ゲーミングテンションで書きました

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ウィンプにスプーンの使い方を教えたのは絶対ティーアス先生だろの二次


レッツ☆ウィンプ'sキッチン第6話「最速来襲(再)(再)(再)」

波濤あるいは悠原の先たる新大陸、苔灯りが独特な色調で店内を満たす午後7時。「海蛇の林檎」マスコットキャラクターたるクッキングモンスター☆ウィンプちゃんは、今日も今日とて己に課せられた接客(明らかにクッキングではないもの)の業務に勤しんでいた。

店内には話し声、笑い声、時たま血液が飛び交っており、全体として雰囲気は和やかなものと言えた―――この店で働き始めて()()()()の期間―――もっとも、日進かつ月歩たるシャングリラ・フロンティアの世界において、は、この表現はせいぜい「1週間以上」程度の意味合いしか持たないのだが―――を過ごしてきたウィンプも、その雰囲気に慣れ始めていた。

 

「それでさぁ~~あいつが破産したらしくてさァ」

 

「来世に期待だ、黙って生滅流転するんだよォ~~~ッ!!!」

 

「平和だな~~」

 

「貢ぎすぎたんだっけ?それともフィロジオに嵌ったんだっけ?」

 

「ギャァ~~~念念生滅ァ!!」

 

「ウィンプちゃんを眺められるだけでもう何もいらない感じあるよな~~~」

 

「えーっと……そうそう、貢ぎすぎて、フィロジオにも嵌ったんだとよ」

 

「フ、フフフ……メビウスの輪は永劫回帰するぜ」

 

「ちょっと血が飛んでたりちょっとグランドクエストが溜まっててもウィンプちゃんがいれば何でもいいよな~~」

 

飛び交う明かるげな談話たちに、ウィンプはなんだか―――言うなれば()()のようなものを、色褪せても、半分にちぎられてもいない状態で感じかけていて―――

 

「……ふふ」

 

微笑みが、自然と顔面に表出した。

それを一目、具体的に言うと5フレームほど見るや何やら狂喜し始めた一部の人たちが、次から次へとウィンプに食べ物を手渡してくる―――ウィンプが驚きつつそれを受け取ると、どういうわけだか狂喜はさらに強まり、()()()()()()()()()()()()()()くらいまで増幅されて続けられる。人数の増加により自然と役割分担が始まり、整理係、仲介係、反乱因子殺害係、毒見係、毒見係殺害係、死体処理係といった役職が増え始める、喧噪と()()()は指数関数的に増加の一途をたどっていた。

 

かくして―――閉店、彼らが言うところの()()()を時計が知らせる頃には―――

 

「これ……どうしよう」

 

―――山を為した貢ぎ(食べ)物が、競うように(いただき)を光に染めていた。

 

照明に紅眼を光らせつつ、ウィンプは虚空を見つめる―――もっともその虚空は()()()()()()()に過ぎず、ウィンプが首を動かすのと同時に発生したエフェクトは、タイミングを合わせて()()()()()()を出現させていた。

 

「サミーちゃん……これ、たべきれるかな?」

 

すぐに向き直ったウィンプの血が漏れ出るようなそれと、サミーちゃんの持つ優し気なそれ。合計して4つの瞳は、一つ残らず同じ方向を見ていて―――しかし、見る()()はそれぞれ違っていた。例えばパンであったり、例えばスープであったり、例えば謎の突起物を大量に持つ謎の魚の謎の謎であったり、例えば妙に気取った配置で積まれた酒の山であったりが、瞳たちの齎す視界の中を右往左往上往下往する。4つのもう一つの共通点は、すなわち()()()いることだった。

 

その時である。

 

入口に備わった、主に()()()()()()()を想定して大きめに作られた木製の戸―――それを隔てて、確かな()()をウィンプは聞いた。サミーちゃんも、骨越しに伝わった振動から、そして備わったピット器官からそれを把握していた。

