ガンダムビルドダイバーズ リバイブフレンズ   作:二葉ベス

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第3話:「サイカに再会……ふふ」

「ふーん、なるへそー!」

 

 全然分かってないような顔をする目の前の桃色ツインテはいったい誰なのか。

 その答えはただ1つだ。先ほどフレンドになったしーちゃんこと、シーハートというダイバーだった。

 どことなくおーちゃんにも似た見た目と声であるが、実際は性格があまりにも似通っていないから、多分別人だ。

 

「本当に分かってます?」

「分かってる分かってる! あれだよね、こー。親友見つける感じで!」

「…………」

 

 親友を見つける、だけならそこまで心配することはなかったのに、どうしてだろう。めちゃくちゃ不安だ。

 とはいえ先輩ダイバーがいてくれるのであれば、心強い。

 あとはわたしのフレンドにも頼って、それでわたしを含めて3人か。1人よりはマシか。

 

「でもGBNってめっちゃ広いじゃん?」

「そうですね」

「その中から親友ちゃんを見つけるって、めっちゃムズくない?」

「……そこにお気づきになりましたか」

 

 きっとわたしのフレンドも協力はしてくれるだろう。

 だけどその子も口を揃えて言うだろう。

 

「そもそもしーちゃん、今日で6日目だからわかんないや」

「……え、あの動きで6日目ですか?」

「うんうん。めっちゃ練習したよー」

 

 この人、実は逸材なんじゃないだろうか。

 

 というのも、このゲームに置いてオールレンジ攻撃は凄まじくピーキーな代物だ。

 オート追跡機能であれば、何もすることはないのだけど、反面として恐ろしく動きが単調なのだ。

 動きが単調であれば、その導線が読まれやすいのは必定。

 つまるところ、オールレンジ攻撃系は数や単体の性能で殴るか、もしくはひとつひとつ手作業で殴るってこと。

 

 しーちゃんは実際手足のような動きで相手の動きを釘付けにし、GNオルトロスで一網打尽した、というのが先ほどの試合の事の顛末だ。

 あれが6日目って、元々Dランクだったわたしの立つ瀬がないのですが。

 

「どうしたの?」

「い、いえ。なんでもないですよ」

 

 右こめかみを痒くもないのに掻きながら、当該ダイバーの情報を彼女に渡す。

 

「この子?」

「そうです。名前をOC。オーシャンクールって名前です」

「へー、かっこいー!」

「文字通りクールでしたよ」

 

 しーちゃんとおーちゃんの決定的に違うところとしては、やっぱりこの性格の差と言っても過言ではない。

 仮にこの子がおーちゃんだったとして、解釈違いもいいところだ。

 だからこの子だけはありえない。似てるけど、違う子だ。

 

「でもやっぱりどこにいるか分かりませんよね……」

「まー、そだねー。となると、あの人に相談じゃない?」

「あの人って……あー」

 

 今、フレンドを入れて3人と言っただろうが、実は4人目もいたことを思い出す。

 あまりにも有名で、あまりにも忙しそうで、声をかけるスキもなさそうなあの人に。

 

「でもマギーさんって忙しそうじゃないですか?」

「みたいだよねー。今もアウトロー戦役の事後処理に追われてるって話だし」

 

 そうでなくても忙しそうだと言うのに。

 

 ――アウトロー戦役。

 今や一躍有名フォースとなったケーキヴァイキングと悪名高い元フォース粛正委員会とその他関係を結んだアライアンスが大激突した大規模フォース戦だ。

 事情を深くは知らないが、その途中でノイヤーというダイバーがユーカリというダイバーに対して告白し、こっぴどく振られたというのが伝説に残っている。

 わたしもネットの海に眠っている情報を拾っていただけだから、事の顛末は知らないけれど、ある意味劇的なラブロマンスだったと言ってもいい。実際彼女たちを題材にした創作まで生まれ始めているという話だ。世界は広い。

 

「しーちゃんもフォースとか組んでみたいよー」

「フォース。って、今ダイバーランクは?」

「Fだよー」

「まずはそこからでしょうかね」

 

 ハの字笑顔で笑う彼女はなんとも可愛らしく、妹っぽい。

 愛嬌があると言うべきなのかも。こういう顔をされたら許してしまうのが夜の男性諸君なのだろうが、わたしは違う。

 明らかにため息を交えて、ガッカリポーズを交わせばしーちゃんはピクリと肩を揺らす。

 

「な、なんかまずいこと言った?」

「いえ……。なんでもありません」

 

 練習してたらEランクぐらいには上がってるはずじゃないかな。

 とか言おうとはしたけど、流石にやめた。そこまで無作法じゃない。

 

「どする? とりあえず行ってみる?」

「……今はやめておきましょう。フレンドはもう1人いますし」

「というか、きーちゃんも何者なのさ。ライフル持ってたと思ったら、狙撃以外で相手1体沈めちゃうし」

「まぁ、昔から器用だったので」

 

 よく言えば万能。でもどちらかと言えば器用貧乏と言ったほうが近いだろう。

 たまたま目がよくて、VR適性もよくて、どちらも使いこなすことできた。たったそれだけだ。

 

「それに復帰勢だし」

「おー、だからか!」

「はい。今日が初めてですけどね」

「ふーん。じゃあ今のGBNではしーちゃんが先輩ってことか!」

 

