと悟る。

「偽装なら一体どこに・・・っ!?」

そして土煙の舞う最中瓦礫を足場に跳躍したねねらしき影がころねに向かって真上から突っ込む。

「ちぃっ、改はつかえないけどこっちはっ!」

拳を再度構えようとするが、その眼前には先に投げつけられたねねのブラジャーが現れ、視界を塞ぐと同時にどうあってもころねの気をひいてしまう。

「・・・ッ!」

咄嗟に躱そうとしたが、その一瞬の隙を付き上半身裸のねねの拳はころねの頬を掠め、そのまま抱きつくように降りてきたねねを受け止める。

「はぁ・・・はぁっ・・・ママどう?撃たれたら負けなら、どんな方法使っても撃たせなければいいって事アル。」

息を切らしながら、抱きついて顔の近いころねに向かって、ねねはしてやったりとばかりにニッと微笑む。

「・・・アハハハッ!まさかそんな手を取られるとは思ってなかったよ。確かに成長してるようだしねぇ。」

少しの間の後、嬉しそうに豪快に笑い、ねねの成長を確認した後、頭をワシャワシャと撫でぎゅっと抱きしめる。

「ちょっ、ママ苦しいよもぅ・・・///」

恥ずかしがりながらも実際にボロボロの身体は苦しく、でもその苦しさはとても心地よくて、全力を出し切ったねねは力尽きて気を失ってしまう。

「ふぅ・・・ねねお疲れ様。でも親の心子知らずってもんかねぇ。」

一息ついてそっと着ていたパーカーを娘に被せて運びながら、少し悲しい表情を浮かべる。

 

そしてようやく晴れた土煙の後で、倒れたねねを抱えたころねの姿が見える。

「今回のラインベル高等学園特別公開プログラムは後で映像を見て貰えれば分かるが、アタシにしっかりと一撃叩き込んだ桃鈴ねねの勝ちだよ。アタシの負けさね。」

マイクで高らかに自分の敗北を宣言する。

「改めて皆様、今回の模擬戦の結果をもって、ラインベル高等学園学園長権限により桃鈴ねねの卒業を正式に認めるよ。」

「まぁ中にはアタシが弱くなったって奴や娘だから手加減したって思うやつは今すぐこの場で同じ条件で戦いな、それが出来ないって事は認めるって事だからね。」

勿論あの威力、そして間近で見た激闘や感じた圧、実際に学園長の頬についている傷を見て、その場で反論をする者は皆無だった。

「よっし、この会場中が証人だ、それじゃ後はアンタ達に任せたよ。後そこのお前悪いようにはしないから卒業後はここに来な。」

マイクと一緒に名刺を手渡す。

「あ、ありがとうございます!!」

放送部部長は何がなんだか分からないと言った表情ながら綺麗にこの場を締めてみせた。

「あーあとアンタ達、この会場で撮ってるカメラ1件でもあの子の肌を撮ってるのは許すんじゃないよ。」

「「「へい、ころねの姐さん!」」」

黒服のガタイの良い輩や機械に強いチームが迅速に動く。

 

~翌日の夕方~

-首都ラインベル戌神本家の一室-

 

「んんぅ・・・ふぁ~、あれ、ここは・・・?」

目が覚め、布団から起き辺りを見回す。

「ねねちゃんやっと起きたー!ずっと起きないから心配してたんだよー!」

ラミィが心配そうにしながら抱きついてくる。

「ええっ!?」

「意識はしっかりしてるかい?昨日から丸一日ってところさね」

二人共あの後からねねが起きるまでつきっきりで看病をしていた。

「ねね、そんなに寝てたの!?」

状況を把握できていないねねはその事実に驚愕する。

「はぁ・・・本当無事で良かった。」

ラミィは安堵のため息をもらす。

「心配かけてごめん・・・でもあれ?確かママと戦って意識を失って・・・じゃあ模擬戦の結果はどうなったの!?」

そんな親友を見て申し訳なく思いながらも昨日の事を思い出す。

「アンタの勝ちだよ。この頬の傷が証拠さね。」

クイっと少し切れた頬を見せつける。

「や、やったー!じゃあねねはこの学園卒業って事で良いんだよね!?」

嬉しそうにころねの顔を見て話す。

「ま、不本意ながらそー言う事さね。アンタ達はもう下がって良いよ。仕事の方はちゃんと後でアタシの方からなしつけるよ。」

黒服の男達がそれに応え退出していく。

 

