後輩のサマナー生活 作:むむむ
……寝てたんだ。
肌寒い。
あれ? 包帯……?
……枕変えたっけ?
「おはよう」
スーツを着た若い男性がウチを眺めていた。……あ、膝枕……!?
「…! あ、退きま…っぐ」
力を入れると駆け巡る激痛。
苦痛に歪めた顔を晒すことになった。
「おっと! 寝てないとダメだよ。手当はしてあるけど致命傷までは見れないからね」
ボサボサなったウチの髪を撫で薄く微笑んだ。
「……ご…ごめんなさい」
「ディアラマぐらい使えれば良かったんだけどね」
……この人が助けてくれたんだよね。
悪魔召喚プログラムから出てきてウチを━━
「どうしたいんだい?」
「……悪魔、なの……?」
「そうだね。ボクは悪魔だよ」
やっぱりそうなんだ。
悪魔……友達を殺した……。
「…………あの…」
「うん?」
「……助けてくれて…ありがとう……ござい…ます」
……この人は関係ない。
助けてくれたんだ。……声に答えてくれた。
「…………てっきり怒られるかと思っていたよ」
驚いたのか目を白黒とさせている。
怒る? ……なんで恩人を怒らないといけないの。
「だって…助けてくれて……治療…も……」
治療…も? ……あ…肌寒いのって……。
…………下着姿で膝枕されてたの!?
「……ぐぅ…」
痛い。……それよりも恥ずかしい。
「ああ服だね。どこにあるか分からなくてさ。脱がせた服は裂けたり焦げたりと酷かったから処分しちゃったよ」
「……すいません」
「服…着させた方がいいかな?」
「…お願いします」
動けないのがもどかしい……。
「これでいいかな?」
「……ありがとうございます」
「礼なんていらないよ。ボクは君の悪魔だからね」
人間に服を着せる日がくるなんてね。
年頃の少女。悪魔とはいえ……かな。
当分は動けない。
良くて腕が動かせるくらいか。
悪魔ならマグネタイトさえあればどうとでもなる。
病院に連れていくべきなのか。
……やっぱり分からないや。
「……ウチの悪魔」
それよりも説明だね。
「先ずは自己紹介をしようか。ボクは魔王 ロキ。こんな見てくれだけど立派な悪魔さ」
「……ロキさん。私の名前は━━」
ロキ、さんか。さん付けなんて初めてだよ。
ふんふん、悪魔を知って悪魔召喚プログラムをインストールしたんだ。
きっかけはバイト先に高校の先輩が悪魔を連れてきた、ね。
その先輩が面白い人間かもしれない。
……接触する機会はある、か。
本来は目的はコッチだし都合はいい。
「さんはいらないよ。親しみを込めてサマナーちゃんと呼ばせて貰うよ」
「サマナーちゃん……うん、ウチもロキって呼ぶね」
彼女が初めて笑顔を見せてくれた。
釣られて口が綻ぶ。
自己紹介以外にも悪魔召喚プログラムやデビルサマナーのことを教えないとね。
その前に━━
「……ぁ…」
飢えた音が聞こえる。
「ハハッ。……なにか食べようか」
「……うんっ」
食事だね。
仲魔……にデビルサマナー……。
……メシア教にガイア教。
動かせるくらいには回復した腕を使いスマホを手に取る。
悪魔召喚プログラムを……開く。
二度目だけど目に悪いデザインは相変わらずだった。
「……MAGが減ってる」
ロキを召喚したからかな。
500から0……すっからかん。
「……? ……???」
ħが……5000? 増えてる?
「勝手に換金しといたよ。因みに1
……1
「50万!? ……ったぁ…」
そ、そんな大金持ってないよ!
50万……バイト半年分……。
「安心していいよ。ボク持ちだし」
「だ、だけど……」
「元はボクの金じゃないしね」
「え」
……犯━━
「
「……貰った?」
「そうそう。俗世的に言うなら少し早いお年玉……かな?」
お年玉。……お年玉で50万…。
……う、羨ましいとけど…金銭感覚狂いそう。
「残りはサマナーちゃんに渡しておくね。ボクからのお年玉ってことで」
分厚い封筒を渡された。
……チラッと見えたお札の束……。
「……あ、あの…えと……おいくらですか…?」
「色々と買ったから……40万ちょっとだね」
「よ、よよ……40万!?」
持つ手が震える。
「この怪我じゃバイトはできないし生活費として使えばいいんだ。……買い物に行ってくるよ。何か欲しいものはあるかな?」
「え、……あ、えっと……プリン…」
咄嗟に出てきたのがプリン。
……恥ずかしい……泣きたい。
「プリンだね。食べ物は適当に買ってくるよ」
「あ、……行ってらっしゃい」
「行ってきます」
……無くしたら怖いし枕の下に置いとこう。
行ってらっしゃい……。
この言葉を言ったの……何年ぶりかな。