ウマ娘に恋愛感情なんていらないです   作:hsironeko

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カワカミ様お迎えしました
どうもhsironekoです。

推しがプレイアブルじゃない悲しみ。実装される頃には離れているかもしれない。
ゆっくりまったりS目指したいと思います。長距離バクシンでな。

みんなも因子改造。やろうな。




第二話

アオハル杯を開催するという理事長の宣言は学園中のウマ娘を興奮させた。普段冷静な娘でも興奮を抑えられないのが見て分かった。その後の様子は様々だ、アオハル杯に向けてメンバーを集めようとしている娘、他の娘と組んで一緒に練習している娘、その様子を羨ましそうに見ている娘、、、。

 

「あら、トレーナーさんではないですか」

「紫カボチャさん。こんにちは」

 

コース場から少し離れたところで寝ていたら一番会いたくない奴に遭遇してしまった。紫がかった芦毛のロングヘアーで、右耳に緑色のリボンをつけているウマ娘、名門「メジロ家」のウマ娘、「メジロマックイーン」だ。頑固で減量中にも関わらずケーキを隠れて食べているアホではないのかと思うウマ娘だ。決して可愛くはないです。

 

メジロ家の中では変人との付き合いが多い彼女。あのゴールドシップやトウカイテイオーといった学園の問題児、、、テイオーはそこまででもないが。同室のイクノディクタスが個人的に世話を焼いているウマ娘、ツインターボ(師匠)とも関わりあるマックイーンは日に日に毒されている感じがしてたまらない。

 

「む、紫、、!」

「ちょうどいいだろ。そっくりだ」

「決闘ですわ!!さぁ!手袋を拾いなさい!今日こそ決着を!!」

「うるさい。手袋うんぬんは投げてから言え、あとお前と戦ったことないわアホ」

 

やっぱりアホなんじゃないか(呆)

 

「ま、まぁ。今日のところは許してあげましてよ。それで?考えていただけましたか?メジロ家に仕えることを」

「もう家は関係ないし、それにそういうのは姉妹にも話すべきでは?」

「話してますが?」

「じゃあ黒カボチャを何とかしろ。出会う度に罵倒されるこっちの身にもなってくれ」

 

またこの話だ。メジロ家のおば様方はどうやら彼女たちの意見より自分たちの意志を尊重させる親として、、、いや、過保護というべきか。しかしマックイーンもいい年なのだからいい加減男と二人きりというのは変な誤解を生むからやめてほしい。

 

一応説明しておこう。「メジロドーベル」マックイーンと同じくメジロ家のウマ娘でご同輩。姉妹というか同期の方が言い方的にはいいのかもしれない。男どもの間では「箱入り娘」といわれている。が、本人に近寄ることは誰もできない。というかしない。

 

理由としては彼女が超・男嫌いの性格をしているからだ。まるで虫でも見るような目で見てくるから彼女のトレーナー志望は女性しかいない。クールな性格から男女ともに人気があるが私は性格も相まってそんなに好きではない。言葉にするなら「嫌い」の二文字だろう。彼女に認められることはメジロ家の婿入りが近いともいわれるくらい攻略は難しい。絶対無理。三回言います、無理。

 

「むむむ、、、どうすればライアンやパーマーのようにあなたに接することができるのでしょう」

「生まれ変わって見せろよ。お嬢様」

「生まれ変わったら接してくれますの?」

「その時に期待」

 

生まれ変わったからってそれが本人であるとは限らない。まぁ運命に期待するしかないだろう。漫画で言う神様のいたずらだろうか。まぁ別に生まれ変わってもコイツと関わることはない。

 

「それで?用事は何です?」

「あなた、集会に来なかったでしょう?」

 

『集会』少し前にウマ娘とその担当トレーナーたちが突然体育館兼講堂に召集された。

理事長代理の紹介、挨拶と突然の 「管理教育プログラム」の発表。もちろん話は広報部担当「メイショウドトウ」から聞いていた。

「樫本 理子」自分がこのトレセン学園に来る理由になった一人であり、何より師匠とも呼べる人物。自分のトレーナーとしての経験はすべてこの人から教わった。

 

「それが何か?」

「あなたは、あの人の方針を認めるおつもりで?」

「可もなく不可もなく。言っていることは理解できるし、そういう事もある」

「あれでは教育より監禁ですわ。おばあさまなら声を荒げて否定していますわ」

 