「ねね良くやるようになっだねぇ!こぉねも勿論手加減はしてたんだけど、本気で卒業させる気は無いようにしたんだけどねぇ。」

さっきとは打って変わって、久しぶりの家族水入らずの邂逅にいきなり口調が訛り出しねねに抱きつきだす。

「ちょ、ちょっとママったらもう・・・///」

困惑するけれども久しぶりだし、自分も正直に言えば甘えたいが、親友の前ではと思い控えめにしているその横では。

「ころ姐さん久しぶりー!」

ころねに遠慮なく抱きつくラミィ。

「ラミィちゃんも久しぶりー!元気してたー?」

ねねから離れてラミィに抱きつき返すころね。

「もぅラミちゃんずるいよ~・・・」

文句を言いながらもその要素を見て二人の間に挟まりにいくねね。

「二人共全力で甘えに来てくれるし、こぉねはほんとに幸せもんだよ。」

染み染みと三人での幸せな一時に浸りながら、しばし抱き合った後に離れる。

 

「まぁラミィちゃんの成長には敵わないようだけど、ちゃーんとねねも成長する所はしててころねは嬉しいよぉ。久しぶりに血も騒いだし出張ってきた甲斐があったってもんだよぉ。」

その視線は明らかに二人のある部分だけを見比べていた、戦闘にも満足だったようで上機嫌で笑う。

「もー、ママったら!」

少し怒り気味の顔を浮かべる。

「それでねね、アンタ本当にオルタの解呪方法を探しに行くんだね?」

さっきまでとは違う真剣な表情と声色で聞く。

「――っ!何でママ知ってたの?」

20年前の厄災大戦で世界を救った代償に、伝説のギルドであるホロライブのメンバーに降り注いだオルタと呼ばれる呪い。ころねにはベルサーナから出られない呪縛がかかっている。

「アンタが何やりたいのか位知ってるよ。この街でアタシに知れない情報はほとんど無いんだから、まぁそんなアタシでもオルタの解呪方法は見つからなかったんだけどね。」

この国のトップの情報網は世界でも有数であり、眉唾な情報等を含めればオルタの心当たりはいくつかある。

「そうだよ!その為にねねは世界を旅に行く。戌神の名前を継げるように強くもなりたいし、何よりねねがパパとママのオルタを解呪して三人で暮らしたいの!」

覚悟を決めた真剣な瞳でころねを見つめ返す。

「そっか、言って聞かせるのは無理って訳だ。ならアタシから止める事はもうしないよ。」

諦めと少し悲しみの混じった表情、そして何よりも最愛の娘が自分の為に動く事を決めた覚悟が嬉しくて泣きそうだった。

「だそうだよ。それでさっきはあー言ってたが、ラミィちゃんはラインベル自由大学の推薦が決まってるけど、本当にどうするんだい?」

この国の最高峰の大学、ここを卒業すればこの国での成功は約束されたも同然という誰もが羨む場所である。

「ラミィもねねちゃんの旅に勿論着いていきます!」

即答だった。

「ええっ!?ラミちゃん!?」

ラミィが一体何を言ってるのか分からないという風にねねは困惑する。

「だって大学はいつでも行けるけど、ねねちゃんとの旅は今しか出来ないですし、何よりそんな楽しそうな話乗らない訳がないじゃないですか!」

嬉々として笑顔で語るラミィ。

「だそうだけど、ねねの方はどうなんだい?」

それを聞き、話をして巻き込んでしまったのはやっぱり失敗だったかなと思うのと同時に、ラミちゃんと一緒に旅をしたいと思っていた自分がいる。

「も、勿論歓迎アル!」

物凄く嬉しそうな顔を浮かべ、二人は固い握手を交わす。

 

