僕のヒーローアカデミア「善悪相殺」取得RTA   作:らっきー(16代目)

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おまけ2-2

「13号! 生徒を守れ!」

 

「なんだありゃ、もう始まってんぞパターン?」

 

「動くな! ……あれは、ヴィランだ!」

 

 ゾロゾロと現れるどう見ても堅気とは思えない集団。雄英を襲ったとなれば箔が付くと考えた者、子供に下卑た欲望を向ける者、ただエリートが気に食わない者、そして、平和の象徴を壊したい者。共通しているのは、他人を傷付けることに罪悪感など抱かない連中である事。

 

 生徒達は雰囲気に飲まれる事しか出来なかった。イレイザーヘッドは生徒達を守る事を第一に考えた。13号は冷静にどう動くべきかを考えた。そしてもう1人は──

 

「イレイザーヘッド、13号。生徒達に、こちらを見ないようにと」

 

 一切の躊躇なく、ただ殺す事だけを考えた。

 

 

 

 

 

 

 雄英1年生の授業中。同行するヒーローも極わずか。圧倒的な人数で襲って後は好きにすればいい。協力するなら金も渡す。

 個性を思いっきり使いたいと、或いは生まれ持った個性で差別されてきた鬱憤を晴らしたいと。欲を満たせて鬱憤も晴らせる。最高の仕事だと多くの人間が乗ってきた。

 彼らは、自分に都合の悪い事態など想定出来ない。この人数でかかればプロヒーローにも勝てると思っていたし、1年生如きが自分達に叶うはずがないと思っていた。強いて彼らの心配事を挙げるとしたら、人数に対しておもちゃの数が少ないということくらいか。

 そんな中1人が、下衆な欲望を胸にゲートを潜り。獲物を見つけさあ行くぞと──弾丸に、首から上を吹き飛ばされた。

 

 轟音に。或いは降り掛かってきた血飛沫に。呆気に取られて足を止めた者から似た末路を辿る。ある者は四肢を撃ち抜かれ千切れる手足を見る事となった。ある者は上半身と下半身が永遠に分かたれた。

 恐慌してゲートに戻ろうとした者と、ゲートから出てくる者がぶつかって、2人纏めて撃ち抜かれた。

 

 血飛沫。断末魔。銃声。

 

 圧倒的多数の攻撃側だったはず、否、事実まだこちらの方が数倍は数で上回っている。なのに、息を潜めて遮蔽物に隠れることしか出来なかった。

 新しくゲートを潜って来た奴等も、運が悪かった奴から撃ち抜かれていく。そして運が良かった奴は鼠のように隠れる者の仲間入りだ。

 

「おいおい、なんだよコレ……いきなりこんなにやられるとかどんなクソゲーだよ……」

 

 最後にゲートから現れたのは、身体中に手をつけた不気味な男と脳をむき出しにした不気味な男。

 

「しかも、オールマイトいねーし……何処だよ……子供を殺せば来るのかな? ──黒霧。生徒を散らせ。遠距離に対応出来るやつは、銃のヒーローを殺せ」

 

 襲ってきたヴィランの集団のリーダーと思しき男が指示を出す。

 それと同じタイミングで、イレイザーヘッドがヴィランの集団に飛び込んでいく。援護射撃も飛んでくる中、元々得意としている一対多での捕縛術は確実にヴィランの数を減らしていった。

 

「ヒーローがさぁ、人殺していいのかい? そんなの正義じゃなくて、ただの暴力じゃないか」

 

「それを止めるために態々前に出てきたんだよ」

 

「へぇぇ……カッコイイねぇ。イレイザーヘッド。──脳無。アイツを潰すぞ」

 

 

 

 一方、待機している生徒達と13号。

 

「──我々はヴィラン連合。僭越ながら、この度雄英高校に入らせて頂きましたのは、平和の象徴、オールマイトに息絶えて頂きたいと思ってのことでして」

 

 こちらにやって来たのはゲートの役割を果たしていた黒い霧のようなヴィラン。

 当然13号が生徒を守る為に行動──する前に、2人の生徒がヴィランへと向かっていった。

 

「その前に俺らにやられるってことは考えなかったのか!?」

 

「爆破」と「硬化」。汎用性の高い強個性であり、並のヴィランならこの2人に倒されていただろう。だが。

 

「危ない危ない。そう、生徒と言っても優秀な金の卵」

 

 相性が悪かったというのもある。実体を持たない霧の体に、物理での接触は酷く通りにくい。

 

「私の役目は貴方達を散らして嬲り殺す……まあ、少し予定は狂ってしまいましたが」

 

