神様転生自己満海賊   作:YADANAKA

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やっと5個ぐらいある次話に肉付けが出来ます。


にじゅうろくわ

 

火拳のエース率いる、スペード海賊団との戦いが集結し、海賊同盟のもの達もアインを初めとする海軍によって沈静化された今。

 

残っているのは、たった1人だった。

 

時間は、少しだけ遡る。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ごんな…どごろでぇぇ!!!」

 

「……お前の旅はここまでだ」

 

その言葉と共に巨体を振り回していた男は崩れ、槍を振るった海兵だけがその場に立った。

 

恐竜の能力者として、大規模な海賊同盟の実質的な長として、グランドライン後半の海「新世界」にて、名を上げようとしていた男。

 

この男と共に同盟を組み、勢力を広げようとしていた各海賊団の船長達も、全員を捕らえたことでアイトは海軍本部へと向かおうとした

 

 

その時だった。

 

 

「──ご苦労さま♡」

 

アイトの背中側から抱きつき、海楼石入りの口紅を体に当て、アッサリとアイトはその女に組み伏せられた。

 

「ッ……今さら何をする気だ?──ステューシー!」

 

「………悪あがき…かしらね」

 

そういうが早く、脊髄の近くを指銃で刺される。苦悶の表情をするアイトを見ながら、ステューシーはさらに指銃を放ち、アイトを追い詰める。

 

モネはエースの所に、アインは海賊達の捕縛に忙しい今、アイトの元に直ぐに来れる味方はいない。

 

時間は無いが、こうなるとアイトの命を取るのに時間はかからない。

 

しかし、ステューシーは指銃でダメージを負わせるだけに済ましている。

 

 

「グッ………あの時、俺とカリファを見逃しておいて……グゥッ!…………今さら何だと聞いているんだ!」

 

「確実に殺す……その為よ。その為に─────

 

 

 

 

 

初めて会った時、それは今から随分と前のこと。しかし今でもアリアリと目の裏に浮かぶ。

 

五老聖から任務を託され、かリファと共に彼らを分断する策を練り、実行した。

 

本当ならジワジワと追い詰めていく予定だった。

 

アイトのように海軍の上層部に繋がりが深い者を、いきなり世界政府の駒にする事は難しいからだ。もしそうすれば、必ず企みが露見する。

 

それはあってはならないが、そもそも、五老聖が危険視している理由も曖昧だ。今までは、いくら優秀でもこんな事をする事は無かった。

 

それなのに、アイトは確実に消すか、味方に引き入れるように通達されている。

 

 

任務を受けた時からの疑念は、任務を失敗するにつれて晴れていく。

 

なるほど確かに。この男は何故か死なない。運命にでも生かされてるかのような、そんな不思議なしぶとさだ。

 

五老聖はこの男の不思議なしぶとさと、謎となっている出生地も、彼がその身に宿している能力も、不気味なのだろう。

 

 

その事もあってか、任務に対する疑念が晴れると共に、何時までも何の変哲もない暗殺の失敗に、CPの上層部からの突き上げは非常に強くなった。

 

【何も事情を知らない無能ども】

 

そんなヤツらの相手などしてる暇は無い。五老聖から頼まれた任務なのだ。必ず完遂してみせる。

 

 

そう意気込んで前に進んできた。

 

 

だが…そもそも……私は、ここまでCPの為に働く理由は無い…はずだ。

 

そう考えた時、その考えにたどり着いた時、私の中の何かが弾けた。

 

アイトの本質を、「謎の生存力」を知らずに、彼の仲間の強さを知らずに、勝手に実行して3度失敗した無能な長官。

 

私と違い、本部で日々のうのうと、何もせずに暮らしている同僚共。

 

彼らに協力の要請もした。だが、彼らが手を貸すことは無かった。たまたまタイミングが悪かったのかもしれない。しょうがなかった、かもしれない。

 

だとしても……私が、ここまで、苦労して、最後まで行う。

 

そのことに対して、私にメリットは?

