NieR:Automata It might to [BE]   作:ヤマグティ

20 / 38
A2の平和な休憩回も多分ここまでなので初投稿です。



Episode.17 [平和ナ彼ラ]

 

 

パスカル村ってのはあれだろうか。

 

無理矢理メンテナンスされてすっかり調子の良くなった体でマークされた場所に向かっていくと、巨大な木を取り囲むように建設された住居群が見えてきた。

 

村の少し手前まできて止まる。

 

足がいきなり動かなくなった訳ではない。なんなら好調だ。

 

あの二人に濾過フィルターも直して欲しかったが、やはりないものはないので直せない。

 

 

……機械生命体の村というのにまだ少し抵抗があるようだ。

 

[ヨルハ機体A2のパスカル村への訪問に対する抵抗感を関知。]

 

[現在ヨルハ機体A2はクリーニングを施された清潔な状態であるため、人目を心配するような抵抗感を感じる必要はない。]

 

「そういうことじゃない。」

 

このハコ本当に失礼だな。

 

ふと、クリーニングされた体を見る。

 

さすがに塗装剥げやパーツ剥げまでは直せないが、汚れや自然治癒で治りにくかった小さな傷などがパッと見てわかるくらいキレイになっている。あとなんかいい匂いもする。

 

デボルとポポル。双子型っていうのもそうだが、メンテナンス技術やこんな技術をもっているなんて珍しいアンドロイドだった。

 

こんど礼になんかしてやろう。

 

…それにしても、アネモネもそう言っていたが、私と2Bが似てるのは客観的に見てもそうらしい。

 

A[2]。 [2]B。

 

私と2Bは同じ二号型だ。

 

恐らく私と2Bは顔だけじゃなく同じベースの義体が使われてる。

 

だって元々私は…私達はデータ取りの為だけに作られたヨルハだったんだ。取ったデータが今のヨルハ部隊で流用されてる筈なんだ。

 

待てよ?そうなると、もしかして2Bは私の……姉妹機みたいなものか?

 

…「姉妹」か。もしかしたら2Bに感じているこの親近感はそれが理由かもしれないな。

 

 

 

 

 

 

…いい加減村に入ろう。またハコに急かされそうだ。

 

 

 

村に入ると、機械生命体達が談笑したり、じゃれあっていたりするのが見えた。

 

「機械生命体だらけ…」

 

[ここは、パスカルの管理する平和的な機械生命体のコロニー。機械生命体が多数存在するのは予測の範囲内。]

 

[疑問:ヨルハ機体A2の予測能力。]

 

「そのうち、ぶっ壊す……。」

 

さっきのもそうだったがコイツ絶対私の事煽ってきてるよな。キレそう。

 

敵意を感じない機械生命体達を横目に、村の中に進んでいくと、あの機械生命体。パスカルがいた。

 

「ああ!あの時の!」

 

私が話しかけようとすると、向こうが先に口を開いた。

 

「助けて頂き、本当にありがとうございました。」

 

あの時の礼をまた言われる。

 

「…」

 

燃料用濾過フィルターが欲しいと言いたいが、機械生命体にものを頼むということへの抵抗感から何も喋れない。

 

「…それで、何の御用でしょうか?」

 

「……………」

 

「あの…。」

 

パスカルは私が何がしたいのかわからないので困惑気味になっている。

 

[説明:ヨルハ機体A2の燃料用濾過フィルターに不具合。]

 

[経過:レジスタンスキャンプリーダーのアネモネより情報を入手。]

 

[目的:当地区のフィルターを入手するために来訪。]

 

[要求:燃料用濾過フィルター。]

 

「全部説明するな。」

 

[報告:A2の発言不足よるコミュニケーション不足によるもの。]

 

「うるさい。」

 

これにいたっては悔しいが何も言い返せない。

 

「あぁ、成る程。そういうことですか。」

 

「でしたら、少し待ってて下さい。今から作ってきますので。」

 

そう言うと、シュゴオオオオとパスカルが飛んでいった。

 

「飛んだ……。」

 

と思ったら戻ってきた。

 

[パスカルの帰還を確認。]

 

見ればわかる。

 

「ハイ、どうぞ。」

 

燃料用濾過フィルターを渡された。本当に作ってきたようで、見てわかる程に新品だ。

 

「……………」

 

……作るの早いな。

 

 

「……おや?まだ何か御用ですか?」

 

濾過フィルターを貰っても此処を後にしない私にパスカルが疑問そうに聞く。

 

「……フィルターをタダで貰ったからな。」

 

「借りを返さないと気が済まない。」

 

私だって礼くらいは出来るつもりだ。

 

「なんと、それは律儀な。」

 

「そうですか。でしたら……………

 

 

 

 

 

 

その後私は、広間に現れた暴れん坊の退治をして、村の子供達の遊具を作らされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「平和的な機械生命体か…。」

 

シャーーー。

 

作らされた遊具、滑り台を滑りながらそんな事をふと口にする。

 

なんというか、争いを捨てた機械生命体というのが私の思っていたのと違った。

 

ここの村人は本当に争いが嫌いなようで、話し方は無機質な筈なのにどこか物腰が柔らかく感じる。

 

村の子供達(殆ど見た目同じなのに子供って何だよ)は無邪気なやつらで、私の事気軽にお姉ちゃんとか呼んできて生意気だが、遊具を作ってやるととても喜んでいた。お礼にどんぐりを貰った。

 

村人も頼み方に少々厚かましい所があるような気もするが、頼まれた分の報酬もキッチリと分けてくれる。

 

此処は文字通り平和を望む機械生命体達で構成されているらしい。

 

 

[推測:パスカル達と友好関係を結ぶことで更なる資材入手が可能。]

 

[推奨:今後のパスカル村との交易。]

 

ポッドが私にそう提言する。

 

コイツは此処との交易することになんら抵抗がないらしい。

 

このハコが利害とかを重視しそうな淡々とした奴であるとはいえ、9Sが死ぬ理由になった機械生命体の肩を持つような事をするようには思えないが…

 

…いや待てよ。

 

以前パスカルを助けたときにパスカルがコイツを見たことあるような反応をしてた気がする。

 

あぁ、そうか。多分コイツは以前9Sと共に此処に来たことがあるんだろうな。

 

此処の連中は大丈夫だって事を前から知っていたってわけだ。

 

9Sの記憶もそういうのを見せてくれれば便利なんだがな。

 

 

…平和的な機械生命体と交易か。

 

 

「……ふん。」

 

 

まぁ平和な機械生命体ってのは面白そうだし、考えてやるか。

 

 

[……]

 

「どうした?まじまじと私を見て?」

 

[……]

 

「……?変な奴だな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

村の子供達にまざって律儀に滑り台の順番を待っているA2の姿は、ポッドの目には非常にシュールに映っていた。

 

 




でも実際生まれて初めて滑り台やったら面白くて何回もやっちゃうと思う。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。