ミノさん。ミノさんはいつだって私の―――

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再掲の民なので初投稿です。


みのわぎんは■■■■■■である。

「すぴー……すぴー……」

 

 一人の少女がベッドの上で安らかな寝息を立てていた。

 

 開け放たれた窓から入ってきた風が彼女の頬を撫でていく。

 

 少女は「むにゃ……もう……やめてよぉ、ミノさぁん……私のほっぺたはお餅じゃないんだよぉ」と寝言を口にしている。

 

 我々はこの少女を知っている。人々の生命を脅かす謎の敵〝バーテックス〟と戦う役目を与えられた勇者の一人、〝乃木園子〟である。

 

 園子は夢を見ていた。バーテックスという強大な敵から人々を守るために共に戦う同じ勇者の少女たちの夢を。

 

 

 

 

 

 

[Number.EX みのわぎんはゆうしゃおうである]

 

 

 

 

 

 

 神世紀290年。

 

 人類は壁の向こうより来る謎多き敵性存在〝バーテックス〟の脅威に晒されていた。

 

 長きにわたりバーテックスとの戦いを続けてきた対バーテックス防衛組織〝大赦〟は、巫女の神託により新たなる脅威が迫っていることを知る。

 

 時を同じくして空から墜ちてきたメカライオン〝ギャレオン〟と邂逅した大赦は、ギャレオンが齎した未知のテクノロジーを解析。その一部は勇者システムに組み込まれることとなる。

 

 

 

 そして、来たる神世紀298年。

 

 

 

 実に8年もの歳月を経て、ついに〝新たなる脅威〟が動き出すのだった。

 

 

 

 

 

 

「瀬戸内海沖に出現したロボット、依然進攻中!」

「住民の避難完了まであと10分ほどです」

「映像、正面モニターに出します!」

 

 〝神樹館〟の地下80メートルに存在する大赦の本部、通称〝メインオーダールーム〟では、顔を白い仮面で隠した何人ものスタッフたちがコンソールに向かっていた。中央の長官席には常のほわっとした表情の園子が座っている。

 

 メインオーダールームの巨大モニターに、海から陸に上がった巨大ロボットが映し出される。

 

 全高はおよそ20メートル。頭部は馬のような形をしており、両腕の二の腕から先は閉じた花のつぼみに似た形状をしている。

 

 スクランブルした防衛軍との戦いで、これは廃家電を寄せ集めて形成されたビーム兵器であることが判明していた。

 

「わっしーわっしー、お馬さんロボットはどこに向かっているかわかる~?」

「コンピューターの計算によると、イネスを目指しているという結論が出たわ」

「ふむぅ。目的は神樹様じゃなくてイネスか~。でもでも~、このまま放っておいたら街がめちゃくちゃになっちゃうよね~」

 

 謎のロボットは真っすぐにイネスを目指しているが、イネスを破壊して満足したから活動を停止するということはないだろう。

 

 神託の通りであれば、あのロボットは残された人類に〝大きな災い〟をもたらす存在である。ならばやるべきことは一つしかない。

 

「わっしー、ミノさんを出撃させて~」

「そのっち、銀ならもうすでに現場に向かっているわ」

 

 他のスタッフに混ざってコンソールの画面を注視していた黒髪の少女〝鷲尾須美〟が、呆れ混じりの声で答える。

 

 彼女もまた、園子と同じくバーテックスと戦う勇者の一人だ。

 

 そしてもう一人。

 

 三人目の勇者は機動部隊隊長として大赦本部を飛び出していた。

 

 自他ともに認める〝イネスマニア〟である彼女が、イネスの危機とあって飛び出さないわけがなかった。

 

『おーい、園子! まだか!?』

「もー、ミノさん~。出撃してって言うまで待機してないとダメだよ~」

『イネスの危機に黙って見ていられるかってんだ!』

「……はあ、まったく。銀らしいわね」

「ね~」

 

 メインモニターの右下にワイプが出現し、画面いっぱいに少女の顔が映っている。

 

 どうやらカメラに思いっきり顔を近づけているらしい。鼻息の荒い三人目の勇者、〝三ノ輪銀〟に苦笑をもらす二人。

 

 緊急事態だというのにここだけ雰囲気がゆるゆるだった。

 

「ミノさん。ギャレオンとフュージョンして後はよろしく~」

『おうよ! 任された!』

 

 

 

 

 

 

 大赦から発進したメカライオンことギャレオンを視認した銀は、立っていたビルの屋上から跳躍する。

 

 〝改良型勇者システム〟によって身体能力が強化されているため、いまの銀は数十メートルの高さから跳躍しても無傷で着地できるのだ。

 

ギャレオン!

