前略、神を殺した世界最強の魔術師が営む冒険者パーティはいかがですか   作:ネコわさびRPG

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エピソード2
序章【新天地へようこそ】


 

 

 

 

 新天地へようこそ、選ばれし勇者の皆様。

 突然の出来事に困惑している事と思いますが、いえしかし、慌てふためく必要はございません。不肖このワタクシが、一から説明申し上げますゆえ。

 

 

 さて、チュートリアルを始めましょう。

 

 

 まずもって皆様、『異世界』という言葉をご存じでしょうか。

 ええ、その通りです。

 皆様の住んでいらした世界とは何もかもが異なる世界。

 ファンタジックでドラマチック、魔法に呪術に魔神に亜人、何でもありのご都合主義。召喚されれば無条件に最強チート能力を獲得し、俺TUEEが堪能できると話題沸騰の、現在一番ホットな一大事業でございます。

 

 異世界召喚の歴史は一度語り始めると尽きる事がありませんので割愛させていただきますが、それはそれは、長く壮大な道のりがあったのでございます。

 選ばれし勇者の皆様であれば、すぐにお分かりいただけますね?

 

 

 

 ……はい? 勇者とは誰の事か?

 なるほど、確かにその疑問はもっともでございます。

 そしてその答えこそ、今から申し上げます本題と深く関わってくるのです。

 

 

 

 あなた方も一度は夢見るはずです。違う世界へ足を踏み入れたいと。まだ見ぬ新天地を大いに羽ばたいて行きたいと。

 さあ、歓喜の声を上げましょう!

 あなた方は選ばれたのです!

 多くの人間達の中から、あなた方は『異世界の勇者』として生まれ変わるチャンスを手に入れたのです!

 

 喜ばしいではありませんか! (よろこ)ばしいではありませんか!

 

 毎日が退屈に塗り潰された世界から脱却し、新たな世界へ足を踏み入れるなど、そう容易く実現し得るものではございません。しかし、それを実現いたしました。

 

 

 選ばれた皆様の判断基準は至極単純。

 皆様が籍を置く進学校『奈心(なごころ)中学校』の第三学年、総勢一二九名が、異世界召喚の切符を手に入れた勇者様です。

 

 ええ、ええ。

 その感激の声こそ、ワタクシが求めていたものでございます。

 

 今まで苦しんでおられた事でしょう。

 狭い鳥かごの中で、昼となく夜となく発展のない日々を無益に浪費する毎日は、さぞや苦痛であったことでしょう。

 

 

 

 ですが、ご安心ください。

 今日からあなた方は、全てが興奮に満ちた異世界で、勇者として生きてゆくのです。

 

 

 

 皆様の利き腕に、それぞれ異なった文様が刻まれていますね?

 それは、あなた方の世界で言うところの『バーコード』と似た役割を果たしております。その文様自体に意味があるのではなく、その文様に内包された『情報』に意味があるのでございます。

 

 我々はこれを、『ステータス』と呼んでいます。

 

 さあ、その利き腕の文様に、己の血液を付着させてみてください。一滴で十分ですので……ええそうです。神々しい光と共に、数値と文字が空間に浮かび上がるはずです。

 それが勇者の皆様の【ステータス】でございます。

 どうです? お気に召したでしょうか?

 

 

 

 それでは少しばかり、『ステータス』の説明を行わせていただきます。

 

 

 

 まずは『パラメータ』。

 筋力、耐久力、俊敏力、魔力など、あなた方の内に秘めたる不可視の能力を数値化し、目に見える形で管理する機能でございます。当然、鍛えれば鍛えるほど上昇し、さらなる高みを目指す事も可能です。

 

 続いて『スキル』。

 これには二通りの種類がございます。

 それが、『マルチスキル』と『ユニークスキル』です。

 

『マルチスキル』は、全ての人間が持ち得るスキルです。

 ある一定条件をクリアする事で取得が可能となり、なおかつ所持容量に限りがございません。大量のスキルを会得するも良し、限られたスキルを研ぎ澄ますも良し、お望みのままにご使用ください。

 

 そしてこちらが大本命、『ユニークスキル』。

 その名の通り、個人にしか持つ事を許されない、自分だけの『力』。

 個人の個人による個人のための『力』。

『ユニークスキル』は一人につき一つまでとなっております。効能自体は限られたものですが、『マルチスキル』と上手く組み合わせる事で、より大きな力を発揮するでしょう。

 

 あなた方は選ばれし者。

 当然ながら、平凡の人間には到底手に入れる事ができない、世の理を超越した最強の【ユニークスキル】を差し上げております。

 

 

 

 失礼、前置きが長くなってしまいました。

 勇者の皆様も、新天地への期待に胸を躍らせ、待ち切れなくなっている事でしょう。

 ご安心ください。もはやワタクシの説明すべきものは残っておりません。後の事は全て、ご自分の目と鼻と口、そして全身の全感覚で、ご堪能ください。

 

 

 

 それでは、ここから先は皆様の人生です。

 元の世界に未練はありませんね? ……はい。潔くて素敵です、勇者の皆様。

 どうか、喜びに満ち溢れた生を、謳歌してくださいまし。

 ワタクシは陰ながら、皆様の偉大なるご活躍を拝見しておりますので。

 

 

 

 それでは始めましょう。

 夢と希望が紡ぎ出す、理想の異世界生活を。

 

 

 

 


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