未完の神話 / Beyond the Ruminant   作:うみやっち

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 目を醒ました後、ネプテューヌは迷わずイストワールの元へ向かった。逃げるためではなく、プルルートの元へ向かうために。イストワールには、一番近い次元へ飛びたいことを伝えた。これで神次元へ繋がるはずだ。

 

「しかし、急に別の次元へ飛びたいだなんて……何かあったのですか?」

「それは……ごめん、言えない」

 

 イストワール達を不安にさせたくなかった。ネプテューヌの声の調子や表情から察したのか、イストワールも追求はしなかった。

 

「わかりました……。深くは聞かないでおきます。ですが、ゲートを繋ぐにはシェアが足りない状態で……」

「なら、私のを使ってください」

「ネプギアさん……!」

 

 入り口の方からネプギアの声が聞こえた。ネプギアのシェアを使ってゲートを開くのは、やはり心が痛む。しかし、逃げた先で見つけた小さな希望を捨てたくはなかった。プルルートと二人なら良い解決策が浮かぶかもしれない、神次元なら超次元とは違う情報が得られるかもしれない……今はその希望に賭けるしかない。

 

「準備が整いました。これより転送を開始します」

(ごめんね……すぐに解決策を見つけてくるから)

 

 二人の力を借りて、ネプテューヌは再び神次元へ向かった。

 

 

 神次元に渡ると、まっすぐプルルートの部屋へ向かった。

 

「ぷるるん……!」

「ねぷちゃん、まってたよ」

 

 プルルートは変わらず時計を眺めていた。しかし、今回はすぐにネプテューヌの存在に気付いた。プルルートも、ネプテューヌが来ることを期待していたのだろう。

 

「お待たせ。早速で悪いけど、時間も無いし、解決策を話し合おう」

「そうだね。でも、どうすれば止められるかな……」

「女神の力を使っても止まらなかったからね……」

「やっぱり、ネプちゃんも試したの?」

「うん……。全然ダメだった……」

「うーん……どうすればいいんだろう……」

 

 頭をフルに使って考えたが、良い案は浮かばない。そもそも、女神の力で止められないなら、他に止める手段があるのか……そんな不安が頭をよぎる。沈黙の中、プルルートが「あっ」と呟いた。

 

「そうだ。いーすんに調べてもらおうよ。きっといい情報がみつかるかも」

「……それだ! そうしよう!」

 

 猶予は少ない。二人は部屋を飛び出し、イストワールの元へ向かった。

 

 

「……なるほど。事情はわかりました。確かに異常事態ですね」

「なにか、いい情報ないかなぁ?」

「流石にみっかかけてる余裕は無いみたいですし……今すぐに見つけられる情報の中から有力なものを伝えていきますね」

「ありがとう〜」

 

 イストワールが検索を開始する。二人は黙ってその様子を眺めた。良い情報、解決策が見つかることを祈りながら……。

 

「……これは!」

「何かわかったの!?」

「並行世界が消えていっています! おそらくこれがお二人の言う大地の津波と大きく関係があると思います」

「どういうこと……? 原因は!?」

「そこまではわかりません……。ですが、何者かによって引き起こされた現象、という事はわかりますね。普通こういう事は自然に発生しませんから」

「……何か、止める手立てはないの!?」

「それに関しても……すみません、まだ出てきません……」

「そんな……」

「どうしよう……」

 

 ようやく掴めた新しい情報。しかし対策を練れないのでは意味が無い。

 

「……もしかして、もう手遅れ?」

「え?」

 

 薄々ネプテューヌも思っていた。本当はもう手遅れで、ただ死を繰り返すしかないのではないかと。だが、ただ黙って終わりを待つくらいなら少しでも足掻いてみたかった。

 

「あたしたちじゃ……とめられない?」

「……そんなこと…………」

「そういう訳でもなさそうですよ」

「本当!?」

「もし、この現象が起こる前……つまり、何らかの形で過去に戻って元凶を叩くことが出来れば、この状況を打破できるかもしれません」

「過去に戻る? できるの?」

「出来ないことはないと思いますが、手段や用意するものを探し出すにはもっと多くの時間を要します」

 

 探してもらいたいが、確実に時間が足りない。さっきから微かに聞こえていた波の音が、徐々に大きくなってくる。残り時間は僅かなようだ。

 

「すみません、これ以上私から提供できる情報はありません」

「そっか……ありがとういーすん」

「ねぷちゃん、どうする?」

「……充分かな」

「もういいの?」

「うん。結構重要な情報出たからね。次は……私の次元のいーすんに過去に戻る手段を探してもらうよ。見つかったら、必ず迎えに来るから」

「わかった。待ってるよ、ねぷちゃん」

「期待してて、ぷるるん」

 

 今回の行動は無駄じゃなかった。解決への第一歩を踏み出せた、そう確信できた。

 やがて、波は三人の居る部屋を襲った。そしてネプテューヌの視界は闇に閉ざされ、意識は途切れた。

 


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