ドラえもん のび太の第五次聖杯戦争   作:大洋の碧眼

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聖杯戦争前夜 サーヴァント召喚

◇西暦2004年 1月30日 夜 冬木市 

 

 

「これでよし。あとは呪文を唱えるだけだな」

 

 

 聖杯戦争間近の冬木市の建物。

 

 そこでは1人の少年が聖杯戦争に必要な使い魔──サーヴァントの召喚を行おうとしていた。

 

 

(しかし、この触媒で何が召喚されるんだ?)

 

 

 少年はそう言いながら、タイムパトロールの男が渡してきた触媒を見る。

 

 そう、実は今回の聖杯戦争には少年にもある目的があって参戦する予定だったのだが、昨日、タイムパトロールと接触したことによってもう1つ目的が加わった。

 

 それは今次の聖杯戦争に参加する過去を改編しようとするサーヴァント──セイバーとアーチャーの目的を阻止すること。

 

 残念ながら真名については未来の自分達が教えることは出来ないと言われたが、彼らの目的については聞くことが出来た。

 

 なんでもセイバーは過去のとある国の王で、自分のやった統治は間違いだと思っているらしく王の選定のやり直しを求めており、アーチャーの方は過去の自分の抹殺を目論んでいるらしい。

 

 しかし、サーヴァント相手では逮捕するのも難しいので、そ代わりにれを阻止して欲しいというのがタイムパトロールの依頼だった。

 

 そして、その報酬代わりとして貰ったのがこの触媒だ。

 

 召喚して気に入らなければ先の依頼を破棄しても構わないと言ってのけるほどの代物だったので、使ってみることにしたのだが、これがなんの触媒か分からないことが少年にとって唯一の不安要素だった。

 

 

(まあいいや。もしかしたら、二組のマスターとサーヴァントを同時に相手にしなければならないかもしれないから、強力なサーヴァントは必要だろうし)

 

 

 そもそも触媒をこれから新たに用意する時間も無かったし、それ抜きに縁召喚をするとしてもどんなサーヴァントが出てくるかは少年にも分からない。

 

 つまり、召喚されるのがどんなサーヴァントであれ、実際に出してみなければ分からないのだ。

 

 ならば、この触媒に賭けてみよう。

 

 少年はそう考え、魔法陣に令呪が宿った手を翳し、呪文を唱える。

 

 

 

素に銀と鉄

 

礎に石と契約の大公

 

降り立つ風には壁を

 

四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ

 

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

 

繰り返すつどに五度

 

ただ、満たされる刻を破却する

 

――――告げる

 

汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に

 

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ

 

誓いを此処に

 

我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者

 

汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!

 

 

 

 その呪文が唱えられた後、光の粒子が舞い、人の形を構成していく。

 

 そして、完全に人の形が完成された時、そのサーヴァントは少年に対してこう言った。

 

 

 

 

「サーヴァント、セイヴァー。召喚に従い、参上した。問おう、お前が俺のマスターか?」

 

 

 

 前回召喚されたギルガメッシュに匹敵、あるいはそれを上回るであろう霊格を持っている男の問い。

 

 もし彼に相対しているのが一般人、あるいは並みの魔術師であったならば、その雰囲気に飲まれてまともに応対することは出来なかったであろうが、少年はどちらにも該当しておらず、その霊格に怯むことなくこう答えた。

 

 

 

 

 

「ああ、僕がマスターだよ。これからよろしく頼む」

 

 

 

 

 

 

 少年──野比のび太はそう言って、まず挨拶として握手を交わすため、自らのサーヴァント──カルナに右腕を差し出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇円蔵山 中腹 空洞

 

 のび太がカルナを召喚したのとほぼ同時刻、円蔵山の中腹の空洞、より具体的には大聖杯が存在する場所で一体のサーヴァントが召喚された。

 

 

「へっ。まさか、こんな形で召喚されるとは思わなかったな」

 

 

 そのサーヴァント──アヴェンジャーことアンリ・マユはそう言いながらケラケラと笑う。

 

 彼にマスターは居ない。

 

 だが、現界に問題はなかった。

 

 平行世界で召喚されるルーラーと同じように聖杯から直接全ての魔力を受け取っているからだ。

 

 

「しかし、聖杯め。まさか、今回参加するあの小僧にビビって俺を弾き出しちまうとは。俺はこれからどうすりゃ良いんだよ」

 

  

 アヴェンジャーは今回、現界したくて現界したのではない。

 

