厨二万歳RPGのラスボスに転生した一般人はどうすりゃいいですか?   作:波打ち際のトッポ

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第二話
出来たら夜頃にも投稿するかも。


明晰夢万歳(泣)

 はやくこの夢覚めないかな?

 それが数時間をこの夢の中で過ごした俺の感想だった。

 この世界は『混界のサーガ』そのままのモノだという事は鬼ごっこの最中に色々探索して知る事が出来たのだが、如何せん感覚などがあるせいで凄く疲れるのだ。

 というより、村の子供の体力が半端ない。

 いくら逃げても追ってくるし、途中から疲れすぎて隠れたのに見つけてくる鬼役の子。

 昼頃から始めたはずなのに日が暮れた今もまだ続いているし、もうね馬鹿かと……。

 そういえば、過去編で鬼ごっこするというイベントがあったのだがあれも結構な難易度だったよなぁ、だって範囲がアホ程広かったし。

 それに、これはこの夢を見て少し立ってからのことなのだけど、なんでか知らない記憶があるのだ。

 具体的に言えば、このクラマ君(現六歳)のこれまでの記憶。

 絶対に知らない筈なのに、とても今の俺に馴染んでいて全く違和感ないのが気持ち悪い。

 それに吐き気すら覚える夢というのが怖い。

 あまりにもリアルな夢のせいでもしかして、このまま覚めないのか? とそんな事すら思ってしまう。

 

「ふふっ見つけたよクラマ、今度こそ捕まえるからね!」

「だからなんで隠れてるのに見つけるの!?」

 

 木陰に隠れ皆が飽きるまでやり過ごそうとする俺の元に襲来してくる女主人公。

 何度目か分からない突撃に少し恐怖を覚えながらもこの場から逃げ出す事にした時、ふと周りを見てみれば遠くの方で俺を応援しながら笑う子供達が居てどうにもあの子達は逃げている様子は一切ないのだ。

 なにかがおかしくない?

 

「はッ!? ――アリっ、アリア!? ほら逃げてない子いるよ? そっち捕まえた方が良くない!?」

 

 記憶に引っ張られながら、ここ数時間で慣れてしまった口調でそう聞いてみれば……我らが女主人公様は愚問だと言いたいのか満面の笑顔で答えを返してくる。

 

「もう皆疲れたみたいだからね、あとクラマだけなんだよ!」

 

 あれこれ捕まった方が早くないか?

 いやそれだわ、そしたら休める。というかそれしかない。

 そう思い、足を止めようとしたのだが行動に移す前に声をかけられる。

 

「そろそろ本気出すよ、魔法使うね」

 

 その瞬間溢れてくるのはこのクラマ君の記憶。

 頭の中に過るのは、わかりやすく言えば強化魔法を使ってこのクラマ君を追いかける狂戦士と見間違うような後の聖女様の姿だった。

 記憶の中のクラマ君はそれはそれは限界まで逃げていて、いつも家に帰って一歩も動かない屍と化しているようで、思い出した途端にその感覚が襲ってきた。

 

 後の聖女であるこの女主人公様は、ネットでよく『脳筋聖女』や『物理を司る女神』『回復何処に置いてきたんだ狂戦士』と呼ばれる程の物理特化のキャラだ。

 回復魔法を使えるのにもかかわらず、プレイヤーに「あれ? このキャラ殴った方が早くね?」と思わせるような技と魔法を得意とする。一応ステ振りしたいで魔法とか色々出来るキャラになるのだが、どの攻略サイトでも結局物理特化のキャラがおすすめされる。

 しかも初期技は物理能力倍増と槍での全力殴りだ。

 改めて思うが開発陣は世間一般的な聖女キャラを調べてきて欲しい。

 ……と、現実逃避はここまでにして。

 今は本気で逃げないと(使命感)

 

「いっくよー!」

 

 クラマ君の記憶通りならこの時代のアリアは手加減が苦手で、子供ながらに大人でも苦戦するゴブリン相手に無双できる力を持っている。ステータス的に賢いアリアは本来なら同い年相手に使うことはないのだが、今俺がなっているクラマ君はアリアが楽しんで遊べるようにと今のアリアの身体能力を倍増込みで受け止めれるようにと頑張ってしまったようなのだ。

 こういう事実はエモいのだが、そういうのは第三者視点で知りたかったな。

 それからの地獄は想像に難くない。

 夢とは言え感覚がある状態でのある意味のデスマッチ。

 いつも捕まってないクラマが急に簡単に捕まるというのはやってはいけない気がしたので、精一杯逃げること一時間。

 そして終わる頃には全力で遊んだ二人の子供が地面に倒れる光景があり、もう一歩も動けない俺達は大人達に運ばれて家に帰された。

 

「はやく、覚めないかなぁ……」

 

 そんな事を呟いてみたがその一言は空に消えていき、全力で遊んだ俺は疲労感に身を任せるように寝ることにした。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 ありとあらゆる異形を並べた空間に玉座に座る男が一人。

 彼の背には黒い球体いや、巨大な瞳が鎮座しており、ソレからは悪意と呼ばれるモノを感じる事が出来て見ているだけで狂いそうになるのに、何故か落ち着くという感情がやってくる。

 大百足に二つの頭を持つ四本腕の鬼、山犬に白骨化した大蛇、自分の尾を飲み込む龍のような化物に、炎の巨人、醜悪な怪物に、羽を持つ悪魔達、他にもありとあらゆる異形達。

 その全てが彼に跪き、なんの言葉も発しない。

 

「お前はこんな風になるなよ?」

 

 それは誰に向けての言葉だったか、ぽつりと聞こえてきたその一言。

 不意に呟かれたそれを最後に、浮上していく景色。何かに引っ張られるように感じながら光に俺は包まれて……。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「よし、これは夢じゃねぇ」

