この火継ぎの薪王に休息を!   作:エリザベートベーカリー

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第四話 キャベツ

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素晴らしい朝、とも言い難い曇り模様は若干と火継ぎのテンションを下げつつも朝の用意をさせる

曇りと言うのは実に憂鬱な気分にさせる、それは火継ぎの世界を思い出させるからだろうか

恵みの雨でもなくサンサンとした晴れ模様でもない中途半端な天気、皆既日食、光り亡き闇の世界

実にトラウマを思い出させる所業ではないだろうか、神無き所業に相応しい天気と言える。

あぁ実に憂鬱である、火継ぎは停滞している曇りが大嫌いだった

 

「カズマ!今日は実に良い爆裂天気ですよ!早く湖まで行きましょう!」

 

反対にめぐみんは曇りと言う天気が大好きであった、なんでも大気中の魔力がドーたらこーたら

火継ぎには分からない単語ばっかりであった、集中力が切れない限り魔術をぶっ放す火のない灰に

この世界の魔術体系は実に難しい問題ばっかりである、火継ぎは感覚派なのだ、故に無知である。

 

【お前はいつでも元気だなめぐみん】

 

いや、爆裂をぶっ放したらぶっ倒れるんだから元気じゃないとおかしいのだろうか?

少なくとも火継ぎがめぐみんとコンビを組んでからと言うもの彼女が爆裂魔法を撃った後に

立ち上がった姿を見た事がない、カエルに食われている回数の方が多い、三回に一回のペースだ

 

どちらにしろ出掛ける予定にはなるらしい、扉の開けてフンスフンスと鼻息を荒くするめぐみん

これは断れない奴ですやんと火継ぎは感じたのだ、最早何回目かも分からない習性だ

そして大体そう言う時に断ると目の前でエクスプロージョンの詠唱を開始する女なのだコイツは。

実に困った習性である、自称であるが爆裂魔法を一日一回使わないとボンッとなるらしい。

 

そんな欠陥種族がいてたまるかと思ったが、火継ぎの世界には自主的に爆発する者もいたので

冗談か本気なのか分からない二択~三択問題へと変貌していたりする、実に困ったモノだ。

 

貴方としては朝の散歩と言う殺意に対しての気を張る必要も、矢も、剣も、武具は何もいらない

火継ぎにとってそれは平和という事象を体験できる唯一の事柄だ、甲冑を纏うのは趣味なので

夜寝る時以外の全ての時間においてタマネギとデブと呼ばれるカタリナ防具を装備する

ちなみにそう呼んだ冒険者や火の無い灰は火継ぎによってかなりひどい状態まで追い込まれた。

 

厳密には十回ほど殺したり殺されたりした

 

あの時見た彼の格好はロングコートの衣服に飛び上がる翼のカラスを想像させる鍔帽子と黒い獣革

の防護服だったが、あの時に狩人と名乗った男は元気なのだろうか?奇妙な気配を携えた男だった

手に握りしめていたのは二面性を露わにした外にノコギリ、内に鉈の特性を合わせた複合型の武器

本来であれば技量が幾らあっても火の無い灰には使いこなせない代物を十全に使いこなす益荒男だ

きっと死んでも生き返るからという勘も併せているが何処に居ようとも死ぬことは無かろう。

それこそ自分くらいの不死の化け物でも無ければ殺す事は叶わぬ化け物であった。

 

そう、それこそ今隣のベランダにて寛いている、あの鳥の様なマントをした…奇妙な…男…

 

あいつじゃん

 

あ、隣の奴も俺に気づいて汗かいてら、アッハッハ。

 

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【いやまさか聖杯で会ったあのタマネギの男か?いやまさかな、まさかだよな、うんアイツだわ】

 

 

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まさかの異世界にて知り合った友人が隣の宿部屋に住んでいたという事実に困惑をしつつ

現在はアクセル街の外、つまる所モンスターのテリトリーに片足を突っ込んでいる状態である。

半径5キロもない近場に大き目の湖が何故か自動的に発生したおかげで環境に対する慈悲と自身の

面倒臭さをうまい具合に中和する事が可能となったのでめぐみんは二日に一回のペースから一日に

一回と言う天文学的な爆裂中毒となったのだ、毎日は面倒臭い、本当に面倒臭い、実際にやったし

 

「黒より黒く略称エクスプロージョン!」

 

火継ぎの真後ろで行われる冒涜的所業により湖の水分は全て上空へと大瀑布しながら水滴となって

自身の甲冑を余すところなく濡らしていく、文字通りの水蒸気爆破は湖を一瞬で干上がらせていく

なんという破壊力なのだろうか、と最初は感動していたが古今東西一か月同じことが続くと飽きる

 

まぁ火継ぎは誓約上昇アイテムの入手を狙う為に五時間と同じ敵を殺し続けた者である

 

飽きと言う事象に対しての防御力は通常の冒険者のソレを軽く上回る性能を持っているので

これくらい火の無い灰ならば耐えきれてしまう、故に彼らがアクセルの目覚ましになる日は近い

 

「快…感ッ!ぐふっ…」

 

背後にて文字通りに体の全てを使い倒しぶっ倒れるめぐみんを気配で察しながら目の前の池を見る

実に素晴らしい爆裂であったと言えよう、一発で池の水分を全て空中にぶっ飛ばしたのだ

 

火継ぎ世界の魔術ではこうはいかないだろう、信仰極振りの雷の杭でもこうはいかない筈と言える

 

いや99振りならばあるいは…?早くロザリア様に青い舌を捧げて振り直しをしなければと考えたが

そういえば元の世界に帰る手が今の所なかったという事を思い出しどうにもならない問題だった。

 

やはり憂鬱である、初めての火継ぎ世界にてグウィンドリンをぶっ殺しおっぱいを見れなくなった

時と同じへこみ方をする火継ぎを友人が見たらどう思っただろうか?

