宿の廊下は思ったより何もない。宿の人も一人も通ってきそうにない。でもたまに明かりが笑いかけてくる。それが救い・・・・・
「ん?これっておかしい?」
明かりが笑いかけてくることなんてあったっけ。なかった気がするけど確証なし。
「あー、あ?」
なんて考えてたら広い所についてた。
「広間かな」
普通の広間って感じで特徴がない。椅子が何個かあって、そのすべてにヒガンバナが置かれている。そのうちの一つに紙が添えられていた。
『104号室』
紙にはそれだけ書かれていた。
「ここに行けってこと?特別な部屋って感じはないけど」
「ここだね」
その104号室にやってきた。見た感じ他の部屋と大差がない。なので何も考えずに入る。
「お邪魔します」
中では紙と鉛筆が散乱していた。端には小石が集められている。
「う・・・・何かないかな?」
小石から血の匂いがする。
「・・・紙が多すぎる」
紙の量に困惑した。調べきれそうにない。
「これじゃだめだ・・・ん?」
『う、う、う、』
「!?」
突然、数枚の紙からうめき声をあげて手が出てきた。ボロボロで手首から先が取れかけてたり、普通じゃありえない方向に曲がったりしている。
「え」
二分の勇気と八分の恐怖が湧いた。手を攻撃するか、逃げるか。
私は思考が追いつく前に部屋からでた。
「ん、あれは」
落ち着かないままさまよっていたら裏口の前にいた。まったく気づかなかった。扉には張り紙がある。
見失うな 忘れるな 背くな にg
「?」
意味が分からない。気にしたら負けってやつ?
「ここには何もなさそうだし、出よ」
扉を開けた。またなにかあるかな?
「松 初 ?」
返事
「そうな 外~」
闇で前が見えない
世界の不安と恐怖全てが襲ってくる気がする
息
「う・・・・・まただ」
何とか正気に戻った、覚悟はしてたけどやっぱりだめだ。でも前に比べると少し慣れたのが怖い。
「意味が分からないよ・・・どういう事なの?」
頭が混乱する。知ってたとしてもあんな少しの言葉じゃ意味の推測のしようがない。これも気にしない方がいいの?
「え~と、この先は」
後ろにさっきの宿。横でいろんな色の風船が浮かんだり地面に沈んだりしてる。前には山と、いかにも進んでくださいと言っているような道があって、そこへ向かってのびてる。
「今度は山道なんだ」
道を進むしか選択肢はない。だって目的は・・・・特になかった。
「あれ、急になんで目的を考えてるの?」
不思議・・・
『自分を知る』
「あ、うん、それにしよう」
風船が助言してくれた。
「じゃ、行きますか」
『行ってらっしゃい』
風船も見送ってくれてる。不安がやわらいだ。山だからいろいろあるはずだよね。今度こそうまくいくかも。
「頑張るぞー」
前よりも速足で歩きだす。