目覚めし龍たちはありふれない能力で反逆する   作:Wareware

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はい、こんにちはこんばんは。
Warewareでございます。
今回も連続投稿です。

今回は4400文字以上という歴代最長です。
皆さん、熱中症はくれぐれもご注意下さい。この先も暑い日が続くので、体調管理には気をつけてください。
よろしくお願いします〜

感想もよろしくお願いします〜


第25節 普段、キレない人がキレると並大抵では止まらない

ライセンの大迷宮は想像以上に厄介な場所だった。

 

 まず、魔法がまともに使えない。谷底より遥かに強力な分解作用が働いているためだ。魔法特化のユエにとっては相当負担のかかる場所である。何せ、上級以上の魔法は使用できず、中級以下でも射程が極端に短い。五メートルも効果を出せれば御の字という状況だ。何とか、瞬間的に魔力を高めれば実戦でも使えるレベルではあるが、今までのように強力な魔法で一撃とは行かなくなった。

 

もちろん龍騎士も例外ではない。彼らの真骨頂の『龍覚醒』は魔力と龍の力を使って変身し、魔力を鎧のように纏うので、魔力は垂れ流しになってしまう。そのため燃費が非常に悪い!

 

さらに龍の性質上、ルルーシュは魔法を多用するので戦力外、ハジメも武器の魔力とカードの使用により魔力消費が激しいので長時間は戦えない。一方の樹は、元々の戦闘スタイルが格闘術であり、龍の能力に『魔力自動回復』があるので魔力を気にせず戦える。さらに樹は体術を魔法で強化して戦うのでこの迷宮はうってつけである。

 

よって身体強化ができるシアと樹の独壇場となる領域なのだ。

 

 で、そのハジメ達の頼みの綱はと言うと……

 

「さてさてさ〜〜て、デテコイヨー!ミレディ!ギッタンギッタンのバッキンバッキンにシテヤルからデテコイヨーー」

 

機械的な声と思えるような言葉を発していた。

一歩進むごとに腕をダラ〜ンと下げて、眼を赫く染めながら上半身を左右に揺らして進んでいる。明らかにキレている。それはもう深く深~くキレている。言葉のイントネーションも所々おかしいことになっている。その理由は、ミレディ・ライセンの意地の悪さを考えれば容易に想像がつくだろう。

 

普段、人はおちょくるがそれでも自分は我関せずでマイペースな樹だが、誰かに利用されたり舐められると、あっという間に振り切ってしまうのである。兄弟であるルルーシュですら『キレた樹は止められない』と恐れているあたり、本当にどうしようもなくなってしまう。

 

樹はそのままにしておくとして、とりあえず進むことにした4人であった。

ーーーーーーーーーーー

 

最初のウザイ石板を破壊し尽くしたあと、ハジメ達は道なりに通路を進み、とある広大な空間に出た。

 

そこは、階段や通路、奥へと続く入口が何の規則性もなくごちゃごちゃにつながり合っており、一階から伸びる階段が三階の通路に繋がっているかと思えば、その三階の通路は緩やかなスロープとなって一階の通路に繋がっていたり、二階から伸びる階段の先が、何もない唯の壁だったり、本当にめちゃくちゃだった。

 

「本当にごちゃごちゃしてるね。」

「……ん、迷いそう」

「ルルーシュさん、樹さんほっといていいんですか?」

「ああ、ほっとけ。樹がキレてればこっちは冷静になってくるから。」

 

なんて言っていると。

 

ガコンッ!

という音を響かせてハジメの足が床のブロックの一つを踏み抜いた。全員が一瞬凍る。

その瞬間、

 

シャァアアア!!

 

 そんな刃が滑るような音を響かせながら、左右の壁のブロックとブロックの隙間から高速回転・振動する円形でノコギリ状の巨大な刃が飛び出してきた。右の壁からは首の高さで、左の壁からは腰の高さで前方から薙ぐように迫ってくる。

 

「回避!」

 

 ハジメは咄嗟にそう叫びつつ、後ろに倒れ込みながら二本の凶悪な刃を回避する。ユエは元々背が小さいのでしゃがむだけで回避した。シアも何とか回避したようだ。後ろから「はわわ、はわわわわ」と動揺に揺れる声が聞こえてくる。苦悶の声ではないようなので、怪我はしていないのだろうと推測するハジメ。実際は、かなりギリギリでウサミミの先端の毛がスッパリ持って行かれたのだが……問題ないだろう。

