魔法科高校の劣等生 神のいる学校生活   作:梅輪メンコ

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観光

3月25日

 

破壊工作員から要注意人物認定を受けた達也達は、今日も精力的にカウンターテロ作戦に勤しんでいた・・・という事実は無い。二人はホテルでゆったりとした時間を過ごしていた

 

「どうだい達也。このホテルの居心地は」

 

「ああ、十分すぎるくらいにな。俺には勿体無いくらいだ」

 

「そう言うなって、せっかく良い部屋を準備したんだ。もっとゆっくりしなよ」

 

「私も落ち着かないのですが・・・」

 

そう言って今達也達が止まっているのはホテルの中でも一番高ランクの部屋で一泊でも恐ろしい金額の値段になる部屋だった。今回は表向き、沖縄侵攻事件の犠牲者供養式典への出席と夏の慰霊祭の打ち合わせという公的な仕事に、四葉家を代表して来ている。他の十師族は式典に参加していなかったから、師族会議を代表してと言い替えても過言ではないため、当然費用は本家持ちな為こんな良い部屋に泊まっていた。水波は部屋の豪華さと大きさに落ち着かない様子で顔に「自分はもっと安い部屋に」と言う言葉が浮かんでいた

 

「水波ちゃん。護衛が離れちゃってどうするのよ」

 

そう言って水波がそうアピールするたびに凛がそう言って水波は言葉を失っていた。だが、水波の要求通りに安い部屋にしたとしてもこのリゾートホテルは並のホテルよりは十分高いのだが・・・

 

「さ、水波ちゃん。ここに座って食事をとりましょう」

 

「はい・・・」

 

そう言って水波は半分諦めモードで席に座ると大人しく食事を摂っていた。この部屋は大きいために部屋の一室にキッチンが常備してあった。水波と凛はそこで食事を作っていた

 

「さて、今日は遠出するんだろう?」

 

「ああ、お前達はどうするんだ?」

 

そう言って達也達は今日は石垣島に行く予定だが凛はそれを断っていた

 

「いや、今日は遠慮させてもらうわ。少し食べ歩きしたいし」

 

そう言って凛は弘樹を預けると言うと早速部屋を出て行った。今日は深雪の誕生日なので弘樹は深雪のために今日行く石垣島でネックレスを買おうと考えていた

 

 

 

 

 

 

 

 

先にホテルを後にした凛は那覇の貨物港にタクシーを走らせるとある倉庫の前に向かった。その倉庫はノース銀行の所有する貿易会社の倉庫だった

 

「えっと・・・ここにあるって聞いたけど・・・」

 

そう言って倉庫に積まれた荷物の中から一番大きな木箱を見つけた。木箱には機械部品と書かれており、送り主はオーストラリアにあるノース銀行の実験施設からだった。オーストラリアが鎖国状態な事を使って凛はオーストラリアに多くの実験施設を置いていた。鎖国状態のオーストラリアだが、輸出入に関しては規制が緩い為。荷物は比較的簡単に送ることができた

 

「お、あったあった。流石、仕事が早いねぇ」

 

そう言って凛は最も簡単に木箱を開けるとそこには丁寧に梱包された何かの機械のパーツのようだった。そして凛の立っている木箱の周りには同じような大きさの同じ送り主の木箱が大量に置かれていた

 

「よし、あとはこれを三笹島に運んで組み立ててもらうか」

 

三笠島はノース銀行のPMC(民間軍事会社)の所有する小笠原諸島にある島でこのPMCは普段は銀行の警備を基本業務としている。木箱の中身を確認した凛は再び木箱の蓋を閉じると倉庫を後にした

 

 

 

 

 

 

 

凛が倉庫で荷物を確認している頃、達也達は石垣島に来ていた。石垣島まで行くのにジョセフが護衛する事に驚きを表したがジョセフの説明で納得をすると石垣島にある真珠専門の宝石ショップに足を運んだ

 

「神木弘樹ですが」

 

「お待ちしておりました」

 

そう言って店員が店の奥に入り、深雪は訝しさと期待をしていた。そして店員がジュエリーケースを持ってくると深雪が感嘆の声をあげた

 

「こちらでございます」

 

「わぁ・・・っ!?」

 

そう言ってケースから出てきたのはマルチカラーの白、黒、金色の真珠のついたネックレスで、綺麗な球体で傷もなく、素人が見ても高級そうな代物だった

 

