NieR:Automata It might to [BE]   作:ヤマグティ

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皆さん「あっあっあっ…。」ってなってると思う回なので初投稿です……。


Episode.18 [崩壊ヘノホコロビ]

 

 

 

 

 

 

豊かな自然に囲まれた森の機械生命体コロニー。

 

その村長である私は今日も感情や哲学への勉強に励んでいた。

 

今日読んでいるのはこのニーチェという昔存在していた人間の哲学書。

 

 

「ふむ……「国家が終わるところではじめて余計者ではない人間が始まる」か。」

 

「うーむ。どうもこのニーチェという人間の考えは深いですね。」

 

「深すぎて、私にはまだ変人にしか見えませんが。」

 

人間というのは色々な思考を持っていたようです。哲学というのはその中でも取り分け知的で興味深く、また理解が難しい。

 

在りし日の彼らは哲学という物を考え、この不条理だらけの世界に何を感じていたのでしょうか。

 

 

「さて…本だけでなく。私もこの世界を見て回らないといけませんね。」

 

哲学書をキリのいい所まで読んだ私は書を閉じ、部屋から出て今日も村の見回りに向かう。

 

「ねぇねぇ!パスカルおジちゃん!あそんデー!」

 

「「あそんでー!」」

 

部屋から出ると、ちょうど私の所に遊びにきた子供達がいた。

 

「おやおや。随分と言葉が上手になりましたね。」

 

「でもまだ、勉強が終わってないじゃないですか。」

 

遊んであげたいのも山々ですが、甘やかしすぎてもいけない。

 

「今日は植物の図鑑を呼んで覚えるって約束でしたよね?」

 

我々機械生命体は本当はそんな事しなくてもデータをインストールすれば大体の事は覚えられますが、大切なのは自分の意思をもって学びに励む事です。

 

「ジゃあ、勉強が終わっタら。遊んでクレルー?」

 

「「アソんでクレルー?」」

 

「もちろん遊びますよ。パスカルおじちゃんは、ウソをつきませんからね。」

 

「ウソをつく子は悪い機械生命体になっちゃいますよー?」

 

そう言ってちょっと脅かしてみる。

 

「キャー!」

 

「「キャー!」」

 

子供達が楽しそうに悲鳴をあげた。

 

ふふ。今日は勉強が終わったら何して遊んであげましょうかね。

 

 

ズズン……

 

 

「……ん?なんでしょうか……。」

 

こんな騒がしい音をこの村で聞くのは初めてですね…。

 

 

 

 

 

 

 

 

_____________

 

 

 

 

「よし、あとはこれをパスカルの所に持ってけばいいんだな。」

 

私はパスカル村の住民から、パスカルに哲学書をあげたいという頼みを聞いていた(正確には聞かされた)為、レジスタンスキャンプのアネモネから哲学書と、そのついでに以前パスカルがアネモネに頼んでいたらしい素材を貰って届けようとしていた。

 

 

哲学書。気になって少しパラパラと読んでみたが、なんというか…難しいな。暇があったら読んでみたいが、完全に理解できる自信はない。

 

 

 

ピピッ

 

ふと、通信が入る。

 

『……聞こえますか!?A2さん!』

 

パスカルからみたいだ。ジャストタイミング。

 

「あぁ。丁度よかった。頼まれていた素材が今…」

 

『A2さんっ!村が…大変なんです!』

 

聞こえてきたのはパスカルの必死な声。

 

『村人たちが……ああっ……!!』

 

パスカルが悲鳴をあげた同時に通信が切れた。

 

「おい!パスカル!どうした!?」

 

「一体…何が……。」

 

[推測:貴重な情報源であるパスカルに問題が発生。]

 

あのパスカルがあんなにもなっているなんてただ事じゃないだろう。

 

[推奨:パスカルの村の状況調査。]

 

「言われなくても……!」

 

初めてコイツと同じ事を考えた気がした。

 

 

 

 

 

駆け足でキャンプから村に向かう。

 

村のある森に入ると、火の手が上がっているのが見えた。

 

これはまさか…襲撃か!?

 

だが、村に入ると、それよりもとんでもない事になっていると思い知らされた。

 

「ギャアアア!!」

 

「痛イ!イタい!!」

 

 

「なんだこれ……機械生命体同士が共食いしてる……!?」

 

機械生命体たちが村人の機械生命体を共食いしている。

 

いやまて、あの共食いしてる奴らも村人だった奴らじゃないか!?

 

 

「パスカルは…!?」

 

まさかアイツも喰われたなんて事ないだろうな!?

 

[通信不能の為、確認できず。]

 

「クソッ…。」

 

村は危険な状態だが、パスカルを探すべく村に入る。

 

すると何処からかパスカルが私に気づいて駆け寄ってきた。

 

「ああっ!A2さん…!」

 

「どうしたんだ!?」

 

「わかりません…いきなり一部の村人たちが暴走して…仲間を襲い始めたのです。」

 

やっぱりアイツら村人だったのか…。

 

「子供達だけは別の場所に逃がしたのですが、他の村人は……」

 

パスカルは子供達を早く逃がすためとはいえ、一度村に取り残してきた他の村人の事を救いたいとここに戻ってきたのだろう。

 

だが、

 

「このままだと、お前も喰われるぞ!」

 

「ここはなんとかするから、先に逃げろっ!」

 

「A2さんは!?」

 

「こんな雑魚どもにやられる訳ないだろう!さっさと行け!!」

 

「は、はい!」

 

そう言ってパスカルはもと来た道を戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで、全部か…」

 