 

 銀が名前を呼ぶと、ギャレオンが近づいてきて口を開ける。銀は空中で姿勢を整えて体を丸めるとギャレオンの口内に収納された。

 

フュージョン!

 

 銀の力強い声と共に、ギャレオンが銀を取り込んで一体化する。

 

 改良型勇者システムを持つ銀はギャレオンとフュージョンすることにより、メカノイド〝ガイガー〟へと変形することができるのだ!

 

 メカノイド・ガイガーとなった銀に馬頭のロボットは両腕を向ける。

 

 花のつぼみのような腕が開き、高エネルギーのビームと極低温のレーザーを同時に発射した。

 

 いかにガイガーといえど、まともに受けてしまえば撃破されてしまう!

 

「おっと、そうは問屋が卸さないってね!」

 

 腰部の〝Gインパルスドライヴ〟からエネルギーを放出し、緊急離脱を行う。

 

 一秒前まで銀/ガイガーのいた空間をビームとレーザーが薙ぎ払った。

 

 攻撃がかわされたのを認識した馬頭のロボットは肩からミサイルを発射!

 

 爆炎が空を焦がす。ガイガーはやられてしまったのか? 否、

 

「ふぃー、間一髪! 〝ステルスガオー〟が間に合って助かった」

 

 そう、我らが勇者はガオーマシン、ステルスガオーを装着することでミサイル攻撃から逃れたのである!

 

 ロボットは上半身を回転させてステルスガオーを追尾する。

 

 両腕のビーム砲とレーザー砲を開き発射形態に移行するが、漆黒の機体を翻したステルスガオーにガイガーの姿は無かった。

 

「もらった! ……なに!?」

 

 ガイガークローを展開したガイガーがロボットの背後に出現!

 

 背中をカギ爪で切り裂いた!

 

 しかしロボットは損傷を瞬時に修復すると上半身を回転させて両腕で薙ぎ払う。

 

 虚を突かれたガイガーは回避することができずに弾き飛ばされる。

 

「くっ……自己修復するのか。まるでバーテックスみたいだな……」

 

 銀は馬頭のロボットの修復速度に謎多き人類の敵、バーテックスを連想する。

 

 自己修復能力を持っているのでは、決定打に欠けるガイガーでは長期戦は不利。圧倒的な打撃力で一気に勝負をつけるしかない!

 

「……ほとんど賭けだけど、やるしかないよね……」

 

 

 

 

 

 

 戦いを見守っているメインオーダールームには、ガイガーから発せられた〝ファイナル・フュージョン〟の要請が届いていた。

 

「そのっち! 銀からファイナル・フュージョン要請のシグナルが出ているわ!」

「ファイナル・フュージョンはまだテストもしてないけど~……」

 

 ガイガーと各ガオーマシンが合体することで、より強力なスーパーメカノイドになることができる。

 

 しかし、実際のテストもまだ行われておらず実戦での成功確率は限りなくゼロに近い。

 

 だが彼女たちは勇者である。失敗する可能性が高くとも、成功率がゼロでなければ諦めることなどないのだ。須美は戦っている銀/ガイガーを見て力強く頷いた。

 

「銀が必要だと判断したのなら、信じるわ」

「そうだね~。ミノさんが決めたことは私も信じるよ~。わっしー! ファイナル・フュージョン承認するんよ!」

「了解! ファイナル・フュージョン、プログラムドライブ!」

 

 長官である園子の承認を受けた須美は、赤く点滅するコンソールに握りこぶしを叩きつけた。

 

 ファイナル・フュージョンのプロテクトが解除され、ガオーマシンがガイガーの元へと急行する!

