この先、呪われたトゥメル『nappatbx』には近づくんじゃないよ。
投稿者..,,.古地底人が正気を無くしている。
あれは、あたしの温かいさね。
あ、温かい。
お、またあったかい。
あっ、ふーん。温かくないけど全マイだね。
うぬぅおおおおおおおおおおおおお!!!
お父さんが狩りに出かけてから、何時間が経ったんだろう。
お母さんがお父さんを探しに出掛けてから、何時間が経ったんだろう。
分からない、分かりたくもない。
どれだけ待っても、お父さんもお母さんも、帰ってこない。
だけど、お母さんが忘れていったこのオルゴールを、鳴らし続けていれば、音に気づいた誰かが、お父さん達を探してきてくれるかもしれない。
そして、何事も無かったかのように、2人とも帰ってくるんだ。
そんなことを夢見ながら、意味もなくオルゴールを鳴らし続ける。
『私はお父さんを探しに行くけど、しばらくしたら獣除けの香を、ちゃんと焚かないとね?そうしないと、悪い獣が入ってきちゃうから』
そうだ、獣除けの香をまた焚かないと。お母さんが帰ってきた時に、家に獣がいたら、お母さんはきっと悲しむ。
香を焚くために窓辺に近づくと、外からは沢山の悲鳴が聞こえてきた、若い女の人の悲鳴に、お爺さんの悲鳴、そしてその中に混じっている、確かな笑い声。
まるで悲鳴を楽しんでいるかのような笑い声とも遠吠えとも呼べるそれを聞いて、私はただ震えるしか無かった。
だけど、しばらく震えて蹲っていると、悲鳴も、獣の笑い声もも聞こえなくなっていた。
どうしたんだろうと思いながらも、外を見る勇気もない私は、また意味もなくオルゴールのネジを回すしか無かった。
そして、そこからまた何時間か経った時、窓のすぐそこにあった、錆びて開けるたびに嫌な音がなる扉が、開いた音がした。
すぐ外に人がいる!!
今夜は獣狩りの夜だ、こんな夜に外を出歩く人間なんて、お父さんと同じ、獣狩りの狩人くらいだ。
狩人なら、もしかしたら、お父さんとお母さんを探してくれるかも。
そう思って私は、なけなしの勇気を振り絞って、窓の外にいる人に話しかけてみた。
案の定、外にいたのは、獣狩りの狩人だった。
そして、私がお父さん達を探して欲しい事を伝えると、あっさりと引き受けてくれた。
だから、私はずっと手にしていたオルゴールを窓の外にいる獣狩りさんに渡して、再度お願いした。
「このオルゴールを使えば、お父さんが、たとえ私達のことを忘れていても、きっと思い出すはずだって、お母さん言ってた」
「だから、お願い。お父さん達を、探してください」
分かった。と、呟いて窓の前から去っていく獣狩りさんの背中はとても頼もしく見えて、私は安堵していた。
あぁ、もう大丈夫だ。お父さんもお母さんも、きっと、帰ってくる。
そう思って疑っていなかった。
だけど、いくら待っても、お父さん達が帰ってこない。
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随分と懐かしい夢を見た。
もう忘れたと思っていた、いや、思い込んでいたが、やっぱりあの街の事を忘れることなんて絶対に出来ないんだということを、改めて認識した。
最近は見ることはなかったのにどうして?
いや、理由はもう分かってる。
「獣狩りさん.....」
あの夜、自分が両親を探すように頼んだ人物に、まさかあんな形で会うとは思わなかった。
あの人に会って、またあの夜の事を思い出してしまったんだ。
獣狩りさん、いや狩人さんは、私のことを覚えているのだろうか。
忘れているのだとしたら、少し、悲しいな......。
少し憂鬱な気分になった私は、いつも着ている神官服に着替え、下にあるギルドに向かった。
(私のことを覚えているかって聞いたら、どう反応するかな?)
聞いてみる価値はあるかもしれない。
けど、お前のような奴は知らないと言われるかもしれない、と考えると、やっぱりやめておこうと思った。
下のギルドに着くと、もう既に一党のリーダーである剣士が来ており、その手に持った依頼書を、自信満々に見せてきた。
「おーい神官ちゃーん!一党初の依頼を手に入れたぞー!最初の依頼はゴブリン退治だ!!」
そうだ、まだ彼に渡したオルゴールを、返してもらってなかったな。
死ぬ前にもう一度、両親が愛したあの物悲しい曲を聴きたいな。
私は薄暗い洞窟の中で、ゆっくりと死の感覚が迫ってくるのを感じながら、もうこの世には居ない両親の事を思っていた。
チテイ、ダイスキ。
ダケド、アタタカイハ、キライ。
アタタカイゼンマイトカハ、イチバンキライ。
デモ、チテイカラハ、デラレナイ。
今回はちょっとした短編みたいなものです。
なので文字数が少ないですが、次回から狩人視点に戻ります。
読者様のアドバイスで、タグの設定を変えました。
まだ何か変だよという方は、それも教えてくれると嬉しいです。
最後に一言。
豚を許すな。