片割れの呪術師   作:Haru yama

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77話 突入

―五条 side―

 

 

偽・夏油に捕らえられてから、しばらく経った後。

葉月が既に神無月の手によって殺されていた事、そして何より彼女が―…現代する生きた特級呪物であること。それは紛れもない事実であると突き付けられ、僕はただ茫然とするしかなかった。

 

 

真っ暗闇の中、どうにかここから脱出しようと思考を凝らしていた時、突然一閃の光が灯される。それもまるで道筋を照らすように、その先へと続いていた。

 

 

僕はその照らされた道筋に沿って歩みを進めていくと。その先には―…彼女がいた。

 

死んだと聞かされていたはずの彼女がなぜ、ここにいるのか。そもそも、彼女はいったい何者なのか…、聞きたいことは山積みだった。だけど彼女がこちらに気付き、口を開いた時。

 

 

その疑問は一瞬で―…打ち砕かれた。

 

 

 

『やぁ、初めまして。五条悟』

 

「!…初めまして…?」

 

『そりゃあそうだよ、君とは何ら関わりのない赤の他人だ』

 

 

そう言って葉月は笑っていて。目の前にいる人物は想い人であるにもかかわらず、どうも纏っている気配が違う。

 

 

「何で…、ここに…?」

 

『神無月の手によって心臓を奪われ、肉体から魂を"分離"させられたから』

 

「!…だったら、ここに来る前に会ったあれは―…」

 

『あぁ…、"呪骸"のことか。君達は私の呪力を感知できないから、身代わりには好都合だった』

 

「("呪骸"…!?)」

 

 

そう言って彼女は笑う。

 

 

『どうやら相当混乱しているようだね』

 

「一体何が…?」

 

『そんな君に問題をあげよう。どうせ獄門疆の中にいる以上、ヒマでしょう?』

 

 

この世界は生身の人間が留まることが不可能で且つ、何人たりとも受け入れないから。そう言って話を続ける。

 

 

 

『…久禮田家では60年周期で双子が生まれる。4歳になった時、一方を地下牢に閉じ込め人体実験の被験者に、もう一方を表舞台に出し呪術師として17歳まで生かす。17歳になった時、双方は殺し合い、生き残った方が久禮田家当主となり統治する。さてここで問題』

 

 

話を紡ぐように、人差し指を上げる。

 

 

『第1問。表舞台に出て都立呪術高専に通っていたのは誰?』

 

「!!」

 

 

続けて、中指を立てる。

 

 

『第2問。久禮田家殲滅を計画したのは、双子のうちどちらでしょう?なお、この計画は双子が9歳の時に立てられたものであり、久禮田家殲滅は必然だったとする』

 

「…必然…、だと?」

 

 

久禮田家を殲滅させること自体が、葉月達にとって計画の1つだったとでもいうのか?と思考を働かせようとするも、それ以上僕自身が留まれることはなく。次第に、葉月がいる所の明かりが消えていくのが見えた。

 

 

 

『時間は十分ある。その謎が解けた時、呪術界が200年前に犯した遺物の正体の一部が分かるだろうね』

 

「…呪術界…、何を…」

 

『本当に無知だね、君』

 

 

そして葉月は一度たりとも、僕の事を名前で呼びやしない。

 

 

 

『神無月のことも、知らないようだからね―…あの、心臓の呪霊』

 

「…!心臓の呪霊、だと?」

 

『肉体の寿命が尽きるたびに、"器"を変えているからねぇ。要領は偽夏油と同じだと思って構わないよ』

 

 

葉月は随分と物知りのようで…、更に彼女の事だ。情報を開示しないのは、自分達を一切信用していないから。赤の他人であると、突き放しているからだと。そう思いこむことしかできなかった。彼女の目が、僕の知る「葉月」とは全く別の人物のように思えたから。

 

 

 

「……」

 

『さぁ、君は元いた世界に戻るといい』

 

 

そういって葉月は光の道筋を指さし、僕に戻るように言う。僕は彼女の方に手を伸ばした。だけどその手は空を切り、彼女は僕から背を向ける。

 

 

「っ…、葉月!待てよ!!」

 

『……』

 

「葉月!!」

 

 

僕の呼びかけに彼女は振り返ることなく、彼女がいたところの明かりが消えた。それにより、僕の帰る道筋だけが光り輝いている。

 

 

 

「…嘘だ…、葉月が"呪物"だなんて…、絶対に認めない…」

 

 

その事実には何か裏がある。それも恐らく呪術界を巻き込んだ何かが…。

僕は元来た道を辿るように、光に照らされた道を歩き出した。

 

 

 

 

 

 

21時22分 渋谷

 

待機していた4班が同時に突入。

 

 

「状況を確認次第、新田さんはもう一度帳の外へ」

 

 

伊地知は新田に指示を出す。すると、

 

 

「えいっ」

 

 

突然伊地知は、背後からサイドテールの男に刺される。それも何度も。

 

 

 

ドサッ

 

 

 

「やっぱ俺には弱い者いじめが向いてるなー」

 

 

サイドテールの男がそう呟く。

 