 ふっふっんとその少しだけ大きな胸をそらす。

 まぁ、そういうことになるけど……。

 

「たかが5日じゃないですか」

「む! よく言うでしょ、男子3日会わざれば刮目して見よって! じゃあ女子は1晩会わなかったら変わるんだよ!」

 

 そういう問題だろうか。

 

「とにかく! 早くあと1人にも連絡しちゃいなよ!」

「そうしてみます。覚えてるといいんですけどね」

 

 オンライン状態の彼女に対して1通メッセージを送る。

 返事が来るまで、とりあえず何をしようかとしーちゃんと話していたところ、その返事は速攻でやってきた。

 

 内容を噛み砕いて説明すると、以下の通りである。

 

『そういう話であれば、わたくしも協力させていただきます。強力な助っ人になると思いますよ』

「ですって」

「……ごめん、もう1回言って」

「分かってます。あの人はそういう人なので……」

 

 わたしがやめる前からのフレンド同士で、おーちゃんの次には仲が良かった、お姉さんのようなポジションの人だ。

 昔からあの人の剣戟を見切れなくて、よくなます切りにされていたっけ。

 

「で、その人なんていうダイバーなの?」

「サイカって名前なのですけど、多分通り名の方が有名かもしれません」

「え? それってどういう……」

 

 曰く、そのダイバーは剣士であった。

 彼女は強くなるためにこのGBNへとやってきて、度重なるダイバーたちに辻デュエルを挑んでは勝ったり負けたりしていた。

 

 曰く、その剣士はジンクス使いであった。

 彼女は守りを重視している剣士であるため、自身のガンプラにもGNフィールドを搭載でき、かつ接近戦を行えるジンクスⅣを素材にしていた。

 

 曰く、そのジンクスはサムライであり青色である。

 それが自分のテーマカラーとして、そして"赤鬼をも斬れるように"と、対である青色を身に着けた。

 

「鬼、ジンクス使い。そして強さを求める……」

「わたしでも知ってます。その人の名前は」

 

 人呼んで、そのダイバーはこう名付けられていた。

 

「サムライオーガ。奇しくも獄炎のオーガと比べられてしまったダイバーです」

 

 ◇

 

「サイカに再会……ふふ」

「……えっと、サイカちゃん?」

「サイカでございます。貴殿はキユリ殿が言っていたシーハート殿でしたか」

「しーちゃんだよ! しーちゃんって呼んでね!」

「しーちゃん殿ですね」

「お、おう……」

 

 しばらくして、出会ったのはJAPANディメンションの茶屋である。

 ここでならば誰の目にも気にする必要はないということではない。この人はただただ団子を食べたかったようで、お茶を丁寧に口にしながらみたらし団子を口にしている。

 

 黒髪でショートボブ。左右のこめかみのハネっ毛と常時糸目の女性だ。

 糸目っていったいどこから見えているのだろか。とたまに考えることはあるけれど、多分アバターでの設定上、そうしているに違いない。

 剣道着と懐には竹刀を収めているためか、見た目は本当にサムライ、もしくは剣道の上手い人みたいでかっこいい佇まいだ。

 口から出てくるオヤジギャグを除いて。

 

「キユリ殿の帰還のめでたいですね。鯛での頼みますか?」

「そこまで固執しなくていいので……」

「失礼いたしました」

 

 この人はスキあらばダジャレを言ってくる。それも滑るタイプの。

 布団が吹っ飛んだは平気で言うし、今だって。

 

「しーちゃん。ワンチャン。何かいいギャグはありませんか?」

「人の名前で無理やり遊ばないでくださいって……」

「失礼いたしました。つれいわ」

「だーかーらー!」

「アハハハ!!!」

 

 しーちゃんが笑ってるからいいけど、なんか釈然としないなぁ、もう。

 

「冗談はさておき、今日は情報共有ということで解散なされてはいかがでしょうか?」

「そう、ですか?」

「キユリ殿も今日が久々のログイン。おそらく体も心も気を張って疲れているでしょう。ですから急速な休息も大事ですよ」

 

 今のダジャレはさておき、確かに心が少し参ってるのは分かる気がする。

 胸の奥が少し重たい。

 

「だね! じゃー、お疲れつか疲れって感じで!」

「どういうこと?」

「そーいうこと! んじゃ、またあした!」

 

 ひょっとして、彼女はわたしのことをねぎらってくれたのだろうか。

 先ほどからいい人だとは思っていたけれど、本当にいい人だ。

 初対面で抱きしめられたりもしたが。

 

「…………」

「どうしたんですか?」

「いえ、なんでもありません」

 

 サイカさんが彼女が去った後を見つめて、視線を醤油団子へと移す。

 

「わたくしは嬉しいですよ、また帰ってきてくれて」

「まぁ、いろいろありましたからね」

 

 サイカさんは知っている。わたしが何故GBNをやめたのか。

 わたしは知っている。サイカさんがサムライオーガと呼ばれてどう思っているか。

 でもそれを踏み出すことは、お互いになくて。

 

「このぜんざい美味しいですね」

「でしょう?」

 

 それでも、今のGBNは優しさに満ちているって、なんとなく分かることができた。

 だったら、それでいいんじゃないかな。

 

 わたしはごちそうさまを、1つ口にして、その場からログアウトした。




◇サイカ
サムライオーガという二つ名を欲しいままにしているサムライ系ダイバー。オヤジギャグがとてつもなく滑る

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