「うちはが闇落ちしなきゃ世界はもっと平和。」   作:とんでん

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ナルトのオープニングってなんでどれもこれも格好いいんですかね。(カムバックした英雄の曲鬼リピしながら)
ところで今額に愛のあるあの子が死んでしまったんですが、そういえば作者の推しは彼でした。吃驚するぐらい泣いてます。履修済みなはずなんだけどな・・・・・・おかしいな・・・。





二人は友達にはならない。

『父様はね、情の深い繊細な方なの。』

 

 

 このお話は父様には内緒ね、と膨らんだ腹を抱えた母が微笑む。

 ナトリがその言葉にえぇ・・・という顔をすると、嫌われてるわねあの人と今度は苦笑した。

『分かり辛いし、あまり器用ではないけれど、私と話す時はみんなのことばかりよ。特に貴女たち二人は自分似だから可愛くて仕方ないみたいで、』

『何の話するのさ、なっちゃん夕食以外で父様と顔合わせたことないよ。いーつもあいつばっか。』

 あいつ、とはナトリの弟こと我が家の長男を指す。次期族長として今から特別扱いされている弟は、今日も父や叔父と共に修行に出掛けていた。

 ナトリもうちはの者として忍の心得を教えられているけれど、父から指導を受けることはあまりない。大概は一族の子らと一緒に面倒見の良い年長者に鍛えられていた。

 うちははよほど才能がない限り女を戦に出さないから、第一子であるナトリも自然と候補から外されていたのだ。

『そんな風に言わないで。言ったでしょう、どうしようもなく不器用で子どもっぽい人なのよ。仲良くしたくなったら、その時はナトリが大人になっておあげなさい。きっと印象が変わるから。』

『ふぅん。』

 日当たりの良い縁側で、産着の整理をしながら気のない返事を返す。半年後に産まれてくる弟か妹のために、集落の女たちがよかったら使ってとドッサリくれたのだ。一緒に手伝っていた末っ子はいつの間にか畳んでいた布地に埋もれ眠りこけていた。くうくう寝息をたてる幼子に着ていた羽織をかけた母は、うろん気なナトリに困った顔をする。

 人の妻になった今でも白百合の美貌だのなんだのと持て囃されており、嫁の貰い手には困らなかっただろう佳人は────なんでだか一族で最もメンドクセェ男に嫁いだ女性は、優しく諭した。

 

『母様には分かるわ。みんなのことが大好きなの、本当よ。話してみたらわりと素直で分かりやすい人だから、きっと好きになるわ。』

 

 

 

 

 

 と母は言ったけれど、正直

(どこがだよ。)

 と思う。

 同時に結局着られることのなかった赤ん坊服の山を思いだし、あれも処分しないとなぁとぼんやり考えた。

 父に一等可愛がられていた弟はあのすぐ後に戦死した。母もお産で死んで、産まれてきた子も死んでいた。残っているのは父親の機微をいまいち理解できていないナトリと、それから漸く三つになったばかりの弟だけだ。

 

 嫌いだなんて、そんなことは絶対にない。慕っている。尊敬もしている。愛情もきっとある。けれど内面を隅から隅まで理解したことはなかった。

 分からない、本当にナトリは父のことが分からないのだ。

 

 

「───これからは、共に歩んでいこうぞ。」

「──────・・・・・・ああ。」

 

 

 千手の装束を着た男の手を、うちはの紋を背負った男が握る。

 忘れもしない、本格的に千手一族との平和協定が結ばれた日のこと。見慣れている筈の赤と白がどうにも異様に思えて、叔父の代理として会合に連れていかれたナトリは顔をしかめた。

 かつての友人と語らう父の姿は脳裏に焼き付き、その後消えることはなかった。

 

 

□□□

 

 

