鬼の俺が鬼殺隊にいるとか間違っている。 作:ファクト0923
蝶屋敷を訪問してから二日が経過して手紙が二通届いた。一通目は神崎からの手紙で開ける手が固まったが意を決して封を開いた。内容をざっくりと要約するとカナエとしのぶとで話し合った結果、神崎の心の傷の事を鑑みて次の訪問はもっと日を置いてから、と書かれていた。
……何はともあれ嫌われてはいないようだな、うん。今回の件はカナエが舞い上がった事、しのぶが指摘しなかった事、俺がお邪魔した事の三つの要因が合わさって起こった事件だ。やっぱ玄関で引返すべきだったなぁと考えても後悔先に立たず。後から悔いるから後悔と読むのだって言葉は誰が言ったんだか、的を射た正確な言葉だ。たられば言っても仕方がない、頭を切り替えよう。
そして二通目の封を開くとそこには新たな水柱就任が決定したと書かれており、三日後に産屋敷邸まで来るようにとの命令だ。
新たな柱…………宇髄の時のように面倒が起きないといいが、なんて有り得ない希望を抱く。また憂鬱の種が一つ植えられた。芽が出るか、はたまた……
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ついて来なくていいと言っているだろう、真菰」
「駄目だよ。錆兎と義勇だけじゃ心配だもの」
「柱でもないのに柱合会議に出るのは御法度だと思わないのか」
「大丈夫、烏経由でお館様に許可は取っているよ」
「……」
「もういい?じゃあ行こうか」
「……何で真菰が仕切っているんだ」
はぁ、と一つため息をつく錆兎、そんなものお構い無しの真菰、静かに二人について行く義勇。彼ら三人は烏の案内の元産屋敷邸に向かっている所だ。というのも先日、錆兎と義勇の元に柱にならないかという産屋敷の手紙が届いた。その手紙に承るの意を添えて返信した二人。その後新たな水柱の就任を祝う為、他の柱に周知してもらう為産屋敷邸まで来て欲しい、との手紙が届いた故一行は歩を進めている。
因みに義勇は自分に柱は務まらないと辞退の返事をしようとしたが錆兎と真菰の両名に説得され渋々首を縦に振ったという出来事があったそうな。
真菰は柱ではないものの階級は
楽しそうに先行する真菰に呆れながらも錆兎も三人で一緒にいられる事が嬉しい事もまた事実。「義勇からも何か言ってやれ」とは言うものの吊り上がった口角が隠しきれていない。
そして義勇も二人と同じ思いである為何も口に出さない。……普段から静かではあるが。
和気藹々とした雰囲気で歩いていたらいつの間にかもう屋敷が近い。初めて顔を合わせるお館様や他の柱に想いを馳せながら門をくぐる三人。烏の案内により白州のような所に到着。どうやら既に他の柱がいるようで声が聴こえる。
「なぁ、やっぱ今からでも帰ったら駄目か?」
「駄目です、お館様にお叱りを受けますよ」
「安心しろ、産屋敷の許可は貰っている」
「……お館様が許しても私は許しませんからね!」
「お前に何の権限があるんだよ」
随分と仲睦まじいやり取りが聴こえてくる。錆兎と真菰の二人ははて、何処かで聴いた声のような?……と首を傾げる。とうとう他の柱達が此方に気が付いたようだ。
先ず目につくのは七尺もある大男、次に目につくのは煌びやかな宝石や貴金属で身を飾る此方も六尺もある大男。続いて整った顔立ちの同じ年頃の女子に目を奪われる。同性である真菰ですら惹かれる女性であった。最後に大きな番傘を差す男に目を向ける。番傘は視界に入っていたものの此方に背を向けているせいで肝心の男の顔が見えていなかった。
じろじろ見るのも失礼であるからそれぞれ挨拶をする。
「俺の名は錆兎、新しく水柱を任された者だ。よろしく頼む」
「……冨岡義勇……錆兎と同じく水柱だ」
「初めまして私は真菰という者です、どうぞよろしくお願いします。新たな水柱の二人に付き添って来ました」
三人の挨拶に柱達はそれぞれ返す。
「新たな柱……喜ばしい事だ……私は岩柱・悲鳴嶼行冥という……よろしく頼む……」
涙を流しながら柱就任を歓迎する悲鳴嶼行冥。
「おっお前派手な髪と傷だな!まあ俺より二段も三段も劣るがな。そんな俺は"元忍"の音柱・宇髄天元、その界隈では派手に名を馳せた男だ」
錆兎の髪の色と傷に反応して派手さを競う宇髄天元。