 

あの方の役に立つ為なら、アイトに手を貸してもらうのも、悪い話では無いはずだ。

 

彼はもう既に天竜人や政府の上層部と真っ向から対立の姿勢を見せている。

それでなお、彼が処分されないのは、彼の実績と実力と彼の身内の存在。

そして彼がSWORDだから。

 

 

SWORDとは、自由に動ける精鋭部隊のこと。

 

上手くやれば、アイトという強大な戦力を味方にして、あの人の為に役立てるかもしれない。

それに、CPに入ったままアイトの仲間に成れれば、アイトに良い情報を流すこともできる。

 

あの人は今世界政府側…だからCPを初めとする世界政府と真っ向から対立するアイトと完全に手を組めるとは思わない。

しかし、あの方は発明をする事が出来れば何でも良いと思っている。

 

しかも、彼の能力はあの人も興味がある。

 

 

 

考えれば考えるほど、アイト側の方が良く考えられる。

 

 

 

 

「──努力してきたのよ」

 

アイトを組み伏せたまま、独りごちてため息をひとつ。

 

血で黒く染った指を舐めて、空を見上げるその顔は、酷く疲れていた。

 

「つまり?」

 

「無理ね。ここで殺す気だった。そのためにずっといたのよ。だけど、今までの苦労が報われるというのに、解放されるというのに、貴方を殺せなかった。今も……やっぱり出来ない。任務を感情で怠るのは、諜報員として【死】と同義よ」

 

「……時々理性を失う俺なんかより、ずっと人間らしく生きてんなぁ…お前らは」

 

「!?」

 

「?」

 

アイトの言葉に虚をつかれたのか、一瞬言葉に詰まったステューシー。その事を不思議がるアイトだか、アイトはワノ国編の序盤しか知らない。

 

その為、無意識のうちにステューシーの心に残り、彼女もまたアイトとの居心地の良い空間に籠絡されていくわけだか、それはまだ先の話。

 

見上げてみれば、戦いが始まった頃は雲で暗かった空が、星々によって綺麗に彩られている。

 

数にして17個。そして真ん中には一際大きな星が一つ。この星達は未来を表している……かもしれない。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「護送の準備は出来た?」

 

大規模な海賊同盟との抗争、CPとの繋がり、そしてエース率いるスペード海賊団との関係。

 

色々あって疲れたが、とにかくも、「海兵」として俺が先ずするのは捕らえた奴らの護送だ。折角捕まえたのだ、元気になる前にサッサとインペルダウンの中に投げ込むのが良い。

 

なんなら、俺の能力で海底を引き摺りながら、ブルゴリ(インペルダウンの獄卒獣)専用の入り口から入るのも手だ。

海賊達の命?まぁ、死なないよ多分。

 

それで終わるのなら良いんだが、残念ながら今回の海賊は規模がデカイ上に、任務として俺はここに来たのだ。

である以上は、護送船団の指揮を執る大佐と書類の確認をしなきゃならない。

 

はぁ、昇格してからチマチマと細々したものを沢山書かなければならないとは……よくガープさん中将やってるよな。

 

よし、報告書の書き方教えてもらおう。それまでは皆んなに書いてもらおう。

そうと決まれば、頼りになる双剣のペチャパイ様にお預けしよう。映画で揺れなかっただけで、全然ペチャには見えなかったのは置いておこう。

 

ワンピースの懸賞金インフレは有名だが、胸のデカさのインフレは最初の方から行われているのだ。故に、揺れなければ下位なのである。

 

閑話休題

 

「えーっと…海賊を……えーっと……捕らえました…………後アインお願い」

 

「ダメに決まってんでしょ」

 

とはいうものの、手のかかる子とでも言うかのように、アインはスラスラと代わりに認めていく。

 

本来なら、捕らえた海賊達の危険度や強さを考えて、アイト達が護送も行う予定であったが、ビビに早く会わなくてはならないし、たしぎの相手をする約束もしている。

 

加えてアイトはガープよりエースを七武海に誘うよう言い聞かせられている。モネから説得されても無理だった以上、今更やっても仕方ないだろうが形だけでも誘わなくては、上司に嘘をつく事になってしまう。

 

見聞色の覇気のせいで嘘がバレてしまうのだ。

 

アイトは海兵を率いて、エースは海賊を率いて、握手できる距離にまで近づいて話す。

 

「で、聞くけど───エース君、七武海にならないか?」

 

「断る」

 

