ありふれた職業で世界最強に転生したと思ったら檜山だった件   作:ホームズの弟子

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筆が乗ったので連続投稿です。


34話 呪い

 突然現れた、もう一人の恵里にこの場は混乱に包まれた。

 

「どうなってるの?どうしてエリリンが二人居るの?もしかして、異世界にはそっくりさんが3人居るとか?」

 

「落ち着け谷口!アレはきっと、中村の生き別れの双子妹とか何かだ!」

 

「お前も落ち着け坂上。恵里に妹も姉も居ない……でも、アレは一体?」

 

「大介……あれは誰なの」

 

 谷口と坂上を宥め落ち着かせるが、恵里は俺の腕の中で怯えている。

 無理もない。

 目の前に居る自分にそっくり……いや、まるで鏡の中からそのまま飛び出してきた様な、瓜二つの存在に訳が分からないのだろう。

 

「君の為に造ったこの体どうかな?僕の事は是非“恵里”って呼んでね!きっと檜山君も気に入ってくれると思うよ!いや!きっと気に入ってくれるさ!だって檜山君は僕たちの運命の人なんだか「随分と趣味が悪いみたいだね?」……ら」

「香織?」

 

 白崎さんが目の前に現れたもう一人の中村恵里に静かだが、ハッキリとした怒りをぶつけた。

 

「私の大切な友達――恵里ちゃんにそっくりに化ければ、檜山君が靡くとでも思ったの?恵里ちゃんと檜山君の絆も随分と甘く見られているみたいだね。見掛け倒しも甚だしいよ」

「香織ちゃん……そうだよ!大介をさっきから運命の人だなんて!勝手な事言わないで!大介は――僕の運命の人だよ!」

「おい恵里、相手をあんまり煽るな」

 

 

「…………ズルいな」

 

「ズルい?ふっ…白いコートよ。お前がどんな姿かたちで我がライバルの前に現れようと、騙されるわけもない。こいつは……俺のライバルだぞ!」

「コウキ……」

「そうですよ!エリちゃんは本当にヒヤマさんの事が子供を作りたい程、好きなんですよ!」

 

「…………何で?」

 

「理由か?全部に決まってる。お前は中村じゃ無いからだ」

「幸利の言う通りよ!恵里はね、大介の事を小学生の時から好きだったのよ!」

 

 

「……………君達には伝えないといけないみたいだね……真実を♪」

 

「真実?」

 

「檜山君いや――佐藤君♪」

 

「……やっぱりお前が俺を転生させたんだな」

 

「何を言ってるの大介?」

「転生って一体?」

 

「みんな…実は俺、転生者なんだ」

 

 俺の言葉にハジメ達は驚いたが、ティオさんだけは納得したような表情を浮かべた。

 

「なるほどのぉ…それが来奴がヒヤマを付け狙う理由か。一度死に生き返った魂には特別な力が宿るという話はよくあるからのぉ」

 

「みんなごめん今まで黙ってて、流石にこんな話信じてもらえるかわからなくて……」

 

「…ねえ大介?」

 

「どうした八重樫?」

 

「こんな時に聞くのは違うとは思うのだけど、どうしても気になっちゃって……転生前の大介って年齢は幾つだったの?」

 

「え?27だけど」

 

「成程ね……でもこれで私が思っていた長年の疑問が一個解けたわ。ありがとうね」

 

 八重樫がそう言うと、他のみんなも一様に頷いた。

 

「疑問?」

 

「「「「檜山(大介)がどうしても同い年に見えないって話だよ」」」」

「お前らなぁ……」

 

「大介…」

「恵里もごめん」

「ううん気にしなくていいよ!だから初めて会った時に、大介は自分の事を佐藤って言ってたんだね」

「そんな前の事覚えていたのかよ⁉」

「へへん。だって大介と初めて会った時の事だもん!言わば記念日だよ」

 

