ホグワーツと成長の夢   作:Kahana=Bradbury

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2人目

11月7日 11時 クィディッチ競技場

なんだか蒸し暑く、雷が鳴りそうな程の曇り。今日はグリフィンドールvsスリザリンの試合の日。それぞれのチームのキャプテン、ウッドとフリントが睨み合って握手をしている。

 

「笛が鳴ったら開始…いち、に、さん!」

マダム・フーチの声で14人の選手が空に浮かんだ。観客席は声援とブーイングが混じり、試合はまだ始まって1分も経っていないのに熱気がすごい。

結果もわかってる上にクィディッチ自体に興味がない私は試合を見る気がなかった。人に見つかる前に起きて必要な部屋で時間を潰そうと思っていたのに、私よりも早く起きていたウィローとアンバーに捕まり連れて来られた。

「ほら!カハナ!テンション低いぞー?応援しよう!応援!」

 

テンション高いウィローに促され上を見ると小さな赤いユニフォームの子が執拗にブラッジャーに追われていた。フレッドやジョージがボールをスリザリン側に打っても不自然に進路を曲げて戻ってくる。狙われているあれはハリーだ。全速力で逃げるのに精一杯でスニッチを探す余裕はなさそうだ。

 

そのうちに大粒の雨が降り出して会場は濡れていく。視界が悪くてよく分からないが

「スリザリン、リードです。60対0!」

「あー!もう!グリフィンドールは一体何をやっているんだ!?」

近くの席から声が上がる。グリフィンドールが思い通りに点を入れてくれないので会場はブーイングの嵐。周りの声と実況でスリザリンがどんどん点を入れていくのが分かった。

 

マダム・フーチのホイッスルが鳴り、試合はタイムアウトに入った。

 

「なんか変だね」

ウィローがつぶやく。

「なんでブラッジャーが1人だけを狙ってるんだろう…」

アンバーもそれに反応してつぶやく。口に出していないイザベラとルーナも異変に気付いていたようだ。不思議そうに4人で目を合わせている。ちなみに観衆のほとんどはそれに気づいていないらしい。スリザリンのリードに文句を言う生徒ばかりだ。

 

5分ほど経って雨が強くなってきた。ホイッスルの音で試合は再開。小さな赤いユニフォーム…ハリーはどんどん上に昇り不規則な動きをしている。狙ってくるブラッジャーを避けるためだ。その下に来た緑のユニフォーム…マルフォイが口を動かしている。ハリーに何か言っているに違いない。ハリーの動きが一瞬止まり、その瞬間肘のあたりに強烈にブラッジャーが当たった。見てるこっちにも痛みが伝わった気がして思わず顔を歪める。

 

「あっ!」

双眼鏡で選手を、シーカーをずっと追っていたアンバーが叫ぶ。それと同時にハリーが動いた。マルフォイに突っ込んでいく。

「ハリーがスニッチをみつけた!」

アンバーの叫びで観客はハリーに注目する。彼は左手で何かを掴んで、そのままの体制で地面に突っ込んだ。

「…スニッチだ!グリフィンドールのシーカー、ハリーがスニッチを取った!70対150でグリフィンドールの勝利!!」

実況に合わせてスリザリン以外の観客席から歓声が上がる。レイブンクローの生徒たち、アンバーやウィローも抱き合って喜んでいる…が私はそれを一瞬確認してハリーの方を見た。

 

原作通りに双子はブラッジャーを箱に押し込もうと格闘し、ハリーは意識朦朧としたまま嬉しそうなウッドや写真を撮りまくるコリンに囲まれて、目立ちたがり屋の無能はやはり杖を振った。ぶるんぶるんと動くそれを、自分が魔法をかけたせいでそうなったハリーの腕を放置してロックハートは早足で城に逃げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハリーがブラッジャーに襲われたの。そのお見舞いに行こうとしたコリンが石になって見つかったみたいなの…

 

そうなんですね。この前は猫で今回は生徒ですか…

 

あたし、クィディッチの試合を見に行った後寮に戻ってそれからの記憶がないの…この前のミセス・ノリスの時もそうだったしあたしが何かしたんじゃないかってすごく不安なの…

 

身近な人が石になったのならストレスで記憶が飛ぶこともありえますよ… 大丈夫。ゆっくり休んで。僕は君の悩みをいつでも聞きますから。

 

ありがとう…トム。あなたほどあたしのことをわかってくれる人はいないわ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月曜日。土曜日の夜にグリフィンドールの一年生、コリン・クリービーが襲われて石になったという噂はもう全校に回っていて知らない生徒はいないようだ。1年生たちはみんな固まって行動するようになった。