今まで自由とも呼べる教育方針を掲げていた理事長とはまた違った方針。まぁ、教育方針が突然変わることに対しての動揺も、内容の批判もわかる。しかし、「郷に入っては郷に従え」だ。あの人の城になった以上俺たちはそれに従わなくてはならない。

 

「私たちは道具ではなく競技者ですわ。自分のモノだと勘違いしているのかしら」

『私は道具ではなく競技者、あなたはトレーナー、でしょ?』

 

横を向いて、それでも視線はまっすぐな「メジロマックイーン」の姿と彼女の放った一言は、どこか「彼女」を俺にイメージさせた。俺はすぐに彼女から視線を外して見えないようにすぐ近くの芝を力任せに引きちぎる。口は、見えはしないが唇がわずかに痛かった。

 

「どうしました?」

「…何でもない。それよりみんなの反応は?」

「様々、ですわ。渋々受け入れる人も、思いっきり否定する人も。まぁ、皆さん黙っていないのは確かですわね」

 

…そうだろうな。いきなり自由だったのが監獄当然。トレーナーもウマ娘も「ルール」という鎖に縛られた監獄生活を送るわけだ。保育所レベルから格段に下がったといえるだろう。

「受け入れる」といってもただ黙っているだけだろう。「ミホノブルボン」か「エイシンフラッシュ」か、また「ビワハヤヒデ」だろうか。黙っていても一時的なものだ。いつか周りに流されてすぐ否定論を掲げる。

 

否定するのは「理解」をしようとしないから。

 

受け入れたくないのは「理解」をあきらめているから。

 

気持ち悪いのは「理解」をしていないから。

 

「彼女」だったらどうするんだろうか。

 

どんな険しい道もまっすぐ走っていた「彼女」なら。

 

「あ…」

「え?」

「明日、理事代理に相談してみようとは思う」

 

「自分」がどうしたいかなんてのはわからない。

 

「彼女」たちがどうしようと自分には関係ない。

 

だけど、それでも。

 

 

「彼女」が悲しむ顔を見たくないから。

 

 

 

 

 

夜、トレーナー寮は静かだった。

 

帰ってくるトレーナーたちの反応は様々だった。

 

「明日。行って何が変わるのかな」

 

正直あんなことを言ってしまったのは後悔している。自分一人が否定したところで、いくらこの学園のウマ娘の協力を得ても無駄な努力だってのはわかってる。あの人はそういう人だ。一度決めたことはとことんやり尽くす支配者。それが先生のやり方だった。

 

不必要なものは考えから捨てる。最適な答えだけを出し。トレーニングに、、、。

 

「ん?電話、、」

 

トレーナーレポートを纏めているとき、支給されていたスマホに電話がかかってくる。相手は担当「ナリタブライアン」だった。

 

「もしもし」

「トレーナー…か?今、電話してもいいだろうか」

 

どこか不安げな声。体調が悪いのか、それとも何かあったのだろうか、机の下にあった救急箱に手を伸ばし引き出しからは自身のプライベート用スマホを取り出す。いつでも対応できるように靴を履き替えようとする。

 

「大丈夫だよ」

「トレーナーは…代理の話に賛成なのか?」

 

…コイツは今何を言った?

 

わずか三秒、思考が冷静になるには十分な時間だった。ほとんどのことに興味を持たない「ナリタブライアン」が?心配を…したのか?

俺は安堵の呼吸を静かに、電話越しの彼女にも気付かないように吐き出す。救急箱は手から滑り落ち地面と激突して大きな音を立てる。

 

「と、トレーナー!?」

「大丈夫大丈夫。物を落としただけだから」

 

正直ビビった。数ヶ月で大体の性格は聞いていたつもりだった。

シンボリルドルフからは「寡黙で静かだが良い奴だと」

エアグルーヴからは「仲間思いでそれを言葉に出さない奴だと」

ビワハヤヒデからは「自慢の妹だと」

 

担当に決めてから数ヶ月過ぎた中で彼女の性格は話を念頭に置いて探って来た結果が今の彼女の性格だと思っていた。心配事も不安も悩みも、決して口には出さない奴だと思っていた。

 

メンタルチェックなら、たづなさんが気を利かせてくれるだろうし。練習している中で彼女の仲間がきっと言葉に出さない彼女の代わりに言ってきてくれるだろうと思っていたが…。

 

「少し驚いた。君が心配事を聞いてくるなんて」

「そうか。しかしこれだけは聞いておきたかった」

「一体どうして?」

「…副会長(エアグルーヴ)会長(シンボリルドルフ)は良い性格だ。明日、みんなが言わなくても恐らく…」

 

