千剣山らしき場所で寝てたら世界が滅んでいた   作:烏龍ハイボール

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でけた

感想であった人に関する事に言及とタグのクロスオーバー要素があります。


第5話 進化と文明、北へ

 

妖精歴10000年

 

6匹の氏族がダラ・アマデュラと出会った年から数えて丁度2000年が経った。

 

ダラ・アマデュラの地上に対する怒りが発端として引き起こった厄災【凶星】は妖精達の中にかの蛇王龍への恐怖心を植え付けた。夜でも昼間と錯覚する光の柱、続けて降り注ぐ数多の隕石。

 

多くの命が失われた。

 

多くの技術が失われかけた。

 

妖精達はダラ・アマデュラに対して怒りを顕にするが、彼等を止めたのは新任の土の氏族長を含めた6氏族の長たちであった。

 

全ては前任の土の氏族長によるダラ・アマデュラを含めた楽園に対する不敬の数々が原因であり、かの存在を責めるのはお門違いだと説明した。当然納得できない者も少なからず居たが、それで再び厄災が引き起こされるのであればと言う脅し文句もあって一連の事件は収束した。

 

妖精達を諌めた氏族長達は彼等を代表して祭壇へ赴き、対応した眷属のビシキに陳謝した。彼女もその謝罪を形だけ受け取ると、ダラ・アマデュラの下へと戻って行った。

これは暗に赦したわけでは無いという事を指し示すものであった。それから彼等妖精とダラ・アマデュラの直接の接触は数百年間途絶える事になった。

 

それは単純にダラ・アマデュラが出てくるほどの問題が起きなかったからであり。眷属として仕えるビシキもつかの間の休息を取ることになった。

 

 

 

その間、ダラ・アマデュラは島の地下に広がる龍脈の中を年単位の休眠を挟みながら移動し、様々な事を調べて回っていた。

 

調べていたのはこの島、終焉の地に流れる龍脈の起源。この地に流れる龍脈は島の大きさ等から比較してもかなり過剰な強度とサイズを誇っている。そこから供給されるエネルギーだけでダラ・アマデュラが他のリソースなしで生きていける程には。

 

それだけのエネルギーを循環し続ける何かが島に眠っている。ならばその正体を知っておきたいと意気込んで臨むダラ・アマデュラだったが、始めてすぐに思わぬ横槍を受けたのだ。

 

 

『ふあぁ〜ねむ』

 

睡魔である。

 

 

ダラ・アマデュラには休眠期と活動期がある。勢力圏の拡大や、自らの領域の保全や管理を行う活動期と、それらで消費したエネルギーを少しずつ龍脈から吸い上げる休眠期。

 

この一連の流れは数百年から数千年ほどのスパンで行われ、現在はその休眠明けであり、二百年ぶりの起床であった。元になった魂の性質上、毎日睡魔が現れるが既に数千年以上生きている事でそれらの習慣はほぼ希薄になり、知識と経験として残るのみである。地上の妖精達に一定の配慮をするのも、その知識と希薄になった性による所が大きい。

 

前回の休眠は龍脈の中で始まり、今日に至るまで龍脈のエネルギーに晒されながら眠っていた。そのお陰と言うべきか、少しだけ

成長した様に思える。若干寝惚けたままのダラ・アマデュラは欠伸をすると、自身の眠っていた場所を見渡す。

 

『やっぱり、ここはすごいな』

 

エネルギーの流れ道である龍脈。それは古き人々に回廊とも呼ばれていた。

 

その形成過程はいくつかあり、一つは命の終わりを感じた龍による移動で作られる場合。

 

もう一つは死を迎えた龍の亡骸がそのまま龍脈にくみこまれた場合。特に後者はその死後、肉体の風化と共に骨格だけを残して地に還り、その骨格自体が龍脈のラインとして機能する。

 

一体どれだけの数の龍がこの地で死を迎えたのか。それを想像する事は難しいが、感謝する事は出来る。この島が今に至る歴史を紡いできた者達への感謝を・・・。

 

『戻るか』

 

ダラ・アマデュラは本拠地である縦穴の底に向けて、移動を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅いです」

 

『ごめんなさい』

 

ダラ・アマデュラを待っていたのはジト目でこちらを見てくるビシキだった。

 

その姿は少女の様な姿から成人の女性に成長していた。元々黄金色だった髪は白くなり、流れるような角に似た器官が頭頂部に二本と側面各一本の計4本生えている。普段は隠しているが、羽が2対に増え、尻尾も二本に増えた。

 

加えて眷属として迎え入れて1600年。妖精としても竜としても成長を重ねた彼女は念願の竜化を獲得した。形態は2つで四肢を持つ基本的な竜形態と、後ろ足の消えた妖竜形態である。それぞれ前者が物理戦闘に特化し、後者は魔法などを駆使する後方支援の位置づけにある。

