ドラゴンボール()   作:yosui

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まあ、あまり考えずに見てもろて


力と力、重力と気

 孫悟天の乗っていた宇宙船が新ナメック星に向かう途中にあったブラックホールに飲み込まれた。ブラックホールとは星の成れの果て、自らの重力に耐えきれなくなった星は中心に向かって圧縮されていき、やがて何でも吸い込む真っ黒な穴のようになってしまう。延々と周囲のものを引き寄せ続け、原型も残らないように圧縮していくそれに、孫悟天は己の全エネルギーでもって抵抗していた。

 

 孫悟天をはじめ、彼の周りの多くの武術家達は己のパワーで星を破壊することができる。しかしそれでも星自体が持つ膨大なエネルギーには敵わないものだ。たとえスーパーサイヤ人でもそれは同じ。地球の300倍の重力にすら軽々耐えてみせる彼も、この超高重力の中宇宙船全体を気でカバーしながら脱出するのは簡単なことではなかった。

 それどころか常時スーパーサイヤ人になる修行を収めていた事でギリギリ耐えている状態だ。この状態を維持するためにはホイポイカプセルで大量に持っている食料をガンガン食い潰して、エネルギーを常に回復させるしかない。ざっと計算してみても今の食料貯蔵量ではもって一年だった。

 

 しかしこんな事で諦めるような孫悟天ではない。何と彼はこの超高重力下でスーパーサイヤ人の壁を越える修行を始めたのだ。先が分かっていないなら手探りになるので時間がかかってしまう。だが彼はスーパーサイヤ人の進化の先を知っているので、確かな道が見えていた。先はある、ならそれに向かって修行するだけ。どんな絶望的な状況でもすぐに切り替えて結局は修行をしている。こう言うところはまさに孫悟空の息子といった感じである。

 

 約半年後。孫悟天はついにスーパーサイヤ人の殻を破り、さらに上へと駒を進めた。原作ではスーパーサイヤ人2と呼ばれていた形態だ。スーパーサイヤ人もスーパーサイヤ人2もその覚醒に必要なのは怒り。そして今回は2度と皆んなに会えず、このまま重力に押し潰される自分を想像して壁を突破した。

 こうして通常時の100倍パワーを出せるようになった孫悟天は、無事にブラックホールから脱出することができたのだった。

 

「で、ここどこ?」

 

 ブラックホールから脱出出来たのは良い、しかしここで新たな問題に直面した。かろうじて残っていた宇宙船のマップ機能が完全に壊れてしまったのだ。これではいくら座標を入力したところで進むべき方向が分からない。上や下といった基準が曖昧になってしまう宇宙では、何となくこっちだったとかそんな適当な感じで行く先を決めてしまえば、もう2度と同じところにすら辿り着けなくなる。

 結果、孫悟天が取った行動は前回と同じように近くにある生命体の存在する星に向かう事だった。

 

 一人で使うにはそこそこな広さがある中型の宇宙船が、今まさにとある惑星の首都に降り立とうとしている。その星の住民達は皆独特な民族衣装に身を包み、宇宙船から出てくる者を今か今かと待っていた。

 そんな宇宙船から外を見て今まで立ち寄った星々ではあり得ないほどの歓迎ムードに戦々恐々としながら、孫悟天はこの惑星の地に降り立った。

 

「ようこそおいで下さいました」

「あ、あの、すみません急に来てしまいまして。出来ればこの星で宇宙船の修理と食料調達をさせて欲しいのですが……」

「もちろん構いませんよ。孫悟空さんの血に連なるお方の頼みですからね」

「!? お父さんをしっているのですか?!」

「はい,もちろんです。孫悟空さんは以前この星に滞在し、しばらく修行しておられましたからね」

「お父さんが修行を? まさか!」

「ヤードラット星へようこそ」

 

 何という偶然か。孫悟天はかつて孫悟空が修行し、瞬間移動を習得したヤードラット星へと降り立ったのだった。

 

 

 その頃地球では未だ恐怖の2人組、人造人間17号と18号が各地を破壊して回っていた。彼らが現れてから十数年、その間に多くの戦士達が敗れ、命を散らしていった。残った地球の戦士はもはや孫悟空の息子孫悟飯と、ベジータの息子トランクスのみとなっていた。孫悟飯22歳、トランクス12歳。自身がブラックホールに飲み込まれまいと足掻いていた間に十数年もの時が進んでしまっている事に、孫悟天はまだ気づいてはいなかった。




脳死。

宇宙ってまだまだ分からない事だらけだし、こういう事もあるさ。多分。

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