「マシロさあ、父様のこと好き?」

 うちは宗家の屋敷の一室にて。なっちゃんなっちゃんとまとわりついてくる可愛い弟に聞いてみると、弟はキョトンと真ん丸の目を更に丸くした。それから、

「すきぃ。」

 と頬っぺたをにへにへ弛まして恥ずかしそうに言う。

 そっかー、なっちゃんも好きだ。お前が。

 最近恥ずかしがり屋さんになった弟の頭を撫でてやると、きゃあきゃあ笑いながら身を捩った。そのまま擽ってやると、手足をじたばたさせながら畳に転がる。

「こしょこしょやだ。」

「ごめんごめん、もうやんないよ。」

「なかなおり?」

「仲直り。許してください。」

「いいよぉ。」

 ドングリあげるね、と昨日袖いっぱいに拾ってきたというツヤツヤの木の実を渡された。イズナにいたんがねぇ、はやくよくなるようにあげるの。でもなっちゃんもすきだからあげるね。と満面の笑みで告げられる。天使かな。なっちゃんお前のためなら世界も滅ぼしちゃう。いやいかん、こういううちはの長男長女の思考が滅亡に繋がるんだったわ。

「やっぱりさあ、お前みたいに可愛い子が出てこないのっておかしいよね。」

「マシロもかわいいけどなっちゃんのほうがかわいいよ。」

「そっかあ。」

 悶えていると、なっちゃん女の子だもん!とよく分からないが堂々とした太鼓判を押された。尚ナトリの顔は親父の子供の頃とソックリらしいので、可愛いかどうかは微妙である。少なくとも自分の顔が可愛い自覚のあるうちの弟(儚げ美人の母親似)よりかはヤンチャ坊主感が否めない。

(漫画には、“うちはナトリ”も“うちはマシロ”も出てこなかった。それどころか父様に妻子がいたという記述すらない。)

 あの日頭に急に生えた知識が、この世界を俯瞰的に見たものであることには間違いない。そこは自信がある。けれど、全て正確ではないことも確かだ。

 そう、なんせあの漫画の“うちはマダラ”はひどく孤独だった。

(そもそも未婚だったのか、それともあの時点で既に死別していたのか。どっちだろう。)

 どっちにしろその後最愛の弟とも死に別れた挙げ句独断専行が増え、一族全体の支持も得られなくなっていくんだけども。あれ親父の人生結構踏んだり蹴ったり?と思いながら目を細める。

(“うちはマダラ”とうちはマダラは別物と考えた方がいいのか?)

 ってことは、そりゃあ漫画の展開をトレースしてたこっちの思った通りに動かないわけで。納得したナトリはヤレヤレとこめかみを揉んだ。

 現実のうちはマダラには、まだ守る者が残っている。要はまだ精神的に追い詰められていないのだ。ついでに恨みつらみと仲間の命を天秤にかけ、合理的な判断ができる程度の理性もあった。

 だからこそ父は宿敵と手を組むことを選び、先日の会合で両者の間に不戦条約が結ばれたのだ。

 つまり、元々漫画と剥離していた状況が、更に変わってきている。

(・・・・・・・・・ていうかコレ、闇落ちするか?)

 だって“あの人”が全世界巻き込んで幻術かけようとしたのって、ひとりぼっちになったからでしょ、ざっくり言ったら。守る者=ナトリたちが生きている限り、というかよすがになっている限り里を離れることってなくない?

 ああでも、親父と千手柱間が争うのって運命とか転生とかインドラとかアシュラとかが関係あるだっけ。親父VS世界の戦争が起こったおかげでその辺が解決したんだったら、長い目で見た場合親父が闇落ちしないのってまずいのではないか。でもその時多分ナトリたちもう寿命で死んでるし、そちらを選択すると親父が悲惨な死に方するし、親父が闇落ちしたせいでピタゴラスイッチ的に闇落ちした一族も滅亡しちゃうし。できれば未来の問題は未来の忍にどーにかしてもらいたいところだ。

(なんか堂々巡りだなぁ。)

 「ひとまずなっちゃんたちが死ななきゃいっか。」と具体的な方針をおおまかに決めたナトリは、面倒くさくなったのでドツボになりかけた思考を放棄した。過去とか未来とかもう知らん。大事なのは今だし。

 むつかしいことを考えさすなという見当違いな怒りとともに無責任を発動したナトリは、弟の腹に抱きついてずべべと吸った。さっきまでお昼寝していたからだろう、日向の匂いがする。マジ癒し。お前しか勝たん。因みにヤーッとわりと真面目に嫌がられた。