その言葉に身構える海兵と海賊だが、アイトは終始笑顔を浮かべていた。また、アインを始めとした海軍の指揮官達もリラックスしている。

 

一切考えることなく即決したエースを満足そうに見たアイトは、特に何もせずに向きを変えて、書類に汚い字を書いて帰り出す。

 

「よし、オケ、解散」

 

「本当に解散すんのな……」

 

気の抜けた顔のエースを見ながら、クスクスと笑いながらモネが揶揄う。

 

「独房に入りたかったら着いてきてもいいわよ?」

 

「「誰がいくか!?」」

 

「私と一緒ならどう?」

 

「「いっ……きません!!」」

 

「アホらし…」

「セクハラです」

「アイトは?」

 

海賊達の反応見て軽蔑する女達。そんな中、ステューシーはアイトの方を見るが、案の定、アイトも海賊達と同じ反応をしている。

 

「……いや、だって、行きたくない?」

 

「貴方ってもしかして馬鹿?」

「こんなもんよ、アイトなんて」

「セクハラですね」

 

冷たい目で見下ろされるアイト。周りに他の海兵や海賊がいながら、全く性格を尊敬されない、悲しい奴である。

 

そんな落ち込むアイトに近づくメガネの女性が……

 

「アイト」

 

「ん?」

 

「セクハラです」

 

「何が!?」

 

さらなる追撃を一つ。

 

戦闘が終わった今、終始和やかな雰囲気が場を包む。その傍らでこの島で犠牲になってしまったもの達を埋葬していく。

 

赤髪との接敵の時のように宴が始まりそうな気配を感じたアインは、必要な事を全て済ませ次第、出港するよう厳命する。

 

まずはスペード海賊団が出立し、その後に護送船団が出発し、最後にアイト達が島の周辺や海賊同盟の拠点を制圧し、本部へ帰港する。

 

「じゃ、俺たちは先に出るよ」

 

「次会う時も仲良くやろう」

 

アイトはエースと固く握手をして、護送船の指揮を取る大佐とも握手をする。本来なら先に出たい気持ちを押し殺しているため、若干力がこもっている。

 

アイト達は、というかアイトはすぐにでもビビに合わねばならない。だって怖いから。今まで会えなかった分、時間をとって会わなくてはならない。だって怖いから。

 

「出港するぞー!!」

 

「「はっ!!」」

 

イカリを上げ、帆を広げ、舵をとって船を出す。天気は晴れ、風は追い風、つまり絶好の航海日和。

 

「アイト、海難事故が近くで頻発してるみたいよ」

 

「まぁ、俺の能力なら大丈夫大丈夫」

 

船は気持ち急いで本部へ向かう。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

航海日和の天候は急転、真っ黒な暗雲に包まれた。強風と波に煽られる護送船の上で、指揮官は険しい顔をしていた。

 

ただの悪天候ならなんて事はない。

 

「大佐!緊急事態です!」

 

雨風に帽子を飛ばされた部下から怒号に近い声が響く。そうでもしなければ顔を突き合わせていても聞こえない位、天候は最悪だった。

 

「分かっている!」

 

そして、それを引き起こしたのは目の前にいる1人の男である。

 

「ジッハハハハハ!お前らが来るのを待ってたぞ……!」

 

かつて海を文字通り飛び回り暴れ回った金獅子のシキ、大海賊と恐れられガープとセンゴクという海軍の二大戦力によって捕えられた筈の男である。

 

「おのれ……!何故こんなところに金獅子が……!!とにかく、アイトさんに連絡──!?」

 

「させねぇよ…さっきここを通った奴らの船長だろう?あの強さの連中が揃ってる以上、来られると面倒だ」

 

指揮を執る大佐が連絡をさせようとするも、指示を受けた部下の首ごと、あっさり腕を切り落とされる。

 

かつてロジャーを初めとした大海賊達と覇を競った、残忍でクレバーな伝説の海賊・金獅子のシキ。

 

護送船の周囲の波が落ち着くと共に、フワリと軍艦の甲板に降りて来た彼は、護送されている海賊たちに用があった。

 

「大人しく海賊共を寄越しな」

 

「そうしたところで、我々の命を奪うのだろう?」

 

「聡いな」

 

