「ボク達が、魔女に………? なら、ボク達が今まで倒してきた魔女は」
「嘗て魔法少女だった者の残骸。お前等に合わせて言えば、魔法少女だった者そのものらしいが」
と、あきらの言葉に何処か不機嫌に吐き捨てるごんべえ。
「俺に言わせりゃ残骸に呪いがこびり付いただけだがな……」
「ごんべえは、魔女になった子達が呪いを振りまくような子たちじゃないと思ってるからね」
「全員が全員、そうではないのも解ってるでしょうけど」
「……………………」
自分のほうが解っているというように語るキリカと紗枝にごんべえは余計なことを言うなと目を細め睨む。
「まあ、基本不可逆の魔法少女の魔女化と魔法少女契約。俺はそれを可逆にできるが、どうする?」
「可逆言うナら、叶えた願いドウなるネ」
「もちろん消える。お前の場合、蒼海幣が検挙される」
「じゃ、じゃあ私なら…………」
「本屋が燃えたままだし、あきらなら魔女に囚われていた人々と共に食われていたことになる」
「ボク死んじゃうの!?」
「…………まあ」
あきらのツッコミに目を逸らすごんべえ。マギウスの翼と違い、自分が助かるために誰かを犠牲に、などという行為をしていないあきらは、願いが願わなくてはならない状況の願いだけに思うところがあるのだろう。
「やっぱりジュゥべえと同じだな。人を騙して、この星を食い物にしている!」
「ああん?」
と、キリカがカオルを殺意のこもった瞳で睨む。
「ごんべえをそのジュゥぞうだかと一緒にするな! ごんべえは騙したりしない、魔法少女の魂の在り処も魔女の真実も全部事前に教えてくれるんだ!」
「私も、契約相手はキュゥべえだったけどこの前ごんべえが色々教えてくれた」
つまり、彼女達はごんべえ達の所業を知った上で一緒にいる。キリカに至っては魔法少女の真実を知った上で契約しているという。
「全部知ってるなら、どうして…………!」
「だって私はごんべえと居るために願ったし」
と、キリカ。これは生憎と理解できる者はこの場には居ない。
「私は………どうしたって叶えられる筈のない奇跡を願ったから。対価が発生するって言うなら、受け入れるよ。あの時家族を守りたいって気持ちに嘘は一つもないんだから」
その言葉にあきら達3人は固まる。
「少なくとも俺は、先輩の説明を端折るやり方はともかく奇跡の対価として不当だとは思わない」
「……………マ。ワタシもあの時同じ説明されても家族守るタメ願たよ」
「そう言われちゃうと、ボクも………」
「わ、私は………理由を、教えてください。私達を魔女にする、その理由を!」
美雨の言葉に、あきらも何も言えなくなる。かこは、それでもごんべえをまっすぐ見た。
「ああ、話してやるよ。俺が隠し事をした相手は一人だけだからな」
一人いるのか。
だけどどこか寂しそう……いや、悲しそうに見えた。
「わ、私は………」
夏希だけはまだ上手く事実を受け入れられていないようだ。
「で? お前等はどうする?」
と、ごんべえは視線をあすなろ市の魔法少女達に戻す。
「魔法少女狩りに思うところはあれど珍しいことでもない。大人しく帰るってんなら、俺は追わん」
「私も興味ない」
「………縄張りの外も標的にしないなら、まあ」
一応は魔法少女達を救うための行為。あきら達は顔を見合わせる。
「………ななかに聞くヨ」
「まあ、ボクも出来るなら争いたくはないし」
「………………」
「…………貴方」
「ん?」
と、海香はごんべえに目を向ける。
「魔女を人に戻せるの?」
「肉体が残ってればな。後魔女か、グリーフシード」
「…………なら」
「和紗みちるを生き返らせろってんなら、断る」
「!?」
