圧倒的ハッピーエンドを目指して   作:金属粘性生命体

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Part:2

 

 

 

 今日は久々に人が泊まりに来ないのでのんびりとしていた。

 

 暇つぶしのために刀太くん達を揶揄ったりしようかなと思ったのだが、そういえば夏凛ちゃんが月にぶっ飛ばされてたのを迎えに行っていたのを忘れていた。

 

「……暇だなぁ。確かキリエちゃんもついでに出かけに行っちゃうわけでしょ?することないな──」

 

 そう言いつつ自室の窓から外を見渡そうとした瞬間、地下から馴染みのある気配が出現し、同時に4人ほど……一空くんに夏凛ちゃん、刀太くんに九郎丸くんちゃんが出現した。地上にはキリエちゃんの気配がある、あそこにロウソクがあるのかね?

 

「これは、キリエちゃんの能力かな?未来で何やってたんだか……とりあえず顔を出しに行きますか」

 

 

 

 

 

 ちょうど地下に着いた時、雪姫が馴染みのある人物とやり合っていた。

 

氷爆(ニウィス・カースス)!」

「真なる不死者に取れる手段は多くない、逃げるか遥か遠くに吹き飛ばすか……あるいは動きを止め、強力に封印するか」

 

 あの見た事のある地属性魔法に、曼荼羅のような強力な魔法障壁持ち……ありゃフェイトか。そして封印されかける雪姫を見つけて……さすがに止めにゃならん。

 

 真横に瞬動して膂力のみで魔法障壁をぶち破り、右手で左肩をつかむ。

 

「よう」

「ッ!?お前は──」

「うちの大将に何手ぇ出してんだ?Anfang(セット)

 

 体の至る所にある水晶より放出された荒れ狂う魔力を左手に纏め上げ魔法へと昇華させる。

 

「【水晶の御手(イエロコ・クリュスタリノ)】」

 

 かくも美しき水晶が地面より突如として出現し、巨大な手となりフェイトを掴もうとする。流石にそれを許すほど奴はぬるくない、反射的に張った大量の石剣を水晶の手に突き立て閉じるのを阻害する。

 

「まぁ壊せねぇわな、そういうもんだし……

 アラネア

 アリウス

 クリスタロ

【目醒め現れよ、絶対なる晶獣。その内に敵を呑み込め】」

 

 既に手を離し逃がしているためフェイトは距離を取ってこちらを警戒しようと睨みつけてきて、苦しげに表情を歪ませる。

 

「【不界の晶牢(ふかいのしょうろう)】」

 

 呪文が完成するのと同時に封じられていたはずの雪姫が闇の魔法(マギア・エレベア)で【千年氷華】を纏って出てくる。

 

「おっと、ジョンも来ていたのか……で、何をしている?」

「捕らえただけだが?」

「捕らえるというのは間違って無さそうだが……これ、餌にならんよな?」

 

 困惑した様子でフェイトの姿を見る雪姫。そちらに視線を向ければ数多の水晶で出来た蜘蛛達に、糸(のような水晶)で捕らえられているフェイトがいた。

 

「おー、良くもまぁ耐えたもんだ。逃げる時間が増える事に蜘蛛の数も増やすようにしてたんだが……4体という事は30秒くらいか。凄いなお前」

「……本当に大丈夫か?」

「まぁ蜘蛛みたいだが魔法だし、問題ねぇよ……そういうわけでフェイト、諦めな?もし俺らを倒せたとしてもその後にあそこの4人の不死者相手に戦えるか?」

 

 そう親指を眼下で呆然としている4人に向ける。何をボケっとしてんだか、最上位クラスの殺し合いなんてこんなん被害にゃならねぇよ。え?違う?あ、そう。

 

「……ジョン・ドゥか。確かにその通りだな。ここは手を引こう。出してくれ」

「あいよ」

 

 フィンガースナップ、魔法に対する魔力の供給をやめて魔法を消す。

 

「だが、ただで帰すというのもな」

「……分かった、完全に1本を取られたからね……そうだな、特別に一人一つずつ質問を許そう。どんな問いにも誠実に答えようじゃないか、ただお互いの相談はなしだ。自分で質問を決めてくれ」

 

 そこからのやり取りは多分原作と同じだからスキップで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから少し経ち、刀太くんの給料ががくんと下がってから少し上がった頃。その当人である刀太くんから手合わせを願われた。

 

 まぁ特に用事もなかったので了承し、砂浜に刀太くん、そして九郎丸くんちゃんを伴ってやってきた。

 

「本当にいいのか?本気でやっちゃって」

「全然構わないっス!あの時の戦いを見てたんすけど、明らかにオレとは実力が違って……凄くかっこいいと思ったんですよ」

「まぁ別にいいけどね、時給500円後輩」

「うるせぇなぁ!?まだ引きずるのかよ!」

 