「なっちゃん、ヤー!」

「ごめんなさい。許してください。」

「いいよ。ごめんなさいできたいいこだから、どんぐいあげるね。」

「家宝にするわ。」

 即座に許してくれた上にまたドングリをくれた。天使かな。(二回目)

 

「何してんだお前ら・・・・・・。」

「とおさま!」

「父様、お帰りなさい。」

 

 と、すんごく呆れかえった声が降ってくる。

 畳に転がり弟にくっついたまま見上げると、なんとも言えない顔をした親父殿が襖を開けた格好で立っていた。パッと顔を輝かせた弟が、とてとてと駆け寄る。

「どんぐい!」

「ああ?」

「父様、お顔が凶悪過ぎます。」

「あげるね。マシロがひろったの!」

 多分きっと普通にわけわかんなくて聞き返しただけなんだろうなあ。人によっては恐喝ととられそうだけど。

 しかし、そんな見る人が見ればビビり散らすうちは頭領の面なんかに臆するマシロ様じゃあない。ぺっかぺかの笑顔でピッカピカのドングリを押しつけた。忍の神とか言われている千手柱間と、ほぼ対等に戦える忍者に無理矢理押しつけた。強すぎんかねうちの弟。

「あのねあのね、ぼうしどんぐいなの。いっこしかなかったの。とおさまにあげるね。」

「・・・・・・・・・・・・もらっておく。」

 手裏剣タコの出来たごつい手にのっかるドングリの異様さよ。行間で困惑がありありと伝わってきたし、なんなら視線も合ったがナトリは知らんぷりしておいた。

 大方説明しろ、というところか。甘えるんでねぇ。普通に口で聞けよかし。

「ナトリ。」

「イズナにいへのお見舞いだそうです。お外で拾ったそうで。」

 しかしナトリは親父の圧力に弱かった。そらもう狼を前にした羊のように。この世が弱肉強食なら我が家も弱肉強食なのである。

「・・・・・・そうか。叔父思いの優しい甥を持って、アイツも幸せだな。」

「えへへ。ほんとう?じゃあ、あいにいってもいい?」

「それは駄目だ。」

「えーーーっ!」

 やあだー!と駄々を捏ねる息子に露骨に困った空気を漂わせる父親に、はあとため息をついた。

 五人兄弟の長男だったのだから子どもの扱いには慣れていそうなものだが、なかなかどうしてそんなことはない。弟と子だとやはり勝手が違うのか、それとも下の兄弟たちは面倒を見てやる間もなく死んだのか。

 唯一生き残ったイズナが「ちょっとだけ兄ちゃんって呼んでくれない?」とナトリたちに頼んできたことがあったから、後者の方かもしれない。あの人は年も近いから、世話を焼いてやるようなことはなかったろう。

「イズナにいは具合が悪いから寝てるんだよ。良くなるまでは会えないの。」

 

 そう、漫画では死んでいた叔父は、あの後一命をとりとめた。ナトリの声で反射的に身を反らしていたお陰で、辛うじて内臓までは傷ついていなかったらしい。途中で見捨てかけていたナトリは死の淵から生還した叔父と、親父の「死なせたら殺す。」という脅しにひいひい泣きながら治療したお医者様を前にソッと顔をそらした。だってあの時は漫画と現実が前提条件(親父が子持ちか否か)から違うことに気がついてなかったんで。やっぱ死ぬかなぁって(言い訳)。

 とはいえ、かなり出血している上意識も戻らないため、予断を許さない状況が続いている。つまり幼児に見せるのはちょっと躊躇われる状態だ。高熱で魘されている叔父を弟に内緒で見舞いにいったナトリは、アレ見たらギャン泣きするんですよお前、とごねるマシロを説得する。

 

 ・・・・・・・・・因みにお気づきの人もいるだろうが、要するにつまりそういうわけで千手との協定は反千手派の叔父が伏せっている間に結ばれていた。

 絶対後で揉めるよこれ。なっちゃん知ってる。

 