「初めまして、皆さん。私は花柱・胡蝶カナエ、柱同士仲良くしましょうね」
天女のような笑顔を浮かべながら挨拶を返す花柱・胡蝶カナエ。
しかし未だ挨拶を返していない者がいる。そう番傘の男だ。全員の視線が番傘の男に集まる。その男は居心地悪そうにぼそぼそと告げた。
「……鬼柱の比企谷八幡だ……」
「駄目ですよ比企谷さんそんな挨拶じゃ。ほら、ちゃんと顔を見て大きな声で挨拶しないと仲良くなれませんよ?」
「お前は俺の母ちゃんか何かかよ。あと仲良くするつもりが無いし、というか出来るかどうかも怪しいし」
「何言っているんですか、私と仲良くやっているじゃないですか。きっと仲良くできますよ」
「それはお前が変わり者なだけだ、皆が皆お前みたいにはできないって言ってr」
「漫才はもう終わらせてさっさと挨拶しろよ、比企谷」
「おい待て宇髄、俺は漫才をやっているつもりじゃないから、違うからな」
「どっちでもいいから早くしろよ。お前の地味な言い訳は聞き飽きた」
「……はぁー」
ため息をつきながら後頭部をがしがしと掻くヒキガヤという男。全身から億劫そうな雰囲気を醸し出しながら振り向く。
「……改めて俺は鬼柱・比企谷八幡。えーっと、まぁ適当に頼むわ」
投げやりな挨拶に面食らう錆兎と真菰。いや、それだけではない。真菰が驚きの声を上げながら指を指して訊く。
「あーっ!貴方は肌の弱い人!柱だったのね!!」
「おい、真菰。そうじゃない、そこじゃない。此奴は今自分の事を比企谷八幡だと言ったぞ」
「あれ?比企谷って何処かで聞いたような……あっそうだ!最終選別の時の!!えっでも何であの時騙したの!?」
「決まっているだろう、此奴が嘘つきの鬼だからだ」
等と盛り上がる錆兎と真菰。その二人の話を聞いたカナエは笑顔で質問する。
「比企谷さん?真菰さんと面識があるみたいですね?しかも騙したとか?後でじっくりお話聞かせて貰いますからね?」
「……ハイ」
二人に反して気分がどん底に落ちた比企谷であった。
◇◇◇◇◇◇◇
色々掻い摘んで説明を終えたがどっと疲れた、しかも会議が終わったらカナエに根掘り葉掘り聞かれる事を考えると更に気が滅入る。
「へ〜そうだったんだ〜」
やや半目で此方を睨む真菰。理由は恐らく訪ねてきた日に嘘ついた言い訳に納得が言っていないからだろう。自分でも何か嫌な予感したから、はどうかと思うがそう思ったのだから仕方ない。嘘偽りなく正直に話した。
「……人を喰っていないなど信じられん……」
未だ俺の事を受け入れられていない様子の錆兎。疑う気持ちは大いに分かる。俺でも目の前に人を喰った事がないという鬼が現れれば先ずもって疑う。鬼とはそういう存在だ。
……ずっと気になっているんだが、冨岡っていう奴が置いてけぼりにされている。ただでさえ人を喰った事がない鬼が柱をやっているというだけでも驚愕の事実の上その鬼が錆兎や真菰と知り合いであるかもしれないという事が判明して理解が追いついていないようだ。あ、今気付いたのか真菰が最終選別で何があったのかを教えている。
胡乱気な目で俺を睨む錆兎。半目で俺を睨む真菰。口が開きっぱなしの冨岡。笑っているけど笑っていないカナエ。俺の味方いなくね?いつもの事だったわ。
「お館様の御成です」
「今日もいい天気だね、皆」
以前よりも広がった爛れた部分を見遣りながら俺は産屋敷に丸投げしようと決めた。
カナエ「別に嫉妬したなんて理由じゃありませんよ?ただ比企谷さんが女の子をだまくらかしたとか聞いたら本人に聞く必要があるじゃないですか、ね?」
どうも作者です。
投稿頻度が早いけど文字数少ないのが悩みです。どうやったらウン万文字とか書けるんだ……?不思議ですね。
一応言っておくと◇←これは場面転換です。市販の小説であるあれです。因みに#←こっちは時間が経過した事を表しています。
それではまた
オリジナルカップリングは
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二次創作だし多少はね?
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好きにしろ
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許さんお前の家に縁壱送り込むからな