NieR:Automata It might to [BE] 作:ヤマグティ
アコールの事詳しく知らないとかなり「?」となります。知ってても「?」となります。
僕もアコールの事調べてもよく分からないので「?」となってます。
あとおまけなのに少し長いです。ぶっちゃけ読まなくても良いです。
Episode.?? 命名。It might to [BE]
暗い廃ビルの中、苔が生え、所々ひび割れた薄暗い部屋に風変わりなライトの光の下で何かを執筆する一人の女性がいた。
小声でなにか呟きながら、紙に文字を書き続けている。
「□□時△△分◆◆秒、上空にて明確なルート分岐が観測された。今まで確認されてきたC,D,E,その他,のルートに繋がっていたルートとは明らかに違った状況になっており。現在調査を継続中。」
「新たに分岐したルートは、今までのルートと違い9Sが2Bの搭乗していた飛行ユニットを意図的に撃墜し、彼女を逃がした所から始まったらしい。興味深いことにその後9Sは既存のルートの2Bと酷似した状況、状態で死亡。さらに2Bまでもが既存ルートの9Sのような状況・状態に陥っているというのだ。いや、状況・状態だけでない。言動、行動までもが報告の記録には酷似して存在していた。」
「この観測報告を受けたときは本当に驚いた。そして同時にこの分岐は非常に興味深いとも思った。」
「今まで観測されてきた分岐とは、[全くもって結末が異なるルート]と[過程に多少の差異があれど結末は収束するルート]の二つに分けられていた。恐らくは今回のルートは後者にあたるだろう。しかし、❬過程に多少の差異❭といえど❬観測対象の立ち位置そのものが入れ替わる❭などというのは前列がなく、恐らくこれが初めてである。そのため私はこのルートを率先して担当し、要監視・調査することに決めた。」
「現在分岐の中心的存在とされる観測対象2Bは意識不明の状態をレジスタンス軍所属のアンドロイドに保護され、治療を行っており……____
________
「…ふぅ。ここら辺で一端休憩にしましょう。」
暫くして、ひとしきり書き終えると、彼女はそう言いメガネをあげ、目を抑える動作をした。
彼女の周りには沢山の紙が山になって置いてある。
「少し書きすぎてしまいましたね。添削しましょう。」
そう言い、紙を手に取り読み進めていく。
「………この情報はいらないですね……あとここも……これもそうですね……。」
「……随分薄くなっちゃいましたね…。でも重要な情報を簡潔かつ無駄なく伝えるにはこれぐらいがちょうどいい……やっぱりレジスタンスや機械生命体一人一人の傾向報告はいりませんでしたね……反省です。重要な情報だけまとめて書き直しましょう。」
そう言い、再び白紙の紙に書き始めた。
私はアコール。観測者だ。
観測者というのは、私達の役割の呼称。
世界を大崩落(フォールダウン)から救うべく、世界を観測し、調査し、あるときは導く者として作られた存在。
私はここでこの世界。「母体」が襲来してから10000年近く経ったこの地球という星で、とあるアンドロイド達の観測をするのが主な仕事だ。
私はこの観測者という役割が好きだ。
人間模様、世界観、ドラマ、戦い、あらゆるものへの観測が私の知的好奇心を満たしてくれるから。
そして特にこの時代の地球が大好きだ。多分私はsfチックなものが好きなんだろう。
だから私はいつもこの世界の観測をしている。と言ってもこの世界での、ここの年代の出来事は大きく分けて2つの結末にしか帰結しないのだが。
だが私は何度この世界の分岐世界の観測を担当し、何度同じ結末を観測しても飽きない。それほどまでにこの世界が好きだ。
そして今回。私はこの分岐世界で新たな分岐が発見されたと報告を受けた。
細かくわけても26個の結末の観測が限界だったこの世界に、あらたな結末がありえるかもしれないという事だ。
その時私は別の分岐世界の観測を担当していたのだが、それを聞いて急いでこちらの担当を申し出た。
なんと新たな分岐は観測対象の立ち位置が入れ替わったという今まで観測してきた中でも異例の事態だった。
まだ本格的な観測は始まってもないのに、もう既に私の心はワクワクとしている。どれくらいワクワクしているかというと、例えどんな結末になったとしても私は満足して受け入れられるだろうという確信がある程にワクワクしている。あぁでもこの目で分岐の瞬間を見れなかったのだけが凄く残念だ。前の分岐に長居しすぎだったのは本当に反省すべき点だろう。なにせCは本当に彼女の生き様が素晴らしいから………__________以下割愛。
………。
「…今日で分岐発見から9日目…。そろそろ彼女も合流してきてもいい頃なんですけどね…。」
調査記録を書きながらそんな事を私は呟いた。
この分岐世界を最初に担当していたのは私ではない。また別の担当が最初この分岐世界にいて、その担当が今回の分岐を発見したのだ。
「まぁ…。彼女なら正直居ても居なくても大して変わらないんですが……。」