 その言葉と共に霧が広がり、生徒の半数程が霧に飲まれる。本来なら飛ばした先で集めてきたヴィラン達が一網打尽にする予定だったのだが、銃のヒーローに手駒がかなり減らされている。余裕ぶった物言いとは裏腹に、内心はかなり苛立っていた。

 

「委員長、君に託します。学校まで走って、この事を伝えてください」

 

「しかし……! クラスの皆を置いていくなど……」

 

「敵前で策を語る阿呆がいますか!」

 

「バレても問題が無いから語ったんでしょうが!」

 

 再び広がる黒い霧と、それを個性で吸い込む13号。実体のないものをも吸い込み、塵にする13号の個性はこの戦いにおいて好相性かに思えた。しかし。

 

「なるほど……驚異的な個性です。しかし……戦闘経験は一般ヒーローに比べて半歩劣る!」

 

 ワープゲートを13号の背後に開く。それは即ち、全てを吸い込むブラックホールが自身の背中で開くということ。

 

 自分で自分を吸い込み、倒れ伏す13号。

 

「先生!」

 

「行け! 飯田! 走れって!」

 

「……教師達を呼ばれては、こちらも大変ですので!」

 

 

 

 

 

 

 

 生徒は粗方散らす事が出来た。プロヒーローである13号は行動不能に出来た。汚点は生徒を1人逃がしてしまった事か。子供といえど金の卵。油断したつもりは無かったが、失態だ。

 その失態を埋め合わせる為にも、せめて詳細の分からない銃のヒーローを仕留めようと矛先を向ける。遠距離を得意とするヒーローとは何度か戦ったことがある。ワープゲートを活用すれば、遠距離戦は得意分野だ。

 

 向こうもこちらに気づいたのか、銃のヒーローの顔がこちらを向き──心臓に鉛弾を叩き込まれた。

 否、錯覚だ。実際には何の攻撃も受けていないし、既に集めてきた手駒達との撃ち合いに戻っている。だが、あの殺気は本物だ。少なくともあれを味わった後で、確実に殺れるとは断言出来そうも無い。

 

 仕方ない。ここでゲームオーバーだ。かなり苛立たせるだろうが、死柄木弔に報告するとしよう。

 

 

 

 グチャり、グチャりと肉が床に叩き付けられる音がする。

 

「そいつが対平和の象徴用、脳無」

 

「抹消」は個性と関係なく強力な力を持つ脳無には関係ない。ボキリと肘が、小枝でも折るようにへし折られる。

 

「死柄木弔……」

 

「黒霧、13号はやったのか?」

 

「行動不能にはしましたが、……生徒の1人には逃げられました……」

 

「はぁ……? …………お前がワープゲートじゃなかったら塵にしてたよ……! ──あーあ、今回はゲームオーバーだ。帰ろっか。……だがその前に、平和の象徴としての矜恃を少しでも──へし折って帰ろう!!」

 

 死柄木弔の指が偶々そこに居た生徒に伸びる。触れた物全てを崩壊させる手が迫る。五指で触れ、しかし。

 

「チッ……本当にカッコイイぜ、イレイザーヘッド。脳無。そいつの首を折れ」

 

(ヤバい。ヤバいヤバいヤバいヤバい!!)

 

 偶々そこに居た生徒の1人である緑谷は、究極の2択を迫られていた。イレイザーヘッドの「抹消」は、本人があんな状態である以上もう持たない。死柄木弔を倒して、蛙水を救うか。脳無を倒して相澤先生を救うか。どうする。どうする? どうすればいい? 

 

「その手を離せぇぇええ!! スマァァァッッシュ!!」

 

 結局選んだのは死柄木弔を倒す方。結論から言えば正解ではあったのだろう。ある意味では。

 拳が突き刺さった相手は、脳無。死柄木弔を庇っていた。それはつまり、イレイザーヘッドが解放されたという事だから、状況は好転したとも言える──その点に限ってだけは。

 代わりに、緑谷は脳無に掴まり、結局他の生徒達には死柄木弔の崩壊させる手が迫る。

 もう、彼らに打つ手はない。イレイザーヘッドは助けに入れる状態……どころか、起き上がれもしないだろう。脳無には100%スマッシュすらも効かない。終わった。死んだ。

 

 そんな絶望は、脳無と共に吹き飛ばされた。

 

 銃弾が効かないと見るや惜しげも無く銃を手放し、全力の──鍛え上げて来た個性も身体能力も全開で行う、クラウチングスタート。狙撃場所から戦闘地点を助走としてそこから繰り出されるのは、オールマイトを除けば、世界で1番強い──飛び膝蹴り。

 結果は、数メートル吹き飛ばされた脳無の姿。

 

「おいおい……ショック吸収のハズだぞ……何をやってる! 脳無! そいつを殺せ!」

 

「ショック吸収ね……ネタバラシ有難う。だったら中だ」

 

