千剣山らしき場所で寝てたら世界が滅んでいた   作:烏龍ハイボール

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出来た

これから暫くはこのペースで行きます。

わたしも夏イベント真っ盛りなので投稿のペースが多分あきます


第12話 来訪者 

妖精暦 4000年

 

 

ブリテンの領主オベロンの名声は本土にも轟いていた。彼にまつわる大きな功績は主に2つ。ブリテンの発展と、約2000年前に行われた島のヌシの討伐。特に後者は多くの犠牲を出しながらも神の化身を討ち倒し、ブリテンの妖精達は彼を妖精王と呼び慕った。無論、その真実を知る者はごく僅かではある。

 

しかし当のオベロンはと言うと

 

「あぁ、もうしんどい・・・」

 

机に突っ伏して覇気のない声をあげていた。これと似た様な言葉を約2000年前にも聞いたが、今回は更に元気が無かった。が、その元気の無さも目の前の珍客の前では消え失せてしまう。

 

『中々現れないな。お前の待ち人とやらは』

 

「なんでアンタがここにいるんだよ。て言うか、その身体は何だ?」

 

執務室のソファーにとぐろを巻いている一匹の蛇。両腕を持ち、背中には小さいが扇状の突起がついている。それはまさに世界の主であるダラ・アマデュラを小さくした姿。しかし、かつて見た時の様な覇気や威圧感は感じ取れない。

 

『フフフ、どうだ!ビシキの力を借りて、私の目となっていた蛇の一匹に我が魂を割いて入れたのだ。通称アナザーボディー!これで皆の元へ気軽に行く事が出来るのだ!やはり我は天才だ!』

 

その正体は、島の蛇に魂を入れる事で活動出来るようになったダラ・アマデュラの新しい姿であった。その全長は約5メートルで、それでも蛇の中では大型である。蛇ことダラ・アマデュラは身体を伸ばして身振り手振りで喜びを表現する。そのまま部屋の中を移動してオベロンの執務机の前に来ると、そこに並べられた書面を手に取った。そこには彼の治めるキャメロットに関する事が載っている。

 

『へぇ、アル・・・いや、ニアから街はハリボテって聞いたけど、全然そうでもないじゃん』

 

「それは2000年前の話だよ。あまりに暇だったから全部堅牢な造りに建て替えた。おかげで見栄のつもりが本当の城塞都市が完成してしまった。それでも2000年かかったけどな。あのバカ共のせいで」

 

『それでも尚、待ち人は来ず・・・か。お前も難儀だな!』

 

この常に明るく元気な口調で念話を行ってくるダラ・アマデュラ。それは彼が会い言葉を交わしたあの本体とはかなり違う個体に感じる事が出来る。別にそんな事はいちいち確認する必要はないのだが、どこかやり辛い感覚に陥っている。

 

「お前、本当にあのダラ・アマデュラなのか?初めてあった時よりもかなりフランクだな」

 

『それは当たり前さ。割いて入れた魂の感情が偏っているんだよ。喜怒哀楽でこのボディーは喜と楽が大半でね、かなりポジティブなのさ!』

 

口をパクパクさせて笑う様に見せるダラ・アマデュラ。その仕草にオベロンは少しだけイラッとした。思わず手が出そうになるが、脳裏に握りこぶしを作って笑顔を見せる腹黒眷属の姿が浮かんだ為にこらえた。今、目の前の小さな化け物は確かに腹黒眷属の名前を出していた。ここで動けば、腹黒眷属ことビシキから余計な折檻を受ける事になる。そうすれば余計なペナルティーが付く事は容易に想像できる。漸く首の爆弾が取れたばかりなのに、これ以上変な物を付けられたらたまったものじゃない。

 

「で?本当は何をしに来たんだ?意味もなくアンタが来るとは思えないよ」

 

オベロンは目の前の珍客に早く帰ってほしかった。

 

『実はこの世界にやって来る者の気配を感じた。お前という前例もあったから今回は分かったよ。そのお客は今、ビシキが管理している区域にやって来たらしい』

 

「ッ!?へぇ、それはまたすごい偶然があるんだね」

 

そう言うオベロンだが、内心は歓喜に打ち震えていた。

 

