実力主義の教室にようこそせず   作:太郎

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2年たってようやく2巻突入!
おり主ちゃん視点書くの楽しい。
書き始めから割と考えていた話です


2巻
12話


 七月一日、端末を開けてみればそこには昨日の夜と一切変わらないポイントが表示されていた。どうやら今月もポイント支給額は0のようだ。このままDクラスからのポイント供給がないとするとボードゲーム部以外にポイントを獲得する方法を考えないといけない。ポイント依存の先が一つだけではあまりにも不安だ。そもそも他生徒から奪えるポイントにはどうしても限りがある。とは言っても今月はまだ大丈夫だし、適当に考えておこう。 

 今月分の出席代を佐枝ちゃん先生に送り、ダラダラ過ごしていると清隆くんからメッセージが入る。めずらしい。

 そこに書いてあったのは今日あったことについてだった。どうやら今月のポイント支給額が0なのは須藤くんがCクラスとの間に起こした暴力事件のせいらしい。それがなかったら8500ポイント入ってきていたようだ。しかも須藤くんによれば須藤くんは手を出すように仕向けられたようだ、それもカメラのないところで。面白いな、須藤くんの話がホントなら他クラスを落とそうとする者がもう出てきていることになる。さらに詳細を清隆くんに聞く。また事件現場でも見に行こうっと。

 

 すっかり忘れていて気が付けばあれから五日くらいたっていた。そろそろ事件現場を見に行こうと寮の玄関に降りてみればそこには清隆くんといつしか職員室で見た巨乳美人ちゃん。たしか名前は一之瀬さんとかだったはず。なにやら面白い気配を感じる。こっそり後をつけてみれば辿りついたのは体育館裏。いかにもな場所だ、もしやかしてもしかしてするのか。

 期待を胸に物陰に隠れていると一人の女の子がやってきた。その女の子は二人の元へ訪れると何やら揉め始める。と思うと清隆くんが去っていく。なんとなく読めてきた。女の子は一之瀬さんに告白しようとし、一之瀬さんは断るというかごまかす理由として清隆くんを連れてきたがそれを清隆くんが断ったというところだろう。一之瀬さん、なんという悪女なんだ。しかしこれはチャンス到来だ。

 

 その後、物陰から経過を見守っていると告白を断り涙目で去っていく一之瀬さんとフラれ呆然と立ち尽くす女の子に分かれた。やっと終わったか。私はしんどい顔を隠すと女の子に近づく。

 

「フラれちゃったね」

 

「誰ですか?今はほっといてください」

 

 自分一人で告白を断る勇気のない小心者にフラれて傷心中だ。

 

「私はDクラスの松崎美紀。でもさ悔しくないの?」

 

「悔しいに決まってるじゃないですか!フラれたんですよ!」

 

「それもそうなんだけどさ、一之瀬さん自身にだよ」

 

「どういうことですか?」

 

 こっちに顔を向ける女の子。なんだかアホの子の気配を感じる。かわいい。

 

「だってさ、告白の場に関係ない男子呼ぶなんて、君の告白を利用されたようなもんじゃん」

 

「適当言わないで!一之瀬さんはそんなつもりないって、初めての同性からの告白でどうすればいいかわからなくなったって説明してくれた」

 

「それはホントかもしれないけどさ、よく考えてよ。告白の場に彼氏のふりを頼む相手ってどんな相手?」

 

「っ」

 

 女の子は私の言いたいことがわかったのか顔を歪める。

 

「ね?利用されたんだよ、悔しいでしょ?」

 

「で、でもだからってどうしようもないじゃん、もうフラれた後だよ」

 

 涙目でこちらを見てくる。かわいい。そしてやっぱり素直だ。

 

「ここで折れちゃだめだよ。君には復讐する権利があるんだよ、先に騙してきたのは、君の勇気を踏みにじったのは一之瀬さんなんだから」

 

「復讐、、私にできるかな?」

 

「乗りかかった舟だし、私も手伝うからさ。さて君の名前は?」

 

 私が手を差し出し、名前を聞くと女の子はまだ状況を上手く飲み込めていないのか不安そうに、しかししっかりと私の手を取る。

 

「Bクラスの白波千尋です」

 

