媒体別ロワイヤル   作:伊勢村誠三

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作者
・伊勢村誠三

登場キャラ
・偽アサシン@Fate/strange Fake



あなたは全てフィクションです。

シミュレーション仮説、という物をご存じだろうか?

簡単にいえば、この世界は何もかもがつくりもので、自分はその中の一登場人物に過ぎないのではないか?

という仮説のことです。

例えば、ドラクエみたいにどんなことでもがんばったら頑張った分だけレベルアップする。

自分がこんなにも美しいのは誰かがつくったからじゃないか?

こんなにも何もかもうまくいかないのは、きっと誰かが何か仕組んだからだ。

などなど、そんな出来事を突き詰めていくと行き当たるらしいです。

所謂現実乖離症候群の一種で、全能感、あるいはその全く対極に位置する者に、いや、前言撤回。後者はただの現実逃避ですね。に、起こりやすいそうです。

もしそんなことを、誰かから急に言われたなら、あなたはどう反応するでしょう?

 

元々知っていれば、本気にしているのか?と、茶化しますか?

あまり真に受けるなよ、と、励ましますか?

逆にその時初めて聞いたなら、え?本当に?と興味を持ちますか?

何それ怖い!と、自分も真に受けますか?

知っていようと知っていまいと、それとも有りえるはずがないと一笑に付しますか?

 

まあなんにせよ。本気にする人はそんなに多くはないでしょう。

自分が、今立っている足元が今崩れない保証がどこにもないのに、暢気なものです。

 

 

 

「馬鹿な……馬鹿な!そんな馬鹿な!

ありえない……ありえないありえてはならない!

絶対、絶対あってはならなぁああああい!」

 

黒い民族衣装に身を包んだ女が、殆ど叫び出すように手にした本を放り投げた。

人ならざる英霊の力で叩きつけられたそれは、コンクリートの柱にひび跡を作り、バラバラになって散らばった。

静に舞い散る無数のページの内一枚が、民族衣装の女の足元にひらひらと落ちてくる。

それに記された本のタイトルの名前は、『Fate/strange Fake』。

アメリカ合衆国がネバタで執り行われた『偽りの聖杯戦争』を綴った小説である。

 

「何故、何故こんなにもこと細かく!全て記されている!?」

 

今なお喚き続けるこの女、本を粗末にした罰当たりな彼女はアサシンのサーヴァント。

緑陣営の無銘のアーチャーとはまた異なった理由で真名を持ちえない英霊の一人である。

このバトルロワイヤルに呼び出されるまで、

彼女は『偽りの聖杯戦争』という聖杯戦争に参加していたはずだった。

 

そう、まさに支給された6冊の小説に綴られているのとまったく同じ聖杯戦争に参加していたはずであったのだ。

 

生前の狂信ぶりがスキルにまで昇華され、強固な精神力を持つ彼女をもってしても、その内容は衝撃的だった。

何せ、彼女が呼び出された聖杯戦争に関して、彼女どころか、他の参加者全員の記憶を参照し繋げ合わせなければ有りえない精度の情報が記されている。

 

(私は、私はこの物語の登場人物……何もかも、偽物、なのか?)

 

幸か不幸か、最初に飛ばされた場所が本屋だったことも有り、彼女はあらゆる資料を漁った。

自らがついになれなかったハサン・サッバーハに関する資料から、他に呼び出されたサーヴァントたちの出典まで漁り、調べ上げた。

 

(こ、ここはあのアズなる異教徒が用意した場所だ。

なら、ここにある資料も全て、奴に都合のいい物ばかり……本当か?)

 

本来なら気にも留めないはずの小さな疑念が、生々しい音を立てて広がっていく。

支給された本に記された自分の動向は、全て納得がいくものだった。

全てその状況、その条件、そこに居るのが自分なら、ほぼ間違いなくそうするであろう行動だった。

 

それに

 

本来ならば、彼女の狂信スキルを持ってすれば、この程度取るに足らないことの筈だった。

聖杯戦争でもそうだったように、この殺し合いに積極的な者全てを排除し、アズやその仲間たちを血祭りにあげていただろう。

アサシンのサーヴァントととしては、破格の戦闘能力を持つ彼女だが、それ故にこの殺し合いの会場では、その力を大きくそがれる。

それは彼女の宝具、そして……スキルにも及ぶ。

彼女の高すぎる狂信スキルは、悪意の伝道師たるアズから見れば、本当に面白くないスキルである。

故にあまりにも多彩な彼女の宝具の大半を封印すると同時に、あまりに高すぎる狂信スキルを大幅に低下させられていた。

明確に能力が定義されている英霊だからこそ起こりうる悲劇である。

 

「私は、、私は偽物なのか?

この私という存在も、信じた全ても、ハサン・サバーハという称号も……。

一挙手一投足何もかも全てが、紙の上のインクに綴られたことなのか?」

 

繰り返しになるが、彼女はスキルに昇華される程、狂信的な暗殺教団の信徒であった。

故に、何もかもが本当でないと心底理解してしまった彼女は、その場を動けなかった。

 

「……一体なんなんだ?」

 

それは誰に、何に、どこに向けた言葉だっただろうか?

まあ、どこだったとしても、今の彼女に意味はない。

何故なら彼女はファイクションです。

実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

 

 

 

【エリアH-5/本屋/1日目/深夜】

 

【偽アサシン@Fate/strange Fake】

[状態]:健康、精神的疲労(極大)

[服装]:いつもの服装

[所属陣営]:赤(小説)

[メダル枚数]:1枚(偽アサシン)

[参戦時期]:不明、後の書き手に任せます。

[装備]:Fate/strange Fake1~6巻@現実

[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0~2

[思考]

基本:私は“なに”なんだ?

1:何もかもつくりものなのか?

2:全て嘘だったのか?

3:そもそも今ここもなんなんだ?

[備考]

※一体幾つのサバーニーヤが使用可能で、スキルのランクがどの程度低下しているかは後の書き手に任せます。









































































































































































































































































































































まあ、しかしそれでも彼女は本人は、本人だけは一切認めようとしないだろうが、知名度こそ一切無いが、七天の守り手に数えられし、一騎当千、万夫不当の英霊が一騎。
その中でも見てるこちらが恐ろしくなる程の狂信と努力、そしてあまりにも再現に特化した才覚によって、暗殺教団が歴代山の翁の18の御業を習得した狂信者。
しかしオリジナルの業を一つも編み出せなかったゆえに、遂にハサンに至らなかったにもかかわらず、己の未熟以外何も恨まなかった清廉なる信徒。
もし、小指の先程の僅かな物だろうと、光に触れたなら己が心に決意を。
僅かに鼻につく程度で有ろうと、悪に触れたなら己が心に狂気を灯し、すぐに立ち上がって見せる事だろう。



何故なら彼女は、あのアークやアズ共の天敵。
夢に向かって飛んだ者の一人なのだから。



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