ちなみに僕は150連くらい回しましたがフジキセキを入手できませんでした(おい)
公園に設置してある時計は、深夜12時過ぎを指している。もう、終電には間に合わないだろう。
「さて・・・これからどうするかなぁ・・・。」
ショートカットの黒髪をなびかせながら、フジキセキはそうつぶやく。
「・・・・・・。」
そして、再び視線をベンチのほうに戻す。
ベンチに横たわって、ヒシアマゾンがすやすやと寝ている。
今日はヒシアマに誘われ、トレーニングをしたり、新しいシューズを買ったり、そのほか色々で、一日中移動&遠出をしていたので、疲れて寝てしまったのだ、きっと(確証はない)
「ふ~ん・・・寝顔、案外かわいいじゃん・・・。起こすのがもったいないくらいだ・・・。
ふ~っ・・・さて、僕も結構眠いし、今夜のところは、とりあえずホテルでも探しますか・・・。」
「んっ・・・あれ?・・・ここは・・・」
ホテルのベッドの上で、あたし・・・ヒシアマゾンはふと、目を覚ます。
(・・・ベッド?でも寮じゃなさそうだし、ホテルか・・・?)
「・・・お目覚めかい?」
「うぁ・・・フジ・・・。」
「ひとの顔を見るなり『うぁ』とはなんだい?」
不満げな顔でそう言うフジキセキは、まだ髪が濡れていて、タオルとドライヤーを片手に持ってる。外で雨は降ってないので、きっとお風呂上りだろう。
「ってか、今の時間は・・・
・・・深夜3時・・・?」
寝すぎじゃないか?
「・・・なんであたしはここに?」
「忘れたのかい?公園で休憩しようと思ってのんびりしてたら、そのまま寝ちゃってたのさ。で、起きるのを待ってたら、終電を逃したってわけ。」
「それでホテルにいると・・・叩き起こしてくれたってよかったんだぞ?」
「いや~、それも考えたんだけどさ、・・・こんなかわいい寝顔で寝てたら、起こせないでしょ?」
「え~?」
そう言って、フジキセキはスマホを手渡してくる。そこに写っていたのは・・・え?
「うわぁっ!?消せ!!早く!!」
「え~?なんでさ、可愛いじゃないか・・・。あっ、そんなことより、お風呂沸かしておいたから、入ったら?」
「そんなこと言ってる場合じゃないだろ!?」
・・・ま、入るんですけどね・・・・。
(———ったく・・・あいつ、このヒシアマさんをおちょくりやがって・・・)
『————君に捕まるなら、本望さ?』
あれは、寮対抗で鬼ごっこか何かをやったときだろうか。なんだかんだで寮長同士の一騎打ちになったとき、フジはあたしにそんなことを言ってきた。それで・・・あたしを・・・
「ぐぁっ!!・・・くっ・・・このヒシアマさんをおちょくりやがって・・・」
セリフがさっきと同じ?知らん。
(今度はこっちからフジをおちょくって・・・いや、あのフジがそう簡単におちょくられるか・・・?とびきりのやつを仕掛けないと、ダメなような・・・
・・・んっ・・・そ~いえば、この風呂、ついさっきまでフジが入ってたんだよな・・・
――――フジが入ってた、のか・・・。さっきまで、ここに・・・)
・・・って、あたしはいったい、何のことを考えているんだっ!?
このままだと、なんだかどっかのラブコメみたいになっちまうぞ!?
(・・・いいか、落ち着くんだヒシアマゾン。
今はフジと同じ部屋に泊ってるから、フジの事を変に意識してしまっているだけで、これが終わったら、きっと元に戻る・・・。)
自分にそうやって言い聞かせる。でないと、なんだか自分が自分じゃないような気がしてくる。
「・・・ふ~っ・・・よし、そろそろあがるか・・・。」
フジが寝ている部屋のほうから来る、クーラーの冷えた風だけが、あたしを冷静にした。