 やっぱりBクラスだ。ちょうど知り合いいなかったからラッキー。

 

「千尋ちゃんだね。ほら私の部屋で作戦会議しよ、顔も洗わないとね」

 

 千尋ちゃんの手を引き、千尋ちゃんから一之瀬さんについて聞きながら寮へ向かう。面白いことになってきた。

 

 

 

 私の部屋に千尋ちゃんを招き入れると私たちはさっそく復讐を成功させるための作戦会議を始める。

 

「やっぱりさ最終的なゴールは一之瀬さんに告白されることだと思うんだよね?」

 

「でもフラれたばっかですよ」

 

「だからこそチャンスなんだよ。千尋ちゃん曰く一之瀬さんは聖母みたいな人なんでしょ、絶対千尋ちゃんに罪悪感を持ってるよ」

 

「そんな優しい人だからこそなおさら復讐なんて気が引けるんですけど」

 

 一之瀬さんのことを好きな千尋ちゃんはこの話にあまり乗り気じゃないようだ。まぁそりゃそうか、いい子ちゃんだもんね。

 

「ならこう考えよう。千尋ちゃんが魅力的になって一之瀬さんを落とすんだ。これなら恋する女の子なら誰でもやってることでしょ」

 

「まぁそれなら。でも具体的にどうするんですか?」

 

「それならもう考えてあるよ、でもまず千尋ちゃんの覚悟を問いたい。一之瀬さんを恋人にするためになんでもする覚悟はある?」

 

「なんでもですか?まぁできる限りは努力します」

 

 さすが恋する乙女、命を燃やせ。

 

「まず、ファーストステップとしてさっきも言った一之瀬さんの罪悪感を利用しないといけない。明日から千尋ちゃんには一之瀬さんやクラスメイトに笑顔禁止。会話もなるべく最小限で」

 

「えっ普通に友達もいるんですけど」

 

「我慢して。一之瀬さんはどうやら同性を恋愛対象としてないようだし、ある程度振り切らないと友達としか見てくれないよ」

 

「わ、わかりました。頑張ります」

 

 素直すぎないか千尋ちゃん。いつか悪い奴に騙されちゃうよ。私?私は恋のキューピットだよ。

 

「でもそれだけだとただの嫌な奴になっちゃうからね。次のステップとして有能であることを見せつけていかないといけない。一之瀬さんはBクラスのリーダーという立場にいる以上さまざまな選択をする場面が今後出てくるはずだ、そこを千尋ちゃんがサポートするんだ」

 

「サポートなんてできる自信ありません。私そんなに頭も良くないし」

 

「そこに関しては私がいろいろサポートするから任せて、これでも頭はいいんだ。外部と連絡が取れないというこの学校の性質上、頼りになる相手に対して依存しがちになる。実際Bクラスにおいて一之瀬さんがそこまで神格化されてるのもこれが原因だろうしね。千尋ちゃんは周りからのプレッシャーで誰にも頼ることができない一之瀬さんを助けるんだ」

 

「たしかに!そんなことがほんとにできたら誰でも好きになっちゃいます!」

 

 ふむふむと私の話を聞きながら相槌を打つ千尋ちゃん。やっぱりアホでかわいい。こんなかわいい子からの告白を断るなんて一之瀬さんももったいないことをする。

 

「とりあえず今すぐに一之瀬さんに好きになってもらえるという作戦でもないから、地道にがんばっていこう」

 

「はい!」

 

 元気よく返事をした千尋ちゃんとふたりでえいえいおーと拳を高らかにあげる。そんな千尋ちゃんと今後の過ごし方を詳しく詰め、演技指導を行い別れる。盛り上がって夜も遅くになってしまった。結局事件現場には行けなかったがもっと面白いものと出会えた。千尋ちゃんを上手くBクラスの頭脳の地位まであげることができれば私にとってかなりのアドバンテージだ。そしてそのアドバンテージを十分に発揮するためには千尋ちゃんからの好感度を稼ぎつつ千尋ちゃんの中の一之瀬さんの好感度を下げないと。さぁ恋愛シミュレーションゲームのはじまりはじまり。

 

 