同意か軽蔑か、はたまた復讐者誓約だからとぶっ殺しにかかってきたのか、それは分からない。

 

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【おっぱいは正義】

 

 

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はてさて野菜とはなんだろうか?

 

瑞々しく色鮮やかであり種という物質から成長と言う変化を促し大きく成長し大抵の場合であれば

土に埋まっているか大人の腰ほどの植物の茎から取る事で食物へと変化する、あと美味い。

 

植物とはなんだろうか?それは意思を持たず動く事もなくその場に根を張り得物を待ちながら耐久

に優れており灰になろうとも他の栄養素となり成長を助ける、いわば究極の協力生命体と言える。

 

それが野菜だ、それが植物だ、何だろうとも動くことはなく、そして害意も存在しない。

 

目の前にて自身が両の手で握りしめている瑞々しい良い色をしているキャベツもそうだと良かった

だがそうはいかないのが異世界事情と言うものだろう、そうだ、ここは火継ぎ世界とかなり違う。

 

ギルドからの緊急収集にて言い渡されたのはキャベツの収穫だった

 

大量の野菜の収穫なんて農夫がやる仕事であり冒険者がやる必要性などないだろう、と勘繰った

 

だが違った

 

【瞬間凍結!瞬間凍結!あぁクソ瞬間凍結!冷たい武器でチェストォ!!!!】

 

野菜は飛ぶ、人間を襲い食物にする肉食、しかも大抵群れであり大量にいるという不死人殺し

実に素晴らしいじゃないか、存分に狩り殺したまえよ、と狩人は言っていたが彼はキャベツとの

相性が悪く得物はキャベツを粉砕し殺害、彼独自の呪文は威力が高すぎてキャベツを粉砕し殺害

如雨露のような機械仕掛けの火炎放射器から繰り出される焔は良い感じに焼きキャベツになる為に

彼は永遠と焔を発射するだけの道具となり果てていた、これではどっちが主体か分からないだろう

 

実のところを言えば火継ぎたる貴方も同じようなモノであるが少なくとも魔術が通じる分マシだ。

 

瞬間凍結を空中にぶっ放しながら冷たい武器を付与した大網にてキャベツを一網打尽をしながら

ギルドに手渡すを繰り返す貴方は片手間に偶々キャッチできたキャベツを見ながら考える

一玉一万エリスという大金は実にこの時間が有意義なモノだろう?と語りかけてきている様だが

これでも重さはキャベツ分の物でありそれが空を飛び続けており体当たりもするのだ

無論貴方から反対側に飛ぶキャベツはいないが当たれば相当の痛みが体を襲うだろう

現在群れで襲われているダクネスはどれ程の体力振りなのだろうかと畏怖と尊敬の念で見るが

なんだか若干頬が赤の色に支配されつつある、あれ実は発情してないだろうか?

同僚の残念な面を見てしまった火継ぎは見ないようにするがキャベツの群れに襲われているという

状況だけ見ると…

 

【…瞬間凍結】

 

「あひゅうううううう!!!!!」

 

【やっぱりそういう趣味かよ】

 

火継ぎが放った瞬間凍結で少なくないダメージを与えられているに限らず歓喜と法悦に浸っており

同時に彼女に襲い掛かったキャベツの全ては地に伏し全てが火継ぎのポケットマネーへと変化する

彼女の仲間であろう銀髪の女盗賊が静かに貴方に恐怖を抱いているがキャベツに群れられて何も

しなかった彼女が悪いのであって自身はそれを助けただけである

ともかくとしてアレ、ダクネスを仲間と思いたく無かったためか攻撃はクリーンヒットしたが

無言で太陽の光の癒しを使ったので許して欲しい、逆に奇跡を使った瞬間にダクネスからの眼は

実に残念であるという顔をしていた、ドが付くほどのマゾヒストらしい、貴族がそれでいいのか

 

それとも異世界の貴族と言うのはマゾしかいないか、であれば王族とはどうなるのか?ドマゾか?

実に異なる次元らしいカルチャーショックを与えた所で火継ぎには何も関係がないだろう。

ただ静かに目線からそういう人間を逸らすだけだ、火継ぎはサディスト側の人間なのでそういう

人種から求められるという可能性がある為にそういう属性をひた隠しにせねばと考えた。

 

ダクネスに魔術を使った時点で手遅れであるが火の無い灰には分からない問題であったのだろう。

 

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