ウィンプは首を傾げた。本日における海蛇の林檎の営業は、既に終了したはずである。何かしら特殊な事象が存在しない限り、戸の向こう側にいる人物は―――()()()()()()と考えるべきだ。

ウィンプはこの酒場がいわゆる()()()であることを理解しておらず、更に言うならこの酒場が世間においては()()()()()()()()()としてカモフラージュされていることすら理解していなかった。彼女が触れた人間と言えば()()()とあとはこの酒場の関係者くらいの物であって、絶対的評価には材料が乏しすぎたし、相対的評価においても大体同じだった。

だからこそ―――何かしらの()()を想定せず、ウィンプは単に「間違えてますよ」と言いに戸へと向かった。戸の向こうに(ダメージ)をこれでもかと演出された半死半生の男がいるとか、あるいは逆に凶悪なフォルムの斧を構えて、あくどい笑みを浮かべる男がいるとかの可能性を一切考えず、扉を

 

 

「……え?」

 

ウィンプは、食卓に座っていた。

 

己が直前まで何をしていたかは把握しているつもりだ。踏み出した脚の感触は確かに残っているし、それによって若干の流動(アニメーション)を発生させた影だって幻覚では無かった筈だ。にも拘わらず、実態としてウィンプは食卓に座っており、更に言えば―――

 

「……ん」

 

「……ティーアス、せんせい……?」

 

幼女が、いた。

 

なぜか猫耳を装着していることを除けば、外見上のティーアスはいつもとさして変わらなかった―――この世界にしては露出が多めのビキニアーマーは、製作者の業という形で怨念のごとくその肉体に張り付いている。性能は、高い。

当然のように頬張られるパンの消費速度は明らかに異常なそれで、当然のように切り崩される山の減少速度もやはり異常であった。ウィンプは困惑しつつ、まあどうせたべきれなかったからちょうどいいわなどと考え―――「これ」

 

「えっ」ウィンプは、思わず聞き返してしまった。

 

「あなたの、(ぶん)

 

ティーアスの細い指が示す先―――即ち、卓上におけるウィンプの正面を見れば、そこには確かに平均的な量のスープとパンとそのほか諸々が配置されていた。

 

「えっと、たべ……れば、いいの、いいんですか?」

 

「……左様(さよう)強食自愛(きょうしょくじあい)

 

「え、えと」

 

ウィンプはしどろもどろになりつつも、ティーアスが己を気遣ってくれたような、そんな気がして2回目の嬉しさを覚えた。表情に浮かべるほどでもないそれを脳に留めつつ、一先ず目前のスープへと、いつも通りに右手を伸ばす―――

 

待った(ストップ)

 

しかし、静止が入った。

 

ウィンプはビビった。静止には明らかな気迫が込められていたからだ。今まで何度かあったことのあるティーアスだが、その際の気迫は今までで最大と言っていいそれだった―――

 

「……え」

 

待て(ストップ)

 

ウィンプはもうどうしようもないと思った。せめてサミーちゃんだけでも、と、本能的恐怖から飛び出たその思考を胸に、ウィンプがどうにかそこから逃れようとしたとき―――

 

「……ん」

 

「え……?」

 

ティーアスが、スプーンを差し出してきたのだ。

気迫が薄れ始めたことをやはり本能で察知しつつ、ウィンプはその棒を受け取る……彼女にとってスプーンは特殊な形状をした棒であって、逆に特殊な形状をした棒はスプーンではなかった。

 

「え、えっと、これは……」これはなんですか、と言いかけた。

 

(さじ)

 

「なに……」なににつかうんですか、と言いかけた。

 

食事(しょくじ)にて使用(しよう)する」

 

「ど……」どうやってつかうんですか、と言いかけた。

 

「……(おし)える」

 

ティーアスが距離を詰めてくるのを感じた。ウィンプはまた何かを言いかけそうになったが、最初の一音を発するより()()、ティーアスはその回答を口にしていた。

 

「……()づかみは、効率が悪い(もったいない)から」

 

講義は、理論上最速で始まった。




ゲーム制作の息抜きに書きました


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