壁|ω・`)チラッ
壁|ω・`)っ「第4話」スッ…
壁|ω・`)…
壁|彡サッ
「へぇー此処がトリステイン王国で1番大きい街なのか」
ギーシュとの決闘から数日。魔術を教えることとなったオベロンは夜に情報収集、昼に教材の調整とサーヴァントだからこと出来る生活を送っていた。そしてギーシュとの決闘から3日、ルイズが街へと出かけるとのことでついでに着いて行くことになったオベロン。夜な夜な情報収集のため訪れていたオベロンだが、流石に数日程度で国一番の城下町を完全に把握出来るほどではなかった。
「さて、私の用事は済んだことだし久しぶりに街でも見て回りましょう。」
そういって街を散策する二人。食事処、仕立て屋、アクセサリー店など様々な場所をルイズの案内がてら見回る。
するとオベロンは流し目で見ていた町の一角にとある店を見つける。そこはどうやら武器屋のようでオベロンの様子に気付いたルイズが言葉を掛ける。
「どうしたの? なんか気になる物でもあった?」
「ねぇマスター。あそこのお店に入ってもいい?」
「武器屋? どうしてまた?」
「やっぱり男の子としては武器ってものは気になる物さ。な、いいだろう?」
「そうね……。行きたいところは殆ど行ったし、良いわよ。たまには使い魔の我儘も聞いてあげなきゃね。」
お互いの同意を経て店に入っていく二人。店の中はやや埃っぽく客自体もルイズとオベロン以外見当たらない。少しして奥から店主が気怠そうに出てくる。しかし、相手が貴族と解った途端直ぐに媚びへつらうかのような態度を取る。
「旦那。貴族の旦那。ウチは真っ当な商売を心掛けていましてね。上に目を付けられることなんて何もしてませんよ。」
「違うわ。検問しに来たわけじゃないもの。」
「へ、へぇ……そしたらなんでうちの店に?」
「ウチの使い魔が興味ありそうだったからね。気に入ったものがあったら買うわ。」
店主とルイズがやり取りをしている中オベロンは中を物色する。両手剣、片手剣、斧、槍等様々な武器が置いてあるが如何せんオベロンが気に入る様な武器は見当たらない。
「(殆どが西洋剣ばっかりで彼が造った様な美しい刀は無いのか……。)」
ふと、彼の脳裏を過ぎる一人の若々しい赤毛の男。口を開いたら頑固爺だったが刀に掛ける想いは本物だった。だからこそ彼には造って貰いたかったのだが……。
「かぁ~。珍しい! こんなオンボロな店に客たァ明日は雨でも降るんかねぇ?」
突然、店の中で声が響く。しかしその声はルイズやオベロンのではなく二人は辺りを見回す。すると店主が壁に掛けられている一振りの両手剣に怒鳴る。
「やいデル公! お客様の前だぞ! 静かにしろ!」
「あぁ!? うるせぇよクソオヤジ! 阿漕な商売ばっかやりやがって!」
「なんだとてめぇ! 貴族様に頼んで溶かしちまうぞ!」
「面白れぇ、やってみやがれ! 丁度この世にも飽き飽きしてたところさ!」
注意を始めた店主にそれに応ずる剣。傍から見るとなんもとシュールな光景だがオベロンだけはその剣をキラキラとした瞳で見ていた。
「マスターマスター! 僕あれがほしいな!」
「
「あれがいい! なんてったって喋る剣なんて面白いじゃないか!」
それに錆で隠れて分かりずらいが磨けば充分戦えるほどの性能はしているだろう。そして西洋剣には珍しく片刃で両手剣というのがオベロンの男心を擽る。
「……驚いた。オメェ『使い手』か」
「何の話だい?」
「これからじっくりと話してやるよ」
「そう……。よろしくねデル公?」
「デル公じゃねぇ! 俺様はデルフリンガー様だ。」
何やら意味深な事を呟くデルフリンガーだが、気にも留めずオベロンは背負う。
「店主いくら?」
「へぇ·····そいつなら100エキューで十分でさぁ·····」
「安いのね」
「厄介払いも兼ねてるんでさぁ」
そういえば、と店主が思い出したかのように呟く。何でもこの辺に盗賊が現れ、貴族の家が襲われているということを。
「他にも、ここ最近の話ですがゲルマニアの方ですが農民たちが次々と消えていってるとか……噂では新種の魔獣ってはなしでっせ」
「そう。物騒ね。」
「ですからどうですか貴族様? ついでにもう一品小物でも買っていくのは……。」
「帰るわ。」