「───全員!覚悟を決めろ!我々はこれから死地に向かう!だが!ここで我々が任務を遂行することで!数え切れない市民の命を救うことに繋がるのだ!──行くぞォォォ!!!」

 

「「オォォォ!」」

 

「…………くだらん」

 

クイッと指を上げると、途端に荒れ狂い始める海。揺れに足を取られながら、懸命に金獅子のシキに挑む海兵達。

 

彼らの決死の戦いは誰にも知られることなく、ただ一方的な虐殺となる。アイトや本部へ連絡をしようとしても、激しく上下する中では小さなでんでん虫を使うことも出来ず、彼らは人知れず海に沈んで行った。

 

 

 

──────────────────

 

 

世界の正義の中心地、海軍本部………に向かう途中で───

 

軍艦に設けられた執務室にて、アイトは電電虫を握っていた。

 

「今大丈夫?」

「…ああ…どうかしたか」

 

電話越しから聞こえてくる女性の声に、アイトは若干の警戒を声に乗せながら、周囲を見渡し自身が1人であることを確認する。

 

「実はアラバスタに着くのが遅くなりそうで」

「まぁ仕方ないだろう。敵なんだから」

 

船底にて声を抑えて話すアイン、場所はこの船に長く乗ってる者でも、ごく少数の者しか知らない倉庫である。

 

「ええ、赤髪海賊団と戦うなんて思わなくて」

「そりゃあ……あー何が欲しい?」

 

電話主の声から伝わる遠回しな言葉に、下手に長話するのはマズイと判断し、アイトは単刀直入に聞き出す。

 

「そうじゃなくて!──かくかくしかじかで」

「動くのか?民間人への被害は減らしてくれよ?」

 

思わず大声を出してしまったアインは、体を少し丸めながら手短に要件を伝えていく。

 

「当然よ!そんな事しないわ!」

「ならいい。コッチで手を打つよ。丁度本部に向かってるしな」

 

 

 

「モネ!緊急重要会議だ!」

 

電話が終わるや否や、部屋の扉を少し開けて近くにいたモネを部屋へと連れ込み、偉そうな椅子に深く腰掛け、何処ぞのゲンドウのように指を合わせる。

 

やけに真剣な顔をしているアイトの顔に、これはアホな事を言う時の顔だと察したモネは、海風で若干傷んできている髪の毛を手櫛で手入れをしながら、付いていく。

 

「私はそろそろ、自分の現状に立ち向かわなくてはならない」

「…なんの話かしら」

「海よりも広く、秋の山のような話だ」

「?早く本題に入ってくれない?おハゲさん」

「いうな!ストレートにいうな!」

 

ああ、と何を言いたいのか分かったモネはコレ幸いと自分の機嫌を良くする為に、アイトを弄ることにした。

 

「分かったわよ、育毛後進国さん」

「オブラートに包めとも言ってない!」

「だからなんなのよ、貴方の生え際が下がってる事は……皆んな薄々気づいてるわよ?」

「やめろい!覚悟を決めたとはいえ…脆いんだ!」

 

少し涙目になりながら頭を、正確には髪の毛を手で押さえるアイト。その仕草が余計にモネの嗜虐心を刺激する。

 

「そうね、どんどん減っていってるもんね。それで?緊急重要会議ってなんなの?」

「それがこの話だよ!言わせんな!」

「なんだそんな事?別に誰も気にしないわよ」

「するの!俺が!ゼファー先生も胃を痛めてるセンゴクさんも、しっかり生えてるのに…!」

 

不公平だと抗議しながら部屋の中を歩き回るアイト。最初は椅子に座って異様な雰囲気を出していたと言うのに、この主人公には空気を維持する事は出来ないようだ。

 

「良かったじゃない、まだ貴方に人らしいところがあって」

「嬉しか無いわ!」

「というか…な・ん・で・私に聞くの?」

 

髪のことでアイトを揶揄ってるうちに、ふと、自身の髪の毛が気になってきたモネ。ここで勝手に機嫌が悪くなっていく。

 

「………なんか機嫌悪く無い?」

「貴方が髪の話をするから、私も気になってきたのよ!」

「えっ…モネさんもしかして…ハゲ」

「てないわよ!!髪の毛が!海風のせいで!ボロボロなの!気にしないようにしてたとのに…!」

「してたとのに?」

 