「ヤーーーーーー!」

「あー、泣かないの。せっかく可愛い顔してるんだから。」

「マシロないててもかわいいもんっ!」

「それはそう。」

 滅茶苦茶頷いた。身内のアレソレもあるかもしれんがうちの子控えめに言って傾国の幼児。海老ぞって愚図る弟を抱っこして「泣くなよー。」と揺する。尚親父からの物言いたげな視線が頭に突き刺さったが知らんぷりした。甘えるな、自分の口で、聞けよかし(五七五)。

「ったく。忍の家の息子が何泣いてんだ。」

 びゃおびゃお泣く弟にため息をついた父が、のっそりと部屋に入ってくる。ナトリの両脇に手を入れて、マシロごと持ち上げ膝に乗っけた。

 見上げれば普段より近い所に眉間に皺を寄た親父がいる。ウワァ不本意そうだなあ。

「で、ここで何をしてたんだ。」

「一緒に遊んでました。」

「お前は修行しろ・・・・・・・・・そうじゃなくて、サユリの部屋だろうがここ。」

 目を細めて部屋を見渡す父に習ってナトリも視線を動かした。そこまで広いわけでもないが、狭くもない。張り替えたばかりの青い畳に、小ぢんまりした衣装箪笥。僅かに残る母の匂いと、化粧道具と、後は籠に入った肌触りの良い白い布地が部屋の隅で存在を主張していた。

「・・・・・・・・・ヒカクさんとこの奥さんが子ども出来たって言ってたので、産着をあげようかなと。誰も使わないですし。」

「そうか、それもそうだな。」

 側近の名前に頷いた父が、ぴすぴす鼻を鳴らすマシロの頭を撫でる。

 そういえばこの人は伴侶を亡くしたばかりだった。まだ四十九日も経っていないことを思いだしたナトリは、居心地が悪くなって背を丸めた。

「この部屋居たがるんですよ、マシロが。寂しいんだと思います。母様死んだ後はイズナにいがずっと一緒に居てくれてたし、余計。」

「・・・・・・・・・・・・・・・。」

「あのー?」

 親父が滅茶苦茶無言になった。なんか反応してもろて。

「容態は安定しているらしい。暫くは無理だが、もう二十日もすれば会話もできるようになるだろう。」

「・・・・・・?ああ、イズナにい。」

「ほんと?」

 急に話はじめるから何だと思えば。ぱあっとした顔で親父を見上げるマシロに「はつかっていつ?あした?」と聞かれたナトリはどう答えたもんかと言葉を濁した。明日足す十九日くらいかな。少なくとも今月中ではないんだけど(現在月半ば)正直に言ったら拗ねるな多分。

「来月だ。」

「アー父様駄目それ言っちゃ駄目「ヤーーーッ!」・・・・・・あちゃー。」

 日にちの概念はまだちょいちょい分かっていないが、かなり後なことは理解したのだろう。思いっきりへそを曲げた弟に、ナトリは頭を抱えた。

 子どもの扱い下手なんだからもう。

 

 

 

□□□

 

 

 

「そういうわけで、今暫くは叔父の代わりに私が出席させていただきます。」

「ハハハッ!マダラでも子には敵わんのか。」

「・・・・・・・・・ナトリ。」

「はいなんでしょう貴方のナトリです。」

 

 滅茶苦茶舌打ちされた。穏やかに微笑みながらソッと距離をとる。今のは意味分かってんだろ揚げ足取るなや、っていう意味だな。うちはマダラ検定三級のなっちゃんが言うんだから間違いない。尚一級保持者は母と叔父(死んでる人と死にかけてる人)だ。つまりこの場にいない。

 からから笑う男が「ほらナトリも飲め!」と徳利を傾けるのに、機嫌が低空飛行中の親父が声を荒げる。

「柱間、砂利に飲ませるな。」

「まあまあ。千手は正月になると子にも一杯ずつ飲ませるぞ!前年の穢れを祓うとかなんとかでな、ウチの弟なんかは弱かったようですぐに寝こけて」

「今日正月じゃねぇしナトリはウチのだよ馬鹿。」

 

 