「……話を続けようか?佐藤君……いや、もう君は檜山君だね。君は僕の実験によってこの世界へと転生させたんだ」

 

「実験だと?」

 

「そう。僕はずっぅぅと魔法の研究をしててねその研究の一環としてね。因みに君を選んだ理由は、苗字が佐藤だったから」

 

「そんだけなのか!」

 

「そんだけだよ?えっっと……サカシタクン。日本で一番多い苗字だったから、佐藤君の魂を選んだんだ。本当は左衛門三郎とか勅使河原にしたかったんだけど、珍しい苗字には何か特別な力が宿る可能性があったから、初めはありふれている苗字にしたんだ」

 

「まさか、俺に前世の下の名前の記憶が無いのって」

 

「察しがいいね流石運命の人。必要ないからさ♪必要ないのは省いて実験するのは研究に於いて基本だからね」

 

「そして、お前の実験通り檜山は概念魔法やトータスで初めての天職を持ってくれたってわけだな」

 

「違うよ清水君。そこに関しては本当に偶然だったんだ……いや、ここまでくるとこれすらも運命だったんだ!まさか檜山君がこんなにもこの物語を変えていくなんて流石に想定外だったよ。自身に降りかかる死亡する未来を避けてね♪」

 

「物語を変える?大介が死亡する未来?」

 

「檜山君はね…悠に二桁に上る死亡する未来を奇跡的に避けてここまで来ているんだ」

 

 俺そんなに死にかけてたのかよ!?

 ありがとう脳内会議……

 

「どういう事だ?檜山はそんな人から恨みを買う奴じゃないだろ?なのに死ぬ未来だと?」

 

「まあ、この数字は僕の長年の研究に基づく計算式よって出てきた数字だから厳密には違うかもしれないけどね。ハジメ君、僕は時空と次元を超える魔法を会得しているんだけど……」

 

「時空、次元……つまり、別の時間軸であったり世界線へ移動が可能という訳じゃな」

「そんな魔法があったなんて……」

「私もそんな魔法聞いたことないですよ!」

 

「君たち異世界組の理解も早くて助かるな♪この世界線以外の檜山ってね、それはまあ酷くてサイコパスな奴でね♪」

 

 そこから、もう一人の恵里は、檜山―――俺の知っている原作檜山の事をつらつらと語り始めた。

 改めて聞くと、やっぱ俺ってヤバい奴なんだな……

 

「―――てな具合でね。それはまぁーー人の恨みを買うどころか、叩き売りしているような奴でね♪」

 

「それは本当に檜山なのか?僕を殺そうとしてるなんて……」

「似ても似つかないねハジメ君……しかも、別の世界線だと私を殺すなんて……」

「流石に衝撃的すぎるな……」

「他の世界線の大介とは幼馴染になりたくないわね……」

 

 ハジメ達が別の世界線の俺に驚き戸惑っていると、天之河が話し始めた。

 

「しかし、それが何だというのだ?俺がライバルと認めたのは、今!俺の目の前に居る檜山大介だ。他の世界線の檜山の事など、どうでもいいことだ!」

 

「天之河……」

 

「馬鹿にしては良いこと言うじゃん。そうだよ!僕が好きになったのは、僕をいつも優しく抱きしめてくれて、僕を守ってくれるここに居る大介だもん!」

 

「恵里……」

 

 ちょっと涙腺に来るな……

 

「へぇ~まあ、別の世界線じゃ、僕はそこの……名前なんてどうでもいいや。馬鹿に惚れて、檜山君を利用するんだけどね♪」

 

「ふん!そんな別の世界線の僕なんて知らないよ!」

 

「アハハ!僕の言う通りかもね!」

 

「お前は!僕じゃない!」

「そうだよ!貴方は恵里ちゃんじゃない!そんな外側だけ恵里ちゃんに似せたって…」

「うるさい……」

 

 恵里と白﨑さんに言われ、反論するかと思われたが、さっきまでの飄々とした口調で話していた、もう一人の恵里は急にぼそりと呟いた。

 

「まっ…て…。うるさい…。も…しかし…て…か…らだ……を代え…たせいで…え…り…ちゃんの……自我が……芽生…えちゃったのかな……?…早く会いたいんだ♪お前はもう邪魔だよ♪お……や…………ひ……ま……」

 

 どうしたんだ?急に苦しみ始めたぞ?

