それでもやはり化物と呼ぶには十分すぎる力を持つ。
オウガテイルを食べた腕の正体に関する説明と戦闘の続き、カバラ・カバラ迎撃戦の後半になります。
新型AGEの持つ捕喰能力。
ゴッドイーターも対象にするため、触れるだけで人間に危害を加える危険性を持つこの捕喰能力だが、元をたどれば灰域種アラガミから獲得した能力の1つである。
オラクル細胞の群体であるアラガミは、捕喰した存在の特性を取り入れ進化する性質を持つ。
自らの進化の方向性を決める為に偏食傾向に直結するこの特性は、当然灰域種アラガミも有しているため、バルムンクのような無機物や機械も取り込みレーダーのような目を手に入れる進化を遂げた存在もいれば、ドローミのようにAGEを狩る対GE戦闘能力に特化する進化を遂げた存在もいる。
そしてこの能力は、新型AGEにも現れた。
アラガミと違う点をあげれば、ギストの捕喰は“オラクル細胞”を捕喰することに特化し他を取り込むことを拒絶する偏食傾向に進化したという点だろう。
ギストの場合、オラクル細胞を捕喰対象とみなす偏食傾向となったことで人間であれ穀物であれ無機物であれオラクル細胞を有さない物体はそもそも捕喰対象とすることはなく、オラクル細胞の結合を破壊する神機に対しては天敵とみなすためか捕喰を拒否する傾向を見せた。
この偏食傾向は逆に言えばゴッドイーターを含めるアラガミ全般を捕喰対象とする偏食傾向であり、それらを取り込む傾向が強いということになる。
先述の通り、灰域種アラガミの捕喰もまた、捕喰した対象の特性を取り込み進化する性質がある。
それは新型AGEの捕喰も同様であり、ギストはアラガミを捕喰することでその特性を取り込み自らの肉体を進化させるという能力も手に入れていた。
それが背中から発生しオウガテイルを取り込んだあの腕である。
これはヌァザから取り込んだ性質をもとに手に入れた能力であり、触れた対象を侵蝕しヴェノム化を付与する毒の腕と称するに相応しい存在を形成して敵対者への攻撃に利用するというものである。
ギストの肉体は、そのほとんどがオラクル細胞によって構成されている。
さらに今までの戦闘を積み上げてきた中で取り込んだアラガミの特性を反映させ進化を続けてきた。
桁違いの身体能力と回復能力に加え、喰ったアラガミの力も獲得し反映させる。まさに人間離れした化物と呼ぶにふさわしい存在となっていた。
しかしその制御は完璧ではない。
アラガミから取り込んだ性質の多くは基本的にギスト自身の意図に合わせて動作するが、どちらかというと捕喰と生存の本能に従う傾向が強いため、ギスト自身もどうしても手が回らないときでなければ表に出すことができず使用する機会が少ない力である。
外見こそまさしく異形そのものであるが、この斃したアラガミから取り込んできた能力は人の域を逸脱した芸当を可能とする様々な面で大きな効果を生み出す存在であり、単独では到底勝てないアラガミ相手にも白星の戦歴を作り出し、この6年間想定外の事態で危険にさらされることがあっても必ずアルゴノウトの人類を守り通し1人の戦死者も作らなかった要因の1つとなっている。
カバラ・カバラを前にして、破けて背中がむき出しとなった外套とその下の戦闘服を脱ぎ上半身を晒すギスト。
死体のように生気を感じさせない真っ白の肌で覆われたその体は、巨大な刀身を持つバスターブレードを振り回し人間の域を大きく上回る曲芸のような機動をみせるには不足しているように見える、無駄な脂肪は削ぎ落とされ鍛え抜かれているものの常人の域は出ない程度の体つきとなっている。
しかしそれを構成するのはたんぱく質ではなく、オラクル細胞。
外見に特別な威圧感を見せつけるものはないが、その身が発する身体能力は通常のゴッドイーターのものを遥かに上回る。
ギストは脱いだ外套をその場に置くと、神機を脇に構えて地面を蹴り二体のグボロ・グボロ神属のアラガミたちへと向かっていった。
向かってきたギストに最初に反応したのは、グボロ・グボロの方である。
砲台を起こし、オラクルエネルギーの形成する巨大な水の大砲で攻撃する腹積りである。
ギストは神機の装甲を展開して前面に持ってくると、その場で地面を蹴り、カバラ・カバラへ向けてダイブを敢行。
グボロ・グボロの放つ砲撃をタワーシールドで防御しつつ、カバラ・カバラとの距離をいっきに詰めた。
派手な外観を持つカバラ・カバラだが、感応種としての能力は確かにゴッドイーターにとって大きな脅威となるものだ。しかし、本体の戦闘能力は通常のグボロ・グボロとさほど変わらない。
個のアラガミとしてみた場合、感応種に神機の制御を奪われることの無いAGEであれば中型を討伐できる程度の腕を持つならば十分に対応可能な相手である。
距離を詰めてきたギストに対し、ところどころ欠けている不揃いな牙の並ぶ大きな口を開いて噛み付いてくるカバラ・カバラ。
