英雄伝説〜偐の軌跡〜   作:影後

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剣帝達と特務支援課は向かい合いながら会談の姿勢をとる。結社の執行者である剣帝に対しロイドは警戒を抱きながらも、普段と変わらぬ顔で対面していた。


第13話

俺はレオンハルトさんの話を聞くため、ローゼンベルク工房の一室に通された。

 

「まず、俺は執行者No.2剣帝レオンハルトだ」

 

「特務支援課のリーダーを努めています、ロイド・バニングスです。俺達に支援を要請したいとの話ですが、いったい」

 

レオンハルトさんは俺を見ると重い空気になりながらも話し始めた。

 

「まずお前達も結社身喰らう蛇は知っているな」

 

「はい、アイアンリードさんと鉄機隊とは一度手合わせをした事があります」

 

「奴等が動いている。時期は…まだ解らない、ただ今月中に動き始めると俺は見ている。俺達だけではクロスベルで動くのは難しい地の利があり、なおかつ実績もあるお前達に支援を要請した次第だ。頼む、奴等の計画を潰す為に協力してくれ」

 

レオンハルトさんは俺達に頭を深く下げた、アリオスさんは激しい目を向けているが、ソレをキーアがやめさせた。

 

「アリオス…キーアね、この目判るよ。信じられる、私達と同じだよ…信じて」

 

「…キーア、君はこの男が何をしたか知らない。ティオ・プラトー、君は覚えているだろう。ガイに救われた時を、コイツは教団の科学者を目の前で殺した。この男に慈悲は無い」

 

「…あぁ、俺の本質は変わらないだろう。修羅として戦い続ける。だが…いやもしお前が俺を信じられない時、俺を斬れ」

 

レオンハルトさんから只ならない程の気を感じた。自分を斬れ、簡単には言えるだろう。でも、ソレを本気の目でアリオスさんに向けて言ったんだ。覚悟もすべてが……

 

「わかりました。俺は…協力します、でも貴方達の様に殺人はできません」

 

「構わない、お前達は俺達(身喰らう蛇)とは違う、お前達のやり方で手伝ってくれればいい。俺達も、お前達のやり方でやる」

 

俺とレオンハルトさんの瞳が重なった、わかる。レオンハルトさんの悲しみが、決意が、俺も負ける訳には行かないんだ。

 

「わかりました。俺達は俺達の方法でやります」

 

「さらばだ」

 

帰りは怪盗紳士の魔法で送られた。

 

「…ロイド」

 

「ロイドさん」

 

「ロイドさん」

 

「ロイド!」

 

「…ティオ、ごめん。迷惑かける事になるけど」

 

「大丈夫です、私も特務支援課の仲間ですから」

 

皆大丈夫だと言ってくれた。俺はアークスⅡを開いてある人物にメッセージを送った。

 

《ごめん、迷惑かける事になる。でも、信じてくれ》s.s.s.

 

メッセージはバレない様にティオにサーバーを何個か経由して貰った。誰から送られたかも解らないだろうけど、これなら伝わる筈だ。

 

「みんな!行くぞ!」

 

「「オォ!!!」」

 

 

 

 

 

ロイド達を返し、俺達は情報収集に勤しんだ。そして5月20日、俺達の道はまた重なった。

 

「へぇ、新しいビルも多いし帝国の都市とは随分違うな」

 

「あのオルキスタワーが特に印象的ではありますね」

 

「元々、帝国と共和国に共同統治されていた自治州なだけにどちらの影響も受けているし」

 

トールズ第2分校の面々が歩いていた。剣帝は変装しているが、関わらない為に離れた。

 

 

 

俺はクルト、ユウナ、アルティナと共にオルキスタワーに向かった。でもおかしい、入ってから解ったんだが内戦でもあったかの様に所々戦闘の跡が見える。ユウナは気丈に振る舞っていたが、無理してるのはわかる。

 

「教官、ユウナさんは……」

 

「アルティナ、大丈夫だ。…大丈夫」

 

今は見守るしかない、見守るしかできないんだ。

今は目的地である総督執務室に向かった。簡単なチェックを受けて通される。ノックを3回行い入る。

 

「総督閣下、失礼します」

 

「あぁ、入りたまえ」

 

「ぁ……」

 

「……お久しぶりです」 

 

「失礼します」

 

「あぁ、二人共久しぶりだ」

 