 

ルルーシュはマントで透明になり、物理トラップを直接無効化する。樹は天井に張り付いて回避した。

 二枚の殺意と悪意がたっぷりと乗った刃はハジメ達を通り過ぎると何事もなかったように再び壁の中に消えていった。

 

ーーーーーーーー

 

さらに進んでいくと、誰かがうっかりトラップの線を切ってしまい、床が傾き、一斉に落ちていく。滑りを良くするタールのような液体が流れるオマケ付きで。

 

急いで全員を反対側に投げる樹。しかし、本人は間に合わず、そのまま落ちてしまう。

 

「「「「樹(さん)!!」」」」

 

皆が心配して下を覗いた。覗いてしまったのだ。

 

カサカサカサ、ワシャワシャワシャ、キィキィ、カサカサカサ

 

 そんな音を立てながらおびただしい数のサソリが蠢いていたのだ。体長はどれも十センチくらいだろう。かつてのサソリモドキのような脅威は感じないのだが、生理的嫌悪感はこちらの方が圧倒的に上だ。

 

「「「「……」」」」

 

 思わず黙り込む4人。下を見たくなくて、天井に視線を転じる。すると、何やら発光する文字があることに気がついた。既に察しはついているが、つい読んでしまうハジメ達。

 

〝彼等に致死性の毒はありません〟

〝でも麻痺はします〟

〝存分に可愛いこの子達との添い寝を堪能して下さい、プギャー!!〟

 

それを見ても何も思わなかった。樹は無事だとわかったからである。

次の瞬間!

 

ドーーーーーーーーーン!!

 

という盛大な音と共に、サソリを樹が吹き飛ばしてその場に立っていた。

 

「さあ、行こうぜ!ミレディに地獄を見せるんだ!」

 

この言葉で、再び4人を

 

「「「「樹は怒らせるとヤバい!!」」」」

 

と再確認させることになった。

 

ーーーーーーーーー

 

その後もトラップに引っかかること、70回以上!

現在は大広間にて、50体ものゴーレムを相手取っていた。

 

「ドララーーーーーーーーー!」

 

キマリスで10体のゴーレムを貫通するシア。大穴を開けて動かなくなるゴーレム。

 

「無駄無駄ーーーーーーーーー!!」

 

大声をだしてラースの拳で、相手を粉砕する樹。2人の鬼神のごとき活躍で、ゴーレムはドンドン破壊されていく。

不用意に部屋そのものに傷を与えないようにしながら次々とゴーレム騎士達を屠っていった。

 

 だが……

 

「……?」

 

 ゴーレム騎士達の襲撃をかわし反撃しながら、ハジメは訝しそうに眉を寄せた。というのも、先程から相当な数のゴーレム騎士を破壊しているはずなのだが、迫り来る彼等の密度が全く変わらないのだ。

 

「これ再生しているよ!」

 

「「「「マジか?」」」」

 

4人のツッコミが決まる。

 

「ユエ!おそらく奥の扉に仕掛けがあるはずだ!解除を頼む!」

 

「……ん!わかった。」

 

その言葉と共に奥の扉に向かう。そこには、見るからに怪しい祭壇があった。

 

ユエは、祭壇に置かれている黄色の水晶を手に取った。その水晶は、正双四角錐をしており、よくみれば幾つもの小さな立体ブロックが組み合わさって出来ているようだ。

 

 ユエは、背後の扉を振り返る。其処には三つの窪みがあった。ユエは、少し考える素振りを見せると、正双四角錐を分解し始めた。分解し、各ブロックを組み立て直すことで、扉の窪みにハマる新たな立方体を作ろうと考えたのだ。

 

 分解しながら、ユエは、扉の窪みを観察する。そして、よく観察しなければ見つからないくらい薄く文字が彫ってあることに気がついた。それは……

 

〝とっけるかなぁ~、とっけるかなぁ~〟

〝早くしないと死んじゃうよぉ~〟

〝まぁ、解けなくても仕方ないよぉ! 私と違って君は凡人なんだから!〟

〝大丈夫! 頭が悪くても生きて……いけないねぇ! ざんねぇ~ん! プギャアー!〟

 

 何時ものウザイ文だった。めちゃくちゃイラっとするユエ。いつも以上に無表情となり、扉を殴りつけたい衝動を堪えながらパズルの解読に集中する。

 

「シア、ここを切り抜ける。カードをキマリスのスロットに。」

「了解ですう」

 

樹の指示でカードを装填し、レバーを引く。

 

ヒッサツ!フルスロットル!