海香の言葉が続く前に、ごんべえが切り捨てた。
「そもそも
「魔女の………?」
「かずみに、あったの?」
「あった。みちるに良く似てるのがな………偽りの人格、偽りの生命………だが確かに生まれた命だ」
「偽りのイノチ………此奴等、殭屍でも作たネ?」
「親友の死体を切り刻んで培養して魔女の肉で作った心臓押し込んだのさ」
その言葉にかこ達の視線が集まり、海香は目を逸らす。
「で? みちるを生き返らせたら、かずみは捨てるのか?」
「そんなことするもんかよ!!」
ごんべえの言葉にカオルが叫ぶ。
「へえ………お前、かずみのために怒るのか」
「確かに、かずみはあたし達がみちるの代わりに………でも、あたし達が髪を切ったのは、かずみなんだ…………」
カオルの言葉にごんべえが目を細める。と、不意に携帯が鳴る。
「少し待て………やちよか、どうした?」
『あなたが探しているっていう二人ではないけど、かずみがウワサに巻き込まれたわ』
「かずみがウワサに?」
ごんべえの言葉にカオルと海香が反応した。
『今はみたまの調整屋にいる。あすなろ市の魔法少女を見つけたら、連れてきてほしいの』
「解った」
『ええ、お願いね』
電話を切り、あすなろ市の二人に視線を向けた。
「かずみがこの町の厄介事に巻き込まれた。どうする?」
「かずみが!? 無事なのか!?」
「それを確かめに行く。で、お前はどうする御崎海香………帰って次のを作る準備でもするか?」
「わ、私は…………」
「…………はぁ。視点が狭まってるな……少なくともかずみはお前達を友達だと思ってる。その声があったほうがいいだろ」
そう言うと餓者髑髏が魔女を握り潰し結界が消える。
「繋がってないのは楽でいいが、見えるものが少ないな」
「それが人間目線ってやつだよごんべえ。これからごんべえは、もっと見えないものが増えて、だからこそ大切にするものが増えるんだ」
ごんべえの言葉にキリカは何処か嬉しそうに言う。ごんべえはそんなものかね、と肩をすくめた。
「かこ達はどうする?」
「あ、えっと………」
「正直、居場所解たならワタシ達仕事終わりヨ……でも、ウワサ絡み協力するネ」
「ボクも」
「わ、私も手伝います!」
「じゃ、行くか」
インキュベーター大百科
ごんべえが一度だけ説明し忘れた相手
『私に不死をよこせ』
小国の王(男)。元々ごんべえ曰く暇つぶしに関わっていた一般人だがごんべえから与えられた知識を活かしより良い国を作るために豪族を纏め王になった。
王になり歪み、ごんべえの『少女の魂を使い願いを叶える(意訳)』を勘違いし自らの孫娘の首を持ってごんべえに上記の願いをした。
足りぬなら国中の娘の命を持ってくると言った彼に、ごんべえは先輩をうまく誘導してインキュベーターとしての機能を使った。
歴史に名を残さないほどの小さな国の、もうすぐ死ぬ男。魔力は少なく自らの体を動かすことも出来なかった。代わりに望み通り寿命で死ぬこともなくなった。
ごんべえは何も見えず、聞こえず、感じない石ころが黒く染まり切るまで森の奥深くで見守っていた。
『人は変わるものだ。見ている世界が狭いからこそ、自分の視点というものを持つ……愚かだな。だけど、羨ましくもある』
因みにこのあと『王がいなくなり混迷する国には願いを求める少女が増えたというのに、どうしてこんな森で無駄な時間を過ごすんだい? 訳が分からないよ』と言った先輩を食い殺した。
エイプリルフールネタ
-
修羅場不可避? 相棒だらけの魔法少女会合
-
あけみ屋にて、円環の理達の会話
-
魔法少年たつや☆マギカ
-
FGO世界にてごんべえ世界の偉人達と共に
-
私は上浜のウワサ「Y談おじさん」