 とりま構える。基本的に俺の戦闘スタイルは中距離を維持して相手の間合いの外から攻めるのが常だ。

 

 そのために使う武器ももちろんそれに倣ったものが多く、槍や鞭、薙刀に投げナイフやら拳銃なんかを高速で切りかえて戦うオールマイティなスタイルだ。

 今回は手加減ありとはいえ本気を見せるんだ、だったら遠慮なしにやるから……

 

「最初はこれで行く。上手く捌いてみせな」

「それは……?」

 

 ツヴァイヘンダーのフランベルジュだ。この剣は炎のように波打つ為か傷口を連続して切り付けることが出来る。そのため苦痛を与える為の剣などと揶揄される武器だ。しかもこいつにはある魔法が付与されていて。

 

「この剣で出来た傷口は何度も何度も歯を麻酔抜きで取られるような痛みを与える。対不死者用の剣だ」

「うっわぁ……って対不死者用?」

「今後詳しく知るだろうから言ってとくが、不死者同士の戦いなんざ不毛なんだよ。終わりもしねぇ戦いを続ける。じゃあ決着をつけるためにはどうするか。第一の選択肢としては封印だな。ただそれも効かないやつがたまにいる」

 

 この剣は自作だ。なんでこんなものを作ったかと言うと不死者との戦いがすごくダルいからだ。

 

「長引きすぎて1度だけ月単位でとある不死者と殺しあったことがあってな」

「え」

「そいつの不死が厄介でよ、死んだら全部リセットして復活するんだわ、封印しようにも自殺もできるっぽくて封印ごとリセットされた。だから二度と立ち上がらないように痛め付けようとしてできたのがこの剣だ。精神とかに直接痛みを刻み込む今や禁忌に含まれる魔法が込められている……不死者と殺し合う時は封印するか戦意を叩き折るしかない。そしてこの剣は叩き折るための剣だ。正直に言うとお前だと耐えれるとは思ってない」

 

 これは痛みに強いやつでも痛がるし、無痛の野郎でも普通に痛みは感じる。痛みに鈍いやつほどより効果がある。だったら不死者として歴が浅い刀太にそれを突きつけたら?

 

「構えろ、刀太。俺に本気を出させようってんだ……温い対応はしてやらん」

 

 1段階目、殺気を撒き散らす。これに耐えられないようじゃまだまだだが、刀太は剣を構えたことで戦闘ができるさことを証明してくれた。

 

「ならばよし……行くぞ」

「ッ!」

 

 一歩踏み込み瞬動して眼前へ、刀太にもわかりやすいよう直上の振り下ろしを行う。それを持ち前の戦闘勘によって手に持っていた黒い刀──彼曰く黒棒というらしい──で防いでくる。

 結構な力を込めて叩きつけたので彼の両足が砂浜へと少しハマったが、彼の筋力なら無視できるほどだろう。

 

「やるね」

「ふ、普段と様子が全然違うッ!?」

 

 その言葉にふ、と柔らかい笑みを浮かべてやる。それと同時に彼の直上に巨大な水晶を作り出す。

 

「ははは、戦いに手抜きはないからね──こんなふうに」

「げぇっ!?」

 

 落とす瞬間、その場から離れながら逃げられないよう両脚の腱を切りつけておく。その痛みからか彼は絶叫を上げ水晶の下敷きになった。

 

「刀太くん!?」

「あら、結構あっさりやられたわね」

「あれ?いつ来たんだい?夏凛」

「ついさっきよ、何やら面白そうなことが起きてそうだったから来たのだけれど……いい気味ね」

「ん?まだ終わってないけど?」

「……?」

 

 突如として水晶が頭上へと打ち上がる。その下には拳を振り上げて荒い息を吐く刀太が居た。切りつけた時の痛みに推奨を退けるために体力を大幅に使ったようだ。

 

「どうだった?この剣の味は」

「正直死ぬかと思いました……」

「ははは!面白いね……死なないから不死者なのに、死ぬだなんて」

 

 だが不死者だからといって油断していると死ぬ時は死ぬからね。少し教えてあげなければいけない、この平和ボケした少年に。この裏の世界のキツさを。

 

「不死だからといって対処できないわけじゃない。じんべぇなんかは首を落として潰せばそこで終わり、九郎丸だって粉微塵にしてやってから燃やせば終わり……だからこそこの戦いに俺は本気で挑んでるんだ」

 

 死なないからとどこかで楽観視してる刀太に教え込むために。

 

 この裏の世界は生半可な覚悟じゃ、直ぐにその命を散らして消えていくのだと。

 