頭は狙われていない。
ならば神機を確実に当てられるタイミングを逃してまで避ける必要は無いと判断し、青い刀身を持つ巨大なバスターブレードの神機を片手で持ち上げて、回避することなくカバラ・カバラの牙を受ける。
不揃いな牙の並ぶ巨大な口が、外套と上の戦闘服を脱いでむき出しとなっているオラクル細胞で形成されたギストの上半身に食らいついた。
そのまま腰から下と首から上を残し、体を喰われて死ぬ。
普通のゴッドイーターだった場合はそうなるだろう。
だが、カバラ・カバラの牙はギストの体を食い破ることができなかった。
牙は通る。肉に食い込み、骨格を砕き、強力な顎の力がその白い肉体を破壊する感触はある。
だが、喰い破れない。
牙は確かにギストの身体に刺さっているが、破壊する側から壊れたオラクル細胞の結合が再構築されていきカバラ・カバラの牙を止め、逆にその牙を構成しているカバラ・カバラの方のオラクル細胞を侵蝕してきたのである。
触れるだけで他者のオラクル細胞を侵蝕し捕喰する、新型AGEの肉体。
それに直に触れることがあれば、アラガミの方が場合によっては無事では済まない。
ドレッドパイクのツノ、ネヴァンやクロムガウェインの爪、グボロ・グボロの牙、シユウの翼腕など、攻撃に使うために他の箇所に比べ強固な結合をしているオラクル細胞に対しては触れた程度の侵蝕は効かないことが多い。
だが、カバラ・カバラの牙は他のアラガミを制御する感応種として進化をした際に捨てた、本体そのものの戦闘能力の一部であり、この不揃いな牙はグボロ・グボロに比べオラクル細胞の結合が弱いのである。
グボロ・グボロの牙であれば、ギストの背中を抉ったように食い破ることはできただろう。
それでもその人の形をした化物を絶命させることはできないが、少なくともこの絶好の攻撃の機会を与えてしまうという事態にはならなかったはずである。
修復するオラクル細胞が牙を侵蝕し癒着したことで、牙を進めることも抜くこともできなくなってしまったカバラ・カバラ。
その目の前で、振り上げた神機にカバラ・カバラのオラクル細胞を侵蝕して獲得したオラクルエネルギーを利用し溜めていくことで、青い刀身の上にオラクルの巨大な刃が形成されていく。
これはまずいと感じたカバラ・カバラが、慌てて側にいるグボロ・グボロに、そして自分を侵蝕しようとするギストに対して感応現象を広げて支配下に置こうと試みる。
だが、カバラ・カバラの思惑が形になることは無い。
感応種アラガミへ至ったことで獲得した他のアラガミを制御する強力な感応能力は、捕喰対象の感応能力を奪う灰域種アラガミの捕喰能力を獲得しているギストの侵蝕を受けたことでカバラ・カバラから失われていた。
いつも喰らう側だったはず。
捕喰者としての絶対的な地位を獲得していたはずなのに。
その地位を引きずり降ろされ、カバラ・カバラは捕喰される側に追い落とされていた。
灰域が広がる世界で、感応種アラガミはその最大の強みを潰すことができる灰域種アラガミの餌にしかなり得ない。
適者生存。
アラガミもその絶対的な世界の輪から逸脱することはできないのだ。
彼ら感応種が赤い雨に適応し生き残ってきたのと同じように、灰域の広がる世界においてこの環境に適応できなかった存在はすべからく淘汰されていく運命にある。
ギストが神機を振り下ろす。
それはカバラ・カバラの頭部の飾り、そして天狗のように伸びた鼻と砲台を破壊し、コアを露出させる。
それを捕喰形態に変形させた神機を持って捕喰。
さらに神機の捕喰を広げ、自身の持つ捕喰の特性とともにカバラ・カバラを形成していた全てのオラクル細胞を食い尽くしていった。
後に残るのは、急速に身体に穿たれた穴を埋めていき元の姿へ回復していく、神機を携えた化物のみ。
群れの統率者は淘汰された。
カバラ・カバラの感応能力の制御から逃れたグボロ・グボロは逃亡する。
その方角は仮設拠点の方ではない。戦意を失ったあのアラガミを無理に追撃する必要はないだろう。
周辺の灰域が活発化している。
ギストが喰灰を取り込み続けているので濃度レベルの急激な上昇はなく拮抗しているが、彼がこの場にいなければ陽の光を遮る高い濃度の灰域に至っていただろう。
そして、その戦場に最後のアラガミが姿を現す。
カバラ・カバラの制御下から離れたとはいえ、既に仮設拠点とそれを守るために立ちふさがるギストに近づきすぎてきた。
手頃な餌を前にして帰るほど、アラガミという存在は慈悲深くない。
銀色に輝く甲殻に覆われたサソリ型の大型アラガミ。
ボルグ・カムランが襲来した。
次は迎撃戦の最後、ボルグ・カムラン戦になります。
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