特にジニーの憔悴ぶりはすごくて、午後の呪文学で一緒だったが全く授業を聞いていないように見えた。ウィロー、アンバー、イザベラ、ルーナ、私が代わりばんこに話しかけても反応がとても薄い。歩くのもフラフラしていて危なっかしいのでいつ倒れてもいいように左右を挟んで寮まで送った。

フレッドとジョージがどうにかジニーを励まそうと、毛を生やしたり吹き出物びっしりの顔で像の前から飛び出して彼女を驚かせようとしていたが、そんなもんではもちろん元気にはならずパーシーが双子を脅してどなりつけてやめさせていた。

 

 

 

そのうち学校内で魔除けやお守りがものすごい勢いで流行り始めた。悪臭のする青玉ねぎや腐ったイモリの尻尾なんか何を除けるために使うのだろうか。半純血やマグル生まれの生徒たちが我先と買うお陰で校内が玉ねぎ臭い。もう少し綺麗なものだと瓶につまったトカゲの目玉や紫水晶が流行っている。

…適当なお札に漢字で「悪霊退散」とか書いて玉ねぎ以上に売り捌けば学校から臭いも消えるしお金儲けも出来る!…と一瞬思ったけどそれをしなかった私はきっと偉い。

 

いつも通り変わらずふんぞりかえって歩いているのはスリザリンの生徒だけだ。噂によるとどうやらコリンが襲われたその日の夜「組み分けでスリザリンに選ばれた時点で、生まれがどうであれ選ばれた存在。マグル生まれだとしてもエリートの一員なのだから襲われる訳がない」とスリザリンの監督生がみんなを励ましたらしい。さすが団結力の強い寮だ。下級生のメンタルを気にかけてまとめようとするのはいいことだと思う。

とはいえその言葉にちゃんとした根拠はないからマグル生まれの、特に下級生たちはきちんと玉ねぎと紫水晶抱えて複数人で固まって動いているみたいだが。

 

 

 

 

 

「スネイプ先生疲れてるねぇ」

恒例の個人授業でスネイプの部屋に来て、スネイプの顔を見て思ったのはそれだった。いつも以上に顔が白い気がする。

「去年はトロール、今年は石化で気が抜けないね」

私の言葉を無視して宿題の採点をするスネイプ。2ヶ月半、週2回2人きりでコミュニケーションを取ってきて分かったことは真顔の無視は肯定と同じということだ。

「採点、手伝う?」

「1年生の、特に薬学が得意ではない生徒に手伝わせると思うか?」

「デスヨネー」

目も合わせず即答された。多分これ以上話しかけると機嫌が悪くなる。リラックスしたいから珈琲でも入れよう。

 

アクシオ(来い)

適当に綺麗な小さな鍋を用意して(いきなり魔法を使うからスネイプが顔を上げてこっちを見た)

アグアメンティ(水よ)

マグカップ2杯分の水を入れて

ウィンガーディアム・レヴィオーサ(浮遊せよ)

鍋を浮かせて

インセンディオ(燃えよ)

火をつけた。水の量はそんなに多くないのですぐに湧いてお湯になる。ポケットからインスタントの珈琲の粉を出してマグカップに入れてお湯を注ぐ。

鍋を傾けるでも、マグカップで掬うでもなく、お湯の方がそれぞれのカップに入っていくように杖を動かす。これが一番お湯がこぼれない。

カップの1つは自分の手元へ、もう1つはスネイプの机に置いた。

 

「ふう…」

たったこれだけの作業なのにまだ全力で集中しないとやることができない。激しく魔力の消耗を感じる。浮遊を5つ(鍋、二手に分かれるお湯、マグカップ)同時に維持するのはキツい。手でやった方が楽なのは分かっているけど息をするように魔法が使えるようになるには普段から使って慣れるしかない。

 

「魔法薬もそれぐらい優秀なら良いのだが」

珈琲を入れる私の姿を、採点の手を止めて見ていたスネイプが言う。

「全力で集中しないとできない時点で優秀じゃないでしょ…」

ポーチから蛙チョコを2つ出して1つはスネイプに渡す。封を開けて、カエルが逃げる前に捕まえて齧った。チョコレートは脳の疲労をすぐに和らげてくれる。

「…沸騰した後2つマグカップを浮かせてからそれぞれに湯を分け終わるまでの動作を見ていたが呪文を唱えていないだろう」

「…あれ?言われてみれば確かに」

言われて気づいて

「1年生で無言呪文を…無意識で出来る生徒はいないだろう」

彼の顔を見ると少し笑っていた。心から褒められていることが分かって、私も嬉しくなって笑った。


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