 

 

 

 

 

 

 プロテクトの解除を確認した銀はGインパルスドライヴからエネルギーを放出して跳躍した。

 

 空中でガイガーをコマのように高速回転させつつ、腰のGインパルスドライヴから緑の奔流EMTを放ち妨害を防ぐ。

 

 ステルスガオー、ライナーガオー、ドリルガオーのガオーマシンも集結し、準備はすべて整った!

 

「おっしゃ! ファイナル、フュージョン!」

 

 メカノイド・ガイガーは三機のガオーマシンと合体することにより、重機動スーパーメカノイド〝ガオガイガー〟へとファイナル・フュージョンすることができるのだ!

 

「ファイナル・フュージョン成功! これならいける!」

 

 合体後の隙を突き両腕の砲を展開する馬頭のロボット。高エネルギーのビームと極低温のレーザーがガオガイガーに向けて発射される!

 

 背後にはイネスがあるため、攻撃をかわせばイネスが破壊されてしまう。どうする、勇者!

 

「させるか! プロテクトシェード!

 

 ガオガイガーが左腕を突き出すと、内蔵されている装備が起動して防御フィールドを形成。

 

 ロボットの攻撃を無効化し、そのまま跳ね返す! が、紫色のバリアーに阻まれてダメージを与えられない!

 

「バリアーか、ならこれでどうだ! ブロウクンマグナム!

 

 右前腕部を高速回転させ、砲弾のように打ち出す。

 

 これもバリアーに阻まれるが、力づくで突破! ロボットの頭部を粉砕!

 

 だが、もの十数秒で元に戻ってしまう。バリアーシステムに高い自己修復能力を備えた敵にどう戦う、勇者!

 

「……っ、なら、奥の手を使うしかない!」

 

 覚悟を決めた表情で、銀は両手を広げる。

 

 右の掌に攻撃エネルギーを集中、左の掌に防御エネルギーを集中、銀の詠唱と共に両掌を合わせて二種類のエネルギーを融合!

 

「てぇりゃぁ!」

 

 ガオガイガーが両手を合わせた腕を突き出すと強力なEMTトルネードが発生しロボットの動きを封じ込める!

 

ヘル・アンド・ヘヴン! はぁぁぁ!

 

 腕を突き出したままスラスターを全開にして突撃!

 

 身動きの取れないロボットの動力部である、コアを、掴み取った!

 

「勇者は……根性ぉぉぉ!

 

 そのまま力任せにコアを引きずり出して天高く掲げる。

 

 一拍置いてロボットの残骸が大爆発を起こし、ガオガイガーを赤く照らし出すのだった。

 

 

 

 

 

 

「……んぅ……夢、かぁ……」

 

 メインオーダールームで大歓声が上がったところで園子は覚醒した。

 

 面白おかしく楽しい夢の世界から、残酷な現実の世界へと。

 

「……ミノさん……」

 

 ぽつりと、園子はかつて共に勇者として戦った少女の名前を口にしていた。

 

 彼女は夢の中でも勇者だった。いつか三人で見たことのある、旧世紀の世界で放映されていたというロボットアニメ。その主人公として戦っていた。

 

 ミノさんらしいなあ、と園子は思う。

 

 誰かのために強大な敵に立ち向かう。何度傷つき倒れても立ち上がる。いつもいつも無茶ばかりして、ハラハラさせて……。

 

「…………もう少しだけ、お昼寝しちゃおうっと」

 

 瞼を閉じる。

 

 例え夢の中の幻だとしても、みんなのために戦う彼女の姿を見届けたいと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[次回予告]

 

 君たちに最新情報を公開しよう。

 

 奇跡のファイナル・フュージョンを成功させ、敵ロボットを撃退した銀。

 

 勝利を喜ぶ暇もなく、新たなる敵が、街を平和を踏みにじる。

 

 合体不能に陥るガイガーに、勝利の女神は微笑むのか!?

 

[みのわぎんはゆうしゃである NEXT.ゆうきあるものたち]

 

 次回もファイナル・フュージョン承認!



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