ロギアなのに海風で傷むのか?と疑問に思うアイトと、イライラで手から冷気が漏れ始め、果てにはシンプルに噛み、その羞恥まで現れてきたモネ。

 

爆発3秒前である。

 

「貴方が髪の毛の話をするから!気になって痒くなってきちゃったのよ!」

「掻けば良いじゃねぇか!」

「好きな人の前で掻きむしりたいと思う!?」

「嬉しいな!ありがとう!」

「……あーーー!もう!!」

「ギャッ!?」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

電話を終えて帰って来たアインは自分の上の階から響く、重たい衝撃に驚きつつ駆け足で現場に向かった。

 

「───なんの音?すごい音が聞こえたけど…モネ?」

「アイン…ごめんなさい、つい」

 

アインが執務室に入ると、そこには雪の柱の中に閉じ込められたアイトと、その前で肩で息をしているモネがいた。

 

「良いわよ、どうせアイトがデリカシーのない事を言ったんでしょ。それより、髪の毛ちゃんと手入れしてるの?」

「私ロギアだから、髪の根本をあっためてサラサラにするやつ出来ないのよ」

「私がやってあげるわ、行きましょ」

 

 

モネの背中に手を回し、連れ立って部屋を出る2人。アイト以外に被害が出る時はしないように、とちょっとした小言を言いながら楽しげに談笑して行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アノ……オテヲ……ア」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「カリファはいつから“セクハラです”が口癖になったんだ?」

「セクハラです」

「言葉が!?」

 

あの後、アイトの元へやって来たのはペーたんにライドオンしたうるティであった。分厚い壁をぶち破って現れて、首を抑えられたペーたんが暴れた事で、アイトは解放された。

 

2人が開けた大穴を治してもらう間に、アイトはカリファとステューシーの元に避難していた。

 

落ち着いた雰囲気を感じる部屋の真ん中にあるテーブルを囲み、紅茶を飲んで温まっていた。

 

「…むかし、まだ候補生の時の話だけれど、新人の教官が際どい所を触ってくる人だったから、そのせいね」

「えぇ、命知らずだな。カリファみたいな隠れゴリラに手を出すなんて」

「アイト」

「うん?」

「セクハラです」

「そうだね!今のは10割俺だわ!そんでヒールが痛い!頭凹む!」

 

行った瞬間に体を椅子から落とされ、横向きになった所を踏まれるアイト。先ほどモネに痛い目に遭わされたというのに、ここでもまた痛い目に遭う。学習しない男である。

 

「あら、楽しそうなことしてるわね」

「ステューシー…!実はかくかくしかじかで…」

「ふぅん、私の時はそんな人いなかったわね」

 

グリグリと少しずつ圧力をかけてくる足の痛みに耐えかねて、アイトは脱出しようと身を捩っていた時に入って来たステューシー。

 

もしや助けてくれるのでは、と淡い期待をするアイトを見ながら、ステューシーも会話に参加する。

 

「そうなの?」

「えぇ、一度だけ触ろうとした人がいたけど、嵐脚の練習と称して股間を蹴り飛ばしてやったわ」

「ヒェッ…」

 

思わず股間を抑えて縮こまるアイト。想像するだけでヒュッとする言葉である。

 

「殺したんですか?」

「──殺すだなんて、そんな物騒なことしないわよ」

「どの口が言うんだ?…嘘ですごめんなさい背骨をヒールで踏まないで!」

 

ついこの前殺されかけたが故に、口から出た言葉は救世主(仮)になる可能性のあったステューシーを見事に敵に回した。

 

「それ以来私が近づいたらすぐ離れるようになって、気づいた時にはいなくなってたわね」

「うわぁSだぁ…トラウマになってるじゃんその元男教官」

「アイトはMよね」

「それ踏まれてる事以外要素ないよね!?」

「これ以上ないMの素養よ。誇ったら?」

「誇るかこのドSどもめ!」

 

別に俺はノーマルだよ!どっちも好きだよ!変態だよこのやろー!と雑に言葉を並べているアイト。

しかし、女性の前でそんな事を口走れば───

 