 

そんな音声と共にエネルギーが溜まっていく。溜まりきると、キマリスを構えて突撃していく。そのまま槍を突き刺し、エネルギーを流し込んだ!

 

「キマリススコルピア!」

 

その言葉と共に大爆発!さらに扉も開いた。5人は一斉に扉に飛び込んだ!その部屋には特に何もないが突然、動き出す。

 

「「おわっと!」」

「「きゃあ!」」

「……」

 

それぞれがそれぞれの反応を示し、かかるGに耐えながら移動を終えると…

 

「……何か見覚えないか? この部屋。」

「なんかすごくあるんだけど。」

「……物凄くある。特にあの石板」

 

 扉を開けた先は、別の部屋に繋がっていた。その部屋は中央に石板が立っており左側に通路がある。見覚えがあるはずだ。なぜなら、その部屋は、

 

「最初の部屋……みたいですね?」

 

 シアが、思っていても口に出したくなかった事を言ってしまう。だが、確かに、シアの言う通り最初に入ったウザイ文が彫り込まれた石板のある部屋だった。よく似た部屋ではない。それは、扉を開いて数秒後に元の部屋の床に浮き出た文字が証明していた。

 

〝ねぇ、今、どんな気持ち?〟

〝苦労して進んだのに、行き着いた先がスタート地点と知った時って、どんな気持ち?〟

〝ねぇ、ねぇ、どんな気持ち? どんな気持ちなの? ねぇ、ねぇ〟

 

「「「「……」」」」

 

 ハジメ達の顔から表情がストンと抜け落ちる。能面という言葉がピッタリと当てはまる表情だ。4人とも、微動だにせず無言で文字を見つめている。すると、更に文字が浮き出始めた。

 

〝あっ、言い忘れてたけど、この迷宮は一定時間ごとに変化します〟

〝いつでも、新鮮な気持ちで迷宮を楽しんでもらおうというミレディちゃんの心遣いです〟

〝嬉しい? 嬉しいよね? お礼なんていいよぉ! 好きでやってるだけだからぁ!〟

〝ちなみに、常に変化するのでマッピングは無駄です〟

〝ひょっとして作っちゃった? 苦労しちゃった? 残念! プギャァー〟

 

プッチン!!バッチン!ブチブッチン!!!

 

ヤバい音がした。鳴ってはならない音が聞こえてしまった。4人が振り返るとそこには…

 

「ハア、ハア、ハア」

 

化け物だった!マジで化け物だった。樹の眼はとうとう開ききり、龍の眼となり、口から牙が大きく生え、尾まで生えていた。そして…

 

グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!

 

と吠えると、拳にはめていたラースにカードをスキャンする。

 

〈final attack dragon ゴ・ゴ・ゴ・ゴア・マガラ!〉

 

オラーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!

 

咆哮と共に迷宮の壁を殴りつけると大きな爆発と共に弾け飛んだ!

 

大きな爆発の後には、迷宮のありとあらゆる部分が破壊され、トラップはひしゃげ、ゴーレムは崩壊し、全てが見るも無惨な姿になっていた…

 

その先には一つの扉があった。

 

「はあ…最初から全部壊して進めば一発だったなあ!そうすれば無駄な労力と時間をかけなくてすんだのに!ふはははははは!あははははははは!」

 

もう振り切ってしまった樹はそのまま、剥き出しになった部屋へと向かって行った。

 

「樹、大丈夫か?もう怒ってないか?」

「ルルーシュ、大丈夫さ。俺は怒ってナイサ!ははははははハハハハハ!」

 

((((終わったな、ミレディ!ご愁傷様でした!!))))

 

そう心で思った4人はルルーシュ、ハジメ、ユエ、シアの順で部屋へと向かっていった。




《イメージボイス:ハジメ》

ハジメです。次回予告します。

ついに最深部の部屋にたどり着く僕たち。
そこにいたのはミレディ本人だった!
記憶を知りたい樹はついにミレディと激突!
僕たちは勝利できるのか?

次回 覚悟を超えて! 樹、怒りすぎだよ〜〜!

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