刃がオイルに濡れた大剣を納刀し、辺りを見渡す。

 

辺りには暴走した村人と、喰われた機械生命体の残骸が転がっている。

 

暴走した村人はこれで全て片付けた筈だ。

 

「生き残っている機械生命体は?」

 

[存在しない。全て機能停止している。]

 

「そうか……。」

 

駄目だったか……。

 

パスカルに通信する。酷だが伝えなければならない。

 

「パスカル。聞こえるか?」

 

『ああっ…A2さん。村は…村の皆はどうなりましたか!?』

 

「すまない……。ダメだった…。」

 

『そんな…。』

 

パスカルの声が暗くなっていく。

 

「子供達は、大丈夫か?」

 

『…廃工場跡地に避難させています。』

 

「わかった。ひとまずそっちに行く。」

 

通信を切り。工場跡地に向かう。

 

一体…一体アイツらに何が起きたんだ?アイツら今までは普通だったんだろう、なんで突然に…。

 

 

 

 

 

 

 

パスカルの反応がある工場跡地の建物の中に入る。

 

「大丈夫か!?パスカル!」

 

「ああっ…A2さん…。」

 

パスカル。子供達もいる。良かった。無事みたいだ。

 

「一体何があったんだ…。」

 

さっきに比べれば冷静になっているパスカルに再び何があったのかを尋ねる。

 

「わかりません…。いきなり一部の村人達が同じ仲間を食べ始めたのです……。」

 

「A2さんが来て下さらなかったら…私達もきっと……。ありがとうございました。」

 

パスカルからもう何度目かの礼を言われる。

 

[疑問:機械生命体は素材さえあれば再生できるのではないか。]

 

ふとポッドが疑問を口にする。確かに考えてみればそうだ。

 

だが、

 

「いえ……実は私達には『コア』と呼ばれるユニットがあります。」

 

「このコアは自我データを形成する物なんですが、それを破壊されてしまうと元に戻ることは出来ません……。」

 

「コアは普段は安全な場所に格納しておくのですが…今回犠牲なった村人達はコアごと破壊されてしまっているので……。」

 

「……そうか。」

 

コアか…。私達でいうブラックボックスみたいな物が機械生命体にもあったのか。

 

「この工場は安全なのか?」

 

「以前、暴走した機械生命体が住んでいたのですが、2Bさんが撃退してくれて。今は安全なんです。」

 

2B…。9Sがそうなら当然だが、2Bもパスカルと面識があったのか。

 

「ここしばらくは、私達が資材置き場として使っていました。」

 

「わかった。……ここで籠城するにも、もう少し情報が必要だな…。」

 

[推奨:パスカル達の早急な安全確保。]

 

「そんなに急がせるな……。」

 

[各地のポッドネットワークから情報を入手。]

 

……ポッドネットワーク?複数機いるのか?

 

「お前達に仲間がいるのか?」

 

[肯定。]

 

[本工場廃墟に、大型機械生命体が接近しているとの報告あり。]

 

「何だって!?」

 

その事実を肯定するかのように、床が小さく揺れ始めた。

 

ズシン……ズシン…。と部屋の外からも音が聞こえてくる。

 

「ひぃ!コワイ!コワイ!」

 

「「コワイ!!」」

 

子供達が地響きに怯えだす。

 

遠くからでも足音が聞こえてくるなんてそんなにデカイ奴が…!?

 

「……ここを攻撃される前に、叩き潰す…!」

 

どんな奴だろうが倒すしかない。私は部屋の外に出ようとする。

 

「わ、私も援護します!」

 

「あいつらを叩き潰してぶっ殺します!!」

 

パスカルも着いてこようとする。あのパスカルがこんな事を言うなんて、どうやら本気らしい。

 

だが、

 

 

 

 

 

 

「……いいや、ダメだ!お前はここに残れパスカル!」

 

 

 

 

 

 

 

「…!?どうしてです!私も戦えます!」

 

パスカルが食い下がる。

 

確かに今近づいてきてる奴は未知の敵だ。加勢はあった方がいい。

 

たしかにそう思ったが、やはりダメだ。

 

「村人が突然暴走した以上。子供達だって暴走する可能性があり得る!」

 

「もしそうなった時、止められる奴が必要だ!」

 

その可能性に咄嗟に気づいたのだ。

 

「……!!でも、それじゃあA2さんは…!」

 

「安心しろ、私はアンドロイドだ。お前たち機械生命体よりもずっと強い。今までも何体もぶっ壊してきたんだ。」

 

「……私を信じろ。」

 

「……わかりました…。どうか……ご無事で…。」

 

そうして、私は部屋の外に出た。

 

 

 

ズシン……ズシン……。

 

両手にカッターを携えた巨大な機械生命体が、海を歩いてもう目の前にまで来ている。

 

「……こんなにデカイのか……!」

 

その圧巻ぶりに、思わず後ずさる。

 

[警告:ヨルハ機体単身で敵機械生命体の破壊は危険。]

 

[推奨:工場内部へ後退。]

 

ポッドが私に戦うのを止めるように言う。

 

「……どのみち追い詰められるだけだっ!ここで戦って倒す!!」

 

分析力のあるお前にだって分かってるだろう。

 

[……9Sはこうではなかった。]

 

「ハッ!!それは残念だったな!覚悟決めろ!」

 

 

 

ゴオオッ

 

もう工場の目の前までやってきた機械生命体が、自前のカッターを此方に振るってきた。

 

 

 

 

 

 

「行くぞ、ポッド!!」

 

[了解。]

 




二次創作とは本来こういうものだから初投稿です。

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