「どこかで甘えてたんじゃない?さっきの攻撃だって避けようと思えば避けられたでしょ?そんな攻撃を繰り出したんだし」

「それ、は……」

「君としては軽く手合わせの気分だったんだろうけど、俺に本気でやれなんて言うからやる気になっちゃったんだ。だから甘くなんてやってあげない──構えろ」

「────」

 

 何かを感じとったのか少し目を見開き、閉じた刀太。少しして頬をパチンっと勢い良く叩きこちらを見たその目には少しだけだが覚悟が出来上がっていた。

 

「よろしくお願いします!センパイっ!」

「イイね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:刀太

 

 

 

 

 

 手合わせを望んだ時は正直軽く言ったつもりだった。

 

 今のオレでもできる事が知りたくて、格上の力を知りたくてあの襲撃の時余裕そうだったジョンセンパイに声をかけた。

 

「ジョンセンパイ!」

「ん?おう、なんだ?」

「手合わせ、お願いしていいですか!」

 

 それからあれよあれよといううちに手合わせが始まって

 

 

──現実を叩きつけられた。

 

 

 

「ぐっ、あ、がああああああああああああああああ!!??!!?!」

 

 ジョンセンパイが取り出したフランベルジュとかいう剣に少し切りつけられて、与えられたその痛みは想像を絶するものだった。

 

 吸血鬼になってから痛みには鈍くなり、例え肩を貫通するような攻撃を受けようとも、腹を抉るような攻撃にさえ怯むほどの痛みは感じなかったというのに──ただ足の腱を切られただけでこれだ。

 

 足の腱に与えられた痛みはマグマの中に足を突っ込み、そのまま放置されたような熱さと痛みを感じる。

 

 甘かったんだ。痛みを与える剣と聞き甘く見てたのがいけなかったんだ。痛みに鈍くなった頭が楽観視して、本来ならバックステップやらなんやらで避けれた攻撃を甘んじて受けいれたのがいけなかった。

 

「──」

 

 今のオレはただひたすらに甘かった。

 

 

 だからこのままじゃダメなんだ。

 

 あの時雪姫を助けるために人を辞めたんだ。

 

 夢を叶える為に村を出たんだ。

 

──そしてあのイケ好かねぇ笑みを浮かべるフェイトをぶん殴るためにも。

 

 だったら少しは覚悟を決めとけってんだ、オレの馬鹿。

 

「よろしくお願いします!センパイっ!」

「イイね」

 

 そう笑ったジョンセンパイを見た直後、空に放り投げられていた。

 

 

 

side:out

 

 

 

 

 

 

 

 

「のわあああああ!?!」

「あははははは、多少覚悟を決めたからといって別に手は緩まないよ!」

 

 瞬動で傍に近寄り、手を掴んで空に放り投げてやった。多分一連の動きは見えてなかったようだから唐突に空に投げ出された気分だろうな。笑える。

 

「ではレッスン開始だ!」

「ちょえまてまてまて!?いきなりか!?」

「ちょっと楽しくなってきたからね!」

 

 【Lesson1】不死者は死を恐れてはならない!一応やり直しは効くからね!

 

「ということで最初は落下死だ!上手く着地するかなんかしてみな!」

「ぉぉおおおお!?」

 

 上空に放り投げた刀太の上に移動し、両手を合わせてハンマーを食らわせて地面へと叩きつける。

 

「世界を──掴めっ!」

 

 地面に衝突する刹那、刀太は上手く力をいなし無事地面へと着地することが出来た。ただ喜ぶのはいいけど、まだ終わりとは一言も言ってないんだが?

 

「どうだ!ジョンセンパ──」

「油断大敵、余裕綽々だね。まだ終わってないよ?」

「ごぺらっ!?」

 

 即座にその頭をぶち抜く。

 

「本来だったらこれで終わりなんだけど、随分と気が抜けてるから、何回か殺してあげる。さっさと起きな」

 

 

 その後はもうひたすらにボコった。

 

 頭を破裂させたり、粉微塵に切り刻んだり、爆破したり。もう頭の中が逃走だけになるほどにはボコボコにしてあげた。

 

「と、まぁ君の不死度はなかなかだからこんだけやっても死なないわけで……ひとまずこれで終わりね。反省会したかったら呼んでね、欠点をひとつずつ教えてあげるから」

「う、ウッス……ありがどう……ござ、いました……」

 

 その言葉と同時に倒れた刀太くん。それに駆け寄る九郎丸くんちゃん。

 

 これからはもっと苦難が訪れるからここまで厳しくしてあげたんだ……

 

「あ、ちなみにこれからたまに稽古つけるから。そこんとこ宜しくな」

「え、えええええええ!!?!!」

 

 

 最後に爆弾を落としたら刀太くんの絶叫が夕焼けの海に吸い込まれていく──

 

 

 


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