第二の人生は波乱万丈 作:彩々
ビアンカ母娘をアルカパまで送り届けた僕は親同士の会話を聞いていても面白くないと言った
リュカとビアンカに連れられ、宿屋の外に出た。
町の出入り口には衛兵がいたので二人が町の外に出る心配はないだろう。
だが、この二人の行動力はよくわかっているので何かと心配なのだ。
ビアンカの案内に従ってついていくと二人の男の子がネコをいじめていた。
そのネコはどう見ても魔物だ。二人組の男の子も、リュカもビアンカもそれに気づいていない。
「ちょっと、止めてあげなさいよ!かわいそうでしょ!」
ビアンカはさっそくその正義感を発揮し男の子たちを怒った。そのまま勢いに任せて話が進み、
僕たちは
(僕たち、たぶん今日はこのまま帰ると思うんだけど・・・忘れてるよね)
怒りが収まらないと言った様子の二人が宿屋に帰って行くのを二人を見ながら
僕はこれからどうするべきか悩んでいた。
結果から言えば、今日一日は
部屋に通される途中でビアンカが夜に僕たちを迎えに行くと言って、
体力温存のために先に寝ておくことを提案された。
さすがに子供の体で徹夜には耐えれないと判断し、僕も特に逆らわずに頷いた。
子供二人だけで魔物が活発になる夜に町の外に行かせるわけにはいかないと気合を入れた。
その夜、僕が目を覚ましたと同時に、部屋の扉が開いた。
約束通りにビアンカが僕たちを起こしに来たのだ。
ビアンカがそのままリュカを起こし、僕たちは物音をたてないようにひっそりと外に出た。
町の出入り口を守る衛兵はビアンカの事前情報通りに眠っている。
横を素通りしながら僕は内心腹を立てていた。
(こいつ・・・給料もらって仕事してるんならまじめにやれよ。
四六時中気を張ってろとは言わないけど、せめて寝るなよな・・・
まあ、これがゲームのご都合主義ってやつなのか僕たちは助かってるけど。)
僕たちはレヌール城を目指して北へと進んで行ったつもりだった。
だが、予想以上に魔物が多く、倒しながら、逃げながら歩き回っているうちに、
方角がわからなくなってしまったのだ。それでもリュカとビアンカは進もうとしていた。
明日には僕とリュカが帰ってしまうので、何としても今日中に解決したいのだ。
そのことを僕もわかっているため、止められないのだ。
焦ったリュカとビアンカは走って少しでも距離を稼ごうとしていた。
だが、子供の少ない体力でその方法はあまり適していない。案の定すぐに疲れてしまっていた。
仕方がないと僕たちは少しの間休憩をはさんだ。冷静になってあたりを見回すと、
木々のさらに奥、かすかに城が見えた。
「向こうに城が見えたよ!多分あれがレヌール城だ!!」
僕が指をさした方向にリュカとビアンカは進んでいった。
だが、タイムリミットが迫ってきているのだ。残念だが城の中を見て回る時間はないだろう。
レヌール城全体が見える距離に来たところで、僕たちはアルカパに帰ることにした。
こっそりとベッドに戻ってから数時間後、僕は目が覚めた。
昼間に眠っておいたからか少ない睡眠時間でも全く眠たくなかった。
だが、普段よりも目覚めた時間は遅かった。
(いつもならば父さんに起こされるのにな・・・)
不思議に思って見てみると、父さんの顔色が悪く熱があった。
ダンカンさんの風邪がうつってしまったようだ。
急いで階段を降りて女将さんに助けを求めた。
薬草をすりつぶしたり、濡れたタオルを額に置いたりするうちに、リュカと父さんも目が覚めた。
「旦那の風邪がうつったみたいだね。治るまでゆっくりしていきな。」
「申し訳ない。薬やタオルなど感謝する。」
「気にすることはないよ。それに、半分くらいはアベルがやってくれたしね。」
「そうなのか。ありがとうアベル。」
「いいよ、早く治してね。」