 

そんな彼女、龍脈を調べに行くと言って実に数百年間帰って来なかった主に対して若干やさぐれていた。これに関しては完全に自分の落ち度であることは分かっているのでダラ・アマデュラは素直に謝る。

 

「それで今回はどちらまで?最初に龍脈の底まで潜ると言ってから千年ほど龍脈に留まっていましたが・・・少し、大きくなられました?」

 

ビシキはダラ・アマデュラ身体の変化に直ぐ気付いた。それが眷属として繋がっているからなのかは定かではない。

 

『お!分かる?千年も龍脈のエネルギーに晒されたせいだと思うけど少しでかくなったよ』

 

「ここも龍脈の筈では?しかもその終点」

 

『厳密には違う。ここは確かに平面として見れば龍脈の収束地だけど、三次元、つまり深さを加えて見ればその上層部分に当たるんだよ。ここから私の掘った穴が偶然龍脈に繫がってそこから漏れるエネルギーが流れてくるだけなのさ』

 

「つまりここは植物の根の端。所謂、側根。得られるリソースは主根に比べれば微々たる物だと?ですが以前はここが一番エネルギーを得れる場所だと言っていませんでした?」

 

『うん言ったね。それは収束地と言う意味でだよ。ここに来た龍脈のエネルギーは上下に分岐している。下に向かったエネルギーは島の最下層、深層部を通って島全体に行き渡り再び龍脈へと戻ってくる。上に向かうエネルギーはここを通ってこの島で一番高い天空山を昇っていき島全体に降り注ぐんだ。まぁ、一部は大気にばら撒かれて島全体を保護する自然の膜のようなモノになるんだけど。これが外界の環境の急激な変化から島を守っているって言ってた』

 

「言ってたって誰ですか?」

 

『竜人』

 

「竜人?」

 

初めて聞く単語だった。人と言う種族が何を意味するか分からないが、とにかくダラ・アマデュラはその竜人と話をしたらしい。

 

 

『それがさ、ずっと昔に海を散歩したことがあったじゃん』

 

「津波事件の前ですよね」

 

『うん。その時に島を外から見たんだけど北の方に何かを感じたんだ。で、一度そっちの方に向かう龍脈を進んだんだけどそこに居たんだよ』

 

「その竜人が、ですか?」

 

『そ!この島の中で相当古い種族らしくてね。彼等は私の事もよく知っているみたいで、言葉も分かるみたいで色々と話が弾んだよ』

 

「・・・」

 

未知の種族、竜人の事を嬉しそうに語るダラ・アマデュラ。まだ見ぬ未知の存在に対して軽く嫉妬を覚えてしまったビシキ。

 

その後、ダラ・アマデュラはその詳細を語ってくれた。

 

古い文明の生き残り。彼等曰く、人類と呼ばれる種族との生存競争に敗北してこの地に行き着いたそうだ。島の南部、今の妖精達が住む所で平和に暮らしていたが、1500年ほど前に起きた竜人達の言葉で言う【大崩壊】で彼等の住む辺りも少なからず被害を受けたそうだ。その為に彼等は安住の地を求めて北部に移り住んだそうだ。そこから妖精達の現在の暮らしは少なからず彼等の生活の跡から見出だせた物である事が分かる。

 

そこでビシキは、ダラ・アマデュラに【人間】、【人類】と呼ばれる種族に関する事を聞く事にした。

 

「すいません。その先程からたまに出てくる人間とは、どの様な種族なのですか?」

 

『氏族長達から聞いたことは無かった?私と最初に会った奴等は皆知ってると思ったけど』

 

「私は初めて聞きました」

 

『そうか。そこからか』

 

 

ダラ・アマデュラは人類がどういう存在であるか説明をした。

人の繁栄の仕組みや姿等。それを聞いてビシキは首を傾げる。

 

「それは、今の妖精達の暮らしに近い様な・・・」

 

『多分逆だね。彼等は君達の様な特別な力を持たない。だからこそ知恵を絞り文明という物を数多く生み出している。寧ろ私は、妖精達がここまで人間味のある文化構成をしている事に驚きだよ。勿論、人間社会に明るい妖精がいるなら話は別だけど・・・』

 

そこでビシキはかつて風の氏族だった頃に聞いた話を思い出す。それは妖精歴の黎明の時代に活躍した一匹の妖精に関する事だ。

 

「それならば聞いたことはあります。あの愚かな土の氏族長の先代にしてあなた様に頭をたれた最初の土の氏族長。彼の一番の功績は黎明期の妖精達の技術革新でした。その最後は謎に包まれていますが、彼の死後も生前に残したとされる品物が見つかっています。それを奴は自分の事の様に吹聴していた様です」

