七草家の末っ子   作:主義

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三矢詩奈

その後も暫く『七草家』の面々で会話を繰り広げて…入学式が近くになるとそれぞれがそれぞれのいるべき場所に散った。さすがに真由美姉さんは人望が厚かったらしくボクたちが話していると在校生らしき人達が集まって来ていた。まあ、生徒会長だし、容姿も整っているからモテるのは当たり前ですからね。

 

そして入学式が始まった。校長や生徒会長の話を適当に聞き流しながら入学式が終わるのを待っている。そして最後は新入生総代。

 

 

 

新入生総代を勤めていた女性は堂々と皆の前に立って新入生総代の役割を果たしていた。同い年なのに凄いなぁ~と感心してしまったほどだ。『三矢』と名乗っていたから数字付きなのだろうが…ボクと違って優秀なのだろうね。彼女は一科生でボクは二科生。第一高校には一科生と二科生が存在する。これは指導教員の不足事情が原因なのだから仕方ない。ボクはこういうのを気にしないけど…他の二科生の人はあんまりこの制度をよく思っていないようだ。

 

 

まあ、それも仕方ないと言えば仕方ないのかもしれない。人間は人と自分を比べてしまう生き物なのだから。結果として今の時点で一科生に比べるとニ科生が劣っているのは事実。ボクも一科生だけど他の一科生と比べれば劣るところも多々あるだろうしね。分かりあうのは多分未来永劫無理だろうけど分かりあおうとする努力を忘れてはいけない。

 

そんなことを考えていたらあっという間に入学式は終わりを告げていた。

 

 

 

ボクは座っていた席を立ち、出口への道を歩み始めた直後に後ろから誰かに掴まれた。後ろを振り向くとそこに居たのはさっきまで新入生総代を務めていた人物だった。

 

「三矢」

 

 

「はい、そういうあなたは七草光莉さんじゃないですか?」

 

ボクの名前はすぐに出るとは…この人調べてきているな。家督を継ぐわけではないからそんなに有名ではないんだけどな。

 

 

「そうですけど…どこかでお会いしたことありましたっけ?」

 

 

 

「いや、只こちらが一方的に知っているだけですので」

 

一方的に知っている……?まあ、『七草家』に属している以上知られている可能性はないわけでもない。

 

 

「…それで何か用があってボクを呼び止めたのでしょうか?」

 

 

 

「いや、そういうわけではないのですが…あなたとは一度お会いしてみたかったものですから」

 

 

ますます、怪しくなってきた気がする。ボクなんかと会って何をしようとしているんだろうけど。

 

 

「そうですか。期待外れの人間でした?」

 

 

 

「いえいえ、期待通りの人でした」

 

 

 

「そうですか…」

 

 

それだけ話すと三矢さんはボクの目から去って行ったが…最後まで一体本当の目的が何なんのか分からない。不気味でしかない。これからの学校生活に支障が出なければ良いんだけどな。『三矢』に目を付けられるようなことをした覚えはないんだけどな。

 

 

 

 

それから数日後にあんなことが起こるなんて思いもしなかった。


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