そんな失礼な独り言を言っていたちょうどその時、扉の向こうからノックが鳴った。
「入ってどうぞ。」
ガチャリ。
扉が開き、カツカツと一人の女性が入ってくる。メガネをかけた黒髪の女性。ヒールを鳴らすその歩き方は足を横から前に出すという非常に不自然なもので、見る者は不気味に感じるかもしれない。
と言ってもこれが私達の普通の歩き方なのだが。
「すいませ~ん。遅れちゃいました。」
間延びした声が部屋に響く。
彼女はアコール。いや、彼女もアコール。彼女こそこの分岐世界を最初に担当していたアコールだ。
「何をしていたんです?随分と遅かったですが。」
「あ~。ちょっと釣りしてました。楽しかったもんで数日ほど長引いちゃいました。」
…。
……このやる気の無さそうなアコールが、この分岐の発見者だ。
彼女は私…いや、数多いる私達アコールという観測者の中でも少し変わったアコールだ。
「……報告が初観測の数日後ってのはどういう事です?」
「いや~馬鹿正直に全部話すかどうか迷…あ。いや初めての事で頭の整理が追い付かなくて…。て、てへへ…?」
「……?……ハァ…。」
とまぁこんな感じで、彼女は自分の職務に対する責任感が非常に薄い。
いや、それだけならいいが…彼女たびたび職務放棄もおこすのだ。
適当にコピペして報告してくることもあれば、飽きたからといって途中で観測を止めて次の観測に行くこともたびたび。
私がこの分岐への担当変更許可が下りたのも、多分彼女が信頼されてないからだろう。
だが、彼女がそうやってコロコロと分岐を渡り歩いていなかったらこの分岐世界が見つかってなかったと思うと、それはそれで感慨深くもあるなと感じる。
「……あれ?貴女ケースは何処です?」
ふと彼女が私達アコールの観測道具の詰まったケースを持っていない事に気づいた。
「あ~あれ重いじゃないですか?だから」
「…どこかに置いてきたんですか?」
「いえ、頼んできました。多分もうすぐ来るんじゃないですかね。」
「……?」
ブロロロロ……
ふと、遠くからエンジン音が響いてきた。
そして、
ドバンっ
っとドア突き開けて、顔のついたバイクが部屋に入ってこようとして扉の縁で引っ掛かかった。
「こんにちはー!頼まれていた荷物です!ってやや!?アコールさんが二人!?」
「アコールさんって双子だったんですか!?」
少年のような声をした顔つきバイクが驚きの声をあげる。
「あ~…まぁそんなとこですね。あちらは私のお姉ちゃんです。」
「へーお姉さんですか!初めまして!」
「初めまして。」
違和感ないように、私は平然と挨拶する。
「そっかお姉さんか……。…。お姉さん…。」
「?どしたの?」
「あ、いえ何でもありません。ハイこちら頼まれていた荷物です!では僕はこれで!」
そういってアコールが顔つきバイクからあのケースを受けとる。
「エミール宅配サービスをご利用頂きありがとうございましたーー!!」
「エミール君ありがとね~!」
ブロロロロ……
そう言って、エミールはエンジンを鳴らして帰っていった。
…あの巨体で、どうやってこのビルのこの階にまで入ってきたのだろうか。
いや、それよりも。
「………ハァァァ。」
頭を抱え、長いため息をつく。
「……なんですぐそうやって必要以上の干渉をするんですかね貴女は。」
「てへへ。」
「てへへじゃありませんよもう…。」
基本的に私達観測者は観測する世界の住民への必要以上の接触を禁じられているのだが。
……のだが。……はぁ…。
「あなたはホントに観測者に向いてないですね。」
「む…。個性的と言って欲しいですね。いいでしょう私達見た目も声も全く同じなんですから。少しぐらい特徴的な方が。」
「少しとは……。」
彼女は本当に自由奔放だ。以前共に観測をしたことがあるが、その時からソリが会わない。
イノシシにちょっかいかけて一日中追いかけ回されてたり、荷物を崖の村に忘れて一緒に消滅させられて咽び泣いていたりと、別になにか迷惑をかけられた訳ではないが、彼女を見ていると…ホントこう…疲れる。
「はぁ……もういいですよ。さっさと資料まとめるの手伝って下さい。」
「は~い。」
なんとなく改善の余地が見込めない確信があるため話を切り上げて手伝わせる。
こんな彼女だが、特殊な分岐だからという事があってか、今回は珍しく自分から私を手伝うと申し出てきたのだ。
その私と共通する特殊分岐への関心に免じて今回は彼女にしっかりと手伝って貰おうと思う。少々不安だが。
「それで、貴女はどちらを担当します?」
資料を整理しながら、彼女に質問する。
「…はい?」
ピンときてないようなので分かりやすく質問する。
「いや、ですから、2BとA2。どちらの観測をしたいんですかって聞いてるんです。」
「あ。じゃあA2で。」
その即答ぶりに、キョトンとする。
だってこの分岐で一番変化があるのはおそらく2Bだ。
ここが一番気になる筈なのに。
いや確かに私が2Bの観測をしたいと思っていたけど。いいの?
