NieR:Automata It might to [BE] 作:ヤマグティ
ヨコオは何故鬱シナリオばかりを作るのか?その謎を追い求めてジャングルの奥地には向かわないので初投稿です。
この世界の何処かの……いや、もういいだろう。
2機のポッドがいつものように情報を共有する。
[A2に随行していて気付いたのだが、敵性機械生命体間で情報が共有されはじめているようだ。]
[それは調査が必要だ。]
[データを共有するので、そちら側でも注意してほしい。]
[了解した。……別件だが、2Bについて報告がある。]
[なんだ?]
[データを共有するが、心理状態の悪化が既に深刻な状態にある。]
[こちらも…早急に対応が必要だ。]
[同意。]
[…………]
[…………]
数秒程の沈黙。
[…だが、対処法がわからない。]
[データオーバーホールは効果がなく、システムメンテナンスでは対処できない。]
[2Bは現在最後の資源回収ユニットに向かって進行している。]
[もう私にはどうすればいいかわからない。]
ポッド042の声は無機質な筈なのに、焦っているように聞こえる。
[……当機ポッドにも、対処は不可能。]
[……]
[……力になれず、すまない……。]
ポッド153が謝った。謝る事しかできなかった。
『こんにちは!資源回収ユニットです。防衛体勢に入ります!』
もう何度目かのこのアナウンス。
呼んでおいての防衛という矛盾した行動。
その中にある明らかな私への挑発という意図。
「何度も何度も……。」
繰り返されるアナウンスに苛立ちが募っていく。
いいや、アナウンスだけじゃない。
そもそもとして私に向かわせた回収ユニットのコアに塔への認証キーなんて物を配備している時点でおかしい。
明らかに集めさせられている。
何かの意図に利用されている。
相手の思うがままになっている。
それでも、それでも他に出来る事がない私はそうせざるおえない。
それが余計に私の怒りを掻き立てる。
ユニットの入り口に立つと、これもまた何度目かの天使文字。
[神の箱。と記載。]
「どうでもいい。」
もう天使文字への理解は諦めた。ユニットの中に進んでいく。
またエレベーターで登り、また機械で構成された鉄の床を歩いて上を目指す。
[警告:過度な戦闘行為は危険を有する。]
「黙ってて。」
ポッドはそう警告するが、私はそれを雑に拒否する。
ここに来るまでの道中で、もう何回も似たような事を聞いた。
たしかにポッドの言う通りだろう。でも、それでも私は戦い続けると決めたんだ。
私は戦い続ける。戦い続けるんだ。ナインズの為に。
[…拒否:本支援ユニットはヨルハ機体2Bの随行支援機体。]
[対象ヨルハ機体の状態を危惧する権利を有する。]
そう私の意思に対なるかのようにポッドは私の指図に背く。ポッドが背くような事は状況次第ではあり得る。得断珍しい事ではない、
「…ッ!…勝手にしてッ…!」
が、今の私にそれを許容する余裕はなかった。
それからは迫り来る機械生命体を倒し、階層を上がり、倒し、また上がり、倒す。
それを繰り返し続けた。ただそれの繰り返し。
ただ繰り返し続ける。その感覚に無性に腹が立った。
そのせいで執拗に機械生命体を斬り続ける。
ボロボロになって、もう抵抗などできない機械生命体をとにかく斬り続ける。
繰り返し続けた事の結果への喪失感が、絶望が、私の憎しみを駆り立てていた。
次の階でようやく屋上に出た。
広い場所に出た解放感から辺りを見渡す。コアのようなものは見当たらない。ここは以前とは同じじゃないようだ。
スタッ
奥から人影が現れる。私は咄嗟に武器を構える。人影ということはアンドロイドだが、ここで会うということは汚染機体だ。
両手の握る力を強くし進んでいき、人影の姿を確認する。
そして、その正体に唖然とした。
「オペレーター21O……!?」
オペレーター21O。ヨルハ機体9Sの、専属オペレーター。