 次の昼休み、昨日約束していたとおり千尋ちゃんとのランチタイムを誰も来ないような空き教室で行う。このためにわざわざお弁当を作った私えらい。

 二人でお弁当を広げさっそく本題に入る。

 

「どうだった?」

 

「松崎さんの言う通り、一之瀬さんは私のことが気になるのか初めは積極的に話しかけくれましたが私が適当にあしらっているのがわかると自分の席からこっちをちらちら見るだけになりました。昼休みになった時も昼食に誘ってくれたり断るの心が痛みましたよ~」

 

「うんうん作戦通りだね。進展が見えなくてつらいかもだけどなにかイベントがあるまではこのままいってもらうよ」

 

「なんか一之瀬さんと付き合うまでに友達もいなくなっちゃいそうです」

 

「まぁ私は割といつでも暇だからさ、なんかあったら電話でも会いに来るでもしてよ。遊びの誘いももちろんウェルカムだよ」

 

 この学校の性質上、心がよっぽど強くない限り依存先が誰しもできる。友達やクラスメイトと仲良くすることができない千尋ちゃんはいったい誰に依存するのだろうか。私には皆目見当もつかない。

 千尋ちゃんが語る一之瀬さんの魅力を右耳から脳を経由し左耳に流しながら考える。聞く限り完璧に思えるような一之瀬さんがBクラスになった理由はなんだろうか。それとも私が知らないだけでAクラスは化け物揃いでただただ一之瀬さんがAクラスに劣っているだけなんだろうか。一之瀬さんがBクラスになった理由がもし能力不足以外のところにあるのならその情報は何ポイントで買えるのだろうか?後で佐枝ちゃん先生にでも聞いてみるか。

 

「そういえば、Dクラスって暴力事件のせいでポイント振り込まれなかったんでしょ?先月も0ポイントだったし。松崎さんはポイント大丈夫なの?良ければ貸そうか?」

 

「ありがとう。でも私は大丈夫だよ。ポイントにはあてがあるからね」

 

 借りたくないと言えば嘘になるが私は千尋ちゃんにとって頼りとなる存在でないといけないしね。ほんとの意味で借りを作るわけにはいけない。

 適当に談笑していると予鈴が鳴る。昼休みもここまでのようだ。お弁当をたたむとギリギリに教室に入れるように調整した千尋ちゃんを見送り私は帰路につく。

 

 

「ねーねー佐枝ちゃん先生、この学校って生徒の過去とかどうせ調べてるんでしょ?それっていくらくらいで買えるの?」

 

 放課後、佐枝ちゃん先生の元を訪れた私は先ほど気になったことを聞く。放課後わざわざ教師の元に訪れて質問するなんてまるで優等生だ。さすが私。

 

「茶柱先生だと何度言えばわかる。それにしても他人の過去か、また君はおもしろいものを買おうとしているな」

 

「まだ買うと決めたわけじゃないんですけどね。割とポイントピンチだし」

 

「君がポイント不足になってくれたほうが私としても好都合なんだけどな。それで必要なポイントだが人によって多少前後するがだいたい20万ポイントだと考えてくれていい」

 

 ため息をつきながらやれやれといった感じで教えてくれる佐枝ちゃん先生。これが大人の魅力。しかし20万ポイントか、今の私には到底払う余裕ないな。おのれ清隆くんめ!

 

「高くないですか?」

 

「そうかもな。しかし、それだけ学校の調査は精密かつ詳細に行われていると思ってもらってかまわない」

 

「なるほど、ありがとうございました」

 

 職員室から出た私は直接部活へ向かう。それにしても生徒の隠したい過去すらもポイントで買えるなんて監視カメラといい相変わらずプライバシーの欠片もない学校だ。なにかに使う場面が出てくるかもしれないし、今後の目標としては20万ポイントくらいの余裕を常に持っておくことだな。桔梗ちゃんのこともあるし。というかそう考えると清隆くんの過去を8万ポイント貸すだけで知れるのはかなりお得だったのかもしれない。

 さて五日遅れではあるが月が変わって初めて行く部活だ。先輩たちもポイントに余裕ができて今日の賭場はさぞかし盛り上がることだろう。ぶっかつ!ぶっかつ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なんとなく今後の方針が決まった話でした

感想、高評価、チャンネル登録お待ちしております。

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