 

土の氏族長。ダラ・アマデュラの記憶に残っているのは二人だ。しかし最初に見た方はそれっきりで特に記憶にはない。

 

一通り話をしたダラ・アマデュラはこれからの事をビシキに伝える。それは先程話にも出てきた竜人に関する事だ。

 

『実はその竜人達から、相談があってね。北の地に自分達で解決出来ない問題があるらしいんだ。それを見に行こうかなってさ』

 

「それはあなた様がやる事なのですか?」

 

『それが何か竜と言うか龍絡みらしいんだ。私は一度海に出てから行くから。留守番をお願い』

 

竜人と言う未知の存在との交流。これは自分の為になる。そう感じだビシキは、ダラ・アマデュラの要望を断った。

 

「いえ、それには及びません。こんな事もあろうかと・・」

 

ビシキが指を鳴らすと彼女の隣にもうひとりのビシキが現れた。

 

「こうして身体を分裂させる術を生み出すことに成功しました。これが我等の留守を守るでしょう」

 

それは心の無い空っぽの肉体。単純な命令のみを遂行する現代で言う所のロボットの様な存在。本当であれば魂も一部切り分けて肉体に宿したいと考えていたが、ビシキの力ではまだその領域に到達できていなかった。それでもこの場所を守らせる事は出来る。ビシキは分裂体に警護を命じる。

 

「さて、行きますよ」

 

『嬉しそうだね?』

 

「えぇ。あなた様と共に遠出なんて初めてですから」

 

『そうかな。まぁ、いいや。じゃあ、海に出るから見つけてくれれば乗せていくよ』

 

「分かりました。では行きましょう」

 

ビシキは空から、ダラ・アマデュラは地下を通って海洋から北の地を目指す。初めての遠出で浮かれるビシキ。果たして、現地で待つ竜人達の抱える問題とは・・・。

 

 

 

 

「・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

――???――

 

 

「この楽園に我等の先祖が根付いて2000年が経った。あのヌシとのいざこざもあったが何とかそれも超えてきた。だが残念な事に今の我等に足りないモノがある。土の始祖より齎された書によると、かつての世界には娯楽なるものがあったそうだ。生活環境は既に完成したと言っていい。だからこそ我等は今ある生活に喜びを与えたい。その為にもある者達の獲得が急務だ」

 

「それは人族」

 

「外の世界では滅んで久しいと聞くがこの島に居ないと決まった訳ではない。彼等を使えば、我等の生活は更に輝くことだろう。そこでだ、我等は人族を探そうと思う。既に南部は探し終えた。残るは始祖達により侵入が禁止されていた北部。明日、我等は北部への遠征を開始する。志願者は氏族を問わない。共により良い明日を手に入れるのだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『いにしえの竜が動いたね』

 

 

『そうだね。南からも悪意が来ている』

 

 

『永かったよ。ようやく君を、助けられる』

 

 

『もう少しの辛抱だ。アルビオン』

 

 

 




モンスター図鑑
ダラ・アマデュラ辿異種
全長:44957メートル

尚も成長中


ビシキ
分裂が可能になった。妖精の力と竜の不思議パワーの合せ技。

後めでたく竜化を獲得。
以下各形態と説明

真竜形態
四肢を持った竜。オーソドックスな竜。
対応クラスはアーチャー


妖竜形態
妖精の羽を持つ足のない竜。その姿はほぼ妖精竜で体色が白メイン
対応クラスはキャスター


設定というかネタ

植竜形態
足の代わりに根っこ

シ○ス。圧倒的○ース。
対応クラスはキャスター
ネタなので出す予定はない。
場合によっては別側面として出せるか?


竜人
終焉の地に住む人型種族。

いにしえの時代から住むこの種族は、初めは南側に住んでいたが、ある事件を切っ掛けで被害を恐れて北部に移住した。

妖精達の生活はこの竜人達が暮らしていた名残を利用したから。後、よほど、よ・ほ・ど頭の良く理解ある妖精が居たんだね。ダレダロー







楽園の地 北部

未開の地で6氏族の何れも寄り付かなかった。と言うか寄り付けなかった。


大崩壊

妖精歴12000年より少し前に起きた世界規模の災害。竜人達の名称。彼等曰く、この地以外の龍脈が喪失した大事件らしい。

土の氏族長(初代)
人類の文明に精通していた。でも何で知ってるの?その時代の文明なんて・・・。

人類
最初の氏族長達は知っている。その後に生まれた彼等も長経由で知っている?





アルビオン 厄介ネタその1

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