ノンフィクション・ファンタジー
7歳ほどの身長に腰まである長い白髪、頭の横に付いているものとは別に新たに増えた頭の上の獣耳。目の色は
こんな身体になったのは、まぁ自分自身の不注意とただの不幸だ。だが、全ての原因はかなり前に
小説家を目指し、小説投稿サイトを利用していた俺は、かつてないほどに悩んでいた。それはもうものすごい悩み様だった。例えるなら、3年後に夢が叶い小説家になれるがそれまで一ヶ月5000円で暮らすか、そこそこしんどいが年収1000万を超える仕事につくか、今すぐ選べと言われたくらいに悩んでいた。
なぜそんなに悩んでいたかといえば簡単な話だ、小説が全く書けないのだ。それはもう怖いくらいに書けない。1ヶ月考えに考え、
ファンタジー小説が好きで、小学生の頃から読み
正直自分には才能がないのだろうとは、初めから思っていた。ファンタジーに向いていないのかと、学園モノやミステリなんかも書こうとしてみたがこれはもっと酷かった。
絶望した。絶望して枕に顔を埋め、深呼吸をし、むせた。深呼吸をした拍子に、枕の中の
『作家は、自分の経験したことしか書けない』
初めてその言葉を見た時は「いや、そんなわけがないだろう。それだとファンタジーを書いている人は異世界に行ったことがあって、ミステリを書いている人は、
そう、俺に足りていなかったのは経験だ。今まで小説を読み、設定を考える事に熱中しすぎて。学校以外でまともに外出したことなど無かった。
その学校ですら友達もつくらず、朝も休み時間もずっと1人で小説を読み、ノートに設定を書いていた。
それじゃあいくら設定を考えても、小説を書けるわけがない。当たり前だ。特にファンタジー小説なんか主人公は大体がコミュニケーションが高いのだ、俺と真逆だ。人と会話できないやつが、会話の内容なんか書けるわけがないだろう。
そうつまり、今から俺がやるべきは町に出て、なんでもいいから経験を積むこと。そしてその経験を余さずメモして、小説のネタへと変換することだ。
そうと決まれば話は早い。俺は早速出かけるために上着としてパーカーを
そして気がつくと森に出ていた。森と言っても、草が踏まれて自然にできたであろう道もあるし。後ろを振り返れば村のような何かが少し遠くに見える。
何があったのか全くわからなかった。住んでいる家の前は別に森じゃないし、扉なんか周りを見渡しても
村に向かって道を歩いていき、あと少しで着くというところで。何者かに後ろから何か刃物を首筋に突きつけられた。
「キィエスクセ」
何と言われているのかわからなかった。そもそも言葉が通じるかの前に、聞き取ることすら出来なかった。
「た、たすけて……殺さないでください」
俺がその時できたのは、命乞いだけだった。後ろの人物は何度も最初と同じことを繰り返しているが、全く聞き覚えがない。少なくとも英語では無いみたいだということくらいしかわからなかった。
何度か命乞いをしていたら、相手も言葉が通じていない事に気がついたようで、何やら
「アァ……アレ! アレ!」
しばらくしたら首筋からようやく刃物を離してくれた。後ろを軽く見てみると、いかにもファンタジー世界の村民といった感じの麻でできたと思われる服を着た男だった。当てられていた刃物は矢の先についていた
アレ! と言いながら
男たちは俺の周りを囲う形で歩き、俺はそのまま村の中に入る事になった。