 

「これでいいんでしょ?」

 

「はい」

 

 

男が問いかけた視線の先には、白髪のおかっぱ少女がいた。

 

 

「貴方はこのまま"帳"の外でスーツの人間を狩り続けてください」

 

「はーい、終わったら中行ってもいいよね」

 

 

男はそう言うとその場を去っていく。そして白髪の少女もその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

21時24分

東京メトロ渋谷駅 13番出口側("帳"外)

 

 

「……」

 

 

水無月は倒れているスーツ男の元へ駆け寄った。そして事前に福田から呪術高専関係者の顔写真のデータを渡されていたため、それと照合する。

 

 

「…これは、なかなかだな」

 

 

といいつつも反転術式でその男の治療を施す。すると流れ出る血が徐々に収まっていく。

 

 

「……葉月、さん…?」

 

 

男は意識朦朧とする中、その視界に現れた人物の名前を呼ぶ。

 

 

「……」

 

「無事…、だったんですね…」

 

「…あとは任せろ」

 

 

水無月はそう言うと、男は意識を手放した。

 

 

 

「(…他の補助監督も恐らく襲撃に遭っているだろう。まぁ、この男なら応急処置でどうにかなる)」

 

 

水無月は治療に特化した呪霊を複数体召喚し、他の補助監督の治療および救援をするよう指示を出す。その指示に従い、呪霊達は各方面に散らばる。

ある程度の治療が済むと、男を歩道橋の柵に寄りかからせ、その場から離れた。

 

 

 

 

 

 

21時27分

 

 

「ナナミーーン!!ナナミンいるーー!?」

 

 

虎杖はとあるビルの屋上の看板の上でそう叫んだ。

 

 

「五条先生がぁっ、封印されたんだけどーー!!」

 

 

 

 

「!!」

 

「封印!?」

 

 

虎杖の声が聞こえた七海班の3人は目を見開く。

 

 

 

 

そして同時刻―…

 

 

 

「…始まったか…、福田君。俺達も一度七海班と合流するぞ」

 

「はい」

 

 

二階堂達も虎杖の声に反応し、七海班と合流するため、スマホを取り出し彼に連絡を取った。

 

 

 

――…

 

 

「…あれが虎杖悠仁。両面宿儺の"器"か」

 

 

水無月もその声に気付いていながらも、目の前で倒れている補助監督を抱える。

 

 

「合流したいのは山々だが―…、アイツは一体どれだけの案件を抱えていたんだか」

 

 

深く息を吐き、一度足を止める。

 

 

「…俺に何か用か?」

 

 

だが問いかけた相手は無反応。だったらとりあえずこの補助監督を安全地帯まで避難させる迄だ。

走りやすいように補助監督を抱え上げると、すぐ近くの建物の中へと足を踏み入れた。

 

 

 

――…

 

 

 

「夏油さんが?」

 

 

虎杖と合流し、更に二階堂達とも合流した七海達は、メカ丸の傀儡から事情を聴く。

 

 

《正確に言うと夏油傑の裡にいる何者かダ。今、渋谷駅構内は正に伏魔殿。特級とソイツらが連れてきた呪霊、夏油の息がかかった呪詛師、そして改造人間と一般人》

 

 

「確かにそれなら地下鉄の隣駅から攻めた方が速い。だが、その為にはまず"帳"を解かなければ」

 

 

七海はメカ丸の言葉にそう言う。

 

 

「葉月先生がいれば、それなりに解くことに苦労しなさそうですが…」

 

《いるゾ》

 

「「え?」」

 

《久禮田 葉月は渋谷にイル》

 

「それは本当ですか!?」

 

 

七海はメカ丸に訊ね、

 

 

 

「あぁ、事実だ。俺達も今さっき、葉月と会った」

 

 

その話に便乗するように、二階堂も言葉を紡いだ。

 

 

「…無事だったんですね」

 

《それと、彼女から伝言だ。4枚の"帳"は全て嘱託式だと》

 

「嘱託式の…」

 

「あと、葉月は特級案件の要請を消化するため、単独行動をしている。葉月自身も呪詛師から標的にされている今、合流するのは困難を極めるかもしれないが…。それでも、彼女は生きている(・・・・・)

 

 

二階堂の言葉に、メカ丸は何かを察したのか、それに同意した。

 

 

 

《…とにかく、緊急事態だ。マルチタスクで頼む》

 

 

メカ丸はそう言った。

 

 

 

「1級でしか通らない要請がいくつかある。外に出て伊地知君と二階堂さん、福田君とでそれら全てを済ませてきます。3人はその間に"術師を入れない帳"を解いてほしい」

 

 

七海は猪野、虎杖、伏黒の3人にそう指示を出す。

 

 

「猪野君、日下部さんや禪院特別1級呪術師もこの"帳"内にいるはずです。この2人…、もしくは可能性としては低いですが、葉月さんと合流出来た場合、協力を仰いでください」

 

「了解!!」

 

「それから、2人を頼みます」

 

「…はい!!」

 

 

七海はそう言うと、猪野達と別行動を始め、二階堂班に合流することになった。


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