 

 翌日見知った知らない部屋で目が覚めた俺の第一声はそれだった。

 だってそうだろう? 未だに残る疲労感に体を限界まで使った事による痛み、そして夢の中で寝て起きれるという現実。長いだけの夢だと思い何度頬を引っ張っても毎回感じる痛み。

 そのどれもが俺に対して夢じゃないよーと伝えてくるし、何よりさっき寝てたとき変な夢を見た。

 夢の中で夢みるとか、それどこのレクイエム? とかツッコみたくなるのは仕方ないだろう。

 五感がちゃんと働くうえに、しかも夢まで見るとか普通は有り得ない……そういう事でこれは夢じゃないと結論づけたのだが……納得は出来なかった。

 

「というかマジか、これ夢じゃないの? という事は憑依、いや転生か? いやそんな事よりこれが夢じゃないのなら、ここは混界のサーガの世界? あのヤバイ敵しかいない広すぎる世界? ……オーケー分かった理解出来ないけど、飲み込もう」

 

 とりあえず子供のクラマに憑依or転生のどっちかをしたという事は分かった。

 原理とか全然分からないが、そこはファンタジーということで割り切って……いや無理だ。

 考えれば考えるほどにこの世界の理不尽さを思い出してしまう。

 

 俺の今いるであろうと仮定している『混界のサーガ』その世界のすっごいざっくりとしたあらすじというのはこんな感じだ。

 様々な種族が溢れる世界で、人間に襲われ異形に味方したクラマ、そして異形に襲われそれらを滅すると誓ったアリアの対立を描いた超弩級ファンタジー。

 最初に選択した主人公とルートによって同じ世界で違うストーリーを見ることが出来るという大ボリュームのRPG。しかもどのルートにもBADエンドが存在していて、プレイヤーの行動によって理不尽な目にあるある意味クソゲー。しかもクラマルートはBAD数が多い。一ルートにBADエンド約十一個とか馬鹿だろ本当に――。

 

「しかもよりによってクラマかよ、まだアリアの方が救い合ったぞこれ」

  

 この世界では主人公を選んだ時点である事が決まってしまうのだ。

 決まってしまうそれは明確な敵。

 アリア側を選べばとて世界の均衡を保とうとする人間側を味方につけ、悪さをし世界を滅ぼそうとする異形達と戦う事になるのだが、男主人公を選べば人間側が異形を滅ぼそうとしていて、それに抗う異形側と共に共存を目指すという話になる。

 

「これどっちになるんだ? というかどっちが主人公だとしても」

 

 そこまで言った事で頭に過ったのは……監禁、拷問、洗脳、奴隷の四つの言葉。

 今思い出したのが、これからのクラマそして俺を待つ運命の一つだ。人間側に害があると判断されたクラマを利用しようという事になり、さっき上げた四つの事を大体五年ぐらい体験することになる。

 まじでこの時点で地獄なんだよな。

 隠れて何もせずに過ごすという選択もあるかもしれないが、人間側にはアリアの攻略対象であるイケメンの預言者がいるので遅かれ速かれバレるので意味が無い。

 仮に俺が主人公の世界だとしても、アリアに待っている運命的は、今のクラマの記憶を持った時点では許すことが出来ないし……あぁもうどうすれば良いんだよ。

 一応救いがあるとすれば、俺がいま憑依? いやもう憑依転生でいいや。とにかく今俺がなっていうクラマの成長率は高いので、今から鍛えれば少しはマシになるだろう。あとはこの先の未来の事……きっとそれはこの世界を生き抜く上で大きなアドバンテージになるはずだ。

 

「一先ず、やることとすれば情報をまとめた方がいいよな」

 

 今残っている記憶がいつ消えるか分からない以上、少しでも書き残しておきたい。

 それがこの世界で生きるかもしれない俺が今できる事だろう。

 

「そうと決まれば、あれだな紙でも買って貰わないと」

 

 この世界での育て親には絶対に不審がられるだろうな。

 そんな事を思いながら、朝食の時間だったので俺は交渉頑張ろうと思いながら居間に足を運ぶことにした。

 

 

〇月〇日 お空に龍 天気は晴れ

 

 吾輩は憑依転生者(?)である名前は前世も今世もクラマ。

 なんかあっさり紙を手に入れることが出来た上に育て親であるアリアの両親に日記帳を貰った俺は、今日から記録がてらに日記も書いていくことにした。

 ひとまず今日分かった事をまとめるが、今の状況はこんな感じ。

 

・ここは物理法則ガン無視のごちゃ混ぜファンタジー『混界のサーガ』の世界。命は軽いよ

・今の自分はめっちゃ弱い←重要

・今自分は六歳で原作開始まで約11年、このままだと監禁からの奴隷ルートが待ってるよ☆

 

 いやもう馬鹿だろ。

 あとよく考えてみたら、俺が監禁されないと原作キャラの一人が死ぬんだよな。

 しかもそのキャラは俺がアリアの次に気に入っていて、何より最初に攻略したキャラだから救いたいし、何より彼女の過去を知ってる手前、何も出来ないのは嫌なのだ。

 

 でも選択ミスるとヤンデレるキャラなので、出来れば病ませないようにしないと彼女に監禁されるエンド待ってるので、正直今から胃が痛い。

 

 そして何より、クラマに憑依したという事はこれから先待ってるのは過酷すぎる運命だらけだろう。それでも彼が進めたのはまたアリアと一緒に笑いたいという思いがあったから……そんな綺麗な思いを俺は持てる気はしないが、まず最初は原作キャラに笑って欲しいっていう思いで頑張ろう。

 

 

 

 


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