派手な黒いドレスを着こなしたブロンドヘアの女性は不機嫌そうに森から出て歩く。
『随分と不機嫌そうじゃないか、マスター。』
彼女の頭の中に陽気そうな男の声が響く。
「だって、あんな二流魔術師とバカそうなジジイ魔術師、相手にしても楽しくなさそうじゃない。
それに、あの青二才がセイバーのマスターってのも気に食わないわ。」
歩きながら霊体化している彼女のサーヴァントに問いかける。
「ハハハ!言えてるな。
しかし油断は出来ねぇ。
特にあの爺さん、単体でも恐らく相当やり手だぜ?ベルタ、正直お前が勝てるかどうかわからんくらいな。」
冗談を混じえつつそのサーヴァントは続ける。
それを聞いた黒いドレスの女性、バルヒェット・フォン・ベルタは渋々というように頷き
「…それくらい分かってる、ライダー。
セイバーのマスターはともかく、あのバーサーカーのマスターはヤバいわ。
…ライダー?」
彼女はいつの間にか霊体化を解除し、隣にいるライダーを見上げる。
彼はオレンジ色の髪を持ち、白のカッターシャツに黒のスーツパンツを身につけている。
ベルタが渡した簡易的な服装だ。
「……こんな真昼間にサーヴァント反応だ。
微弱すぎて気が付かなかったんだろうが、確かだぜ。」
神妙な表情で彼は遠くを眺める。
その視界の先には、黒いハットに丸メガネ、正直似合ってない黒いトレンチコートを着た中年男性が立っていた。
「…!!
アイツは……!!」
ライダーに続いてそのサーヴァントを見たベルタはその人物を知っているのか、キッ、と睨みつける。
「知ってるのか、マスター。」
その様子に少し驚けば、ライダーは隣のベルタを見る。
「ええ、アイツは……」
_________
同時刻、オセロ北部
「…マスター、魔力反応です。」
黒いハットを被った男が携帯電話を取りだし、告げる。
『そうかい。
ひとまずは一陣営釣れたかな。
…おお、怖い怖い。
あのお嬢さん、アサシンを親の仇かのように睨みつけているよ。』
電話の先の主はケラケラと楽しむように笑う。
サーヴァント、アサシンはその様子に少し顔を顰め
「仕方ありません。
私が生前行った行為は消して善い行いとはされていませんから。」
帽子を少し下げれば、アサシンは人の波の中に消えていく。
「なに、君は間違っていなかったさ、アサシン。
ボクはキミの行いを悪くない物だと証明したいんだ。
何せ、アレは見ていて面白い出来事だったからね。」
スマホを耳に当て、笑みを浮かべる褐色肌でアイボリー色の髪を持つ美青年は笑みを浮かべ、アサシンに近寄る。
「マスター。
相変わらず私の生前を見ていたかのような口振りですね。」
アサシンは不思議そうな表情をする。
美青年は少し考えるような仕草をしたあと
「あぁ、熱心に勉強しただけだよ。
アレは面白い出来事だったからねぇ。
そもそもアレももう何年も前の出来事だ。ボクの年齢を考えれば、とっくにくたばってるだろうさ。」
人気の少ない路地に入っていく美青年とそれに続くアサシン。
より一層奥深くに入っていくと、近くに止まっていたカラスがいっせいに飛び立つ。
「あ、そういえばこの後の話だけど…」
クル、とアサシンの方に振り向く美青年。
その後ろに黒に薄ピンク色のラインが入った甲冑を身につけ、黒い槍を握った人物が美青年の心臓目掛けて槍を放つ。
「…!!ナイル!!」
「もう遅い!!」
アサシンが踏み出した頃には遅かった。
その槍は美青年、アサシンのマスター『ナイル・テップ』の心臓を穿った……
はずだった。
「あれぇ、このランサー、君より暗殺者してるんじゃないか?アサシン。」
ナイルは黒い霧のような鉤爪のついた腕をサーヴァント、ランサーの穿った槍を掴む。
「何!?
マスターの身で私の槍を止めるだと…!?」
甲冑の騎士、ランサーは驚愕したように声を上げると、掴まれている槍に力を込め、腕を振りほどく。
「あちゃー。
さすがに数分しか持たないよね。
アサシン、多分アレ、強いよ。」
愉快そうに笑うナイルとは裏腹にアサシンは焦りを隠せないような表情を浮かべ、拳銃を握る。
「…フフ、まぁキミの力じゃ彼の相手をするのは難しいか。
おっけー。ランサーの相手はボクがするからさ、アサシン、君はランサーのマスターを探すんだ。」
後ろにいるアサシンの様子を察すれば、ナイルは冷静に、楽しそうに指示を出す。
「…了解…!」
アサシンは暗闇の方に消えていく。
それをランサーが見過ごす訳もなく
「逃がすわけないだろ!!」
跳躍し、ナイルを越えようとする。
「おっと、そうはいかないよ?」
ナイルはランサーの横に付き、鉤爪をランサーに振り下ろす。
ランサーは槍でそれを防げば、地面に着地する。
「…ここは貴様の相手をしなければなさそうだな、アサシンのマスター。」
渋々というような声をあげれば、槍を低く構える。
「……あぁ、君はボクを存分に楽しませてくれるだろうか?」
目の前のサーヴァントが放つ殺気に彼は思わず舌なめずりをすれば、1歩踏み込む。
同時にランサーも踏み込み、腕と槍がぶつかり、火花が散る。
___ここに、『北欧聖杯戦争』最初の戦いが幕を下ろした。
運命の歯車が回り出したのだ。
社畜です。仕事終わりに続きをまた書きました。
もしかしたら変な部分あるかも。
ちょっと疲れてるから考え事後でさせt((ry
さて、今回はライダー、アサシン、ランサー陣営にスポットライトを当て、開戦させてみました。
これで色々分かったらすげーと思う。
…いやわかりやすいか。