店主によるそれとない話術に微塵も興味を示さないルイズ。がっくりと頭を下げる店主を他所に用が済んだと言わんばかりの足取りで店を出る。その後、店に来た二人の貴族を最後に悪態を吐きながら今日の店を閉める店主の姿が見れたとか·····。そして魔法学院に戻ると同時にキュルケと一人の少女がルイズたちに突撃する。
「ダーリン! 私に黙って街へ行くなんてつれないわぁ·····。私に言ったらなんでも買ってあげたのに!」
オベロンを見つけると熱い抱擁をしたと思ったらそのまま腕を絡めて甘えた仕草をする。その様子に時間でも止まったかの様な沈黙が一瞬訪れる。
「ーーーオベロン?貴方何をしているの?」
「僕が聞きたいぐらいだよ。だからその杖を僕に向けないで!」
「キュルケ? 貴方何勝手に人の使い魔にちょっかいかけてるのよ!」
「良いじゃないルイズ。私は今恋を満喫している最中なの! 人の恋路を邪魔しないでくれる?」
オベロンを挟みバチバチと火花を散らす二人。挟まれたオベロンは溜まったもんではなく直ぐに腕を解くとルイズの元へ戻る。その様子にルイズは勝ち誇ったような笑みを浮かべ、逆にキュルケは悲しそうな顔をする。
「ところでミス・ツェルプストー? 何故僕なんかに恋を?」
「あぁんミスなんてそんな·····。私のことはキュルケで構いませんこと?」
一つ咳払いをするとなぜオベロンに惚れたのか理由を語り出す。
「何故って·····ギーシュとの決闘よ! 蝶のように美しく舞ったと思ったら蜂のような猛攻、そして力ではなく杖を取り上げることによる平和的解決·····あんなカッコイイ姿を見て恋に燃えないのはツェルプストーとしてありえないわ!もはや宿命·····いえ、運命と言っても過言ではないわ!」
「·····オベロン?」
「ん? どうかしたのかいマスター?」
「·····いえ、なんでもないわ」
キュルケが最後に言った台詞に顔を顰めるオベロン。しかし、すぐに笑顔に戻すがどうやらルイズには気付かれたのか声をかけられる。普段どうりに返事を返したためかそれ以上の質問は飛んでこない。
「で、結局キュルケ·····アンタは何しに来たのよ?」
「ふふふ·····実はダーリンにプレゼントを買ってきたのよ!」
そういって取り出すのは装飾品が散りばめられた綺麗な剣であった。しかし、それは戦闘で使えるものでは到底無く、少しでも戦闘経験を持っている者が見れば鈍だということが分かるだろう。
「ふふ! どう? ダーリン。 貴方のために買ってきてあげたのよ! 武器屋に入ったのは見てたし、大方ルイズが貧乏で買ってあげれなかったんでしょう!」
「違うわよ。」
「あーキュルケ? その剣を僕にくれるのかい?」
「そうよ! どう? 気に入ってくれた?」
「うーんそうだね。とっても綺麗だと思うよ。儀礼用の剣だし」
「·····え?」
「いや、まぁ明らかに戦闘用ではないよね·····。ただこんだけ装飾品で着飾ってればそれなりに値段もするし·····うん。インテリアとしてはいいんじゃないかな?」
ふふん! と胸を張るキュルケにオベロンは残酷なことを告げる。当初の目的とは違う形でのプレゼントとなってしまったがそれならそれでと開き直ることにした様ですぐに立ち直る。
「·····なにか来る? 」
「? どうしたのタバサ?」
タバサと呼ばれた青髪の少女が何か呟き、キュルケが尋ねる。しかし、返事が返ってくることはなく、タバサと同じように学院の壁側の方を見つめる。
「ッ!? 何、アレ·····?」
学院の壁際には壁の高さを優に超える巨大なゴーレムが佇んでいた。あまりの巨大さに足を震わせ逃げることもままならない。
「ッ!? アイツ! 壁を殴り始めたわッ!?」
ルイズが言った通り巨大なゴーレムは壁を殴り始める。ドゴォンと巨大な破裂音が辺りに響き渡り、鼓膜が悲鳴をあげる。
「逃げましょうッ! タバサお願い!」
「·····シルフィード。」
二人はその場を離れようと、シルフィードと呼ばれた風竜に乗り込む。しかし、ルイズは乗り込むことはせずゴーレムの方へ向かって走り出す。
「ルイズッ!?」
声を張り上げるキュルケだがルイズは構わず走り続ける。オベロンはルイズの理解できない行動に一瞬硬直するがすぐに動きだしルイズに追いつく。