あの頑丈なパパス(父さん)が風邪をひくなんてことは全く想像していなかった女将さんや僕。
少し慌ててしまったが何とか落ち着いた。
父さんが風邪をひいたことにはリュカやダンカンさん、ビアンカも驚いていた。
風邪が移ってはいけないと、僕たちは午前中は宿屋の外にいるように言われてしまった。
看病も女将さんに任せて僕たち子ども3人は作戦会議だ。
とは言っても昨日の帰り道はしっかりと覚えているのでその逆を行くだけだ。
今日も行動は夜なので、昼食後は夜に備えて寝ることにした。
夜、ビアンカがドアを開ける音で僕は目が覚めた。
リュカを起こした僕たちは昨日と同様に町の外に出た。
このあたりにどんな魔物が住んでいるのかが分かっていたので、対処も簡単にできた。
夜の道にも慣れて、警戒しながらも話しながらレヌール城に向かった。
レヌール城の正面入り口は何らかの魔術が施されているらしく、入ることができなかった。
だが、城の裏には梯子があり、そこから城の中に入ることができた。
城の中では様々なことが起こった。ビアンカがさらわれたり、屋上のお墓にはなぜか僕たちの名前が刻まれていたり、王様から住み着いた魔物を追い払うという依頼を受けたり、うごくせきぞうとの戦闘に予想以上に体力を奪われたり・・・
一つの城の中で、一晩で起こる出来事としては濃すぎることが次から次へと・・・
階段を下りたり、部屋を行き来して見つけた扉を開くと来た時には入れなかった正面入り口に立っていた。鍵を開けて戻り、すぐそばの階段を上ると人魂が宿屋をやっていた。
少しの間休憩しようと目をつむり、体力を回復させると、なぜか城の外にいた。
急いで現在地を確認し、城へと戻った。
不思議なことに宿屋に入ってからあまり時間が経っていないにもかかわらず、体力が全快し、
まるで一晩眠った後のような感覚があったのだ。
首をかしげながらも城の中を探索し松明や名産品の銀のティーセットをそろえて
最後にボスのいる4階にたどり着いた。
ボスは僕たちを見ると、いきなり床のトラップを作動させ、僕たちを下に落とした。
調味料を振りかけられて、一つフロアが上がると、おばけキャンドルに囲まれていた。
リュカのブーメランで攪乱しながら僕が近接攻撃を仕掛けて勝利した。
ビアンカはマヌーサや薬草を使ってサポートしてくれた。
もう一度4階に上がると場所を変えてレヌール城の魔物のボス:おやぶんゴーストがいた。
おやぶんゴーストとの戦闘もさっきまでとあまり変わらない。
むしろ一体であったりビアンカのメラが効くだけ戦略上は戦いやすい。
ギラやメラも今までの魔物やビアンカの呪文を見てきたおかげで対応しやすかった。
体力が多く、かなりの時間がかかったが、僕の攻撃で戦意が喪失させた。
無事にレヌール城の魔物を追い払い、王に会いに行くと感謝を告げられた。
そして、未練のなくなった王と王女が成仏した。
その姿を見届けると空から金色の珠がが降ってきた。
ビアンカはそれを王様からのお礼と解釈し、冒険の宝物として持って帰ることになった。
キメラの翼でアルカパに帰ると、夜が明けていた。
約束通りに男の子二人組からネコ(ベビーパンサー)を開放した。
親が宿屋をやっているビアンカは動物を飼うことはできないと
ボロンゴと名付けられたベビーパンサーは僕たちと暮らすことになった。
僕たち3人と一匹で宿屋に帰ると扉の前には父さんやビアンカの両親が勢ぞろいだった。
軽いお説教と勇気ある行動だとお褒めの言葉をいただきいた後、
僕たちはビアンカ親子と別れを済ませた。
その時にビアンカはボロンゴに思い出のリボンを結んでくれた。
「また冒険しようね。」という約束の印でもある。
「それじゃあまたね。」
僕たち親子3人はサンタローズの村に帰って行った。