この時をどれほど待った事か。確かに待つこと自体は別に苦でも無かったが、これまで準備を進める為に色々と行ってきた。しかし、手足として動く連中の要領の悪さにはウンザリだった。そのせいで余計なストレスが溜まったし、目の前にいる珍客の部下は理不尽だった。

 

『で、どうするんだ?私としてはお前と居たほうが面白そうだからここに居るつもりだが?』

 

「冗談だろ。こんな所に居座られるといつビシキがやって来るか分からないじゃないか」

 

『君達は本当に水と油だね。何が君達をそうさせるのか、私には甚だ疑問だ。もっと仲良くすればいいのに』

 

「我が主、それは酷な話です。私とコレでは全てが違うのです」

 

やれやれと首を振るダラ・アマデュラ。それに反応する様に室内に女性の声が響いた。身体を回して後ろを向いたダラ・アマデュラは、すぐ後ろに立っているビシキの姿を見た。

 

『ヨッス、ヨッス!ビシキさんはどうしてここに?』

 

「あぁ!我が主がこんなにも可愛らしくなられて。いつもの荘厳な御姿も良いですが、こちらもこちらで良いです!」

 

ビシキはダラ・アマデュラを抱きしめて抱擁すると、その感触を確かめる。そんな主従の触れ合いを見せられているオベロンは口をへの字に曲げて、突然やってきたビシキに声をかける。

 

「何しに来たんだよビシキ。大好きなペナルティーでも付けに来たのか?」

 

「まるで私が拷問好きの変態かの様な言い方はやめなさい、ウジ虫。今日来たのは、私の所に来た妖精に関する事です。姿、特徴が貴方の言う楽園の妖精(・・・・・)のそれだったので確認をと思いまして」

 

そう言うとビシキは、空間を歪ませて手を振る。すると歪みが動いて杖を持った金髪の少女が現れた。

 

「うわっ!?な、何ですか!?ここはいったい・・・」

 

何が起きたのか分からずに困惑するその少女の姿を見て、オベロンは口をポカンと開けてしまう。その姿は確かに待ち望んだ人物の一人だ。しかしその魂は別物であり、彼の記憶から辿ったその正体はただ一人。

 

「ようこそ、ヴィヴィアン。星の内海から出てきてどうしたんだい?」

 

「っ!何故それを・・・それに貴方は」

 

ビシキの連れてきた妖精は、オベロンの口から出た名前に顕著な反応を見せた。それはつまり、自身がそうであると言っている様なものである。

 

オベロンは悪い笑みを浮かべて彼女を見ている。同時に彼女も、自身の妖精眼を通して見たオベロンに違和感を覚えた。

 

「まぁ、オレが君を知っているのは理由があるけど、それは今は些細な問題さ。聞きたい事は一つだけ。ここはオレの治める島ブリテンだ。君はブリテンと言う言葉に聞き覚えはあるかな?」

 

それはこの世界に来たオベロンとダラ・アマデュラ、ビシキ等で話して決めた事である。彼の知る異聞帯の歴史を辿る様な流れであれば、星の内海から妖精が派遣されてくる。それに対して別世界からのアクセスが入る事まで知っているオベロンは来訪した特定の妖精に対して問いただす事を決めていた。

 

理由は主に2つ。自身の待ち人であるかの確認と、その魂に何が入り刻まれているのかを確かめるため。オベロン自身としては前者が確認できれば中身なんてそこまで気にもとめない。対する妖精ヴィヴィアンは、オベロンの口から出たブリテンの一言に、眉間に皺を寄せる。

 

「貴方の言うそのブリテンと言う単語は知っています。私自身、不思議な感覚ではありますが・・・」

 

ヴィヴィアンは言う。この世界にやって来て直ぐに幾つかの情報がもたらされた事を・・・。その中で出てきたのがブリテンと言う言葉だった。彼女自身、まだその情報を整理しきれていない所はあると言う。

 

本来持つ使命を遮る様にアップロードされた数多の情報。中には彼女の使命感を根底から揺るがしかねない内容も少なからず含まれて入る。しかし、その情報の送り主が何者だったのかはまでは彼女自身も把握出来なかった。それだけ送られた情報の内容が膨大で送り主の情報が薄れかけていたのだ。しかし、自身へダイレクトに送られて来ている事から別の世界線にいた自分自身なのでは、と考えてもいる。