「───アイト」

「なんだよカリファ、また“セクハラです”か?」

「キモいです」

「うーわぁ…シンプル悪口ィ……グスン」

「…可愛いでしょ?」

「ですね、もっといじめましょう」

「」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

「あーーー酷い目にあった」

「どっちも貴方が悪いわよ」

 

あの部屋からの脱出を果たしたアイトは少々げっそりとした様子で、フラフラとおぼつかない足取りで甲板に出て来た。

 

癒しを求めてアインを捕まえたが、一定の距離を取られ、釣れない態度をされ続けている。

 

「そんなこと言うなよアイン〜」

「仕事中よ」

「たまには息抜きしないと張り裂けるぞ?」

「それ誰情報?」

「センゴクさん」

「…重みが違うわね」

 

アインは目にするたびに胃薬を飲んでいる元帥を思い返し、その胃痛の要因の1人であるアイトをより厳しくしようと思い直す。

 

「その為に俺のことを名前で呼んでみない?てか呼んで?呼んで欲しい」

「プライベートで呼んでるから良いじゃない」

 

そうとは知らずに、グイグイと近づいてくるアイトを片手で止め続けるアイン。面倒臭い男である。

 

「あ、さては恥ずかしいんだな」

「夜の貴方の甘え方のほうが」

「それはマジでやめて……んー…どうやったら名前呼びをしてくれるのやら」

 

揶揄おうとしたアイトだが、アッサリとやられて顔を甲板に埋める。その姿を見て溜め息を吐くアイン。さながら倦怠期を感じる溜め息である。

 

「お悩みでございましょ?」

「ん?…どこから……うるティ!?船の外側に貼り付いて何してんだ!?」

「危ないから速く登りなさい!」

 

そんな2人の元に下から響く声があった。天啓でも何でもない、ピンチのうるティの声である。

 

「そんなことより、なんでアインはアイトの事を名前で呼ばないんでございましょ?」

「仕事中だからよ、それ以外に理由はないわ」

「嘘でございましょ?」

「え、嘘なの!?」

 

予想もしてなかったうるティの言葉に、嬉しそうに反応するアイト。その言葉に若干の動揺を見せるアインの声音は少し上擦っている。

 

「何信じてんのよ!うるティ?適当な事言わないで…!」

「テキトーも何も、アインはアイトと夫婦ごっこをしたいんでございましょ?だから旦那として「貴方」って呼ぶんでございましょ?」

「だっ……!ちがっ……!!なっ…何を根拠に!?」

「否定するのが馬鹿馬鹿しいでございましょ」

「」

 

あっけらかんと明かされた自分の本心に、脳がフリーズしているアインは絶句してしまっている。

 

その一方で、ふと、アイトが違和感を覚え、嫌な予感を持ってうるティに聴き込む。

 

「固まっちまったよ……マジか…あれ?うるティ、ペーたんは?一緒に貼り付いてないのか?」

「ペーたんなら海に入ってるでございましょ。船の縁でペーたんに乗っかってたら、船が揺れたんでございましょ」

 

今更でございましょ、と澄まし顔をするうるティを見て、ますます危機感を覚えるアイトと、脳が復活したアインが身を固くしている。

 

「……じゃあ今ペーたんは」

「あ、アインが復活してる」

「あちきが落ちないように踏み台にしたから、ペーたんは……」

 

「「「・・・」」」

 

「ペーたんンンンン!!」

「船を止めて!今すぐに!」

「アチキも行くでござんしょ!」

「うるティ!?待って!ダメよ!?」

 

 

「うぉぉぉぉぃぃぃ!ぺーたん!しっかりしろペーたん!」

「なんて奴で……!ござい……ましょ!……ぺーたんを……!海に……!突き落とす……なんて!」

 

 

「可哀想なペーたん…ひとえにペーたんが泳げないせいだが」

「……色々言いたいけど、部屋から出てって?十円ハゲさん」

「禿げてないわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 





ナミ⇔ウタ


コソッと投稿

ナミはヒロイン?

  • ナミも嫁入りだ!
  • ナミはヒロインにしない方が良い
  • アインはリアルだと巨乳だ!
  • モネは原作のように半獣半人にすべきだ!

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