「はいこれ、深雪の誕生日プレゼント。長さは多分大丈夫だと思うよ」

 

そう言って弘樹は深雪の方を見ると深雪は嬉しそうにしていた

 

「ありがとうございます弘樹さん・・・大切にしますね」

 

そう言って深雪はネックレスを大事にしまうとホテルの帰路に着いた

 

 

 

 

 

 

 

 

石垣島から戻った達也達はホテル前でジョーに感謝をしていた

 

「ジョー、今日はありがとう」

 

「いいって、俺ものんびりできたしな。弘樹、彼女を泣かせるんじゃ無いぞ」

 

「余計なお世話だ」

 

そう言ってジョーは無人タクシーに乗ると去って行った。それを見送った達也と弘樹は視線を向かいのビルに向けていた

 

「弘樹・・・」

 

「大丈夫、敵じゃ無いことは確実だ」

 

そう言って水波が咄嗟に深雪を守るように警戒をしていた

 

「恐らく金で雇われた部類だろう。捕まえても大した情報は持っていないだろう」

 

そう達也が言うと四人はホテルの回し扉を押して中に入って行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

達也たちがホテルの中に入っていくのを、道路を挟んで向かい側にあるビルの一室で見送って、ジェームズ・J・ジョンソン大尉は詰めていた息を吐き出した。額を手で拭おうとして、掌が冷たい汗に濡れているのを今更のように自覚する。

 

「(緊張・・・いや、恐怖していたのか? この俺が?)」

 

現在のオーストラリアは外交に消極的なだけではなく、それ以上に海外派兵に消極的だ。鎖国という表現の妥当性はともかく、表向き孤立政策をとっていることに間違いはない。他国との同盟関係も無く、合同演習の類にも一切参加していない。だがそれは、ジェームズのような種類の軍人に実戦の機会が訪れないという意味ではない。オーストラリアは資源が豊富な国だ。鉱山資源だけではなく、砂漠化の停止と砂漠の緑化に燃える他国の、工作機関相手の謀略戦は日常的と言える程に頻発している。また、表向き孤立政策をとっていても、完全な中立を堅持しているわけではなく、今回のように秘密の非合法作戦で他国の武装組織と手を組むことは決して珍しくない。軍にあって工作任務を専門とするジェームズは、この暗闘の最前線で活躍してきた百戦錬磨の戦闘魔法師だ。死線を潜り抜けたことも一度や二度ではない。大抵のことには動じない度胸を身につけている、と彼は自負していた。

 

「(この俺が・・・あんな餓鬼に? 俺の監視に気が付いただけじゃない。こっちの精神を貫き心臓まで届くような、死神の如きあの視線・・・『アンタッチャブル』の名は伊達じゃないって事か)」

 

およそ三十年前、大漢崩壊とともに囁かれ始めた戒めの言葉。

 

 

『日本の四葉に手を出すな。手を出せば、破滅する』

 

 

現に、ジェームズが属する裏の世界では、大亜連合が日本相手に不利な立場で講和を余儀なくされたのは四葉が手を出したからだという噂が真顔で語られており、朝鮮半島南端を灼いた戦略級魔法は四葉が開発したものではないか、という声も少なくない。そして、世界最強の魔法師部隊の呼び声高いUSNAのスターズが、日本に手を出して四葉家に撃退された・・・そんな未確認情報も彼のところに回ってきている。あまりにも華々しい話ばかりで、ジェームズは全てを額面通りに受け取る気にはなれなかった。今回も、ジェームズたちの敵として日本軍の指揮を執っているのは、インドシナ半島で勇名を馳せた『大天狗』風間玄信。彼をはじめとして日本軍所属魔法師の実力は高い水準にある。日本の魔法戦力は四葉だけではない。大亜連合の奇襲部隊を撃退したのも、飛行ユニットを世界で初めて実戦投入した軍の魔法師部隊の力によるところが大きい。状況を決定づけた戦略級魔法も、日本が開発した秘密兵器だろうというのが、ジェームスを含めたオーストラリア軍の見解だ。常識的に考えて、あれは一民間組織が持つには大きすぎる力だ。そんなことを許せば、国のバランスを保てるはずがないからだ。

 

「(それでも四葉は、決して侮ってはならない相手だ。たとえそれが、十代の学生であっても)」

 

ジェームズはその事を改めて心に刻んだのだった。

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