そこには物々しい雰囲気の中で書類仕事を行うルーファス総督がいた。書類をどかし立ち上がる。

 

「それ以外は初めてだったかな?クロスベル州総督ルーファス・アルバレアという。見知り置き願おうか、トールズ第Ⅱ、新Ⅶ組の諸君」

 

ルーファスさんに近付き改めて話しかける。書類仕事をしながら雑談が始まった。

 

「フフッ、久々の邂逅にはなるが…隔世の感があるかもしれないな。背も伸びたようだが、随分見違えたものだ」

 

「……恐縮です。自分以上にユーシスの方も随分と見違えたようですが」

 

「あぁ、そうらしいな」

 

弟の事でありながら、簡単に述べる。でも若干だが喜んでいる様にも見える。

 

「ーそして、そなたもまた雰囲気が変わったものだ」

 

皆がアルティナを見つめる。内戦の時を知っている俺としては確かにとしか言いようがない。でも、背は伸びたのか?

 

「総督閣下はお変わりなく。まぁ、身長はそれ程伸びてはいませんが」

 

何故かアルティナから薄目で睨まれてしまった。それがバレたのかユウナから脇腹を小突かれる。

 

「フフ、事務的な所も変わっていなさそうだが良き仲間に恵まれたようだ」

 

「初めまして閣下、ヴァンダール家が次子、クルト・ヴァンダールと申します」

 

「フフ、ソナタの御父上には以前お世話になった事がある。本校に入らなかったのは惜しいが、これもまた巡り合せだろう。そして、そちらの君は……」

 

ユウナは静かな怒りを抱きながらもルーファスさんを見ていた。

 

「ーユウナ・クロフォードです。クロスベル軍警学校出身で改めてトールズ第Ⅱに入学しました」

 

話すユウナをクルトも見つめる。

 

「フフ、君のことも聞いている。オルランド中尉やシーカー少尉の後輩に当たるのだったかな?」

 

「っ……」

 

「そして、リーヴェルト少佐の推薦を受けて第Ⅱに入ったと聞いた。色々あるだろうが、これもまた善きめぐり合わせだろう。帝国とクロスベル、二つの視点を融和する意味でもね」

 

そこから帝国本土からくる視察団の話を聞き、特務活動の報告を受ける。

 

「…本当ですか」

 

「あくまで現在は調査だ」

 

幻獣の調査の下に俺とアルティナにしか解らない暗号文が掲載されていた。

 

《剣帝レオンハルトの調査》

 

「詳しくは用紙に書いてある。……さて、ユウナ君とクルト君には一度退出して貰おう」

 

「…なん」

 

「わかりました…行くぞユウナ」

 

クルトに静止されたユウナ、二人は警備をつけられながら部屋を退出する。

 

「さて、本題の件だ。現在、剣帝レオンハルトと思われる人物がクロスベルを強襲した。クロスベル方面師団の1割が個人に敗れた。コレは如何ともし難い事態だ。君達には悪いが、調査して貰いたい。勿論、片手間で構わない。レクター少佐とクレア少佐も行っているのでね。だが、広める事はしないで頂こう……クロスベルでの特務活動、頑張りたまへ」

 

ユウナ達と合流して特務活動に入る。でも…

 

「教官、どうしたんですか?」

 

「…ユウナ、いや何でもないんだ」

 

剣帝レオンハルト、本当にクロスベルに居るのか。居たとして一体…何を。

 

 

 

 

 

 

 

とある不良神父はミシュラムワンダーランドを相棒と共に歩いていた。

 

「んで、なんやリース。あの巫山戯た報告は」

 

「しょうがないじゃない、直ぐに連絡したんだもの」

 

「阿呆、何考えてんねん。お前休暇でクロスベル入りしただけやろう、此方は大問題や。新人に死人の復活、最悪外法狩りが動く。クロスベルでまた紛争が起こるぞ」

 

「でも、止めてくれたんでしょ?千の護り手さん」

 

「…団長にてこ言われたわ。今回動けるのはオレとリースだけや。やるしかない」

 

ネギのように緑色でツンツン尖った頭の神父は愛用のクロスボウを持った。

 

「…やってやるわ」

 

「はふはんは!」

 

「はぁ、何くってんねん」

 

変わらない相棒、笑いながらクロスベルへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 




動き出す剣帝一行、Ⅶ組、教会、特務支援課、帝国、そして身喰らう蛇。策謀の渦巻く中、剣帝は何を思い、進むのか。

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