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「次の作戦から私、B型部隊に異動する事になりました。」
最終奪還作戦の数日前。普段は指令室いる筈の21Oが珍しく廊下にいたから声をかけると、私にそう言った。
「…オペレーターモデルの義体は戦闘には向かないんじゃないの?」
どうしてB型に?とは聞かなかった。理由は何となく分かっている。
多分9Sだろう。
9Sの側でずっと二人の会話を聞いていた身である私には、何となく彼女が9Sとの家族愛のようなものに憧れているのが分かっていた。
地上。彼の身近な場所に行きたいのだろう。
「……確かにO型には戦闘は不向きですが、それでも地上に直接行って、地球や人類の情報収集がしたいのです。」
「それと関係ありませんが、この事は9Sには黙っていて下さい。彼に知られると……色々と面倒なので。」
21Oは淡々とした口調で平然と言う。誤魔化したいようだ。
私も深く追求はしない。
「わかった。これから地上で会う事があったらよろしく、21O。」
「えぇ。2Bさん。」
これから地上で会う事、か。そのときは9Sと一緒に居た方がいいだろうか。
……なんだか、モヤモヤするな…。
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「ガァァァァァア!!」
21Oがバグ音声のような呻き声を上げて襲いかかってくる。
ギンッ
振るってきた剣を受け止め、21Oを蹴り飛ばす。
「そんな……21O!!」
汚染されきった21Oは再び立ち上がり私に剣を振るい続ける。
「場所……座標データを……転送…」
「作戦…行動ニ関係ナイ発言……控えて下さい……」
「ハイは……一回で……イイデ……すっ……」
ナインズのオペレーターとしての会話を繰り返している。
まだ記憶が、自我が残っている。
「………21O……ッ…。」
攻撃しようとする手が緩む。仲間として、同じナインズとの記憶をもつ者として、殺すことができない。
「カ……家族……私も……ミンナと……」
「オネ……殺シテ………」
「私………本当ハ家族が欲しクテ……一人で寂シ……クて……」
「ヨルハ機体…9Sと……一緒ニ……イタクて……」
21Oの悲痛な叫びが、告白が、私の胸を締め付ける。
だが、「殺して。」その頼みが私になんとか刃を振るわせた。
わかった。わかった21O。
「私が、今殺すから……!!」
剣を片手の刀で受け止め。もう片方の手の刀で弾き飛ばす。
戦闘用スーツで補われているだけの戦闘力は、元がオペレーターとしての義体の戦闘力は、私には到底及ばない。
決着はあっさりと着いた。
剣を弾き飛ばされ一瞬手ぶらになった21Oの両腕を切り落とす。
21Oは痛みで地面に倒れ、立ち上がれずに悶えている。
やがて暴れる力を失うとうずくまり、止めを刺そうとする私に力を振り絞って聞いてきた。
「2……B……さん…。」
「教エ……て…9……Sは……無事………なノ……?」
「………ッ!!」
止めを刺そうとする手が止まる。答えるべきか、否か。
「………ナインズは…ッ…。」
言いかけて、止まってしまう
「……ッ!!………ああああっ!!」
ザスッ
知らない方が良いという思いからか、それとも事実を伝える事への罪悪感からか、21Oの頭を刺した。
一撃で止めを刺したので、すぐに動かなくなった。
[ヨルハ機体21Oのブラックボックス信号停止。]
[21Oの死亡を確認。]
ポッドはただ淡々と私に分かりきった事実を伝える。
「……ごめんなさい……ごめんなさい……。」
私は動かなくなった21Oに、ただ謝り続けていた。
スタッ
再び後ろから誰かが現れた音がする。
まだ汚染隊員が…。
そう思い、刀を強く再び握りしめ後ろを向く。
そして現れたその姿を目にして、固まった。
「A2……。」
そこにいたのは、A2だった。