直訴しに行くって事だろうか。いや、彼女たちの性格を考慮すれば当然の行動か。

しかし、彼女たちの言葉を素直に聞くほど先生は甘くはないし、ウマ娘の事となると人一倍厳しい。停学は…無いだろうが謹慎はありそう。

 

「管理教育プログラム」が機能しだせばウマ娘とトレーナーの「関係」はそこで終わりだ。「ルール」の中でしか彼女たちと触れ合うことは出来なくなる。

外出も許可を得てからの外出となり、夜間外出は大幅に制限される。ウマ娘もトレーナーも。

 

先生の事だ。最悪監視を付けざるを得ない行動に出るのかもしれない…。

 

「明日、その件について文句を言いに行くつもり」

「そうか…」

 

そこから先はお互い何も言わない。理事代理に文句を言うことは相当のリスクを背負う必要がある。担当トレーナーなら尚更。

 

自分ならどうなっても構わない。中央トレセン学園に居られなくなっても別に構わない。

 

「…おやすみ」

 

何かを言いかけたナリタブライアンとの通話を切り、自分は柔らかいソファの上で横になった。

 

 

 

 

「おはようございます。トレーナーさん」

 

次の日の朝。目の前と身の回りの情報整理から始まる。

昨日はナリタブライアンとの通話の後ソファで寝て…そこからは覚えていない。寝たのが最後の情報、昨日の終わりだと理解した。

 

次に情報の取得、自分の身体には毛布が敷かれていた。

夏場に差し掛かった時期には似合わないモフモフの暖かそうなやつだ。そのあと、鼻に味噌の匂いが入ってくる。

 

「え?味噌?」

「はい。今日は味噌汁ですよ〜」

 

机の向こう。ウキウキ気分で尻尾を揺らしながら鍋をかき混ぜていたのは「聖母」の異名をトレセン学園で騒がれているウマ娘「スーパークリーク」だった。今日は私服で部屋にあがられていた。あれ?鍵は掛けたような…。

 

「鍵なら寮長(ヒシアマゾン)さんからお借りしました〜」

 

やりやがったなコノヤロウ。ちなみに「聖母」と言われているのはただ「優しい」だけではない。

彼女の優しいと言われる部分は「お世話さん」だと言うところだ。エアグルーヴと同じで部屋が散らかっているのは見過ごせないし誰だろうと頑張ったら褒めたくなる。まさに「理想のお母さん像」だろう。

 

しかし、その「お母さん」体験をしたゴールドシップは後にこう語った。

 

「アイツは聖母だ…」

 

目が死んで、身体も全身が痙攣していたゴールドシップは多くのトレーナーの前でその言葉を発したあと、倒れ込んだという。そしてしばらくスーパークリークの幻影を見た。

 

「黄金の船を沈めた聖母」としてスーパークリークはトレーナーの間での伝説となったのだった。

彼女に「お世話」されると骨抜きにされる。ある種での恐怖が七不思議に追加された。

 

「わざわざ自分とこじゃなくてもいいんじゃないですかね」

「いいじゃないですか〜、久しぶりのママでちゅよ〜」

「うぜェ…」

 

気分はまるで反抗期の小学生だ。いつまで経っても子供離れ出来ない母親にウンザリするってこういう気分なのだろうか。「タマモクロス」と「ナリタタイシン」の気持ちが少しはわかったかもしれない。

 

スーパークリークは俺がそう悩んでいる間にも素早くお皿をテーブルに並べる。サラダにご飯に味噌汁に…、健康的な日本食だ。素直に美味しそう。

 

「ところで今日はどうしてソファに?」

「あー…夜更かしをしちゃったんですよ…つい?あ…」

 

気づいた時には遅かった。スーパークリークが席を立ったと同時に俺は玄関へと走り出す。

 

「ぐべぇ!?」

「ふふふっ…じゃあ休まないとイケませんね〜」

 

眼に明らかに違う光を宿したウマに捕まった。そうウマく行かないものだな…って、シンボリルドルフに頭で怒られた気がする。

 

そんな事より、玄関一歩手前で無様に転がっている俺の手を二つ、後ろに回すと彼女の胸ポケット(物理)から取り出したテープで手をぐるぐる巻きにされてしまう。

 

「トレーナーさんはゆっくり休んでくださいね〜?私が食べさせてあげます(ニコニコ」

「やめろォ!ゴルシ!ターボ!いけに…タマモ!助けて!」

「生贄いうなァ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






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