「え。いいんですか?」
「いいですよ。貴女の方が情報纏めるの得意ですし。」
まさか貴女。もしかして私に気を使って…?貴女って人は…。
「私2Bの事何考えてるか解んなくてあんま好きじゃないんですよね。」
……まぁそんな事だろうと思いましたよ。貴女の事ですし。
いや、じゃあなんで貴女わざわざ手伝うとか名乗り出たんですか。本当によく解りませんねこの人。
「…わかりました。では私は2Bの観測を担当しましょう。」
「お願いしま~す。」
「ではA2の観測はよろしくお願いしますね。特にポッドとの関係性は特に注視してくださいね。私の予測が正しければ、このルートで彼女に付き従うのはポッド153ですから。」
「ほ~い。ポッドとのやり取り大事っと。メモメモ…あ、そうだ。」
「なんです?」
「このルートの名前ってどうなるんですかね?だってもうAからZまで埋まっちゃったんでしょう?」
「ルート名を今からですか?……あーでも…。そういえばそうですね…。」
ルート名。それはそのルートで起きたこと・そのルートを表すにふさわしいことを英文で書き、そこからアルファベットを一文字撰ぶことで決めている。
or not to [B]e
The [E]nd of yorha
といった感じで。
だが、通常大体Eまでで全部埋まるのに対し、この世界の観測対象の三名はたまに奇行を起こすせいで予期せぬ分岐を作ってきのだ。
aji wo [K]utta
mission [F]aild
deb[U]nked
fa[T]al error
……
そのせいでAからZまで全部埋まってしまったのだ。まぁ私は観測していて楽しかったから別に気にしてないですけど。
「どうするんです?ダブりが出ちゃうと何か気持ち悪いですし…。」
「……そうですね…。」
ルート名を決めるのは基本的にそのルートを担当しているアコールだ。彼女に任せようかと思ったが、少なくとも私の方が彼女よりいい名前考えられるとは思うので頭をフル回転させる。
…よし。我ながら良いのができた。
「…では、こんなのはどうです?」
「お?」
「もしかしたらあり得た話。という意味合いを込めて…すこし文法的には変ですが、It might to be というのはどうでしょう。」
「はぁ…。その場合だとアルファベットはどうなるんです?」
英文には大して興味がないようだ。まぁいいでしょう。アルファベットの方に自信があるので。
「[BE]」
少し間をおいて、言った。
「…[B]?それじゃダブって」
「違います。[BE]です。bとeで書かれる、命令形とか助動詞とかに使われてるあれです。」
「あ~…それが…?」
まだピンとこないようだ。
「[B]と[E]、彼女にぴったりの2文字でしょう?」
「…あ~!確かにそうですね!」
自信があったとはいえ、珍しく彼女が感心そうな声を挙げたので何だか少し誇らしくなった。
「…いやでもやっぱ[BE]って変じゃないですか?2文字って……。変ですね。やっぱ変ですよ。」
と思っていたらあっさり否定してきた。彼女にはもう少し思考が行動と同じくらい単調であってほしい。
「[!]とか[?]とかの方が良くないですか?」
「英文どうするんですかそれ……。」
「え~でも良さそうじゃないですか? [!?]とかも面白そうでしょう。そうだ私にも考えさせて下さいよ!きっと面白い名前考えますよ!文法的にもちゃんと合うようにしますから!」
「却下です。劇的な変化が無い次第は[BE]でいきます。」
彼女の言う面白いはなんとなく嫌な予感がするので即却下する。
「え~~~~。」
彼女の今日一番の間延びした声が部屋に響いた。