 違うとわかっていても、恵里にそっくりな人が苦しんでいるのは助けたくなってしまうな……

 

「おい、大丈「みんな!今がチャンスだ!」」

 

 俺が声を掛けようとしたが、ハジメの号令で、八重樫は刀を使い、一瞬にして拳銃を持っていたイシュタルさん達を一瞬にして拳銃を真っ二つにした。何も見えなかった……

 きっと、バトル漫画で途中リタイヤするキャラってこんな気持ちなんだろうな。

 でも、俺もボーっと見ているだけじゃ申し訳ないから、ロープを高速建造で作成して、この場に居る、白いコートが連れてきた、全員をロープで縛りあげた。

 ……あれ?なんで俺高速建造使えるんだ?

 

「もう、お前の負けだ」

「檜山の事は諦めろ」

 

 未だに苦しんでいるもう一人の恵里を囲むように、ハジメ達は立ち塞がる。

 

「……ダメ。まだ魔法が使えない」

「来奴は一体何をしたのじゃ?」

「まあ、拳銃を使って来たってことは、こいつ自身も魔法が使えなくなる魔法なんだろう」

「空間に作用する魔法みたいなものなのかな」

「みなさん!早くこの人も縛り上げましょう!」

 

 ハジメ達が魔法が使えない事を推察し始めた時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ナカムラエリの名において命ずる――“跪け!”」

 

 「跪け」その言葉が聞こえたと同時だった。

 ハジメ達ははまるで、その命令が当たり前のように、もう一人の恵里の前に跪いた。

 

「くっ!」

「なんだ!」

「どうなってるの!」

「これは一体⁉」

「どうなっておる!」

 

 

「みんな!」

「光輝!」

「香織ちゃん。雫ちゃん!」

「エリリン!シズシズ!」

 

 俺たちがハジメ達を心配し、近づこうとしたが、もう一人の恵里は、ゆっくりとだが、確実に俺に向かって来る。

 

「ようやく会えた……僕の運命の人♡」

 

「お前は一体……」

 

「違うよ♡僕はお前じゃない――ナカムラエリだよ大介♡」

 

「っ!大介にそれ以上近づくな!」

「やめろ!恵里!」

 

 恵里は俺を守る様に前に出ようとしたが、俺はそれを静止させ、恵里を背中に隠す様に恵里ともう一人の恵里の前に立つ。

 

「さっきまで奴とは違う……」

 

「はぁ~やっぱり檜山は僕の運命の人だ!……それに比べて僕は何もわかっていない……」

 

「どういう事!大介をどうするつもりだ!」

 

「僕は……大介を守りたいだけだよ?」

 

「守るだって?」

 

 俺が聞き返す様に、もう一人の恵里に聞くと、ポツリと言ってきた。

 

「あのね……大介には呪いが掛かっているの」

 

「俺に呪いだって?」

 

「そう。アイツと様々な世界線を見ていて気づいちゃったんだ……大介はね―――――――――生きたままこの世界から帰れないんだよ?」

 

「…………は?」

 

 

 




>この世界線の死亡フラグ
 基本的にメシに誘わず、原作キャラを誘わなかったら死にます。
 死にゲーが裸足で逃げ出すほど死にます。
 因みに、死因の半分以上は恵里ちゃんに愛されすぎて死にます。

>佐藤の理由
 初めは、田中か山田で行こうとしたのですが、調べたら佐藤が一番多い苗字だったので、佐藤にしました。
 

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