「ッ!? おいマスター!? なにをやっているんだ!?」
「いくら『固定化』の魔法がかけられているとはいえあんな巨大ゴーレムに殴られ続けたら壁の方が持たないわッ!? 私が注意を引く!」
「ばっか!? 君魔法も使えないんだろう!? どうやって!?」
「どうもこうもないでしょ!? 誰かがやらないと·····ッ!」
そう言って魔法の呪文を唱え始め巨大ゴーレムに向けて完成した魔法を放つ。しかし、案の定失敗し狙いも逸れたのか巨大ゴーレムではなくゴーレムを殴っていた壁が爆発してしまう。するとこちらに気づいたゴーレムが今度は足をおおきく振りあげルイズを踏み潰そうとする。
「·····あっ」
避けれない。そう確信するルイズは思わずギュッと目を瞑ってしまう。しかし身構えていた衝撃は一切来ず、代わりに浮遊感が身体を包む。恐る恐る目を開けるとオベロンがルイズを横抱きの形で抱えており空を飛んでいた。
「お、オベロン!? 貴方飛べたの!?」
「残念ながら僕飛べないんだよね! 強いていうなら跳躍だよ!」
オベロン達を見失ったのか、はたまた興味が失せたのか再び壁を殴り始める巨大ゴーレム。すると先程まであんなに頑丈そうな音を出していた壁が一瞬で音を立てて崩れていく。壁の半分以上の大きさの穴が空いたと思ったら今度は巨大ゴーレムも形を崩し始める。
「此処は·····宝物庫·····?」
地面に着地し、オベロンから降ろされたルイズは穴の空いた場所が宝物庫に位置することを確認する。すると、オベロンがルイズの元へと歩き出し
「·····ぴゃいっ!?」
拳骨を落とす。突然の痛みに涙目になりながらも痛みの元凶を作ったオベロンをキツく睨む。しかし、オベロンの顔を見ると顔を強ばらせる。
「マスター。僕が怒ってる理由わかる?」
「·····はい。」
「あの時、僕が助けれなかった君死んでたんだよ!? 少しでも遅れたらって考え君にはなかったのかなぁ!?」
「だ、だからって別に手を挙げる必要なんて·····。」
「じゃあこれから先、危険な事に身を投じないって約束出来る?」
「それは·····。」
「どうしてそこで即答できないんだい·····。」
「はぁ·····。」と、ため息を着くオベロン。するとルイズは「だって·····。」と小さく理由を話始める。
「だって·····なんだい?」
「だって·····私は貴族よ。貴族として賊に背中を向けるなんて真似、出来るわけないじゃない·····。」
その言葉に一瞬真顔になり、口を開きかけたオベロンは直ぐに首を振り口を閉じる。その後、諭すようにルイズへと話しかける。
「はぁ·····分かった。けど出来れば今後あるか分からないけどこんな危ない真似は出来れば控えてくれ。分かったかい?」
「えぇ·····そうするわ」
「それはそうと。先程は僕もすまなかった。怒るためとはいえマスターに手を挙げるなんてね。」
「いえ、良いわ。オベロンが本気で私のために怒ってくれてるって伝わったから·····。」
「ありがとうマスター。じゃあ先に寮へと戻っていてくれ。僕は少しやる事があるから·····。何、数分もしたら僕も向かうさ。」
「? ええ、わかったわ。」
そう言い残しルイズは寮へと向かう。オベロンはその場を少し離れ、人目につかない場所へ移動する。
「·····ブランカ。」
ポツリとつぶやくオベロンにどこからともなくブランカが現れる。やっと呼んでくれたと言わんばかりに羽を震わせ、オベロンの言葉を待つ。
「取り敢えず辺りを捜索してきてくれるかい? 怪しい人物がいたらそいつの特徴を僕に教えてくれ。」
それだけ伝えるとすっかり暗くなった空へとブランカは飛び立つ。暗闇へと消えていく姿を見送るとオベロンも寮へと足を運び出す。
「(流石にまだ遠くへ逃げてはいないだろう。フライという魔法とやらの速度はそれ程でもないし、使い魔を使っての逃亡だと今の状態だと目立つ。それ以外だと僕が知らないような魔法や道具を使われたらの場合だが·····その時はどうしようもないな·····。)」
「ま、その時はその時·····か。」と一人言葉の零しながらその場を去るのであった。
疾走兄貴になるところだったあぶねぇ·····。次回はできる限り早く出せるようにします。はい·····。