 その日の夜半、とある宴会場にて。

 向かい合ってぎゃあぎゃあ大人気なく叫ぶ二人(今をときめく戦国二大忍一族の長)にナトリは肩を竦めた。それからその二人から若干離れた位置にいる、とても困った様子の両一族に気にするなと手を振る。よく闇落ちするけど堕ちるまでは常識人なことで定評のあるうちはの者がかなり可哀想な顔を向けてきた。

 気にするなったら気にするな。この二人の関係性は深く考えちゃ駄目だ。(深く考えてはいけない例:「柱間ァ!」「フルフルニイ」、「マダラの存在は天啓」「友(世界滅亡RTA中)」)

 尚千手の方はナトリの前に座っている扉間が死んだ顔をしているのになんか察したようで、各々ソッと食事に戻った。心が強い。さては自分とこの頭領の奇行に慣れてるな。

 

 うちはと千手は、何度も言ったが先月の末に協定を結んだ。ナトリはチンチクリンなもんでまだ関わらせてもらっていないが、里創りの方も若干話が進んでいるらしい。

 で、そうやって両者が足並みを揃え強力な忍里、つまり一から新しく組織を創るのには、やはり信頼関係が必要になってくる。

 

『と、いうわけでドンチャ、飲みか、親睦会をしようぞ!』

『さては酒飲みたいだけだな、お前。』

 

 どういうことでもそうはならねぇだろうと誰もが思ったが、忍の神の思考回路ではそうなるらしかった。

 「やだやだやだ酒酌み交わしたい親睦会したい酒飲みたいやだやだやだ」と主張する柱間(酒豪)に順当すぎるツッコミを入れたマダラだが、実はどうしてこの男もザルである。ジワジワ説得され「まあ強制的に腸見せ合う場ァつくんねぇといつまで経っても真の和解にはたどりつかんな。」とそれっぽいことをあんまり納得していない顔でぼやきながら了承した。

 途中で『兄者ァ!!!』と怒鳴りながら現れた扉間が、

『協定結んでから一月ほどしか経ってない時にすることか!』

 と、これまた正しすぎるツッコミを入れたのだが、

『里の予定地にうちはと千手の八割が移り住めるようになるまでには半年もかからんぞ!(意訳:それまでに慣らしておかないとどうせまたゴタゴタする絶対に。)』

 とこれまた全うなことを主張し、結局『うちは千手飲み会』は開催されることと相成ったのである。つまりねだりにねだりにねだり倒して、うちの弟よりもごねた千手柱間の粘り勝ちだった。忍の神の本気の駄々こねすげぇ。

 

 

「────おい、何普通に飲もうとしてる。」

「あーっ」

 まあでも親父イズナと話している時と同じくらい口数多いし、ナトリたちと居る時より大声出してるし、なんか楽しそうだしいっかね。

 などとひねくれていたナトリは、不機嫌を全面に押した顔の親父に杯を取り上げられ思わず声を上げた。めっちゃ怖い目で見下ろされた。そんなに怒るなよう。

「う・・・でもナトリはマダラの子ぞ・・・・・・オレもなんか可愛がりたいぞ・・・・・・。」

「・・・・・・何かと思ったらさっきの話かよ!まだ治ってなかったのかその落ち込み癖!めんどっくせえなあ!」

「父様よりマシでは。」

「よし表に出ろ。」

「是非お一人でどうぞ!」

 スンッとした顔で見られたナトリはブルンブルン首を振った。それをニコニコしながら見守っていた柱間が、満足そうに頷く。

「うむ、親子仲が良いのはよいことぞ!」

「どこがだ・・・・・・とんだ生意気娘だよ。」

 毒気を抜かれたのか、ため息をついたマダラに額を弾かれた。イテ、と言って顔をしかめれば斜め前にいる柱間が懐かしそうに目を細める。

「そういうところも昔のマダラにそっくりぞ。顔も勿論似ているがな。いやぁ、初めて見た時は一瞬息子かと思ったくらいだ。」

「母にもよく似ていると言われました。」

 ピクリ、と父(男やもめ三十日目)の肩が動いた。やっべやっちまったぜと思いながらナトリは話題を逸らす。

「柱間様は、ご子息の方が一人いらっしゃるとお伺いしましたが。」

「よく知っているな。情報に通じているようで何よりぞ。」

「いえ父が柱間様のこと大好キュム゜ッ」

 皆この場にいるのは忍である。明らかに反応していたマダラに、空気に若干の緊張が走った。

 故に場を和ませようと真実を冗談混じりに言おうとしたのだが、当の本人に顔面鷲掴みにされシャカシャカ上下に振られた。

 成る程口閉じろと。口で言ってくんない?