 

『つまり、彼女は君の待ち人であって、そうでないと言う微妙な存在なわけか』

 

「だ、誰です!?」

 

ヴィヴィアンは急に頭の中に響く声に周囲を見渡す。

 

『ここだよ。ここ』

 

ヴィヴィアンは再び正面を向くと、目の前に大蛇の顔があった。腕を持つ特異な見た目の蛇。

 

『君とオベロンの会話から君がヴィヴィアンと言う妖精である事は分かった。だから私も名乗ろう。私はダラ・アマデュラ。この世界のヌシにして君をここまで連れてきた妖精ビシキの主だよ』

 

大蛇ことダラ・アマデュラはシャーとしか鳴かなかったが、同時に響く念話で対話を行っている事は理解できたヴィヴィアン。

 

「ご親切にどうも。では、アナタがかの伝説の巨龍だと?」

 

『うん。確かに私の本体はでかいし有名だけど、君はここに居たわけじゃないんだろう。何故、それを知っているのかな?』

 

この世界にいれば、名前はともかく島のヌシである巨大な龍の話は何処かで聞く事もあっただろう。しかし彼女は別の場所から来た来訪者。話の出処が不明瞭だった。

 

「ケルヌンノスです。世界が無の海に変えられた際に最後に残った神。彼はその後、星の内海たる楽園に自身に仕える巫女と共に身を寄せました」

 

ケルヌンノス。それはかつてオベロンが話をした神の名前である。別の世界線では殺されて世界の礎にされた神は、此方では生き延びていた。そして、巫女亡き後も彼はその後の世界を観測し続けていた。それから何千年も時が過ぎたある時、生まれたのがヴィヴィアンである。彼女は己の使命を理解し、楽園にいるケルヌンノスから世界の歴史を教えられた。そうして時が来た事で、ヴィヴィアンは星の内海から表に残るこの世界へとやって来た。

 

彼女は思案する。眼の前には使命に関係する者達の殆どが揃っていた。が、誰とも分からぬかもしれない者から突然送られて来た情報と合わせて考えると、使命の意味が分からなくなってくる。

 

『フフフ。ところでヴィヴィアンさんや。ちょいと私の提案を聞く気はあるかな?』

 

そんなヴィヴィアンに対して、目の前にいる妖精達の主たる蛇はある話を持ちかけた。それはまるで楽園に住んでいた人間を唆した蛇の様であった。

 

 

 

 

 

 

――楽園の鹿――

 

 

(あ、楽園の妖精が使命を放棄した)

 

事の経緯を見守っていた神は、旅立った妖精が使命を放棄した事を確認した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だいちがなくなりました

 

いのちがなくなりました

 

かみがなくなりました

 

■■■がなくなりました

 

 

すべてがひとしくきえたせかい

 

さいごにのこるだいちに

 

ほしのせんぺいがやってきました

 

ほしのせんぺいはだいじゃとたたかいました

 

ほしのせんぺいはだいじゃにまけました

 

ほしのせんぺいはだいじゃにつぶされました

 

だいじゃはほしのせんぺいをたべてしまいました

 

だいじゃは■■■をたべてしまいました

 

■■■はだいじゃにたべられてしまいました

 

だいじゃは■■■になりました

 

おおきなかみはこわくなりました

 

おおきなかみはにげてしまいました

 

おおきなかみはこうかいしました

 

むりょくなじぶんに

 

なにもできないじふんに

 

だからねがうのです

 

あの■■■にさちあれ

 

 

 

残された□□の記録

 

 




ダラ・アマデュラ
アナザーボディー

その辺にいた蛇に魂を割り入れた。が、その割合が偏った為、かなりポジティブで早々怒ることはない。どちらかと言うと人間だった頃の感情が一番近しい。楽園の蛇?

ようはこれからのストーリーで主人公が小さな登場人物たちとやり取りする為の身体

オベオベ
首の爆弾は取れた。妖精王。ようやくやって来た待ち人その1。でもそれは本人ではなく、記憶を継承された別個人。この世界の妖精。

ヴィヴィアン
楽園の妖精。色々な情報が錯綜して混乱中



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