 聖杯が今回参加する1人の少年に怯んだ末に、自分が壊される危険性を察して、壊される原因となるであろう自分を弾き出したのだ。

 

 そして、自分という異物を弾き出したせいか、大聖杯は第三次聖杯戦争以前の綺麗な状態へと戻っていた。

 

 しかし、無理矢理外に弾き出されたアヴェンジャーとしてはこれからどうして良いのか全く分からない。

 

 手切れ金代わりに魔力こそ聖杯から直接供給されているものの、これから聖杯戦争が始まる。 

 

 しかし、情けない話だが、自分は以前召喚された第三次聖杯戦争の時に序盤で敗退したことからも分かる通り、サーヴァントの中では下から数えた方が早いであろう程の弱さだ。

 

 この状態で冬木の戦争に足を踏み入れたとしたら、今回の戦争でおそらく最弱であろう(間桐慎二がマスターの)ライダーにすら負けてしまうだろう。

 

 まあ、その時は聖杯も再び汚染することになるだろうが。

 

 

「・・・ああ。そう言えば、ライダー陣営と言えば、召喚したガキがアレを持っていたな」

 

 

 アヴェンジャーの言うアレ。

 

 それは前回の戦争終盤に間桐臓硯が回収していった小聖杯の欠片。

 

 同時にこの戦争で唯一残った汚れた聖杯でもあり、もしこれが本来の使い方通りに六騎のサーヴァントの魔力が集めて大聖杯にくべられれば、その時点でアヴェンジャーの存在関係無しに大聖杯は汚れることになるだろう。

 

 

「まあ、今の俺にはどうでも良いことだけどよ」

 

 

 しかし、今のアヴェンジャーにとってそんなものに意味はない。

 

 そもそもこの世界に現界することなど、当のアヴェンジャー自身ですら望んでいなかったのだから。

 

 むしろ、こんな死の危険が常に付きまとう聖杯戦争真っ只中に突っ込まされるくらいなら、そのまま聖杯の中に居た方がマシだった。

 

 まあ、それが許されなくなったからこそ、こうやって強制的に現界させられたわけだが。

 

 

「しかし、本当にどうする?上はキャスターと反則で召喚したアサシンが陣取っちまっているし」

 

 

 まずここに留まるのは論外だ。

 

 間違いなくキャスターには気づかれるだろうし、同盟を申し込んだにしても相手が裏切りの魔女メディアである以上は絶対に上手くいかない可能性が高い。

 

 確実に盾にされて終わりだ。

 

 まあ、それ以前に自分では本物の英霊相手には盾にすらならないだろうが。

 

 他の陣営に身を寄せるにしても、アーチャーとセイバーはまだ召喚されていないし、ライダーは頭の悪そうな人間が代理でマスターをやっている。

 

 バーサーカー陣営は遭遇した瞬間に確実に攻撃してくるだろう。

 

 残った候補はランサー陣営とセイヴァー陣営だが──

 

 

(ランサー陣営はあの胡散臭い神父がどう出るかだな。・・・いや、あの金ぴかという面倒なやつも居るからやっぱりダメだな)

 

 

 今回の戦争は召喚されたサーヴァント以外にも注意すべき存在がある。

 

 それは前回の聖杯戦争でアーチャーとして召喚されたサーヴァント──ギルガメッシュだ。

 

 彼は前回の聖杯戦争の結果、溢れ出た泥の影響を受けて受肉しており、今度の聖杯戦争にも参加する見込みだが、あれは自分のような汚い存在を許さないため、見つかればまず間違いなく攻撃してくる。

 

 当然、戦うという選択肢は鼻から無いので、ランサー陣営の元に身を寄せるのも無しだ。

 

 となると──

 

 

「あそこしかねえな。しゃあない、一か八かで賭けてみるか」

 

 

 アヴェンジャーはそう言うと、その場から立ち去り、ある陣営の元へと向かった。




今作の歴史

西暦1985年、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン誕生。

西暦1986年、衛宮士郎、遠坂凛誕生。

西暦1987年、間桐桜誕生

西暦1990年8月7日、野比のび太誕生

西暦1994年、第四次聖杯戦争(Fate/Zero)

西暦1999年、衛宮切嗣死亡、ドラえもんがのび太の元にやって来る。

西暦2000年、ドラえもん旧作劇場版(ただし、新作と被っている作品を除く)。

西暦2001年、ドラえもん新作劇場版。

西暦2002年、野比のび太、魔術と出会う。

西暦2003年、のび太、魔術協会に対して宣戦布告。

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