(本当ならこぉねも家族で一緒にぶらぶらしたり、おかゆとおにぎりを食べたり、ゆったりしたいんだけどおかゆも帰ってこないからなぁ・・・浮気してそうだし!まっ、最後にこのころねの横にいればいいか、そしてもしかしたらそれを叶えてくれるんはこの娘達かも知れないねぇ。)

立場や内心の不満を少し顔に出しつつ、娘のやる事を応援する気を固める。

「そんじゃあこいつは餞別だ、ウチで作ってるもんだけどいくつかやるよ、二人共持っていきな。」

二人に手渡される革袋。魔法がかかっており、無制限とはいかないが見た目の数十倍以上はモノを入れることが出来るシロモノである。

「それとまぁ旅にゃ路銀も必要だろう、これで解決しない所の方が多いだろうが、後は自分で何とかするんだね。」

いつもころねが支払いで使っているのを見ていた、金文字が印字された黒のカードも手渡される。

「ま、この国でなら大体なんでもしてやれるけど、他じゃそうはいかないからね、頑張るんだよ。」

二人に向けて笑顔を向ける。

「ありがとうママ」

「ありがとうございますころ姐さん」

それに対して二人は礼を述べる。

「ころねはひどい母親かもしれないけど、親孝行したいって思ってくれる様な娘達に囲まれたなら幸せだ。だから二人共必ず無事で帰ってくるんだよ。」

二人を改めて愛しそうにぎゅっと抱きかかえる。

「うん、絶対見つけてまた帰ってくるから・・・」

「ねねちゃんのことは任せてください。二人で絶対またここに帰ってきます。」

泣きながら抱き返すねねとそれを見守る様にしながらラミィも抱き返して別れを告げる。

 

~翌日の昼~

-首都ラインベル戌神本家前-

 

「ママとは昨日お別れしたからいいけど、準備は出来たし、後はあいさつ回りは大丈夫そうかな?」

ころねは模擬戦以降ねねにつきっきりだった為、大量に貯まっている仕事を終わらせる為、既に夜には出かけていた。

「ラミィの方も挨拶回りは大丈夫。大学の方もころ姐さんが手を回してくれたおかげで、いつ来ても大丈夫らしいし。」

大学や学園の卒業の件等についても、滞りなくいくように手を回してくれていた。

「んー、じゃあママから聞いた、いくつかの場所を目指そうかなと思うんだけど、それで良い?」

昨日の内にオルタの手がかりになりそうな人物や場所が明記されたリストを貰っていた。

「本当ころ姐さんには頭があがらないね、それで良いんだけど最初に一つだけラミィ行きたい所があるんだけどいいかな?」

ころねの手際の良さに感謝しながら、方針に同意をしつつも要望をする。

「全然いいけど、どこ行くの?」

「ちょっとだけ遠回りになるんだけど、ラミィの実家があるサン・マローナに寄りたいんだよね。」

ラミィの実家である雪花家が実質的に収める、ラインベルに勝るとも劣らない巨大都市である。

「オッケー!じゃあねね達が最初に向かう街はサン・マローナに決定ー!」

この日が桃鈴ねねと雪花ラミィのベルサーナを揺るがす旅立ちの始まりである。

 

 

 

 

 




☆1話後書き☆
ドドドールカフェとか学園設定どっから湧いてきたし、二人は親友、友情を育むには学園、親の監視振り切って卒業したら旅立ちのタイミングにいいのでは?こんなノリで作りました第一話。
1話で戦闘すると思ってない上に、そもそも戦闘シーンとかファンタジー設定とか考えた事すら無いので、wiki風設定こそあれ、プロット崩壊どころか零 -ZERO-でした。
プロローグ1000字いかないし、多くても1話は3000字位予定から3倍以上のボリュームと化し、遅刻誠に申し訳有りませんでしたorz
小説の技法も知らない、ホロライブ歴も浅い、ラミィちゃんのオルタ妄想切り抜きから膨らませただけの、完全見切り発射作品で良ければ、皆様どうぞ今後とも宜しくお付き合いください。
2話では、ラミィちゃんの活躍及び、ポルカ、ばたんと5期生を一気に出せればと思っていますが、現段階アイデア0です。

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