ドラゴンボール()   作:yosui

3 / 30
こっから急展開


宇宙は摩訶不思議

 広々とした宇宙空間の中に、小さな宇宙船が静かに航行している。この孫悟天の乗った宇宙船は、あれからさらに約2年の間宇宙の旅を続けていた。

 すでにスーパーサイヤ人の修行は大詰め、今孫悟天が行っているのは、原作でもあったスーパーサイヤ人に慣れる修行だ。そのため今の悟天は朝から晩まで寝る時にいたってもずっと金髪のままになっている。もしこんなのを母であるチチに見られたら、「悟天ちゃんが不良になっちまった!」と泣かれるのだろうか? そんな微笑ましい光景を想像して、彼の口の端は自然と上を向くのだった。

 

 そろそろ彼も12歳、流石にこの頃にはセル編も終わっている筈だ。そう思った彼は、いよいよ本気で地球に帰ろうと考えるようになった。しかし、未だにマップ機能は故障中で帰り道の見当もつかない。ならばと、彼はもう一つの手段を取ることにした。上手くいけば一瞬で地球に帰ることができる方法だ。

 

 右手の人差し指と中指だけを立てるようにして、他の指は握り込む。格好は悟空の瞬間移動の時のものと同じだが、別に瞬間移動を使おうとしているわけではない、と言うか使えない。悟天がこのポーズをしているのはただ単に気の探知の為だ。

 

 彼が探そうとしているのは、新ナメック星に移住したであろうナメック星人たちの気。彼らとは少ない時間ではあったが共に行動していたため、その気をよく覚えていた。特に歳も近かったデンデの気は1番一緒に居ただけあって見つけやすい。しかし、この広い宇宙の中でナメック星人たちの小さな気を探すのは困難を極めた。少なくとも現状の位置からはほんの少しもナメック星人の気を感じなかったのだ。

 

 あまり気を探知する修行を行って来なかった悟天は、この場所から自分の父親である孫悟空やベジータの気を感じる事が出来ていない。そしてそれはナメック星人たちの気も同様だった。ここから感じられる気と言えば、あまり大きくはないが特殊な雰囲気を持った者と、その周辺に無数に存在するその星の住人の気だけ。誰の気も探知できなかった悟天は、宇宙船を修理できるかもしれないという一縷の望みに賭け惑星ズノーへと降りていくのだった。

 

 惑星ズノー。ここは宇宙一物知りのお殿様であるズノー様がおさめる星だ。この星には毎日様々な種族の人間が来訪し、ズノー様に質問して答えを聞き出している。その答えは百発百中。間違えたことは絶対に言わないと言う正確すぎるもので、その能力からさまざまな種族の者たちに崇められている。ただしズノー様に質問をするにはそれなりの報酬がいる。と言ってもお金や食料と言った物ではなくとても変わったもので、その報酬とはズノー様の頬にキスをするという何とも言えないものだ。ズノー様が男性ということもあって、女性に圧倒的に有利な条件となっている。

 

 そんな星に降り立った孫悟天は、降り立った瞬間に早速客人だと勘違いされ、ズノー様の元へと連れて来られていた。

 

「えっと、なぜ僕はここに連れて来られたんでしょうか?」

「あなたはズノー様に質問に来られたお客様ではないのですか?」

「ズノー様? ズノー様っていったい」

「はあ、まさかズノー様な事をご存知ない方がここに来られるとは。いいでしょう、これも何かの縁です。こちらにおわすお方はズノー様と言ってこの宇宙から果ては全ての宇宙のことまで何でも知っておられる凄いお方なのです。ただし、ズノー様に質問するには貢ぎとして、ズノー様の頬にキスをして頂きます。ご質問の回数は質問者様の性別や容姿によって変動いたしますので、質問される際には十分にお気をつけてご発言ください」

 

 孫悟天はかつて彼が()だった頃、ドラゴンボールを読んだことがあった。しかし彼はドラゴンボール超のアニメは見ていなかったのだ。そのため彼はズノー様の存在を全く存じ上げていなかった。かろうじて知っているのはZの続編として映画化された神と神に出てきたビルス様とウィスさんぐらいだ。

 

 孫悟天は現在12歳の子供だ。なれど中身は()という大人の人格が入っているため、ズノー様の側近が言っていた事を冷静にしっかりと考え、不用意な事を口にしないように口を固く閉じていた。彼が質問したい内容はたった一つ、新ナメック星の座標だけだ。どうして地球ではなくナメック星なのかという話だが、何のことはない。ただ彼がナメック星のドラゴンボールで叶えられる3つの願いのうちに、超高重力のトレーニングルームを頼みたいという欲が出てしまっただけである。

 

「よろしいですか? ではズノー様に貢ぎのキッスを」

 

 悟天がズノーさまの左側に立ち、その白い頬にキッスを落とした。するとキッスをした瞬間、ズノー様の口が開かれる。

 

「お前は男だから質問は一回だ」

「僕の宇宙船に入力するための新ナメック星の座標を教えてください!」

「よかろう。お前の宇宙船に入力する新ナメック星の座標は……」

 

 孫悟天はズノーから上手く聞き出すことが出来た新ナメック星の座標をメモして、自らの宇宙船に乗り込み惑星ズノーを後にした。その顔がニコニコ笑顔だったのはもうすぐ親しい人たちに会えるという気持ちからのものだったのだろうか。そんな事を考えながら、ズノーの側近はズノーへと話しかけた。

 

「ズノー様、あれでよかったのでしょうか? 確かこの星からあの座標に向けて真っ直ぐ行くと、途中で巨大なブラックホールに当たってしまうのではと思いましたが」

 

「それは私に質問されていない。安全なルートという事であれば答えたのだがな」

 

「確かにその通りでございますね。我々に出来ることは、質問された内容に正確に答えることのみ」

 

 こうして惑星ズノーから真っ直ぐ新ナメック星に向かった孫悟天は、この先十数年の間行方不明となったのであった。

 

 

 




宇宙は何が起こるか分かりません。ブラックホールは光さえも飲み込んでしまうと言われています。そのあまりの重力の強さに、空間が歪んでしまうこともあるようです。
さて、悟天()は一体どうなってしまうのでしょうか。

ズノー様のいる星の名前がわからなかったので、適当に惑星ズノーと名付けました。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。