 怒らせたかなー。でもこのままぶん投げられなかったから同じ一族の子とステゴロで喧嘩して腕へし折れた時よりマシ(「その程度で折れる骨なら粉にしてやる。」by親父)だなー。

 

「──────あの、父上。叔父上。」

「おお、広間か。どうした?」

「調度良い、お前も挨拶していけ。兄者。」

「それもそうだな!」

 

 と、控えめにかけられた声に、今まで屍のように静かだった千手扉間がふと口を開いた。

 「????」と混乱しているナトリと同い年くらいの少年を強引に横に座らせた柱間が、にこやかに続ける。

 

「オレの息子、千手広間ぞ。今年で八つになる。仲良くしてやってくれ!」

「ち、父上!?」 

 

 千手の装束に身を包み、戸惑ったように父を見る少年にナトリはああと頷いた。噂をすれば影である。

 漫画の中では千手柱間の子孫と言えば孫娘の五代目火影ことナメクジ姫らしいが、孫がいるということはつまり息子か娘がいるということだ。そもそもナトリの父と同輩の彼が、その年にもなって子がいないというのもおかしい。

(オトモダチしておくべきだよな。)

 千手の頭領の息子と、うちはの頭領の娘。二人が友好的でいる方が、今後の事も運びやすかろう。

 と言うのを一応確認したくて目配せしたのだが、父はナトリの視線に無反応だった。あんまお待たせして会話のテンポがおかしくなるのは避けたいので、うちはマダラ検定三級取得者は沈黙を勝手にゴーサインと受け取った。駄目ならまたシャカシャカされるだけである。

 

「うちはマダラが第一子、うちはナトリです。よろしくお願いします。」

 しゃんと背筋を伸ばし、友好的な笑顔をつくって握手の手を差し出した。マシロがいたら世界一可愛いよ!と褒めてくれること間違いなしの完全余所行きスマイルである。

 それを見た千手広間がナトリの方に手を伸ばして、そして────

 

 ぱしんっ

 

 と乾いた音がした。皮膚の当たる、差し出した手の甲を叩かれる音である。

 

「千手柱間の息子、広間。仲良くしなくて良い。」

 

 人の手をビンタしてくれやがった格好のまま肩で息をした広間が、静かに、しかし感情のこもった声で言った。成る程、と概ね察したナトリは腫れた手をぴらぴらしながらため息をつく。

 お前さてはイズナにいの千手バージョンだな。

 

 

「オレは、お前が、大嫌いだ。」

 

 

 

 

 ─────────やっぱコイツ、仲良くしてやんね。




感想、誤字報告ありがとうございます!
多分修正できていると思います。(また間違えていたら申し訳ない。)


■うちはマシロ
・別名わたしがかんがえたさいきょうのしょた。この話の中のうちはマダラの次男坊。母親似なので成長すると男の娘に。
・ずっと末っ子だったのでお兄ちゃんになる日を楽しみにしていたが、多分二度とそんな日はこない。
・兄(出てきてない)も戦死したのでこれからは宗家唯一の男児として教育されていく。(でも姉が万華鏡写輪眼とかいうぶっこわアイテム持っているので跡継ぎの座には座れない。)
・その場にいるだけでうちは一家の不穏値数を下げる浄化スキル持ち。なっちゃんが一族で一番可愛いと思っている。約束されしうちはの血が凝縮された宗家出身のシスコン。
・うちはカガミとは幼なじみ。多分同い年。
・最近の趣味はドングリ採集。一番ツヤピカなのを怪我で療養してるイズナにいたんにあげました。
・死んだらうちは一家全員曇る。

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