 脳無の拳を受けながら、眼球に向かって思い切り指を打ち込み、そのまま抉り出す。これが出来たのは、脳無の拳を受け止められる個性を持っている彼女だからだ。要は相性である。

 

「蛆虫共。語る言葉も無い。ただ死ね」

 

「おいおい、目を背けて良いのかいヒーロー? 脳無はまだ終わっちゃいないぜ?」

 

「何? ぐっ!?」

 

 抉られたはずの目は何事も無かったかのように復活し、銃のヒーローを殴り飛ばす。

 

「これは超再生の個性さ。……誰もショック吸収だけとは言ってないだろう?」

 

「ゴホ……! 良いだろう……ならば死にたくなるまで殺してやる」

 

 殴り合う。抉り出す。再生する。殴り合う。抉り出す。再生する。彼女の攻撃は有効打にならず、脳無の攻撃は一撃一撃があまりにも重い。

 その差は徐々に現れてくる。段々と動きが鈍る者と怪我をすぐに回復させ万全のまま動く者。勝負の結果は見えている。

 だが、とにかく時間を稼いで、稼いで稼いで──報われた。

 

 入口のドアを吹き飛ばす轟音。まだ遠くだというのにここまで届くような声。

 

「もう大丈夫……! 私が来た」

 

「……コンティニューだ」

 

 

 

 

 

 

 

 オールマイトが来て、事態は直ぐに収束へと向かう……訳ではなかった。

 対オールマイト用に改造されたという脳無。その看板に偽りは無かったようで、オールマイトと互角以上に打ち合って見せて、更に黒霧との協力でオールマイトを拘束する事にまで成功していた。

 

 事実、轟と爆豪が合流出来ていなかったらオールマイトの命も危うかったかもしれない。轟は氷結によって脳無の身体を砕き、爆豪はその洞察力によって黒霧の本体を捉えていた。

 

 凍った身体を砕きながら再生した脳無がまず行ったのは黒霧の奪還。オールマイトが身を呈して庇っていなければ、生徒が1人殺される事になっていただろう。

 

「3対5だ……俺達でオールマイトのサポートすりゃあ……!」

 

「3対6だ……ゴホッ。クズは殺さねば……殺す。……絶対に」

 

 脳無にやられて、一時離脱していた彼女も加わろうとする。

 

「いや、下がっていろ。脳無は、私が相手をする」

 

 大言壮語に思えたそれをしかしオールマイトは成し遂げて見せた。小細工無しの真っ向からの殴り合い。ショック吸収を無効化する程の100%を超えた威力の拳の連続。

 

 

 

 

「開け。黒霧」

 

「宜しいのですか?」

 

「良いわけが無い……本当にゲームオーバーだ。雄英の教師達も来る。……けど、今ならまだ逃げられる。早く開け」

 

 全員の目が脳無とオールマイトに向いている隙に、リーダー格の2人は逃げ出した。

 

 脳無はオールマイトにより退治され、残ったヴィラン達も戦意を失うか、既に生徒たちにやられているかが大半だ。事態は解決したと言っていいだろう。ほぼ。

 

「どけ、オールマイト。そいつらは鏖だ」

 

「どけないな。もう充分だろう? ワープゲートもいない。アイツらは順当に逮捕されるだろうさ」

 

「逮捕……? 尚更有り得ん。あの蛆虫共に生きている価値はない。早くそこをどけ。こうして話している間にも、クズ共が呼吸をしている」

 

「そんな睨まないでくれよ。仲間じゃないか?」

 

「笑わせるな。私にいるのは敵と、敵の敵だけだ」

 

「ははっ、手厳しいねぇ!」

 

 ヴィランの生き残りの処遇だけが問題として残っていた。

 

 このやり取りは結局、彼女が脳無から受けたダメージにより気絶することによって終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『雄英襲撃。死者62名。逮捕者38名。到底ニュースには載せられないねえ』

 

「申し訳ありません」

 

『いや、責めている訳じゃない。君のおかげで幸いにも雄英生徒達に被害は出なかったからね。これなら印象操作も容易いさ』

 

「……」

 

『さて、オールマイトの護衛中悪いんだが、君に仕事だ。ヒーロー殺しを捕らえてくれ……と言っても君の事だから聞いてくれないだろうね。生死問わずで構わないよ』

 

「了解しました」

 

『細かい情報は分かり次第伝える。準備だけしておいてくれ。……既に何人ものヒーローが殺されているが、君には期待しているよ。ヴィラン・アンサング』

 

「はい。それでは」

 




分かりづらいので補足すると最後の、ヴィラン・アンサングは主人公( 'ω')?のヴィランネームです。いい加減名前が無いと不便なのでねじ込みました

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