「なんでこんな時に、タイミングよく来るんだろうな」
とある廃工場を一組の男女が歩き回る。
男『華鈴』は電磁波をばら蒔いて辺りを索敵し、女『千聡』は不安そうに見回しながら腕にすがり付く。
手伝うと言った矢先に入ってきた仕事、工場内の不審人物排除。
最初は威勢がよかったのだが、千聡は大のホラー嫌い。
戦力として期待は出来そうにないと、華鈴は早々に意識を切り替える。
「今のところ反応は無いな」
「何もいない何もいない何もいない…」
「…置いてきた方が良かったか」
「…ん?」
しばし探索した頃、広範囲に蒔いた電磁波が何かに反応した。
成人8人程を感知した華鈴は、千聡に合図し移動する。
保護対象と化した千聡の手を引き、集団との距離を積める。
「今だ!」
突如響いた叫び声と共に、足元が揺らぐ感覚が襲いかかる。
反射的に電磁波で周囲を確認すると、千聡と入れ替りで男が一人。
にやけ面で首に機械を押し付けている。
「動くんじゃねぇぞ、向こうに送った女がどうなっても知らねえからな?」
「指定座標の入れ換えか、探知系もいるようだな」
「うちのボスの透視能力で確認したが、中々いい体の女らしいじゃねぇか。大人しくしてりゃ俺らで回した後返してやるからよ、抵抗すんなよ?」
「…お気の毒だな」
「あん?」
一方千聡は自分とは違う転移感覚に、少し冷静さを取り戻していた。
「うひょー、さすがボスっすね!」
「結構いい女じゃん?」
「ボス、体はどんな感じですか!?」
華鈴とは違う男の声に、警戒を強める。
周囲を囲まれており、正面に陣取る男がリーダー格のようだ。
舐め回すような強い視線を感じ、千聡のなかで不快感が膨れ上がる。
「いい体だぜ、柔らかそうな胸と尻だ」
「…何言ってんの?」
「俺の能力は透視、服のような単純な構造なら無いも同然。今もバッチリ見えてるぜぇ、そのつるつるまんこもな!」
「っ!?」
咄嗟に体を隠してしゃがみこむが、その様子に男達のにやけ面が増してゆく。
顔を俯かせる千聡を羞恥と感じたのか、リーダーの男がゆっくり近づきながら話しかける。
「男の方は拘束してあるからな、五体満足で帰りたけりゃ大人しくしろ。朝までには終らせてやるからよ、最高に気持ちよくして「…んじゃえ」」
瞬きの内にリーダーの肉体が消える。
残った服が落ちる音に、周囲の男達が動揺し始める。
「絶対許さない」
集団の反応が一人を除いて消失した、透視したことを得意気にばらしたのかもしれない。
「わざわざ虎の尾を踏み抜くとはな」
「さっきから何言ってやが「リンに何してるの?」る?…ヒィ!?」
男の背後に無表情の千聡が音もなく現れ、怒り狂ったような視線を突き刺していた。
「全員殺さずは守ったのか?」
「警備員の本部に飛ばした、残りはそいつだけ」
「ちっ近づくんじゃねぇ!こいつがどうなってもいいのか!?」
必死に脅そうとしているが、押し付けられてるスタンガンは既に電池切れである。
黒いオーラを纏った千聡を眺めながら、この後どう慰めようかと思考する。
考えている間に残った男も姿を消した。
立ち尽くしている千聡に近寄り、優しく抱きしめてやる。
すすり泣く音が止むまで、二人は動くことはなかった。
余談であるが、不良達は全員拘束された。
全裸の男達がエントランスに転移され、本部は一時騒然としたそうだ。
リーダーの男は他の男達の股間が顔面に次々と現れたせいで、ショックで数時間分の記憶が飛んだらしいと記録されている。
この程度はR18ではない…はず