ハイスクール・フリートー乙女達の航海日記ー   作:三坂

12 / 31
EP11 「揺れる心」

「プハッ!!」

 

スキッパーから放り出された明乃は海面から勢いよく顔を出して武蔵へと視線を向ける。

 

「モカちゃん〜!!!!」

 

もう一度知名の名を叫ぶが、そんな彼女を置いていくかのように武蔵は徐々に離れていく。さらには交戦中の大淀、そして接近してこようとしてくる晴風にむけて主砲、そして副砲を発砲、その轟音が響いてくる。

 

 

ー大淀艦橋ー

 

「艦長!!スキッパーの乗員が海に投げ出されました!!」

 

「えっ!?」

 

 

右舷見張員の子日の報告を受けて急いで右舷航海管制塔の双眼鏡に飛びついて確認する春香。そこには報告通りスキッパーと海に投げ出された明乃の姿が‥ 

 

 

「あの感じだと砲撃じゃなくて漂流物に当たって投げ出された感じか‥‥」

 

「艦長!!助けにいきましょう!!」

 

「いや‥その必要はない‥」

 

 

高嶋の提案を窘めつつ視線を向けた春香の先にはすでに岬を救助しようと接近を試みる晴風の姿が‥、しかしそれに武蔵も気づいており対応可能な武装で攻撃している。

 

 

「あの感じだと晴風に任せたほうがいい‥!それよりも私達がやるべきことは晴風の支援!!武蔵の狙いをこちらに絞らせて!!」

 

 

「「「了解(うい)!!」」」

 

 

春香の指示に乱れぬ返答を返す艦橋メンバー、射撃体制を再び整えた大淀は再び武蔵にむけて激しい砲撃を開始する。

 

 

「発射速度の早い副砲群はなるべく相手の副砲の破壊を優先して‥!!」

 

「主砲は引き続き徹甲榴弾!!狙いは艦橋以外ならどこでもいい!!アイツの気を可能な限りこちらに寄せろ!!」

 

「魚雷は艦尾か艦首に集中‥!中央は水雷防御が硬いからそのへんの調整はちくじ言うね!」

 

 

20.3cm連装砲・10cm連装高角砲・127mm速射砲・61cm3連装魚雷などの大淀が使える全武装が絶え間なく攻撃を続け、武蔵に襲いかかる。

そのうちの副砲弾の一発が武蔵の第一副砲塔に命中、爆炎に包まれる。

 

 

「艦長!!武蔵の副砲一基破壊確認!!それと左舷高角砲の三基ほども同様に破壊しました!!」

 

「武蔵速力低下!!」

 

 

いくら重装甲に包まれている武蔵とはいえど、流石に何度も攻撃されればかなり応える。徐々にではあるが損傷箇所が増えていき僅かではあるが速力が落ちてきている。そこまで攻撃されれば放置しないわけには行かず左右に振り分けていた主砲を全て大淀へと向ける。

 

 

「武蔵!!こちらに全主砲指向!!」

 

「見張員は至急艦内に待避!!晴さん!!取舵一杯!!」

 

「了解!!」

 

 

春香の指示を受けて見張員である望、子日、霞は急いで艦内または艦橋に待避、晴が取舵で進路を変更しようとした直後、轟音とともに武蔵が発砲放たれた46cmの徹甲弾が無数に大淀に襲いかかる。

 

 

「主砲弾!!こちらに来ます!!」

 

「総員!!衝撃に備えて!!」

 

 

雪の発言を受けて春香が衝撃に備えるように伝えた直後、砲弾が大淀の周囲に降り注ぐ。

 

 

「っ‥‥!!!!」

 

 

46cmクラスの砲弾となればとてつもない衝撃になることは目に見えてわかること。砲弾が着水すると大きな水柱が上がり波打つ。

 

 

「流石‥46cm砲‥相変わらずとてつもない威力ね‥。被害状況の確‥「敵弾再び来ます!!」はっ!?」

 

 

子日からとんでもないことを言われて焦った表情で再び武蔵へと視線を向ける春香。それもそのはず、武蔵の主砲弾は46cmクラス、いくら自動装填装置が積まれていたとしても装填には30秒ほどかかる。先程撃ったはずなのに連続で撃てるなどありえない話だ。

 

 

「なんで‥!?」

 

「‥!!そういうことか!くそ!一枚やられた!!」

 

 

武蔵の仕掛けたトリックに気づいて思わず悪態をついてしまう雪。それに気づいた柚乃が説明を促す。

 

 

「雪さん!!どうゆうことですか‥!?」

 

「簡単なトリックだ!恐らく武蔵は交互撃ち方をやってる!」

 

 

交互撃ち方‥戦艦など精度が低い艦でよく行われる手法、一斉射でも当たらないことはないが、そうなると主砲同士の爆風で狙いがずれてしまうのだ。そのため、最初は左右の砲身、続いて真ん中の砲身という順で撃つことで命中精度を上げるというやり方。 

 

 

「そうか‥!武蔵の乗員はエリート揃い‥こっちの動きを読んでたか‥!」

 

「晴さん!面舵!!」

 

「駄目です!!間に合いません!!」

 

「くっ!総員!!衝撃に備えて!!」

 

 

そう春香が指示した直後、再び大淀の周辺に無数の砲撃が着弾、その中の一発が後部格納庫に命中、とてつもない爆炎が上がる。

 

 

「「きゃぁぁぁ!!!??」」

 

 

 

艦内から悲鳴が上がると同時に、被弾した大淀は一瞬艦後部が下がり艦首が浮き上がる。その後すぐに体制が戻ったものの後部格納庫から黒煙が上がっていくのであった。

 

 

ー武蔵艦長室ー

 

 

「う‥そ‥」

 

 

被弾して黒煙を上げつつ速力が低下、戦線離脱をしていく大淀を見たもえかは表情が青ざめる。46cm砲弾が一発だけといえど軽巡洋艦にはかなりの脅威になりかねない。自分の幼なじみを助けようとしている晴風の援護とはいえど、何もできずにただ味方が蹂躪されていく様子を見るとなればかなり精神に来るものがある。

 

 

「‥‥」

 

 

彼女はただ距離が離れていく2隻を見ることしかできずにいるのであった‥。

 

 

ー洋上ー

 

 

「っと‥!」

 

 

その頃海に放り出された明乃はなんとかスキッパーに戻り、乗り込んでエンジンをかけ直す。

 

 

「もかちゃん‥」

 

 

離れていく武蔵を追いかけようとした彼女だが、砲撃を受けつつこちらに向かってくる晴風、そして自分を守るために被弾、速力が低下している大淀を見て心が揺れる。

 

 

「っ‥!」

 

 

しばらく迷っていた明乃だが、決心した様子でスキッパーを方向転換。晴風へと戻っていくのであった。




大淀が武蔵の攻撃を受けてついに被弾‥

46cmクラスの砲弾が直撃となればかなり危機的状況なのは間違いない‥果たして‥大淀乗組員は無事なのか‥
そして‥明乃と晴風乗員の運命は‥!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。