キタ「…むむむ~……っ!!!」
東京優駿(日本ダービー)前日の夜…。
キタサンブラックはあぐらをかきながら…両手を握りしめて力を込めたいた。
サト「…キタちゃん…何してるの?」
キタ「だぁ~…っ!!
やっぱりダメだ~…っ…」
サトノダイヤモンドが声をかけた瞬間、脱力しバタッと床に倒れ込んだキタサンブラック。
サト「…特訓?」
キタ「そんなんじゃないよ~……あ、でも…特訓といえば特訓…なのかな?」
サト「…???」
キタ「…皐月賞の時にね…なんかこう…言葉に出来ないけど…
不思議な力が湧いてきそうな感じがして…」
サト「…不思議な…力?」
キタ「…あはは、多分あたしの勘違いだと思うんだけど…
でも、テイオーさんに聞いてみた時もね…」
テイオー【ふっふー!それはね~、成長した瞬間だよ!
僕にもあるよ~っ、こう…ずびゅーんっと早くなる帝王の走りになった瞬間!】
キタ【そ、それはどうやったら出来るんですか!?】
テイオー【……どうやるんだろ?】
キタ【…がくっ】
キタ「…って事があってね」
サト「ふふっ、じゃあ…キタちゃんは成長してるって事だね♪」
キタ「はぁ~…それさえ分かればGIも取れるのになぁ…」
とぼとぼとベランダに行き、空を見上げるキタサンブラック。
その後をゆっくり追いかけたサトノダイヤモンド。
キタ「…日本ダービー…かぁ…」
サト「…テイオーさんも勝ったレースだから…思い入れ…ある?」
キタ「勝ちたいって気持ちは強いよ…けど…不安の方も…強い、かも」
サト「…キタちゃん」
キタ「トレーナーには言ってなかったけど…やっぱり、トレセン学園って凄い…強い子や速い子…沢山いた
トレーニングして、強くなって…華やかなレースして…GIも普通に頑張ってたら取れる!…そう思ってた」
耳がしゅんと垂れながらも言葉を続けるキタサンブラック。
キタ「普通に頑張る…重みとか…勝つための努力とか…想像以上だった
でも、テイオーさんも…マックイーンさんも…皐月賞勝ったエアシャカールさんも…それを乗り越えて走ってる…だから、強いし…かっこいいんだって」
サト「うん…そうだね」
キタ「…あたし…テイオーさんみたいに、なれる…かな」
サト「…キタちゃん…」
キタ「トレーナーの夢に…みんなを…笑顔になんて…出来る…かな」
サト「…厳しい世界だって、思い知らされちゃったもんね…不安になる気持ち、分かるよ」
キタ「…ダイヤちゃんも?」
サト「…覚悟は決めてたけど…甘かったみたい」
サトノダイヤモンドも同様に耳がしゅんと垂れた…。
しかし、目はしっかりと前を見据えていた。
サト「…でもね、キタちゃん…
私たちは……絶対に大丈夫!
…だって、''キタちゃんには私がいるもの!''」
キタ「…………え?」
サト「…私にとって…キタちゃんは夢であり…ライバル…
それに、キタちゃんの事もダイヤの事も信じてくれるトレーナーさまがいる!」
キタ「…ダイヤちゃん…」
サト「負けたくない相手…それはキタちゃん…あなたなの!」
キタ「…!」
サト「ふふっ、なんだか初めての頃を思い出すね
同世代の…初めてお話したウマ娘…それがキタちゃん…だったなぁ♪」
キタ「……………………」
サト「それに、凄く強いってびっくりした!…ホントだよ?」
キタ「…あの日から、ダイヤちゃんに色んな事を教えたなぁ」
サト「その頃からね…思っていたの…''その背中を…追い越したい''って」
キタ「…ダイヤちゃん」
サト「キタちゃんは、あの時からお世話好きだったから…
私の事も、ただ優しくしてくれただけなのかもしれないね
…でも、私には違った…キタちゃんは…ずっとずっとライバルだった」
キタ「……」
サト「確かに…先輩たち…他のウマ娘たち…本当に凄い
どれだけ努力しても、追いつけないかもしれない…それでも!
あの日みたいに…キタちゃんが私の前を走ってくれたから
追い越さなくちゃって、私は頑張れる…強くなれる
…だから…一緒に頑張ろう…キタちゃん!
もうダイヤは…下を見ない…だから…これからも、ずっと!」
キタ「…!」
キタ(…そうだ…私には…みんながいる…トレーナーも…ダイヤちゃんも…みんながいてくれる…ダイヤちゃんも…昔から…ずっと前を向いていた…GIを取るって…みんなの夢を叶えるって…)
サト「…ふふっ、キタちゃんも昔のこと…思い出したみたいだね♪」
キタ「…ありがとうダイヤちゃん…なんだか…あたし、弱気になってたみたい
ライバルに背中を押してもらえる…これも、成長のひとつ、だよね!」
サト「…ぁ…キタちゃん…!」
キタ「まだ、自分がどれだけ強くなれるのか…どうなるのか分からない…けど!
あたしには…夢を叶えてあげたいトレーナーがいる!
一緒に走る…ライバルがいる!」
ぐっと拳を月に掲げるキタサンブラック。
キタ「だからどんなに苦しいことがをあったって大丈夫!
ダイヤちゃんと一緒に、笑顔で乗り越えるんだ!」
そして、そのままサトノダイヤモンドの方を見て微笑んだ。
キタ「…でも…レースじゃ絶対にを並ばせないから!
覚悟しててよ、ダイヤちゃんっ!」
サト「…!
…うんっ、負けないよ!」
指切りげんまんをする2人…しかし。
???「…熱い夢を語ってるところ失礼するよ…消灯時間は過ぎてるよ?」
サト「…えっ?」
キタ「…あぅっ…寮長…!」
フジ「…やれやれ、明日GIを控えているのだろう?
今日のところは見逃すから…早く寝なさい?」
サト&キタ「…あ、あはは……はぁーい」
次回:ダービー!
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