後輩のサマナー生活   作:むむむ

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第5話

 ……寝てたんだ。

 肌寒い。

 

 あれ? 包帯……? 

 

 ……枕変えたっけ? 

 

「おはよう」

 

 スーツを着た若い男性がウチを眺めていた。……あ、膝枕……!? 

 

「…! あ、退きま…っぐ」

 

 力を入れると駆け巡る激痛。

 苦痛に歪めた顔を晒すことになった。

 

「おっと! 寝てないとダメだよ。手当はしてあるけど致命傷までは見れないからね」

 

 ボサボサなったウチの髪を撫で薄く微笑んだ。

 

「……ご…ごめんなさい」

 

「ディアラマぐらい使えれば良かったんだけどね」

 

 ()()()()()……? 

 

 ……この人が助けてくれたんだよね。

 悪魔召喚プログラムから出てきてウチを━━

 

「どうしたいんだい?」

 

「……悪魔、なの……?」

 

「そうだね。ボクは悪魔だよ」

 

 やっぱりそうなんだ。

 悪魔……友達を殺した……。

 

「…………あの…」

 

「うん?」

 

「……助けてくれて…ありがとう……ござい…ます」

 

 ……この人は関係ない。

 助けてくれたんだ。……声に答えてくれた。

 

「…………てっきり怒られるかと思っていたよ」

 

 驚いたのか目を白黒とさせている。

 怒る? ……なんで恩人を怒らないといけないの。

 

「だって…助けてくれて……治療…も……」

 

 治療…も? ……あ…肌寒いのって……。

 …………下着姿で膝枕されてたの!? 

 

「……ぐぅ…」

 

 痛い。……それよりも恥ずかしい。

 

「ああ服だね。どこにあるか分からなくてさ。脱がせた服は裂けたり焦げたりと酷かったから処分しちゃったよ」

 

「……すいません」

 

「服…着させた方がいいかな?」

 

「…お願いします」

 

 動けないのがもどかしい……。

 

 

「これでいいかな?」

 

「……ありがとうございます」

 

「礼なんていらないよ。ボクは君の悪魔だからね」

 

 人間に服を着せる日がくるなんてね。

 年頃の少女。悪魔とはいえ……かな。

 

 当分は動けない。

 良くて腕が動かせるくらいか。

 

 悪魔ならマグネタイトさえあればどうとでもなる。

 

 病院に連れていくべきなのか。

 ……やっぱり分からないや。

 

「……ウチの悪魔」

 

 それよりも説明だね。

 

「先ずは自己紹介をしようか。ボクは魔王 ロキ。こんな見てくれだけど立派な悪魔さ」

 

「……ロキさん。私の名前は━━」

 

 ロキ、さんか。さん付けなんて初めてだよ。

 

 ふんふん、悪魔を知って悪魔召喚プログラムをインストールしたんだ。

 

 きっかけはバイト先に高校の先輩が悪魔を連れてきた、ね。

 

 その先輩が面白い人間かもしれない。

 ……接触する機会はある、か。

 

 本来は目的はコッチだし都合はいい。

 

「さんはいらないよ。親しみを込めてサマナーちゃんと呼ばせて貰うよ」

 

「サマナーちゃん……うん、ウチもロキって呼ぶね」

 

 彼女が初めて笑顔を見せてくれた。

 釣られて口が綻ぶ。

 

 自己紹介以外にも悪魔召喚プログラムやデビルサマナーのことを教えないとね。

 

 その前に━━

 

「……ぁ…」

 

 飢えた音が聞こえる。

 

「ハハッ。……なにか食べようか」

 

「……うんっ」

 

 食事だね。

 

 

 仲魔……にデビルサマナー……。

 ……メシア教にガイア教。

 

 動かせるくらいには回復した腕を使いスマホを手に取る。

 

 悪魔召喚プログラムを……開く。

 

 二度目だけど目に悪いデザインは相変わらずだった。

 

「……MAGが減ってる」

 

 ロキを召喚したからかな。

 500から0……すっからかん。

 

「……? ……???」

 

 ħが……5000? 増えてる? 

 

「勝手に換金しといたよ。因みに1ħ(マッカ)は100円の価値があるんだ」

 

 ħ(マッカ)って読むんだ。1ħ(マッカ)が100円。

 ……1ħ(マッカ)が100円? ……え? じゃ、じゃあ…!? 

 

「50万!? ……ったぁ…」

 

 そ、そんな大金持ってないよ! 

 50万……バイト半年分……。

 

「安心していいよ。ボク持ちだし」

 

「だ、だけど……」

 

「元はボクの金じゃないしね」

 

「え」

 

 ……犯━━

 

()()()()から貰ったんだ」

 

「……貰った?」

 

「そうそう。俗世的に言うなら少し早いお年玉……かな?」

 

 お年玉。……お年玉で50万…。

 ……う、羨ましいとけど…金銭感覚狂いそう。

 

「残りはサマナーちゃんに渡しておくね。ボクからのお年玉ってことで」

 

 分厚い封筒を渡された。

 ……チラッと見えたお札の束……。

 

「……あ、あの…えと……おいくらですか…?」

 

「色々と買ったから……40万ちょっとだね」

 

「よ、よよ……40万!?」

 

 持つ手が震える。

 

「この怪我じゃバイトはできないし生活費として使えばいいんだ。……買い物に行ってくるよ。何か欲しいものはあるかな?」

 

「え、……あ、えっと……プリン…」

 

 咄嗟に出てきたのがプリン。

 ……恥ずかしい……泣きたい。

 

「プリンだね。食べ物は適当に買ってくるよ」

 

「あ、……行ってらっしゃい」

 

「行ってきます」

 

 ……無くしたら怖いし枕の下に置いとこう。

 

 行ってらっしゃい……。

 この言葉を言ったの……何年ぶりかな。


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